日本IBM「ThinkPad X40」開発者インタビュー

PC Watch
IBM 特にXシリーズの利用者にはハードユーザーが多いと感じる.
特に,外でも,移動中でも仕事をしなければならない状態の人が多く利用しているのではなかろうか.
その人たちに共通項としては
– 頑丈であること ロバストであること
– できればファイルを全部 もってあるきたい
– できれば軽い
という順番の要求ではなかろうか.
そういう意味ではX40の出現は論議をかもし出す.
– 軽さを強く求めていた人には待望の1機種
– CFカードのスロットがなくなるのが痛い 人もいるはず.とくにネットワーク系で利用していた人たち
– HDDが小さい
などなど

2003年11月 ICT主要ニュース分析レポート

I. エグゼクティブサマリー

 

2003年11月は、情報通信技術(ICT)業界において、ブロードバンドの普及加速、モバイル技術の革新、サイバーセキュリティ脅威の深刻化と法的対応、オープンソースソフトウェアの台頭、そして新たなビジネスモデルの模索が同時に進行した、極めてダイナミックな月であったと言えます。特に、P2Pファイル共有ソフトウェア「Winny」に関する初の逮捕事例は、デジタルコンテンツの著作権と利用を巡る社会的な議論を大きく喚起しました 1

この時期のICT業界は、単なる技術進化に留まらず、社会インフラとしてのインターネットの成熟と、それに伴う新たな課題への対応が求められる転換点にありました。2003年11月における複数の動向を総合すると、ネットワークインフラの高速化、モバイルデバイスの多機能化、そして多様なデジタルサービスの創出が同時多発的に進展しており、これはインターネットがニッチなツールから社会基盤へと移行する過渡期であったことを明確に示唆しています 2。この多角的な発展は、その後のスマートフォン普及、クラウドコンピューティングの台頭、そしてデジタル経済の本格化に向けた強固な基盤を築いたと言えるでしょう。

 

II. インターネットとブロードバンドの進化

 

2003年11月は、ブロードバンドサービスの高速化と普及が顕著に進んだ月であり、通信インフラが社会の基盤として確立されつつある状況が明確に示されました。

 

ブロードバンド接続サービスの拡大と高速化の進展

 

この時期、主要なインターネットサービスプロバイダ(ISP)間では、ADSL技術を用いた高速化競争が激化していました。NTT東日本は「フレッツ・ADSL モアII」を下り最大40Mbpsに高速化すると発表し、ADSL技術の限界に迫る速度を提供することで、ユーザーの高速通信へのニーズに応えようとしました 2。これに追随するように、Yahoo! BBも下り最大45Mbpsの「Yahoo! BB 45M」を提供開始し、So-netやOCNも同様に40MbpsクラスのADSLプランを発表するなど、主要ISP間での速度競争が激化していたことが確認されます 2

市場全体の成長も継続しており、DSL加入者数は950万回線を突破しました 2。特にYahoo! BBは、2003年10月も月間15万件台の増加数を維持し、ブロードバンド市場の牽引役としての存在感を示しました 2

光ファイバ(FTTH)サービスはまだADSLほどの普及には至っていませんでしたが、次世代インフラへの投資も着実に進んでいました。USENが光ファイバサービスの取り付け件数で10月末までに10万件を突破したことや、TEPCOひかりが上下最大30Mbpsの「5GHz無線タイプ」を12月1日より開始すると発表したことは、将来的な高速・大容量通信への移行を見据えた動きとして注目されます 2

 

IP電話サービスの普及と相互接続の動向

 

ブロードバンドの普及と並行して、IP電話サービスの浸透も加速しました。iTSCOMがIP電話サービス「かっとびトーク」を2004年1月に開始すると発表するなど、IP電話が一般家庭にも浸透しつつあることが示されました 2。より重要な動きとして、日本テレコムは2003年12月1日よりIP電話と携帯電話・PHSの相互接続を実施すると発表し、固定通信とモバイル通信の垣根を越えた通信融合に向けた重要な一歩を踏み出しました 2

