![]() |
ネット利用
同志社大学の京田辺キャンパス(京都府)にある三木光範教授の知的システムデザイン研究室では、インターネットを利用して複数の人間とコンピューターが対話し、意見を集約するシステムを実験している。コンピューターが議長として会議を取り仕切っているイメージだ。
このシステムを使い、オフィスの配色を、研究室の学生3人と一緒に考えてみる。
渡されたノートパソコンを開くと、画面に、床や壁の配色が異なる9種類のオフィスの画像が示された。まず、9種類それぞれに、好みに応じて1点から5点までの点数を付ける。一番気にいったものには最高を意味する「Elite」をつける。
記者は青や紫などが多いデザインを最高点の5にし、その中のひとつを「Elite」とした。次いで、茶や黒など落ち着いた色を3、ピンクや赤の派手めの配色は最低の1にした。
突然変異!
4人が作業を終えると、画面が「第2世代」に切り替わる。第2段階という意味合いだ。
再び、9種類のオフィスの画像が示された。4人とも、違う9種類の画像が出ている。コンピューターがそれぞれの好みをくみ取って表示しなおしたためで、記者のパソコンでは、ピンクなど派手な色のデザインが少し減っている。
この9種類の中には、ほかの3人が選んだ「Elite」も含まれており、他人の意見を参考にすることができる。
ただし、先入観を持たせないようにするため、どれが他の3人のEliteかは、分からないようにしてある。会議では、上司の意見にはつい従いがちだが、それを排除したものだ。
第2世代でも、それぞれの5段階評価とEliteを入力し、世代を重ねていく。
途中で、ピンクの机にオレンジの壁などといった、突拍子もないものが画面に出る。これは自然界に起こる「突然変異」現象を取り入れているためだという。恐竜が気候の変化により絶滅したとされるように、自然界では、予期できない事態が起きる。そういう場合に備え、生物は突然変異で全く違う種類の子孫を誕生させるという。
会議でも、こう着状態になったとき、だれかの何気ない思わぬ一言がきっかけになって、にわかに動き始めることがある。今回のシステムでも、同じような趣旨で、「突然変異」を取り入れているそうだ。
民主主義?
10世代まで進んだところで作業は終了し、4人が最終的に選んだEliteのオフィスが4種類、提示された。
記者のは、緑の壁に、黄緑色のカーペット、薄紫の机、黒いいすに茶色のパソコンだった。他の3人は、2人が青紫の壁に灰色のカーペット、茶色の机、もう1人が灰色の壁に黄緑のカーペット、白の机だった。わりに似たものが出来た。
10回に及ぶ意見交換によって4人の意見が集約され、だれもがそう不満のないオフィスを作れることになった。そこに、このシステムの狙いがある。
たとえば、100人の消費者がいるとして、最も好まれる商品を開発するには、このシステムは役に立つ。
だが、独創的な意見はどうなるという疑問が残る。それに答えるのが、途中にはさんだ「突然変異」だ。多くの人が突然変異を好めば、そこに意見が集約されてくるはずというのだ。
献立と旅行
オフィスのほか、洋間とTシャツのデザインを決めるシステムが完成しており、現在 は、食事の献立と旅行のプラン作りを検討中だ。
献立は、家族一人ひとりが毎日のメニューに点数をつけていけば、コンピューターは、その好みを学習し、高カロリーの食事をしている人には、カロリーを低めにした献立を紹介する。
旅行の場合も、必ず行きたい場所と日程を入力すれば、後はコンピューターがいろいろなプランを提示してくれる。その提示ごとに点数をつけていけば、みんなが納得しやすいプランが出来上がり、グループ旅行には便利だろう。
やってみると、会議というより、インターネットを使ったゲームという雰囲気だった。これも、未来の会議のひとつの形ということかもしれない。
実用化進む代替知能 夏に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督の映画「A.I.」(人工知能)は、子どものいない夫婦を慰めるために作られたロボットが自我の目覚めに揺れるという話だった。今回紹介したシステムも人工知能の応用だ。
人工知能の研究は1950年代から始まった。研究には(1)「A.I.」のロボットのように知能(脳)そのものを作るもの(2)人間の知能(脳)の一部を機械に代替させるもの---の2つの立場がある。知能そのものを作る研究はあまり進まず「代替知能」の研究が主流になっている。
ファジー機能を持つ家電製品、音声認識技術を利用した自動翻訳機やウソ発見器など、代替知能は、すでに各種の分野で実用化されている。(12月23日)
写真=コンピューターを議長役にして、オフィスの配色を決めていく。未来の会議はこうなるかもしれない(同志社大学で)