よく日本の方に「そちらのクリスマスはどうですか?」と聞かれました.きっときれいに飾りつけをしているんでしょうねえとか,街はクリスマスに向けてばたばたしているんでしょうねえといったように暗黙のうちに日本の状況と照らし合わせているのでしょう.最近の日本のクリスマスは妙にみんなはしゃいでいますし,昔から12月はばたばたしていますからね.
でも,意外にここ,Knoxvilleの街は静かでした.HalloweenやThanksgivingの方が盛り上がっていたような気がします.確かに,電飾によるイルミネーションで飾っているうちも多いですが,12月のKnoxvilleは静かに時が流れているという感じがしました.私のお世話になっているInnovative Computing Lab (ICL) も同様です.年末の整理に向けてばたばたしているというより今年の最後の時間を名残惜しむように時が経っていくという雰囲気です.
飾りつけのされた事務室
でも,私の生活はそうはいきません.インターネットを始めとするネットワークに接続された状況では日本のあわただしさがそのままこちらにやってきてしまいます.何かと締め切りがありますし,日本の大学では年明けそうそう修論や卒論の発表が控えているので,もっとも忙しい時期となります.
ICLでは12日20日(金)のLunch Meetingが年末最後のイベントでした.なんとこの日,Jack Dongarraはサンタクロースの格好していました.
年末のLunch Meeting (各自が自分たちの料理を持ち寄りました)
今年のHPC分野での大賞はやはり「地球シミュレーター」でしょう.私がこちらに来た直後に完成し,TOP500でNo. 1を獲得しました.Jack Dongarraは"Computonic"という言葉を残しました.各ベンダーはAnswear to the Earth Simulatorを合言葉にやっきになっているように感じます.SC2002でも主役はEarth Simulatorでした.
2002年の4月の終わりに家族でKnoxvilleへ移ってきてから早いもので,年が変わってしまいました.研究的な成果はほとんど得られていませんが,ICLでの経験はやはりかけがえのないものだと感じています.また,各地の研究拠点を訪ねることができ,特にグリッド関係を中心に直接研究の動向を知ることができました.私の在外研究期間中ご迷惑をおかけしております同志社大学、工学部および知識工学科の皆様に感謝いたします.
この連載のチャンスをいただいたことに非常に感謝しております.当初はもう少し,この在外研究がのんびりしたものになるのではないかと予想していたのですが,相変わらず忙しく,1月に1回のペースも守れませんでした.特に校正・ページ作成をお手伝いいただいたイノベンションの山上さまには本当にご迷惑をおかけしました.
また,どれだけの方に,この駄文にお付き合いいただいているのかはわからないのですが,読者のみなさまありがとうございました.このページを連載することで自分の考えを定期的にまとめることができました.
1月は新年早々3日よりミーティングがありました.私は,まさか3日から始まるとは思わず,すっぽかしてしまいました.:-) University of Tennesseeでは1月から新学期が始まります.春学期です.1月の雰囲気は随分,日本と違うと思います.特に,日本では卒論・修論の仕上げが近づいていますから,研究室内もばたばたしています.こちらの研究室は,それとは違って,新しい目標に向かっていろいろ始まるという感じです.また,いろいろな国から皆さんやってきているので,新しい発見もあります.けっこうアジアの広い範囲で旧暦の正月を祝うんですねとか.
ICLにも春学期の始まりとともに新しいメンバーが大勢やってきました.Jackは研究室のサイズを今のままに維持したいと常々言っていますが,それとは裏腹に僕のような居候の人もやってきますし,研究員も増えてきます.研究員の数は予算獲得に比例して増えていくのです.他の研究機関の方が言われていましたが,予算はドラッグといっしょだと.すなわち,一度予算獲得をしてしまうと,それにあわせて食わせていく研究員をやとう必要があり,次の予算申請には,それらの食い扶持を維持するために,ちょっとだけ大きな予算申請が必要で,それがあたると,その消化のためにまた研究員をやとうと.そしてそれの繰り返し.なるほどです.ICLでもNetSolveやPAPIといった比較的成熟してきたプロジェクトが現在主体なのですが,それにいろいろな予算がついているようです.新しいメンツがやってくるのは楽しいことですが,それを処理を担当する人の事務は増え,部屋も足りなくなってしまいます.居候の私は申し訳ないことに,一人部屋に移らせてもらうことになりました.なかなか環境は良いのですが,ただでさえ,他の研究員の方はコンピュータに向かっているうえに,一人部屋になると,英語をしゃべる機会がなくなります.
さて,Knoxvilleは誰に聞いても,雪は年に1度降るか降らないかの所だと答えます.要するにあまり雪は降らない所だったのです.しかしながら,今年は大違いでした.1月の中旬に大雪になりました.(以後5度も雪が降りました.)夕方 3時ごろから降り始めた雪はあっという間に5cmほどつもりました.結局,大学は休講になりませんでしたが,いろいろと混乱があったようです.雪になれていない証拠です.私の子供たちが通っている保育園はお休み.大変なんですよね.子供たちが休むと...
大雪
さて,今年はどんな1年になるでしょうか.私は年賀状がこちらに転送されて初めて今年が未年だと知りました.来年の今頃はまだ地球シミュレータがTop 500の1位の座を死守しているでしょうか.グリッドはまだ注目されているでしょうか.新しく何かが生まれてくるでしょうか.
当初,私の在外研究の期間は4月まででしたが,7月末まで延長させてもらえることになりました.この連載もそれまで続けさせていただくことになりそうです.どうぞ見捨てずにお付き合いください.