@niftyやKDDIなどの主要プロバイダもIP電話サービスを拡充し、サービスの多様化と競争が加速しました 2。また、パワードコムとフュージョンが電話事業の統合に向けて検討を開始したことは、IP電話市場における業界再編の動きを示唆しており、市場の競争激化と効率化への志向が読み取れます 2

 

公衆無線LANサービスの展開と実験事例

 

公衆無線LANサービスも、利便性向上のための重要な要素として注目されました。MzoneとJR東日本が駅での無線LAN実験とローミングを開始したことは、公共空間でのインターネット接続の利便性向上に向けた初期の取り組みであり、後のWi-Fiスポットの普及を予見させるものでした 2

 

競争激化と市場の成熟

 

2003年11月におけるブロードバンド速度競争の激化とIP電話サービスの急速な普及は、日本のインターネット市場が初期の成長段階から成熟期へと移行しつつあったことを示しています。複数の主要ISPが同時期にADSLの最高速度を更新する発表を行い、IP電話サービスが各社から提供され、さらに携帯電話・PHSとの相互接続が開始されるなど、機能統合が進展していました 2。このような動きは、単に技術的な進歩だけでなく、市場における顧客獲得競争が激化し、サービスプロバイダが差別化のために「速度」と「統合された通信ソリューション」を重視し始めたことを示唆します。これは、市場が初期の「接続性」から「利便性」と「総合性」へと価値の軸を移している証拠であり、その後の通信料金の低価格化、サービスの多様化、そして固定電話からIP電話への移行を加速させる要因となりました。

 

通信サービスの融合の兆候

 

IP電話と携帯電話の相互接続、およびNTTドコモによるFOMAと無線LANのデュアル端末試作機の開発は、固定通信と移動体通信の境界が曖昧になり始め、将来的な通信サービスの融合(コンバージェンス)が予見された時期であったことを示しています 2。これらの動きは、異なる通信インフラ(固定電話網、携帯電話網、無線LAN)を統合し、ユーザーが場所やデバイスを意識せずにシームレスに通信できる環境を目指す初期の試みでした。これは、将来的にスマートフォンがWi-Fiとセルラーネットワークをシームレスに切り替える機能や、VoIPアプリが普及する基盤となる、通信技術の「融合」という大きなトレンドの萌芽であり、後のユニファイドコミュニケーションや、データ通信が音声通信を凌駕するモバイルインターネット時代の到来を予感させるものでした。

以下に、2003年11月における主要なブロードバンドサービスの動向を示します。

 

2003年11月 主要ブロードバンドサービス動向

 

サービス名 提供事業者 最大下り速度 主要な発表内容 (2003年11月) 加入者数 (2003年10月末時点)
フレッツ・ADSL モアII NTT東日本 40Mbps 下り最大40Mbpsに高速化 記載なし
Yahoo! BB 45M ソフトバンクBB 45Mbps 提供開始 月間15万件台の増加を維持
So-net ADSL 40M So-net 40Mbps 提供開始 記載なし
OCN ADSL 40M OCN 40Mbps 提供開始 記載なし
5GHz無線タイプ TEPCOひかり 30Mbps 12月1日より提供開始 記載なし
光ファイバサービス USEN 記載なし 取り付け件数10万件突破 10万件突破
DSL全体 各ISP 記載なし 加入者数950万回線突破 950万回線突破
ブロードバンド全体 各ISP 記載なし 加入者数1,272万回線突破 1,272万回線突破

 

III. モバイルテクノロジーの革新

 

2003年11月は、携帯電話が単なる通話ツールから多機能な情報端末へと進化する過程が加速した時期であり、その後のモバイル市場の方向性を決定づける重要な動きが見られました。

 

カメラ付き携帯電話の機能向上とメガピクセル化のトレンド

 

