SC2001 参加報告

同志社大学 工学部 知識工学科 

廣安 知之

はじめに

 Super Computing 2001(以下SC2001)が米国コロラド州デンバー,コンベンションセンターにて11月10日から16日の日程で開催され た.廣安と三木教授(同志社大学工学部知識工学科)および知的シ ステムデザイン研究室の大学院生5名(同志社大学工学部/プロ ジェクト協力員)はSC2001におけるResearch Exhibitionにて学術フロンティア推進事業「知能情報科学とその応用」研究プロジェク ト(Academic Frontier, Intelligent Information Science:AFIIS)の研究成果の一部を発表した.本稿ではSC2001への参加の報告を行 う.

SC概要

 SC2001はThe IEEE Computer SocietyとThe Association for Computing Machinery (ACM)とが主催するHigh Performance Computing (HPC)関連の世界最大規模の国際会議である.1988年にOrlandoにて開催された第1回から回を数えて14回目にあたる.9月 にニューヨークで起こった世界貿易センターへのテロ,報復戦争の開始,それに続く炭 疽菌騒動と世界情勢は緊迫し,SCの開催自体が危ぶまれたが,無事開催された.アメリ カ国内の空港ではライフル銃を持つ軍人と思しきセキュリティの居る中,ノートパソコ ンを取り出してのチェックとチェックは非常に厳しいものであった.11日(月)の早朝 には再びニューヨークにて航空機が墜落し,再度のテロかと非常に緊張したが,事故に よる落下とのことで,大きな混乱は生じなかった.

 デンバーは非常に標高が高い場所で昨年の今ごろは積雪があり,皆寒さ対策を十分に 行ったが,当地は異常気象で非常に暖かく,昼間は街中をTシャツで歩いている人も見か けるほどであった.さすがに,深夜,早朝は気温は下がったが,それにしても肩透かし を食った感があった.

 SC2001は国際会議といってもその規模 は巨大で,メインとして企業と研究者のExhibitionがあり,それに付随して, チュートリアル,発表,ポスターセッションなどなどが3日間(前日にプレ開催あり) 開催された.今年度は,3日間を通して延べ5200人以上の登録者があったそうであ る.

コンベンションセンター


 主なプログラムは以下に示す.

10日(土) Education Program

11日(日) チュートリアル(27件,全日は13件,半日は14件)

Afiis Project展示準備の開始

12日(月) Afiis Project展示準備

夜7時の展示会場における Gala Openings(盛大な開会式)

13日(火) 基調講演と招待講演,一般講演,ポスター講演

企業・研究展示(10:00-18:00)

14日(水) 基調講演と招待講演,一般講演,ポスター講演

企業・研究展示(10:00-18:00)

15日(木) 基調講演と招待講演,一般講演,ポスター講演

企業・研究展示(10:00-16:45)

展示撤収

AFIIS プロジェクトのブース

 Research Exhibiton(研究展示) といってもCompany Exhibitionと(企業展示)同会場にあり,一般的な学会のポスターセッションなどよりもデモなどを含んだより周到 な準備が必要であったし,必要な機材や費用も大きくなる.

 我々はAfiis Projectの一つのサブプロジェクトの成果の一部であるHPC上で行う最 適化問題の解決を展示した.内容としては,

PCクラスタを中心とした並列計算機アーキテクチャの開発

GRID Computing およびP2Pのためのミドルウエアの開

進化的計算手法およびシミュレーテッドアニーリングを中心とした最適化手法の並 列モデルの開発

エンジニアリングおよびバイオインフォマティクス関連の最適化問題の解決

などを説明した.

 6M×3Mの小さなサイズのブースを選択したために,7枚のポスターとプロジェクタに よるムービーの上映のみの簡単な説明しか行えなかった.今回,最適化問題としては, ディーゼルエンジンの噴射スケジュール決定問題と,タンパク質構造の予測問題につい

AFIISブース


て我々の取り組みを説明した.ムービーでは,同志社およびプロジェクトの概要につい て,外注ではなく我々自ら作成し,繰り返し上映した.

 デモとしては,

ディーゼルエンジン噴射スケジュール決定問題の最適化のリアル実行

グリッドコンピューティング環境下でのGAシステム(Evolv/G)の日本と会場とでの リアル実行

開発したP2Pミドルウエアによる超並列PCクラスタのモニタリングの実行

などを行った.

 ブースに立ち寄っていただいたおみやげとして

Afiisプロジェクトと同志社の校章をあしらった扇子

同志社の校章がデザインされた金太郎飴

IBMから寄贈されたボールペン

Afiisプロジェクトで作成したDebian GNU/Linuxをベースとしたクラスタ構築用CD Rom

を配布した.どれも非常に好評で,特に扇子は日本が好きな参加者には特に受けていた ようである.

 研究内容は説明を聞いていただいた方々には好評であったように感じられた.特に

意外にも遺伝的アルゴリズムについて良く知っている人がHPC関連には多い.

我々はアーキテクチャからアプリケーションまで手を染めているが,それについて 驚いている人が多かった.

という状態であった.展示の目的の一つであるプロジェクトの成果を海外に発表する目 的は十分果たされたものと感じられた.

 また,HPCの分野で著名な研究者もブースに立ち寄って頂き,交流を深めることができ, こちらも非常に有意義であった.

企業・研究展示

 日本からは,Asia Pacific Grid (ApGrid)(産総研)、原子力研究所計算科学技術推進センター、筑波大学計算物理学研究センター(未来開拓プロジェクト),大阪大学サイ バーメディアセンター,同志社大学Afils Project,Embedded High Performance Computing Project(九大村上、産総研長島など、振興調整費プロジェクト),RWCP(新情報), 理化学研究所,埼玉大学井門研究室が出展した.今年度はこれらのブース「アジア村 Asian Village」として一角を形成した.

