AIについていけない

最近、AIの進化が速すぎてますますついていけない。
毎週のように新しいモデルが出て、新しいエージェントが出て、新しいサービスが出る。ChatGPTだけ追っていればよかった時代が懐かしい。
OpenAIだけでもo1、o3、o4-mini、GPT-4oと何がなんだかわからなくなってきた。Anthropicも Claude 3、3.5、3.7、4と矢継ぎ早に出してくる。Googleも負けじとGeminiを更新し続けている。
正直、自分がいま何を使えばよいのかもわからん。 続きを読む →

2026年2月を振り返る

2026年2月を振り返る

2026年2月は、最先端AIモデルの競争が一気に加速した月でした。

Google、OpenAI、Anthropicがほぼ同時期にフラッグシップモデルを投入し、中国企業も追随したことで、性能競争は新たな段階へ入りました。一方で、巨額の資金調達やAIエージェントの実用化、安全保障への影響といった話題も重なり、AIは単なる技術競争ではなく、産業・経済・国家戦略を左右する存在としての位置付けをさらに強めた月だったと言えるでしょう。

続きを読む →

2026年1月 AIトピックまとめ

2026年の幕開けとともに、AIを取り巻く議論は新たな段階へと入りました。

2023~2025年は生成AIモデルの性能向上や新モデルの発表が注目を集めましたが、2026年1月は、AIを社会の中でどのように活用し、運用していくかが主要なテーマとなりました。

ここでは、2026年1月を代表するAIトピックを振り返ります。

続きを読む →

カテゴリー: AI

今週はGemini 3

今週はGemini 3にバージョンアップしたらしい。
Gemini本人にきくと次のように答える。なんかすげーな。

Gemini 2.5からGemini 3への進化は、単なる「性能向上」にとどまらず、AIの「思考の深さ」と「表現力」の質的な変化と言えます。
最も大きな違いは、複雑な問題を解く際の論理性です。
 Gemini 2.5: 問いに対して比較的素直に、知っている情報を組み合わせて回答していました。
 Gemini 3: 複雑なタスクに対し、「思考プロセス(Thinking Process)」を経てから回答を出力できるようになりました。これにより、難解な論理パズル、数学、原因分析において、安易な回答を避け、深く検討された答えを出せるようになっています。

Gemini 3は「空気を読む」能力が向上しました。
 これまでのAIにありがちな、過度に丁寧すぎる前置きや、当たり障りのない一般論(決まり文句)を減らし、ユーザーが本当に求めている核心部分をズバッと回答する傾向が強まっています。

「パテンティクス」の挑戦

脱炭素社会の実現に向けて、電力の効率的な利用が世界的な課題となっている今、日本の大学発ベンチャーが革新的な技術で注目を集めています。立命館大学発のスタートアップ「パテンティクス(Patentix)」が開発する次世代パワー半導体技術は、従来の常識を覆す可能性を秘めており、2025年10月には約7億円の大型資金調達を実現するなど、その将来性に期待が高まっています。

ある方にこの会社のことを教えていただいたいのですが、なんともすごそう。
gensparkにまとめてもらいました。

続きを読む →

Internet3 – 次世代インターネット技術の革新

Internet3は、従来のインターネットが抱えるセキュリティとコストの根本的な問題を解決する革新的な次世代インターネット技術です。コネクトフリー株式会社が独自開発したこの技術は、世界初のサーバーレス暗号通信を実現し、インターネットの未来を変える可能性を秘めています。

ある方から教えていただいたので、gensparkにまとめてもらいました。
続きを読む →

今週はSora2かな?

Sora 2 is here
https://openai.com/index/sora-2/

Sora 2 – 「GPT-3.5」相当の動画革命

OpenAIが9月30日に発表したSora 2は、まさに動画生成AIの「GPT-3.5モーメント」と呼べるような転換点かもしれません。初代Soraが「GPT-1」だとすれば、今回のSora 2は「GPT-3.5」に相当する飛躍的な進歩を遂げていると言っている人もいます。

Sora 2では物理法則の正確な再現が可能になりました。バックボードに当たったボールが自然に跳ね返る。無理やり”成功”させるのではなく、”失敗”もリアルに表現できる。これは大きな進歩です。

