同志社大学工学部知識工学科/
Innovative Computing Laboratory,
University of Tennessee
廣安 知之
■ 日本ではまずスポーツと言えば野球があって,Jリーグがあって,相撲とかがあってそのニュースが新聞などの紙面を賑わす.すなわち,スポーツエンターテーメントと言えば,プロスポーツと相場が決まっている.大学のスポーツもラグビーやアメフトなどそれなりに人気があるものがあるが,注目している人といえば,卒業生とか一部の熱心なファンだけだと思う.なので,日本人がアメリカのスポーツに目を移すときにはどうしても,メジャーリーグとかNBAになってしまうのはしかたのないことだと思う.しかし,それではアメリカのスポーツは語れないと思う.それはカレッジスポーツ,特にカレッジフットボール(アメフト)が抜けているからだ.
■ 前述したように,日本ではプロスポーツが主なので,日本人はよくテネシーにはプロスポーツ球団は何があるのか?と問いがちだ.しかしながらテネシーにはノックスビルから200マイルほど離れたナッシュビルにあるフットボール球団だけが唯一のメジャープロスポーツチームだ.テネシータイタンズなんて誰も知らないよなあ.だからと言ってテネシーはスポーツが盛んでないとか,スポーツエンターテーメントが存在しないとか言ったことは全くない.UTのフットボールがあるからだ.
■ UTのフットボールは全米にその名を知られた名門だ.最近では1998年に全米チャンピョンになっている.これまでの通算の勝率もかなりの上位にあるはずだ.それよりもなによりも,まず,UTのフットボールの球場に驚かされる.UTの球場はめちゃめちゃすごい.UTにはNeyland Stadiumというフットボール専用の球場がキャンパスにあるのだ.これはすごいぞ.なんたって収容人数が107,501人.東京ドームは55,000だからほぼ倍.しかもその中に入ってみると,増築に増築を重ねているので,席がそそり立っている.試合などで興奮したりして将棋倒しなどになったら間違いなく死人が続出するであろう.驚くのはその収容人数だけではない.このスタジアムが満杯になるのだ.UTの学生数は25,000人.ノックスビルの人口だって200,000人に過ぎない.どこから人がやってくるんだ?東テネシーのほとんどからやってくるんだろうなあ.
■ フットボールのランキングは複雑だ.NCAAのI-Aには100あまりの大学があるわけだけれども,これらがすべて対抗戦をするわけでもなく,すべてのチームが参加する対抗戦のようなものがあるわけでもない.主に各コーチやスポーツ記者による投票から毎週のランキングが決定され,最終的にそのランキングを考慮していくつかのチームが激突するという仕組みなのだ.人気投票なので,細かいところの順位はよくわからない.試合に勝ってもその勝ち方がださかったら順位を落とす場合もあるし,逆に,試合に負けても上位に位置することもある.通常は,各大学が所属するリーグでいくつか試合を行う.それ以外にも試合を行うこともある.UTはSECというリーグに所属していてフロリダ大学がライバル校だ.UTは今シーズンは全米4位からスタートした.4位ってもしかして,全米1位になることもあるってこと?非常に期待したんだけど,3試合目の対フロリダ大学戦のビッグゲームであえなく大敗.しかもその負け方がひどすぎて,早くも10位圏外へ.その後も,故障者が続出したり,オフェンスがうまくいかなかったりで,ずるずると負け続け,最終的には25位以内にも名前を見ることのできない状態となってしまったのだ.なんともひどいシーズンであった.ちなみに今シーズンはマイアミ大学とオハイオ州立大学が全米1位,2位となり,正月3日に行われるFiesta Bowlで激突し,全米チャンピョンシップを争うのであった.楽しみ.
■ 試合は確かにFootballの試合をするためにあるわけだけれども,その場所は応援団やチアリーダーそしてなんと言ってもブラスバンドの晴れの舞台だ.試合が始まるまでにはいろいろなセレモニーが用意されていて飽きさせない.そして,ハーフタイムには,ブラスバンドのマスゲームだ.ブラスバンドが演奏しながら,校章を形づくった陣形に形を変えたり,テネシーの州の形に隊形を変えたりする.素晴らしい.ただ,レパートリーをもっと増やしてもらえればさらに素晴らしいのだが.
■ 試合のあるホームゲームの土曜日は,大変だ.すでに記したように,ノックスビルだけでなく東テネシー中から応援にやってくるので,その週末はノックスビルの宿はほぼいっぱい.なにしろ10万人の人が溢れるので,駐車するところはないし,キャンパスの付近はどこもオレンジのものを身に着けた人だらけ.そして,何が羨ましいかと言えば,試合に応援に来ているのが若者だけでなく,本当に小さい子供から,お年寄りまで,男性も女性も,そしておばちゃん連中も参加していることだ.日本だと,まず10万人も人が集まるのは,都会でしかありえないであろう.しかも,イベントに参加するのは若者と相場が決まっている.小さい頃からUTを応援していれば,それこそUTが身近に感じられるであろうし,UTにも行ってみたくなるであろう.UTを卒業しても,例えUTに行かなかったとしても,UTがテネシーの大学だと感じることができるであろう.なんとか,同志社もこうならないものか.
■ 僕が偉くなったら:僕が学校法人 同志社大学の最高権力者になった暁には,Neyland Stadiumとは言わないまでも2万人くらい入るサッカー,アメフト,ラグビー球戯場を建設しよう.紫のシャツを着てきた人は入場料の割引付.今の同志社にはいろいろな機能が必要だと思うけれども,その一つが,同志社の学生,教員,職員,そして地域の人が一度に会する機会があって,同志社に愛着を持つことだと思う.紫一色に染まった,京田辺球場で立命館を撃破するのを見たら俄然,盛り上がると思うなあ.しかも,ピッチは目にまぶしい青い芝生で,しかも観客席に近い.それだけでも,同志社に来たいと思う人が増えるかもしれない.