構造力学の分野で大きな成果をあげていらっしゃった慶応大学の野口先生がこの8月に胃がんのためになくなられた.
日本機械学会の計算力学部門からニューズレターが送られてきて(pdf)いつもであれば,編集のお仕事をされている先生方には本当に申し訳ないのであるが,こんなにコストをかけて中身のある原稿を用意しても誰がどれほど読んでいるものなのかという疑念の気持ちがわくのであるが,今回はこのニューズレターがあってよかった.
後半に,野口先生への追悼の文集が掲載されているからである.これまで継続してニューズレターを作成された先生方,今回の文集に関わられた方に感謝したい.そして,この場で追悼のメッセージを記しておきたい.
突然の訃報に,残ってしまった気持ちの整理がつかず戸惑ってしまう.野口先生は覚えていらっしゃるかどうかわからないが,また覚えていていただいても真剣だったかどうかわからないのだが,廣安は並列処理やら,GAの開発やらをやっているので,お会いする度に,機会があれば共同研究ができいればという話になり,是非やりましょうということになっていた.なかなかチャンスはなかったのであるが,常にどこかにその機会がないかを探していたのは本当だ.この思いを処理できなくなってしまい,本当にくやしいし,残った気持ちのやり場がない.真剣さが足りなかったのだし,いつかできるであろうと油断した自分が悪い.
廣安が博士課程に入った頃に,慶応に行かれているはずなので,その頃に初めてお会いしたのだと思う.本当に使える設計手法にしたいなどと青いことを考えていたので,自然と大規模計算,非線形の構造解析ができなければと思っていた.しかしながら,あまりに難しくて現在にいたるまで思いだけになってしまっている.何とか並列処理をかじることはできるようになってきたわけだが,非線形などは野口先生に頼るかという感じだったのだな.
ようするに数学もきちんとできて,世界に通用するような研究ができる研究者はますます減っている.だれしもが,野口先生は日本の計算力学の次世代のリーダーだと思っていたに違いないし,それは間違いない.それでも突然お別れしなければならないのであるから,世の中は理不尽きわまりない.
残った気持ちをすぐに整理できるにはあまりに早い,早すぎだ.