http://www.clubsse.com/nd/hpcuser/interview.html

HOME



同志社大学 工学部 知識工学科
教授 三木 光範 氏
専任講師 廣安 知之 氏


担当営業 住商エレクトロニクス(株) 関西支社
エンジニアリング・ソリューションチーム
ECセクション 山本
       
                                                                 ▲ 教授 三木 光範 氏
第3回ユーザ訪問
3種類の並列コンピュータの特性を活かし、遺伝的アルゴリズムなどの進化的計算法による
「最適化問題」の解決に取り組む

 - まずは、今回導入されたシステムを応用している研究テーマについて教えてください。

私達の研究テーマは「最適化」です。例えば、車の設計からタンパク質の構造予測まで、様々な分野に最適化の問題があります。最適化問題とは、ある目的となる関数の値を最小もしくは最小になるように、設計変数の値を設定された制約条件内で探索する問題です。工学的な問題、特に意思決定が含まれるような設計問題においては必ず直面します。コンピュータシミュレーションにより最適化問題を解決する場合、解析と探索とを繰り返し行う必要が生じ、これが計算コストを高くします。そのため、実問題の解決においては並列処理が不可欠となります。進化的計算手法は多点探索を特徴の1つとしているため並列処理を柔軟に行うことができます。私達は、3種類の並列コンピュータ計算システム、及びそれに適した並列分散計算モデルを構築し、生物の進化のメカニズムを取り入れた「進化的最適法」により最適化問題に取り組んでいます。
▲ 分散メモリ型の計算サーバ Gregor

 - 今回のシステム導入の経緯についてお聞かせください。

1994年に当大学に知識工学科が新設されました。それが私たちの並列処理の原点です。当時は nCube2 64プロセッサを用いて並列処理を行っており、これは、数年前まで現役で稼動していました。1999年に文部科学省の学術フロンティア推進拠点として指定され、2000年より「知能情報科学とその応用」というテーマで、生物がもつインテリジェントな方法を工学に応用するための研究を5年間のプロジェクトとして現在進めています。それに伴い3種類の並列コンピュータシステムを導入しました。高速数値計算サーバは共有メモリ型計算サーバと分散メモリ型計算サーバで構成しており、分散メモリ型の計算サーバ Gregor は 128CPU、64ノードからなり、高速ネットワーク Myrinet 2000によるインターコネクトが特徴です。6月に開催された情報処理学会での並列処理シンポジウム・自由部門の計算機コンテストでは専用並列計算機に次いで2位、PC クラスタとしてはトップの成績を出しました。一方、共有メモリ型計算サーバ Maia は、IBM の RS/6000 SP4 16CPU で、メモリは 16 ギガバイトです。もう1つは、超並列 PC クラスタ Cambria です。これは 256CPU 構成のクラスタを 100Base Ethernet で結んでいます。これら3種類のシステムには各々特徴があり、それを充分に踏まえたうえで、何を計算するのかによりその特徴を活かした使い方をしていくことが大切です。
 ▲ 教授 三木 光範 氏


 - クラスタを採用した理由は何でしょうか。

解くべき問題とハードウェアの間には、いろんな層があります。
(右図参照)

従来の並列計算機の利用では、既存の計算モデルを並列プログラミングの技術により適応させてきました。
また、商用製品システムにおいては、ミドルウェアによりある程度の並列化への対応をすることもあります。これら従来の計算モデルは数学的効率を重視しています。
しかし、私たちは、計算機の計算コストは飛躍的に低くなるという前提から、数学的な効率が悪くても、大規模な並列・分散処理に対応できる計算モデルを考えています。この意味で、クラスタシステムは多少クセの強いシステムです。そのようなクセの強い環境においても十分に結果を引き出せる計算モデルの開発研究のためにクラスタを導入しました。



 - 3タイプのマシンの位置付けについて教えてください。

専用並列計算機 Maia は、IBM の RS/6000 は4ノード x 4CPU でネットワークに SP スイッチを使っています。何も考えずにこれまでに計算していたものを、計算モデルを変更せずにそのまま使えます。クラスタ機2台は、128CPU、64ノードからなり、高速ネットワーク Myrinet 2000でつないだ Gregor と、256CPU を並べ 100Base Ethernet で結んだ Cambria です。Gregor は先ほども説明したとおり、極めて高速であり、情報学会のベンチマーク・テストで第2位という結果を出しました。Linpack でも60Gflops 近い性能を発揮しており、分子動力学でも十分活用できるシステムです。一方 Cambria は進化シミュレータと名がついている通り、進化的最適化計算のような独立した多数の計算をするような場合に力を発揮し、分散遺伝的アルゴニズムの検討でいい成績をおさめております。PC クラスタは組み合わせや使い方によって様々な特性を引き出すことが出来ます。大切なのは、何をどのようにしたいのかによって、それに合ったマシンを活用していくことだと思います。
▲ 超並列PCクラスタ Cambria   

 -クラスタシステムには様々な種類のものがありますが、今回このシステムを導入した
  理由をお聞かせください。


Gregor System の導入ポイントは2つあります。Myrinet を中心としたクラスタシステムを作ること、そして、住商エレクトロニクス?のクラスタ技術を評価したことです。クラスタをやっているところはいろいろありますが、技術的に対応することは当然として、営業的にも対応できるところは実際少ないですからね。
 ▲ 高速ネットワーク Myrinet 2000