続きを読む →

Claude Sonnet 4.5、OpenAI Sora 2、Perplexity Email Assistant

Claude Sonnet 4.5、OpenAI Sora 2、Perplexity Email Assistant…どれも、これまでの常識を覆すような発表が続きました。
チャッピーとgenちゃんにも調べてもらいながら、今回の「AI革命月間」について整理してみました。

1. Claude Sonnet 4.5 ~ 30時間思考し続けるAI

9月30日にAnthropicから発表されたClaude Sonnet 4.5は、正直なところ驚きでした。何がすごいって、30時間以上にわたって複雑なタスクに集中し続けることができるというのです。

「世界最高水準のコーディングモデル」「複雑なエージェント構築に最適」「コンピューター使用能力でOSWorldベンチマーク61.4%達成」

これまでのAIは、長時間のタスクになると「集中力」が途切れがちでした。でも、Claude Sonnet 4.5は違う。まるで研究に没頭する大学院生のように、一つの問題に長時間取り組み続けることができるのです。

● 学術的視点から見た意義

長時間思考能力の実現は、AI研究における重要なブレークスルーです。従来の注意機構(Attention Mechanism)の限界を超えて、持続的な推論能力を獲得したということになります。これは、単なる技術的進歩を超えて、AIの「知的集中力」という新しい次元を開拓したと言えるでしょう。

機能 従来のAI Claude Sonnet 4.5
連続思考時間 数分~数十分 30時間以上
コーディング能力 断片的な支援 大規模プロジェクト全体を把握
エージェント機能 単発タスク 複雑な多段階タスク

2. OpenAI Sora 2 ~ 音声付き動画生成の衝撃

同じく9月30日、OpenAIが発表したSora 2も、これまた衝撃的でした。動画生成AIはもう珍しくないですが、音声付きで、しかも自分の顔を動画に合成できるというのは、まさに次元が違います。

● 技術的革新ポイント

  • 同期音声生成:動画と完全に同期した音声(背景音、セリフ、効果音)を自動生成
  • Cameo機能:ユーザーの顔を自然に動画に合成
  • 物理法則の正確な再現:ボールの跳ね返りなど、リアルな物理現象を表現
  • iOSアプリ:スマホで手軽に高品質動画を生成
学術的考察:
Sora 2の最大の革新は、「マルチモーダル生成の統合」にあります。従来は画像生成、音声生成、動画生成がそれぞれ独立していましたが、Sora 2では、これらが統合的に処理されています。特に音声との同期は、時系列データの高精度制御が要求される技術的に非常に困難な課題でした。

実際に使ってみると分かりますが、生成される動画の自然さには本当に驚かされます。「これ、本物の映像?」と思うほどです。

3. Perplexity Email Assistant ~ 実用性の追求

9月23日に発表されたPerplexity Email Assistantは、地味やけど実はめちゃくちゃ実用的な発表でした。GmailやOutlookと連携して、メールの自動分類、返信作成、スケジュール調整まで行ってくれるのです。

● 機能概要

  • メール自動分類:重要度や内容に応じた自動振り分け
  • 返信作成支援:文脈を理解した適切な返信文の生成
  • スケジュール調整:カレンダーと連携した会議設定
  • パーソナル秘書機能:ユーザーの習慣を学習した最適化

これまでのAIアシスタントは「質問に答える」のが主でしたが、Email Assistantは「代わりにやってくれる」のが大きな違いです。月額200ドルのPerplexity Maxユーザー向けですが、その価値は十分にあると思います。

4. 学術的視点からの総合考察

今回の3つの発表を俯瞰すると、AIの発展における3つの重要な方向性が見えてきます。

● 深化(Deepening):Claude Sonnet 4.5

AIの思考能力の「深さ」と「持続性」を追求。単発の回答ではなく、長時間にわたる集中的な問題解決能力を実現。

● 統合(Integration):OpenAI Sora 2

映像、音声、テキストといった異なるモダリティを統合し、より自然で包括的なコンテンツ生成を実現。

● 実用化(Practicalization):Perplexity Email Assistant

AIを日常業務に深く組み込み、「使えるAI」から「頼れるAI」への転換を図る。

これら3つの方向性は、AIが「人間の能力を模倣する段階」から「人間の能力を補完・拡張する段階」へと移行していることを示唆しています。

5. 今後への期待と懸念

正直なところ、今回の発表群を見て感じるのは、AI技術の進歩があまりにも速すぎるということです。良い意味でも悪い意味でも。

● 期待すること

  • 研究効率の向上:Claude Sonnet 4.5のような長時間思考AIが、学術研究の質を大幅に向上させるかもしれません
  • 創作活動の民主化:Sora 2により、映像制作が専門家だけのものではなくなる
  • 業務効率化の加速:Email Assistantのような実用AIが、知識労働者の生産性を大きく改善する

