人為脅迫的な官立教育にたいする警鐘

建学の精神と新島襄 からメモ

なかでも新島襄は森有礼文相の軍隊式の徳育教育に危機感をつのらせていたと思われる。それは「一国の青年を導いて偏僻の模型中に入れ、偏僻の人物を養成」している。その「人為脅迫的」官立教育から育つのは「薄志弱行の人」、オドオドと権威に弱い小者、型にはまったロボット人間――あの権力偏重の江戸時代とおなじタイプの人間の再生産――ではないか、と心配したのである。だからこそいま、私立大学が必要なのだ。「天真爛漫として、自由の内自(おのず)から秩序を得」る人間を育てる教育、青年の自主性や能動性を育てる自由教育は私学で行うしかない。「生徒の独自一己の気象を発揮し、自治自立の人民を養成するに至つては、これ私立大学特性の長所たるを信ぜずんばあらず」と私立大学同志社の使命を天下にうったえたのだった。