県営カジノを立て直せ! 長野 慶太 小学館 2014-12-03 |
でました 長野慶太の新刊。
ちょっと装丁が半沢みたいですが、深さがまるきり違うので、本好きでないと挫折するかも。
こゆい こゆい。
カジノのというホットなトピックを、近未来であろう場所で展開させているのがすばらしい。
前作の「ローラの炎」のときには「著者は一つ別のステージにたどり着いたのではないかと感じる作品である。」と書いたが、それが間違っていなかった。
作者は、長年ラスベガスに在住していて、作家以外の別の仕事もしている。
他の作家と同一にすることができないこの特色を作品に盛り込むテクニックが昇華している。以下、3点。
その1:日本とアメリカ。
今回も、日本とアメリカの両方を知らなければ書けない話やストーリーが随所に見られる。
そもそもカジノはアメリカのものでアメリカのカルチャー満載で、日本にもってきたら本当にこんなカルチャーの衝突が起こるんだろうなあと予想させる。
その対立がおもしろいし、この作者でしか書き切れないのではなかろうか。
その2:カジノ情報
前作の「ローラの炎」では、ネイティブアメリカンや訴訟というのがテーマでストーリーもおもしろいのだが、内情や知識が豊富で得るものが多い。
今回は、ほっとな「カジノ」だ。
これは、ラスベガスに住んでいて、カジノの仕組みをよく理解している著者でしか書けない。
どうやって儲ける構造になっているのか、いかさまの手口はどんなのがあるのかといったカジノの裏側、詳細がよくわかる。
いやあ これはやばいでしょ。TVとかたくさん声がかかっちゃうんじゃないの?
私は、これを「博士論文」といっているのだが、作者本人の本当の博士論文と、ローラの炎と今回の作品で3作目の博士論文だ。
だからちょっと小説にしては、詰め込まれている知識が多すぎる。でも、近未来でありそうなシチュエーションにしたというのがにくい。
実は、もう一つ重要なテーマと知識があるんだけれど、ネタバレなので書かない。
その3:著者のロマンチシズム
前作の際にも「この著者はロマンチストなので、そこも本作品におもしろい色づけをしている」と書いたのだが、今回もまったく同様の感想。
上記の 知識の提示は非常に硬派なのに、男女関係は限りなく甘い。そこが面白い。
今回も 最後のシーンなんて、本当に著者のロマンチシズムが満載されている。
以上。