連載 第2回
ノックスビルの風を感じて(最終回)・僕のオープンソース宣言
■2003年の8月末に在外研究期間が終了し,いよいよノックスビルから日本に戻ってきた.で,のっけから謝罪.この原稿は9月締め切りだったはずなのに,現在が12月.原稿提出していないのは,僕だけらしくて,ジャーナルの発刊が僕のために遅れに遅れた.まずは,ジャーナル担当にお詫びしたい.また,ジャーナルの発刊を首を長くして待っていた方々にも謝りたい.本当に申し訳ありませんでした.■日本へ戻ってくると,「向こうの生活はどうだったの?」と良く聞かれるんだけど,そんなノスタルジックなことが言ってられないくらい,日本の生活や,やり方,仕事に慣れるのに戸惑っていて各方面に迷惑をかけている.最近,ようやく,落ち着き感がでてきたかなあというところ.やはり,ネット経由でちょっとはできていたといっても学生の指導はきちんとできておらず,それが未だに尾を引いているし,超並列計算研究会の開催ものびのびになっている.これからバリバリやらねば,やらねば.■それにしても,同志社は美しい.特に香知館は美しい.僕はその設計者に感謝している.本当に良いオフィスだ.また,在外期間終了後,ばたばたしているといっても割りとすんなり適応できているのは,三木先生,正木さん,博士課程のみなさん,そして学生のみなさんがヘルプしてくれたからだ.この場を借りてお礼を言いたい.■本当は,ノックスビルでの生活の総括を書く予定だったんだが,あれよあれよと4ヶ月がたってしまい,アメリカに住んでいたのは遠い昔のような気がしてくると,それよりも何よりも書いておきたいことが出てきてしまったのでそっちを書くことにした.ところで,このジャーナルで僕が担当しているページには連載がいくつかあるらしい.「死して屍,拾うもの無し」.何度か掲載した.「めざせ,電脳人間の道」.これまで連載が1度.「There’s riot going on」.これまで連載が1度.うー これでは連載と言えないなあ.それぞれの連載では,自分なりのテーマがあるんだが.機会を見つけてぼちぼち連載していこう.それから「ノックスビルの風を感じて」.このジャーナルでは一応,終了.ノックスビル関連の記事を書く良い機会になりました.■さて,今回は,「オープンソース」のお話.皆さんは知っているかどうかしらないが,2003年の4月から同志社大学では,知的財産機構といような組織を作って,同志社に関連する知的財産を守ろうとしている.でも,これがひどいんだよな.一番ひどいのは,僕が作成したソフトウエアは,自動的に,同志社大学の知的財産になってしまうというもの.つまり,僕が,作成したソフトを,オープンソースとして世に公開する際には,大学長の承認が必要ということなのだ.だから,勝手にオープンソースにもできないし,多分申請してもオープンソースにできないだろう.だって,オープンソースの意味とか意義とかがわかってないだろうから.■オープンソースってのは,一般的な用語ではなくて,定義のある商標.ソースが公開されているソフトウエアの全般を示すというような,勝手な定義を行うことは許されないのだ.Debian GNU/Linuxを発展させていくにあたって,それまでのフリーソフトウエアのフリーがあまりにも定義の誤解を与えるという文脈の元に,議論して,「オープンソース」の定義を作成し,それを勝手に使用・変更できないように商標登録されているものなのだ.きちんと定義が理解できていない人は各自勉強するように.■アルゴリズムやプログラミングってのは,何かをするときず必要な真理や道理ではないので,使われなければ,それは本当にゴミみたいなものだ.そして,同志社大学の僕らの研究室のアルゴリズムやら,プログラムやらがなんの努力もすることなく,利用してもらえることなどない.前評判もなく,デファクトスタンダード的にもなっていないソフトを,最初からフリーソフトウエアでなくして,利用者の敷居を高めてもなんの利用の促進にもならない.それは,再度,記述するが,アルゴリズムやらプログラムは真理ではなくて,人間の勝手な手順だからだ.なので,まず,利用してもらうためには,オープンソースにして利用を促進していかなければならない.■よりよいソフトウエアを作成するためには,他人に見られる緊張感を作り,利用者の声に耳を傾けなければならない.自分しか利用しないプログラムには,コメントもきちんと書かないだろうし,再生利用可能なクラスやら関数の構築もしないだろうし,マニュアルも作らないだろう.そのようなプログラムのデータで作成された論文は信用が足るだろうか.論文の信用性や研究室の信頼性を向上させるためにはどうすればよいのか?使用したり構築したシステムやプログラムをオープンソースとして公開すればよいのだ.■だから,僕たちの研究室のソフトウエアはオープンソースにしなければならない.そのために学生の皆さんにも手伝ってもらわなければならない.おっと,紙面が尽きてきた.ラップトップのバッテリーも切れそうだ...