この時期の携帯電話市場の最も顕著なトレンドの一つは、カメラ機能の飛躍的な向上でした。NTTドコモは「世界初、オートフォーカス機能搭載カメラ付き携帯電話、ムーバ(R)「P505iS」を発売」し、携帯電話のカメラが静止画撮影においてより高品質な体験を提供し始めたことを示しました 3。実際に、2003年全体が「メガピクセルカメラの年だった」と評されるように、カメラの高画素化は携帯電話の主要な差別化要因となっていました 7。この高画素化の波は、コンパクトデジタルカメラ市場にも波及しており、富士フイルムが「12.3メガ記録」の「FinePix F610」を発表するなど、高画素競争が激化していました 1

 

FOMA(3G)サービスの展開と新端末の発売状況

 

NTTドコモの第3世代移動通信システム「FOMA」は、その利用シーンを拡大し続けていました。コンパクトフラッシュ(R)カード型FOMA(R)「P2402」の発売は、FOMAがPCとの連携を強化し、モバイルデータ通信の利便性を高める方向性を示唆していました 3。また、文化放送とNTTドコモの間で、FOMAを使った中継放送業務の効率化に向けた高品位な音声による中継システムの共同開発が開始され、3Gネットワークの新たな業務用応用が模索されていました 3。さらに、FOMAと無線LANのデュアル携帯電話端末の試作機開発は、高速データ通信の多様な利用形態を模索する動きの表れであり、将来的な通信のシームレス化を見据えたものでした 3

 

iモードの国際展開と新たなモバイルサービスの提供

 

NTTドコモは、日本で成功を収めたモバイルインターネットサービス「iモード」の海外展開を積極的に推進していました。イタリアのWind Telecomunicazioni S.p.A.、ギリシャのCOSMOTE社と相次いでiモードライセンス契約を締結したことは、iモードのビジネスモデルとエコシステムをグローバルに拡大しようとする強い意欲の表れでした 3

国内では、迷惑メール対策として「ドメイン指定受信」機能の拡充や「iモードメール大量送信者からのメール受信制限」機能の提供が開始され、モバイル環境におけるセキュリティと利便性の向上が図られました 3。また、J-フォンがモバイルインターネットサービス「J-スカイ」を「ボーダフォンライブ!」に変更するなど、国際的なブランド統一とサービス連携の動きも見られました 2

 

市場成長とヒット商品

 

2003年11月までの携帯電話の出荷量は13カ月連続で前年同月を超え、市場が活況を呈していたことが示されています 7。特に「505i」シリーズがヒット商品となったことが報じられており、これらの高機能端末が市場成長を牽引していたことが伺えます 7

 

フィーチャーフォン機能競争の頂点と次世代への移行

 

2003年11月は、携帯電話が「メガピクセルカメラ」を搭載するなどの機能競争のピークを迎えていた時期であり、後のスマートフォン時代への布石となるデュアルモード端末(FOMA/WLAN)の開発も進められていました 3。これは、携帯電話が単なる音声通信デバイスから、多機能なモバイル情報端末へと本格的に進化する転換点であったことを示唆します。具体的には、「世界初、オートフォーカス機能搭載カメラ付き携帯電話」の登場や「メガピクセルカメラの年」という評価は、カメラ機能が携帯電話の主要な差別化要因であり、ユーザー体験を豊かにする上で極めて重要であったことを示しています。同時に、FOMAと無線LANのデュアル端末試作機の開発は、3Gネットワークだけでなく、より高速なローカル無線技術との連携を模索しており、将来的なデータ通信のシームレス化を見据えていました。これらの動きは、携帯電話がハードウェアの機能向上によって「できること」を増やし、ユーザー体験をリッチにすることで、次世代のモバイルコンピューティングデバイス(スマートフォン)へと進化するための技術的・市場的準備を進めていたことを示唆するものです。この時期の機能競争は、後にアップルやGoogleが参入するスマートフォン市場の土壌を耕し、モバイルデバイスがPCに匹敵する、あるいはそれを超える情報処理能力を持つようになる未来を予見させました。

