多分連載 第1回
同志社大学 知識工学科 知的システムデザイン研究室: 廣安 知之
■初めに:2002年4月22日から家族で米国テネシー州のノックスビルという街に移り住んできました.これから約1年間この街で生活することになります.本連載ではそんな生活の一部をご紹介しようと思っています.どうぞよろしく.■在外研究:この1年のノックスビルの滞在は同志社大学の在外研究という制度によるもので,同志社大学から給料と研究費,在外研究補助金をもらいながら1年から3年間で自分の選択した研究機関にて研究のために滞在することができるというものです.授業,大学の仕事,学会の仕事,研究室のこと,卒論・修論のことなど多くの人に迷惑をかけつつ,修行にはげむわけです.私は,この制度を利用してUniversity of TennesseeのInnovative
Computing Laboratory (ICL)という研究室を在外研究先として選びました.■ノックスビル:テネシー州は,ケンタッキー,バージニア,ノースカロライナ,ジョージア,アラバマ,ミシシッピー,アーカンソー,およびミズーリの八つの州に取り囲まれている東西に長い州です.テネシー州の西側にはカントリー,ソウルそしてエルビスで有名なメンフィスやナッシュビルがあります.それに対してノックスビルは東側にあります.ワシントンDCから710キロメートルの位置です.City of Knoxvilleのweb情報によるとノックスビルの人口は173,890,ノックスビル郡で382,032だそうです(2000年現在).日本人がよく訪れる大都市ではなく,中都市ですね.日本のガイドブックにはまず紹介されていないでしょう.ノックスビルの南東にはアパラチアン山脈が広がります.そこにGreat Smoky Mountain National Parkがあります.■テネシー大学:テネシー大学は10万人の大型総合大学です.どの学部が有名なのかは今の段階ではわかりませんが,フットボールはめちゃくちゃ有名なはずです.1998年にはナショナルチャンピオンになっています.スタジアムも非常に大きなものです.スクールカラーはオレンジで,最初はどうかなあと思っていましたが,しだいに慣れてきました.フットボールのシーズンにはオレンジ色のTの字が溢れることでしょう.■ICL:ICLは世界でも有数のHPC関連の研究をしている研究室です.Professor Jack Dongarraを研究グループ長とするこの研究室ではこれまでにLapack, PVM, ATLAS, BLASなどなどHPC関連の重要なソフトウエアを開発してきました.世界のHPCコンピュータのランキングTOP500を管理しているのもこの研究室です.最近では,GRIDのミドルウエアNetSolveやGrADSの開発を行っています.このように精力的にソフトウエアの開発を行える背景には多数のポスドクや研究員の存在があります.総勢,40名の研究者が日々研究を行っています.中には大学院の学生もいますが,日本のように卒業単位と連動した卒論や修論の一環での研究ではなく.それぞれが研究予算のついた研究です.このように,多くの若い研究者が多数集まっているというのがICLの特徴ですが,これが私が在外研究先としてICLを選択した一つの理由です.これからの研究人生の中で良い関係を保ちながら切磋琢磨できる関係が築けるような人に出会うことを期待しています.■今後の予定:これからさあアメリカの生活だということでしたが,IT革命でそうもいかないようです.インターネットは本当に世界を変えました.こうしてジャーナル原稿も日本にいるのと変わらず書いています.その他の日本からの仕事の締め切りの催促が毎日やってきます.メイルやチャットでかなりミーティングもできます.それでも授業や会議がないわけですから,これからぼちぼち色々とやっていこうと思います.ICLでは開発中のNetSolveのミドルウエアから汎用的なアプリケーションを呼び出すインターフェースの構築やわれわれのGA・SAをGRIDのスケジューラに搭載する計画があがっています.その他,国際会議に多数出席する予定です.国際会議にあわせて各地の研究室および研究所を訪問し多くの人に出会うことを計画中です.