ローラの炎 長野 慶太 日本経済新聞出版社 2014-02-18 |
献本御礼
タイトルが地味な感じだが、サスペンス&読書好きな人であれば引き込まれて一気に読める作品間違いなしだ。
最初にネガティブなことを記そう。2点記す。この本を手にしたときに、大作過ぎて分厚い。本を読むことに慣れていない人だと読んでやろうというモチベーションが少し高く必要な分厚さだ。それから、話がディープで深い。ネイティブアメリカンのお話から、人の血とは何か、故郷が人生に与える影響までの話を含んでいるだけでなくて、アメリカにおける裁判のフィクションとしても深い。本作品でも二転三転するストーリー展開だが、シンプルな展開でないために、単純なストーリーを好む読者には難しいであろう。
一方で、本作品は、著者の特性が色濃く出ている。この作品はこの著者にしか書けない。絶対にだ。ネイティブアメリカンの話だけならばアメリカ人にもアメリカに住んでいる人であれば書けるであろう。しかしながら、それが日本とつながることで難しくなる。さらに、裁判の詳細な手続き、そこに基づく反転プロット。そこまでくるとこの著者にしかできない。さらに、この著者はロマンチストなので、そこも本作品におもしろい色づけをしている。最後のシーンなんて、本当に著者のロマンチシズムが満載されている。
いずれにしてもこの作品は、本好きには読み応えのある一冊ではなかろうか。途中からどきどきすること間違いなしだ。本作品で、著者は一つ別のステージにたどり着いたのではないかと感じる作品である。