 

日本のモバイルモデルの国際展開

 

NTTドコモのiモードのイタリア、ギリシャへの積極的な国際展開は、当時の日本のモバイルインターネットモデルが世界市場で通用するという強い自信と、そのエコシステムをグローバルに拡大しようとする戦略的な試みであったことを示しています 3。iモードは日本で圧倒的な成功を収めており、ドコモはその成功モデル(コンテンツプロバイダとの連携、課金システムなど)を海外に輸出し、グローバルスタンダードを確立しようとしていました。これは単なる技術輸出ではなく、ビジネスモデルとエコシステムの輸出戦略です。この試みは、結果的に欧米のモバイル市場の多様性やオープンなプラットフォームの台頭によって限定的な成功に終わりますが、当時の日本のモバイル技術の先進性と、その国際的な影響力への期待を示す重要な事例であったと言えます。

以下に、2003年11月における主要な携帯電話関連の発表と市場動向を示します。

 

2003年11月 主要携帯電話関連発表と市場動向

 

発表日 内容 事業者 特記事項
11月5日 iモードメール大量送信者からのメール受信制限機能を提供 NTTドコモ 迷惑メール対策を強化
11月7日 ムーバ(R)「P505iS」を発売 NTTドコモ 世界初のオートフォーカス機能搭載カメラ付き携帯電話
11月7日 ギリシャCOSMOTE社とのiモードライセンス契約に合意 NTTドコモ iモードの国際展開を推進
11月13日 Mzone駅でのインターネット接続実験に参加 NTTドコモ 公衆無線LANサービスの利便性向上へ
11月17日 FOMAを使った中継放送業務の効率化に向け共同開発 NTTドコモ 3Gネットワークの業務用応用を模索
11月19日 Wind Telecomunicazioni S.p.A.がイタリアでiモードサービス開始 NTTドコモ iモードの国際展開を推進
11月25日 コンパクトフラッシュ(R)カード型FOMA(R)「P2402」を発売 NTTドコモ FOMAの利用シーンをPC連携に拡大
11月27日 ドメイン指定受信にキャリア別の受信可否機能追加 NTTドコモ 迷惑メール対策を強化
11月28日 「モバチェメール(TM)」サービスの提供開始 NTTドコモ 新たなモバイルメールサービス
11月28日 「メロディコール(TM)」サービスの機能を拡充 NTTドコモ サービスの多様化
11月11日 「J-スカイ」を「ボーダフォンライブ!」に変更 J-フォン 国際ブランド統一とサービス連携
11月11日 携帯電話出荷量、13カ月連続で前年同月超え 業界全体 市場の活況を示す
11月26日 「FinePix F610」を発表 富士フイルム 12.3メガ記録のコンパクトデジタルカメラ

 

IV. サイバーセキュリティと法的課題

 

2003年11月は、サイバー空間における脅威が深刻化し、それに対する法的・技術的対応が本格化した転換点であったと言えます。

 

P2Pファイル共有ソフトウェア「Winny」に関する初の逮捕事例とその社会的影響

 

この月の最も注目すべきニュースの一つは、京都府警がP2Pファイル共有ソフトウェア「Winny」のユーザー2名を著作権法違反(ゲームと映画の違法公開)で逮捕したことでした 1。これは、P2Pソフトウェア利用における著作権侵害への法執行が本格化した画期的な出来事であり、デジタルコンテンツの流通における法的枠組みの確立が急務であることを示しました。

この逮捕は、ITmediaの週間アクセスランキングでトップを獲得するほどの社会的関心を集め 1、インターネット上では早くも「Winoz」「Winpa」「Winqb」といったWinny後継ソフトの話題で盛り上がる一方で、これらのソフトを介したウイルス感染のリスクも指摘されました 1。著作権情報センター(ACCS)がWinnyユーザー逮捕への経緯詳細を説明するなど、著作権保護団体も積極的に情報発信を行い、著作権侵害に対する社会的な意識を高める動きが見られました 2