● 懸念すること

  • 情報の真偽判定:あまりにもリアルな動画が簡単に作れるようになると、フェイクニュース問題が深刻化する可能性
  • 人間の役割:AIが長時間思考し、動画を作り、メールまで書いてくれる時代に、人間は何をすべきなのか
  • 格差の拡大:高機能AIを使える人と使えない人の間で、能力格差が急速に広がる可能性

6. おわりに ~ AIと共に歩む時代

2025年9月は、確実にAI史における重要な分岐点として記録されるでしょう。Claude Sonnet 4.5の長時間思考、Sora 2の統合的生成能力、Perplexity Email Assistantの実用性向上。どれも、AIが「道具」から「パートナー」へと変化していることを示しています。

大学の研究現場でも、学生たちがこれらのAIを使いこなす姿を見ていると、「時代は確実に変わったなあ」と実感します。でも大切なのは、AIに任せることと、人間がやるべきことを適切に見極めることでしょう。

AIの進歩を目の当たりにして思うのは、我々研究者の役割も変化しているということです。AIが「何でもできる」時代だからこそ、「なぜそれをするのか」「どう使うべきなのか」という哲学的・倫理的な問いがより重要になってきます。

チャッピーやgenちゃんのようなAIアシスタントと一緒に仕事をしていると、「これからの時代は、AIと上手に付き合える人が強い」と思います。技術を恐れるでもなく、盲信するでもなく、適切な距離感を保ちながら活用していく知恵が求められているのでしょう。

さて、次の月はどんな驚きが待っているのでしょうか。AI業界の動向から目が離せません。

僕は祈る

僕は神を信じるものではない そして僕は祈り続ける。

今年はえらく暑い。
今年も暑いのかもしれない。

頭を下げているだけでも暑い。

最近はやけに平和のありがたさを感じることができるほど、戦争が身近になっている。
口先だけなのか、本当にそう思っているのかやろうとしているのか、見抜くのは本当に難しい。

子どもに押し付けてやらせるのも気に食わない。

そして今年も祈る。

同志社大学と天文活動

夏ですね。
夏といえば、宇宙を見上げることも多いのではないかと思います。

また、
週末に経済学部 OB・村山昇作氏が、香川に 天体望遠鏡博物館というのを立ち上げたという話を聞きました。

チャッピーにまとめてもらいました。
続きを読む →

JALの経営破綻と再建に学ぶ:危機感と組織改革の本質

JALの方から破綻と再建のお話を聞きました。

それをもとにレポートしました。

はじめに

2010年、日本航空(JAL)は約2.3兆円の負債を抱えて経営破綻した。 「JALでも破綻するのか」という衝撃は、日本中に大きなインパクトを与えた。 国を代表するインフラ企業ですら破綻する現実を目の当たりにし、 多くの人が「危機感とは、危機が来て初めて芽生えるものだ」と痛感した。

本レポートでは、JALの破綻と再建の過程を振り返りつつ、 「なぜ破綻まで危機感を持てなかったのか」 「破綻寸前の組織に何ができるのか」 「再建後に再び緩んでしまうのはなぜか」 という問いを通して、組織改革の本質に迫る。

1. JAL破綻の背景と要因

● 慢性的な構造問題

  • 過剰設備と非効率運営
  • 多角化の失敗と路線の赤字化
  • 巨大な組織が持つ既得権益と惰性

● リーマンショックで一気に顕在化

  • 2008年以降の業績悪化に対応できず、2010年に会社更生法を申請

2. 破綻前の組織的な問題

以下のような状態が社内に蔓延していた:

