ほんとに連載 第2回

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禁断のブルーグラスに足を踏み入れるの巻き

同志社大学 知識工学科 知的システムデザイン研究室: 廣安 知之

 


初めに:米国テネシー州のノックスビルにやってきてはや4ヶ月.ようやく生活にも慣れてきたのだが,まだまだ満足できず.こちらの研究室の人々との接触が極端に少ないからなのだ.がんばらねばならない.7月にはGecco 2002に参加し,New Yorkにて渡邉,吉田武史,上川に会う.8月にはAtlantaにて別学会で三木先生,小野,上浦,實田に再会.不思議と久しぶりという感じではない.が,やはり実際に会って話すと話こんでしまう.非常に気分爽快. 9月にはスペインにて奥田,10月にはモントリオールにて三村さん,チュニジアにて三木先生,吉田武史,下坂,11月にはボストンにて谷村,上川,引き続きバルチモアにて三木先生,大向に会う予定なのだ.非常に楽しみ.さて今回はブルーグラスというカントリーの一派のお話なのだ.こう書くと怒る人もいるであろうが,まだまだ初心者ということでお許し願いたい.

 

テネシー:テネシー州は音楽のるつぼ.まず,州都ナッシュビルはカントリーの都.「ザ・カントリー・ミュージック・ホール・オブ・フェイム」だってある.それだけではない.少し前にはやったパワーポップはナッシュビルが発信源.懐が深いのだ.そして,テネシーにはメンフィスがある.メンフィスはご存知,プレスリーの聖地.今でも巡礼者が絶えないらしい.いつか行かねばならない.それから忘れてはならないのがメンフィスはBOOKER T. & THE M.G.'sのホームタウンだということ.RCも非常に好きなのだが清志郎のMG’sとの競演ソロは非常に好き.ニールヤングも最新CDMG’sと一緒にやっていたなあ.まあ兎に角,このようにテネシーは音楽に溢れた州なのだ.そして,イーストテネシーはブルーグラスに溢れていると言っても良いだろう.

 

ブルーグラス:お恥ずかしい話ブルーグラスって全く知りませんでした.ここに来るまでは.だって,カントリー自体,なんだかその名の通り田舎くさいし,年寄りが聞くものだと思っていたのだから.よく「カントリーはアメリカの演歌」なんて書き方がされているではないか.こっちに来て初めて知ったが,カントリーって演歌ではない.若いやつだって随分聞いているし,盛り上がっている.どうもすみません.話をもとにもどそう.ブルーグラス.ブルーグラスは,トラディショナル・カントリー・ミュージックから派生した音楽であるらしい.5弦バンジョーとハーモニカ,ドロップ・チューンのギター,ウォッシュボード,ヴァイオリン,ベースまたは手づくりのベース楽器という編成で,バンジョーやギターにリードをとらせるのが特徴であるらしい.さらに,なんとドラムは滅多に使用しないらしいのだ.日頃,ドラムとベースによりリズムが構成されている音楽に親しんでいると,少々,戸惑う.これはノックスビルの風景にも通じるところかもしれない.日本や今まで訪れたアメリカの街とは違う風景.山があり,見慣れない木々が生い茂っている.ケンタッキー州出身のビル・モンローは,ブルーグラスの父と言われている.1946年に現在のスタイルを確立したからである.なんとブルーグラスの歴史はそれほど古くはないのだ.ちなみにブルーグラスはビルのバンド「ブルーグラス・ボーイズ」から来ているらしい.さて50年代を頂点としてブルーグラスは没落しかかるのだが,その後,ポップやジャズなどの要素を取り入れたニューグラスが広く聞かれるようになる.カントリー・ジェントルメンがその代表.さらにそのゆり戻しで80年代以降,ニュー・トラディショナルと呼ばれる原点に回帰したブルーグラスが主流になってくる.その代表が後述すアリソンクラウスだ.

 

ドリーパートン:ドリーパートンはカントリー会の大物だ.カントリーの美空ひばりという人もいるが,僕は歌がうまくて豊胸手術をした松田聖子だと思う.異様にめりはりのあるスタイル,そして最初びっくりするハイトーンボイス.CDを出せば全米クラスのニュースで取り上げられるし,コンサートチケットはすぐなくなるぞ.すごいのはノックスビルから1時間弱車で走ったところに,「ドリーウッド」という自身のテーマパークがあることだ.道にも正規の看板が敷設されている.ここにも一度いかねばならない.

 

アリソンクラウス:ようやくブルーグラスを聞きかじり始めたのだが,今のところ好きなのがアリソンクラウス&ユニオンステーション.現在,最も売れているブルーグラスバンドのうちの一つであろう.ちょっとミーハーなのかもしれないが,バンジョーなどの早引きに走りがちな中で(それが特徴なのだからしょうがないのだが)非常にゆったりした静かな曲を多く聞かせる.これを聴いているとビルフリーゼルのギターってブルーグラスの影響をもろに受けているわけなのだなと認識させられる.アリソンクラスはバンド活動だけでなく,最近は多くの仕事をしているらしい.例えば「オーブラザー!」のサントラ作製.それから彼女がプロデュースするニッケルクリークなどなど.今後の活躍が楽しみである.

 

ブルーグラスの楽しみ:ブルーグラスは初心者なのであるが,ブルーグラスの真髄はどうもライブにあるらしい.通常,行われるブルーグラスのコンサートは1日だけではなくて,3日くらい.会場も牧場とかキャンプ場が多い.すなわち,キャンプして泊まりながら,バーベキューとかして音楽を楽しむわけなのだな.また,どうやら,演奏のスタイルもジャムることが多いみたい.デッドやフィッシュ好きな私としては1度はそのコンサートに参加してみたいものであるが,小さい子供を抱えている今,それが達成できるやら…