 

ウイルス、ワーム、スパムの脅威と、それらに対するセキュリティ対策ソフトウェアおよびポリシーの進展

 

P2P問題に加えて、ウイルス、ワーム、スパムといったサイバー脅威も深刻化していました。「PayPal偽装ワームに、早くも変種が出現」し、フィッシング詐欺とマルウェアの複合的な脅威が顕在化していました 4。NTT Comの調査では、企業の6割以上がウイルスやワームに感染した経験があると報告され、企業におけるセキュリティ対策の喫緊性が浮き彫りになりました 2

MicrosoftのWindows XP用セキュリティ修正プログラムの再リリースや、警察庁による新たな脆弱性を狙う攻撃コードへの警告など、ソフトウェアの脆弱性を悪用する攻撃が多発していました 2。また、Internet Explorerの累積パッチが公開され、IEを利用していなくても影響を受ける脆弱性や、WordやExcelにも任意のコードが実行される脆弱性が存在することが明らかになるなど、広範なソフトウェアが攻撃の標的となっていました 2

スパム問題も深刻化しており、「Hotmailの8割がスパム」であると報じられるほどでした 5。これに対し、Yahoo!とMicrosoftが日本でもスパム撲滅に向け協力体制を構築 5。国際的にも、米国では反スパム法が下院を通過し、EUでもデジタル時代のプライバシー指令が施行されるなど、スパム対策が国際的な課題として認識され、法的規制が強化され始めました 2

企業やセキュリティベンダーも対策を強化していました。シマンテックは企業のポリシー監査を自動的に行う監査用製品を、エントラストは中堅企業向けに低価格のWebシングルサインオン製品を発表 4。MicrosoftとCAはウイルス対策とファイアウォールを1年間無償で提供し、Yahoo! BBも会員向けに「BBセキュリティ powered by Symantec」の提供を開始しました 2。エムオーテックスやNECはセキュリティパッチの自動インストール機能を開発し、企業のIT運用管理の効率化を支援しました 2。米ブッシュ政権が上院にサイバー犯罪条約の締結を迫るなど、サイバー犯罪への国際的な法執行協力の必要性も高まっていました 4

 

ドメイン名関連のセキュリティとプライバシー問題

 

ドメイン名システムにおいても、新たな倫理的・法的課題が浮上していました。人権擁護団体がWhoisデータベースが個人情報の盗難を助長すると警告し、ドメイン登録者のプライバシー保護が大きな議論となりました 8。これに対し、BIGLOBEが「Whois」をブロックできるオプションサービスを提供開始するなど、プライバシー保護へのニーズに応える動きも見られました 2

 

サイバーセキュリティの本格化と法的対応の加速

 

Winny逮捕に象徴されるP2P著作権侵害への法執行強化は、デジタルコンテンツの流通における法的枠組みの確立が急務であることを示しました 1。同時に、ウイルス、ワーム、スパムの蔓延と、Windows製品の脆弱性が広範な脅威となり、これに対し企業や政府が技術的対策(セキュリティソフト、自動パッチ)と法的措置(反スパム法、サイバー犯罪条約)の両面から対応を強化し始めた、まさに「サイバーセキュリティ元年」とも言える時期でした 2。これらの事象は、サイバー空間が単なる技術的なフロンティアから、犯罪の温床となり、社会全体に影響を及ぼすようになったことを示しています。これに対し、法執行機関、政府、企業が連携して対応を本格化させていました。この時期は、サイバーセキュリティがIT部門の課題から、経営リスク、国家安全保障、そして個人の生活に直結する社会全体の課題へと認識が変化する契機となり、その後のセキュリティ産業の発展と、プライバシー保護の議論の深化に大きな影響を与えました。