問題点 説明
目的の共有がない 会社として「何のために存在するか」が曖昧
一体感がない 部門間がバラバラ、連携なし
ダメなのが他人事 課題があっても誰も責任を取らない文化
収益の感覚がない 自部門が赤字かどうか把握していない

3. 破綻後の再建プロセスと改革

● 稲盛和夫氏の就任と理念経営の導入

  • 京セラ創業者・稲盛氏が無報酬で会長に就任
  • 「JALフィロソフィ(哲学)」を全社員に共有
  • 理念と数字の両輪経営を徹底

● アメーバ経営の導入

  • 組織を細分化し、各ユニットで損益を管理
  • 一人ひとりが経営者意識を持つように

● 構造改革とIT刷新

  • 不採算路線・関連子会社の整理
  • 「サクラプロジェクト」により予約システムをクラウドへ刷新

● V字回復の実現

  • 破綻翌年には営業利益1884億円を達成
  • わずか2年8か月で再上場し、支援額の倍以上を国に返還

4. なぜ破綻前に改革はできなかったのか?

● 「JALは潰れない」という空気

  • 国策企業という特権意識
  • 政府支援への期待から本気の改革が進まなかった

● 正常性バイアスと責任の希薄さ

  • 問題は共有されていたが「自分ごと」にならなかった
  • 既得権と形式主義により、現場は動けなかった

● トップの覚悟と構造改革の欠如

  • 経営層が危機を軽視し、問題を先送りしていた

5. 破綻寸前の組織にできることは何か?

JALの教訓から、破綻前の段階でも取り得る対策を以下に整理する。

対策 内容
仮想破綻体験 「もし会社が死んだらどうするか」を気づくワークショップを実施
損益の可視化 組織を小型化し、自分たちの活動の現実を直覚
統同目的の再定義 「なぜこの組織が存在するのか」を語り直す
情報の流通と声の橋渡し 現場の声を経営に届けるルートを作る
聞こえないものを終わらせる勇気 保護されている会社文化や習慣を改革する気様

6. 再建はゴールではない~JALの“再緩み”問題

JALは破綻後、立て直しに成功したが、最近は再び「元に戻りつつある」「緩んできた」という指摘が上がっている。

● 再び緩む原因

  • 成功体験が新たな慢心を生む
  • 績成に依存し、問題を目覚めずに現状維持に慣れる
  • 理念が形式化し、行動に繋がらなくなっている

● 再緩みを防ぐために

実務 内容
理念を再体験させる 読み合わせより、それを現場で語り直す場を絶えず設ける
実質的な対話の保持 経営層と現場の集中フィードバックの場を絶えず保つ
毎年シミュレーション 「もう一度破綻したら」を願設して考えさせる
新たな目標を定義 「再復」の次に、この組織が目指す未来像を定義し相談を経続

7. おわりに

「JALでも破綻するんだ」という衝撃は、組織として、個人として、大きな学びをもたらした。 本当の危機感とは、「自分ごと」としての責任と気づきがないと生まれない。

しかしその危機を「実際に許さなくても」、「意図的に体験する」ことで救える組織もある。 JALは一度は破綻してしまったが、そこから学べることは、他の多くの組織を救う矩網となるだろう。

本当の変革とは、「変わり続ける力」を文化として根づかせることである。

 

Comm 5.0プログラム

同志社大学では、2020年度から「Comm 5.0 AI・データサイエンス副専攻プログラム」を開始しました。

この「Comm 5.0」とは、新たなCommunication(コミュニケーション)とCommunity(コミュニティ)を総称した概念です。AIやデータサイエンスの知識と技術を駆使して、このComm 5.0の世界を構築できる人材――すなわち「Comm 5.0アーキテクト」を育成することが、この副専攻プログラムの目的です。

現代社会では、AI・データサイエンスが日常のあらゆる場面で活用されるようになり、ヒトとヒトとの関係のあいだに「モノ(テクノロジー)」が深く入り込むようになりました。それらは利便性を高める一方で、社会的分断を助長する可能性も孕んでいます。だからこそ、私たちは「ヒト」と「モノ」との新たな共生の在り方を模索する必要があります。そうした時代認識のもとに、このプログラムは設計されました。