 大きな企業展示を行っていたのは,IBM,Compaq, HP, NEC, Intel, Sun, AMDなど.研究展示で大きなブースはASCIIなどである.米国の大学で精力的にHPC分野の研究を 行っているのは,University of Tennessee,University of Pittsburgh,University of San Diegoなどであろうか.とくにUniversity of PittsburghはTop 500ランキングにおける2位のスーパーコンピュータを構築していた.

 本年度のExhibitonで目についたこととは

Network は10Gbpsへ

集積度の高いクラスタ


3Dやバーチャルリアリティを駆使した高度なグラフィック表示

分散メモリ型並列機を共有メモリ型として利用するソフトウエア技術

GRIDへの対応

その他

などである.いよいよ解析のツールとしてはあたり前に使用可能なレベルまで到達して きており,今後はどのように使っていくのかというアプリケーションの開発が重要なポイ ントとなりそうである.また,ここ数年のうちにネットワークが10Gbpsへ,PC Clusterなどの分散メモリ型並列計算機上でのスレッドの 利用が拡大するであろう.

 昨年の参加で印象的であった

無線LAN

Access GRID

などはいたるところでもう当たり前に使用さ れていた.

その他

11/13(火)の午後にIBMブースにおいて三木教授が「Parallel Evolutionary Computation」というプレゼンテーションを行った.発表が進むにつれて聴衆が増えて行 き,盛況であった.

 SCに合わせて例年,Super Computer Top 500のリスト(http://www.top500.org/)が発表される. 7tera flops以上の性能をたたきだすASCI White,SP Power3 375 MHz は文字通りStill Number Oneであった.しかしながら前回に比べてIBMの占有率は下がって いる.特に2位のCompaqは健闘している.しかしながらHPのSuper Domeというマシンが大挙してリストに名を連ねているのは顰蹙ものである.なぜならば,同規格のマシン を同Linpack値で掲載しており,本当に計測したのか疑問がわく上,使用方法としては Web Serverもしくはデータ処理マシンである.このようなリストの価値を落とすような やり方はやめてもらいたいものである.AFIISプロジェクトのクラスタも結果を提出して いたが惜しくも圏外となった(80弱Gflopsの結果で,500位のマシンは94.30Gflops).AMDの CPUを使用してリストの上位に入っているのが東工大・松岡研のPresto III クラスタである.個人研究室のクラスタとして331.70Gflopsで 86位につけているのは脅威である.

 前述した通り,9月に起こったテロの影響が 懸念されたが,空港意外では直接にはその影響を感じられない.また,SCへの影響もそれほど でもなかったようである.確かに,昨年よりも

テネシー大学ブース

IBMブースで講演する三木教授


参加者は少ないかなという程度であり,激減しているわけではなかった.しかしながら, 日本が関連する企業および研究グループのエキシビション会場のキャンセル具合は目を 被う状態であった.特に,最も良い場所に最も広い場所を確保していた富士通および日 立が開催直前にキャンセルしたのは顰蹙を買っていただけでなく日本のHPC分野での将来 に暗い影を落とす予感があった.入り口を入ってすぐの広い富士通のブース後には,テー ブルと椅子が置かれ,菊の花束が飾られていたのは皮肉以上のものがある.日本の最大 のResearch ExhibitorであるRWCPのブースも広大なブースエリアに椅子が設置され自 由にビデオを観賞するようになっていた.企業と研究者が参加できなくなってしまった からである.企業と国の対応は非常に幼稚であり,危機状態に対する対応が間違ってい るといわざる終えない.今回,参加をキャンセルしたからといって,いつ参加できるだ けの安全が保証されるというのか.そもそも,どのレベルの安全が保証されるのであれ ば参加し,されないのであるとキャンセルをするというのか.9月のテロ行為があるまで は,安全が保証されていたとでもいう判断なのであろうか.さらに,今回の参加見送り でどれだけ損害を被り,どれだけ他国に遅れをとったのか見積もることができ,それに 対する責任は誰が取るというのか.

 そういった意味でも今回の会議に参加したグループは意義があるわけであるし,来年 のメインスポンサーと記されていたNECには頑張ってもらいたい.

 Gordon Bell PrizeはDigital Equipmentの副社長であったGordon Bell氏により設立された賞である.東大の小柳先生の報告によると,今年は7件がfinalistsとしてnominate され,3部門の受賞となった(以下も東大の小柳先生の報告).

a) Peak performance部門:3件がnominateされていたが,以下の2件が受賞した. 残念ながら,理研のMDMによる8.61TFのNaCl溶解のシミュレーションは選に漏れた.

− A. Canning (LBL) et al., "Multi-teraflops Spin Dynamics Studies of the Magnetic Structure of FeMn/Co Interfaces"

− J. Makino and T. Fukushige (U. Tokyo) Grape 6

b) Price Performance部門:1件がnominateされ,受賞した.

− Seung Kim, Joon Hwang and Chang Lee (Seoul Nat. U), "Impact

Locating on Aircraft Structure using Low Cost ..."

c) Outstanding Accomplishment部門:件がnominateされ,2件が受賞.

−R. D. Loft et al (NCAR), "Terascale Spectral Element Dynamical Core for Atmospheric General Circulation Models" Spectral

− G. Allen (Max Planck) et al., "Supporting Efficient Execution in Heterogeneous Distributed Computing Environments with Cactus and Globus"

謝辞

 本出展は文科省からの補助を受けた同志社大学の学術フロンティア研究プロジェクト 「知能情報科学とその応用」における研究の一環として行った.また,サポートしていた だいた,日本IBMの辰岡様,ベストシステムズの西様にはこころから感謝する.