 - プログラムはだれが作っているのでしょうか。


大学院生が開発した学内のものや市販のものを使っています。


 - ユーザ管理系のツールは何が含まれてますか。


Kondara に付属のものを使っています。わからないときは住商エレクトロニクス(株)に問い合わせています。


 - プログラムの開発はどのように行っていますか。


インターフェイスは MPI を使っています。プログラム開発には技術的な蓄積が大切です。そこで、私は「超並列研究会」を立ち上げ、年に4〜5回、情報交換、講習会、クラスタ構築のための講習会等を開催しています。また、講師を招いてプログラミング研究会を開くなど教育的な活動も行っています。学内の学生は私のゼミに入ると同時に並列プログラムの勉強を始めますので、すでに多くの知識の蓄積があるのです。
 ▲ 専任講師 廣安 知之 氏

 - 2001年3月に導入されたわけですが、導入されていかがですか。


Gregor System は、住商エレクトロニクス?に高品質の部品まで選んでもらいました。これら部品は高価なものでしたが、おかげで、故障無く稼動しています。よいものをきちんと導入するということは大切ですね。ただ、フリーのソフトウエア、 MPI のライブラリ「LAM」を使っているのですが、フリーソフトの場合動作検証が十分にされていない場合があります。実際 Gregor System はこの動作検証にも活用されています。

 - 3タイプのマシンを導入されて満足度はいかがですか。


満足度はとても高いです。私達にとって最高レベルのシステムを求めること自体が研究の一部であり、住商エレクトロニクス?に相談して導入したわけです。問題解決のプロセスとしては充分と言えると思っています。

 - 今話題のグリッドへ取り組みはいかがですか?


Gregor System および他のクラスタ、学外の計算資源とネットワーク結合し、1つのシステムとして利用できるグローバルコンピューティングシステムの開発を行っています。特に、進化的計算手法の各種アルゴリズムを容易に実装できるようなミドルウェア、Evolve/g を開発中です。

 - グリッドとクラスタはどちらがいいでしょうか?


それは一概にどちらがいいとは言えません。何をするのかによって変わってくると思います。グリッドはセキュリティーを重視する場合には使えませんが、余剰資源を活用して、緊急性のない大規模計算には最適です。つまり、私達が取り組んでいる進化的計算には最適なのです。また、余剰資源の活用という点から、社会的にもプラスになるのでいいと思います。しかしながら、緊急性の高い計算であれば、やはりインハウスのクラスタということになると思います。
▲ 教授 三木 光範 氏

 - HPCシステムが今より1,000倍早くなるとどんな研究・教育が可能でしょうか?


従来では計算コストの壁により、いい解答を出すために、どのくらいの資源をどのように使うかが重要でした。計算が1,000倍早くなるということは、計算コストの心配がなくなるということですから、計算がいくらでもできる、無限の資源となるということですから、考え方そのものが変わるパラダイムシフトがおきると思います。例えば、遺伝的アルゴニズムは100世代分のシミュレーションを行う必要があるため計算コストの関係で使えなかった分野にも使えるようになります。また、これまでは計算を少なくするための下準備にかかる負担が大きかったわけですが、コンピュータに任せた方が自動的に正しい解答が得られ、コスト削減にもつながることになるのでしょう。
また、これまでは、問題の領域を限定しローカルオプティマムを求めてきました。例えば、飛行機の設計の上で、翼をどんな形にするか、そのパターンを選ぶというような問題&解答です。しかし、これからは、グローバルオプティマムに対応した大域的最適解が求められてきています。例えば、飛行機の設計でも、翼の形だけを考えるのではなく、飛行機全体の形を検討することが求められるのです。1,000倍高速になればこうした状況に対応できるのではないでしょうか。


 - 今回導入にあたり、ベンダーにどのようなサポートを期待しますか。


要望はいろいろ聞いていただいており、現状で満足しています。


 - これからHPCシステムの導入を検討されている方々にアドバイスがあればお願いします。


出せる資金、解くべき問題、求める性能を、はっきりとベンダーに伝えることが大切だと思います。また、その辺のことをちゃんと理解でき、また技術を持っているベンダーを選ぶことが大変重要です。特にPC クラスタは先ほど述べた通りクセが強いシステムです。64CPU 以上の規模のクラスタにはまだ実験的要素が多いと思います。単純に安価であるという側面のみを強調すべきではありません。うまく組めばいいのですが、下手をすると並列計算機より厄介なものになってしまいますので注意が必要だと思います。あまりに安価なパーツはさけるべきです。また、クラスタを維持していくための人件費と保守料も必ず見込んでおく必要があります。そして、最後になりますが、クラスタとはいえ1つのシステムです。パソコンがただラックに並べてあると思われないためにも、クラスタシステムの見栄えは実は大変に大事なことと思っています。(笑)
   担当営業 住商エレクトロニクス(株) 山本 ▲
 第2回(横浜市立大学大学院総合理学研究科) / 第1回(株式会社地球科学総合研究所 )




SSEへ戻る