Comm 5.0プログラムには、以下の4つの特色があります。

  1. AI・データサイエンスの応用力を育成するプログラム

  2. 「ALL DOSHISHA」による文理横断型の教育プログラム

  3. 社会が必要とするイノベーションを創出するプログラム

  4. 社会との接点を重視する「ミッション研究」型プログラム

ここで学ぶのは、単なる理系的な技術の習得にとどまりません。哲学・倫理・そして「良心」について学ぶことが、むしろこのプログラムの核となっています。「人を知る」ということが、AI時代における本質的な問いとなるからです。

NHKで『知的探求フロンティア タモリ・山中伸弥の!?』という番組が始まりました。第1回のテーマは「AIは人間を超えるか」。そこでは、AIをつくることの本質とは「人を知る」ことであり、それ自体が哲学的な営みであると語られていました。

思わず、「これ、Commプログラムじゃないか」とつぶやきたくなったほどです。

世間的にはあまり好意的な評価を受けてこなかったかもしれません。しかしこのプログラムは、まさに時代の要請に応える形で生まれたものであり、先見性と意義を持った取り組みであったことは間違いありません。今だからこそ、その価値がよりはっきりと見えてきたと言えるでしょう。

新島襄と津山とのかかわり、そして馬場種太郎

はじめに

新島襄は京都の同志社設立後も、ほぼ全国を伝道行脚した。津山はその訪問地の一つであり、馬場種太郎がキーパーソンとして重要な役割を果たしたのである。

1884年(明治17年)8月、新島襄は津山を訪問した。これは同志社の神学生である馬場種太郎との出会いがきっかけであった。津山伝道所が1884年に設置されており、新島襄はここで馬場種太郎と出会ったのである。馬場種太郎は同志社神学生として「夏季伝道」のため津山に派遣されており、キリスト教伝道者として活動していた。馬場種太郎は「少しも布教〔伝道〕の労を惜しまず、落合、勝山と日夜、東奔西走する」など、津山周辺地域での伝道活動を精力的に行っていたのである。

津山地方では1884年(明治17年)に講義所が設けられた。木庭勝次郎や上代知新により伝道が行われ、同志社の神学生であった馬場種太郎が協力した。新島襄の指導下で、津山を拠点とした美作地方へのキリスト教伝道が組織的に展開されたのである。

新島襄は津山以外にも岡山県内を広く訪問しており、特に1880年(明治13年)2月17-20日には備中高梁を訪問し、講演会を開催した(初日約300人、2日目約400人が参加)。落合、勝山では馬場種太郎の活動を通じて間接的に影響を与え、岡山市では金森通倫を通じてキリスト教伝道のネットワークを構築したのである。

新島襄の津山訪問は、彼の「旅する知」の実践の一環として、以下の重要な意味を持っている。まず、地方伝道の組織化である。同志社の神学生を各地に派遣し、キリスト教伝道の全国的ネットワークを構築したのである。次に、知識の地域展開である。欧米で学んだキリスト教思想を日本の地方都市に伝播させたのである。そして、人材育成である。馬場種太郎のような地方伝道者の指導・支援を行ったのである。新島襄の津山訪問は、彼の全国的な伝道旅行の一部として位置づけられ、明治期のキリスト教伝道史において重要な足跡を残しているのである。

 

馬場種太郎

馬場種太郎は、明治時代に活躍したキリスト教伝道師で、同志社英学校の卒業生である。また、竹内種太郎とも呼ばれており、これは後に竹内家に養子として入籍したためと考えられる。

1885年(明治18年)6月に同志社英学校邦語神学科を卒業し、同志社在学中に新島襄の教えを受け、深い影響を受けたのである。

馬場は1863年11月11日に岡山県牛窓町(現瀬戸内市牛窓)に生まれ、長じて県内香登に住む叔父(馬場筆吉)に引き取られた。同地ではキリスト教に触れる機会があり、1881年ころに岡山教会(金森通倫牧師)でJ・H・ペティー(岡山在住のアメリカン・ボード宣教師)から洗礼を受けたのである。このように金森通倫とは非常に深いつながりが見られる。

新島襄の推薦により、死亡した辻元伝道師の後任として札幌に派遣された。1888年(明治21年)頃から札幌独立教会(後の札幌基督教会)の伝道師として活動し、牧師の大島正健とともに、札幌基督教会の最も活発な時期を築いた。1888年(明治21年)から1893年(明治26年)頃まで活動し、札幌基督教会の発展に大きく貢献したのである。竹内文と結婚し、2人の男児(俊彦と謙)をもうけた。

