大前氏 アップルは失敗繰り返しアンドロイドに負けると予測

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つまり、ジョブズがスマートフォンで勝者になりたいなら、iOSをアンドロイドと同じくオープンソース、あるいはそれに近い方式にして誰でも自由に使えるようにし、SIMカードもフリーにしてユーザーがキャリアを自由に選べるようにすべきなのである。
だが、ジョブズは絶対に自分の主張を曲げないので、今回もその頑固さが災いするかもしれない。言い換えれば、まだジョブズには「プラットフォーム」という概念がないと思われるので、そこが彼の死角であり、限界かもしれない。
※週刊ポスト2011年1月7日号


今から考えると信じられないかもしれないが、90年代の最初の頃、Apple Computerはもういつつぶれてもおかしくないと誰もが思っていたし、それを解決する唯一の方法が、ハードウエアを売るのをやめて、OSの専門会社になるべきだという方法だった。だから、ジョブズが戻ってきたとき、ハードウエアを独占して、OSをオープンにせず、Open Stepをベースに新しいOSを作るのだという話しを聞いたときには、僕を含めてほとんどの人が、相変わらずジョブズはきちがいで、ついにApple Computerは終わったと思ったのだ。けれども、その後のAppleはみなさんのご存じの通りで、ジョブズは神だったのだ。
あの頃、本当によくわかっていなかったことがいくつかある。まず、ハードウエアとソフトウエアはきちんとしたバランスがあり、どちらが優れていてどちらが優れていないというわけではなくて、どちらも重要であり、それぞれが高いレベルに到達していないといけないということであり、それから重要なのはそれらが密接に結びついて連携していないといけないということである。Appleはこの密接に結びつけるための仕組みをたくさん用意している。結びつけるために、ハードも(CPUさえ)用意して自分たちのソフトウエアを動かせるようにしているのだ。日本では、良いハードウエアを用意すれば、ソフトウエアは後からなんとでもなると思っている。教育でも、ハードウエア重視であり、製品を見てもそのように見える。
このハードウエアとソフトウエアのバランスの問題に関連することだが、ユーザの製品に対する印象やUIへのインタフェース感がますます重要になる。よくiOSのぬめぬめ感の話しがでてくるが、実はこういう人間と製品との間の細部へのこだわりと実現が重要だと思う。そしてその細部へのこだわりを実現可能とするのが、先にあげたハードウエアとソフトウエアのバランスなのだ。色、タッチ感、形状、それらは自由であってはいけないのである。
次に、破壊的なイノベーションも重要であるが、持続的なイノベーションの継続も重要であり、かつ、それを短期間で提示しなければならない。そして、それを実現できるのがソフトウエアである。どうしても、ハードウエアのイノベーションはソフトウエアのイノベーションと比較して時間がかかる。それはそれでしょうがないことだと思う。だからこそ、良いハードウエアを準備して、その魅力を十分に使えるようにするために、ソフトウエアを継続してバージョンアップすることが必要なのである。AppleはたとえばiPhoneやiPadのOS、そのアプリはMacやPCを接続してiTuneを利用することによってバージョンアップを用意にしている。ハードウエアの連携で、バージョンアップも可能だ。ユーザは常に最新のバージョンを利用できるのだ。Androidは、version 2.3が最新だが、僕の携帯はversion 1.6で、新発売のものさえ、version 2.1だ。しかも2.3へアップグレードできる予定さえない。バージョンアップという単語は簡単だけれども、実際に行うのは大変なのだ。
最後に、この20年で、ハードウエア、ソフトウエアの上にコンテンツがやってきた。売るべきものは、ハードウエアだけではなく、ソフトウエアのついたハードウエアだけではなく、コンテンツのついた良いソフトウエアで制御されたハードウエアだ。音楽、動画、テレビとジョブズはちゃくちゃくとコンテンツの量と領域を増やしている。魅力的な製品を作り、環境を提示することで、新たなコンテンツも作りだしている。iPadは電子書籍を読む装置ではなくて、さまざまなコンテンツとふれあうことができる装置なのである。iPadを使ってみて初めて気づいたが、本って実は、読むものなのか、ノートなのかわからない。読んだ気づきを欄外に書くことができるではないか、重要なところをマークすることもできる。本ってどんなコンテンツなんだろう。そう考えると、今進展しようしている電子書籍は、書籍や本ではない。だから、電子書籍リーダはだめなんだと思う。そして、コンテンツを意識したことって、本当に日本では遅れている。教育現場ではなおさらだし、製品からもそれが見えない。
日本の会社、特に自動車産業に照らし合わせてみるとおもしろい。これからの自動車がよりハイブリッド、高性能な制御、電気自動車へと向かうのであれば、車を制御するOSがとっても重要となる。それは、車会社が作らなければならない。他のベンダーが作ってしまうと、その仕様によってハードウエアが決定的になってしまう。OSに問題が発生した時に、またどうにかしたいときにすぐさまバージョンアップできるような環境にしておくべきだし、バージョンは最新のものが一つであるべきだ。オープンソースなソフトウエアは、誰もが使えて便利だし重要だが、ある閾値を超えるクオリティを超えるプロダクトになるのがいつなのかはわからないし、様々なバージョンが存在することになる。車のOSがバグがあるのに、古いままって考えられるだろうか?それから、自動車のコンテンツって何だ?
大前さんは、apple製品とandroid製品を持っていないのかもしれない。iPhoneでtwitterもfacebookも実際にはやっていないのかもしれない。やらなければ必要ないし、やってみないとわからない。やって始めてそこから抜け出せなくなるのだ。携帯だって未だに持ってなくて生活している人もいるだろう。インターネットもまったく必要としない人もいると思う。
とにかく、ここ20年、ずいぶんと変わった。そしていろんなところで大きく置いてけぼりをくらっている。でも、遅れているからといってどうといったことも無いという考え方もある。