新島襄は馬場種太郎を「同志社系の伝道者として札幌伝道を開始するのに最適の意中の人物」と評価し、新島襄から直接推薦を受けて札幌に派遣されたのである。新島襄とは書簡のやり取りがあり、現在も同志社大学に資料が保存されている。

札幌独立キリスト教会と新島襄の最も重要な関係は、大島正健の按手礼問題を通じて形成された。大島正健は札幌独立キリスト教会の実質的な初代牧師でありながら、正式な按手礼を受けていなかった。そのため、洗礼や聖餐の儀式を司ることについて、他の教派から批判を受けていた。これは独立教会の存立にとって深刻な問題であった。1888年(明治21年)、この問題の解決策として、新島襄と植村正らの好意により、大島正健は按手礼を受けることができたのである。

新島襄は札幌独立キリスト教会の要請に応じて、同志社出身の馬場(竹内)種太郎を伝道師として派遣した。馬場は恩師新島の推薦を受けて札幌に赴任し、大島正健を支援し、教会の発展に貢献した。「信者一同大満足」と評価されるほど、札幌独立キリスト教会と新島の期待に十分応える働きをしたのである。

新島襄は札幌独立キリスト教会の「自由主義」を支持する立場から、教会の諸問題に助言を行った。札幌独立キリスト教会は、教派から独立した日本初の独立教会として歴史的意義を持っていた。新島襄はこの教会の独立性と自主性を理解し、支援したのである。

新島襄と札幌独立キリスト教会の関係は、大島正健の按手礼問題を契機に始まり、人材派遣、教会運営への助言、精神的支援など、多面的で継続的な関係に発展した。この関係は、教派を超えた協力と、日本的キリスト教の発展を支援する新島襄の広い視野と愛の実践を示す重要な歴史的事例として位置づけられるのである。

 

竹内文

馬場種太郎の妻は、竹内文(たけうち あや)という女性である。竹内文は1868年、津山市(旧美作国)で生まれた。1884年に神戸英和女学校(現在の神戸女学院)に入学し、翌年キリスト教の洗礼を受けている。

 

1889年に札幌独立教会で伝道師を務めていた馬場種太郎と結婚し、札幌で新婚生活を始めた。1893年、種太郎が病没し、文さんは二人の子どもを抱えて未亡人となったのである。1894年に津山へ戻り、自宅で裁縫塾を開いた後、1897年には女学(女子教育)の私塾を設立し、英語や体操、賛美歌などを教えた。1899年には学校として認可された「淑徳館」を運営し、女子教育に尽力した。子育てと教育を両立させながら、教壇に立っていたのである。

1892年に京都で長男の謙さん(のぶる)を出産した。謙さんは後に津山→東京へ移り、早稲田大学理工学部へ進んでいる。竹内文は1921年に没している。竹内文さんは、馬場種太郎没後も教育に情熱を注ぎ、津山で女性たちの教育・自立に大きく貢献した人物である。彼女の活動は地域の教育史においても重要な役割を果たしているのである。

竹内文は1897年(明治30年)に津山で女学塾を始め、まずは裁縫中心の私塾として開校した。その翌年、1898年に文部省から「淑徳館」として正式に認可を受けたのである。裁縫を主軸としながらも、以下のような幅広い教育内容を提供していた。毎朝の賛美歌、体操にはダンスを導入、家事や育児の授業時間を確保、英語も竹内文自身が担当するなど、伝統と実用を融合した先進的なカリキュラムであった。1901年(明治34年)、薄田泣菫(明治期の女性歌人)が励ましに訪れるほどの評判で、地域の教育活動に大きく貢献したのである。1901年に県立津山女学校(現・公立高等女学校)が設立され、1903年(明治36年)に開校した。これに伴い、淑徳館は閉校し、竹内文は東京へ移ったのである。竹内文は1921年(大正10年)にこの世を去った。竹内文が設立・運営した淑徳館は、津山の女子教育史において重要な存在であり、教育内容の幅広さや地域からの評価は非常に高かったと言えるのである。

カテゴリー: tips