 

ドメイン名管理におけるプライバシーと透明性の課題

 

Whoisデータベースを巡る人権擁護団体からの警告は、インターネットの基盤技術であるドメイン名システムにおいても、個人情報保護と透明性の間で新たな倫理的・法的課題が浮上していることを示唆しています 8。Whoisはドメイン登録者の情報を公開する仕組みですが、これが悪用されるリスクが認識され始めました。これは、インターネットの「オープン性」と「プライバシー」という基本的な価値観の衝突であり、そのバランスをどう取るかという新たな課題です。この議論は、その後のGDPR(一般データ保護規則)のような包括的なデータプライバシー規制の必要性を予見させるものであり、デジタル時代の個人情報保護の重要性を早期に浮き彫りにしました。

 

V. ソフトウェアとプラットフォームの動向

 

2003年11月は、ソフトウェア業界において、オープンソースの企業利用拡大、SaaSモデルの萌芽、Webサービスの進化、そしてユーザー生成コンテンツの台頭が顕著であった時期として特徴づけられます。

 

オープンソースソフトウェアの発展と企業での採用動向

 

オープンソースソフトウェアは、この時期にその信頼性と実用性を大きく高め、企業での採用が拡大しつつありました。米IBMがオープンソースの統合開発環境「Eclipseプロジェクト」にコードを提供したことは、大企業がオープンソースエコシステムに積極的に貢献し、その信頼性と実用性を高めていることを示しました 4。これは、オープンソースが単なる「無料の代替品」ではなく、大手ベンダーのサポートを通じて、ビジネスの現場で本格的に採用され得る「信頼できる技術」として認知され始めたことを示唆します。

Linuxはサーバー分野での地位を確立しつつありましたが、この時期には「デスクトップLinux開発に本腰」を入れると報じられ、クライアントOSとしての可能性も追求され始めました 5。米NovellがMonoプロジェクトのロードマップを発表したことは、Linux上での.NETアプリケーション開発環境の整備が進み、より幅広い開発者にとっての選択肢となりつつあったことを示しています 2。さらに、NECとミラクル・リナックスがセキュリティソフトのサポートで協業し、企業におけるLinux導入の障壁が低減されつつありました 5。ミラクル・リナックスが「Samba3.0」の国際化対応プロジェクトを開始したことは、Windowsネットワークとの連携強化が図られ、企業環境での相互運用性が向上したことを示唆します 2。また、米Red Hatが新しいLinuxプラットフォーム「Fedora」をリリースしたことも、オープンソースコミュニティの活発な活動を示すものでした 2

 

企業向けソフトウェアソリューションの市場動向

 

企業向けソフトウェア市場では、ソフトウェアの提供モデルに変化の兆しが見られました。米シーベルがユーティリティ型オンラインサービス「CRM OnDemand」を売り込み、ソフトウェアのサービス提供モデル(SaaS/ASP)が注目され始めました 4。これは、ソフトウェアがインターネット経由で提供され、サブスクリプションモデルで利用されるという、後のクラウドコンピューティングのビジネスモデルの先駆けです。Salesforce.comがカスタムアプリケーションホスティング事業に参入したことも、クラウドベースのビジネスアプリケーションの可能性を示しました 5

データ分析の重要性も高まっており、SASが業界特化型BI(ビジネスインテリジェンス)ソリューションで売上を増加させたことは、企業がデータに基づいた意思決定を重視し始めていたことを示しています 5。NECやSymantec、Microsoftはセキュリティパッチの自動適用や統合管理ツール(SMS 2003)を発表し、企業のIT運用管理の効率化が進められました 2

 

Webサービスとグリッドコンピューティング技術の進展

 

分散コンピューティングとサービス指向アーキテクチャの実現に向けた動きも見られました。日本IBMなど4社がOGSA(Open Grid Services Architecture)準拠のグリッド/Webサービスシステムの構築実験に成功したことは、複数のシステムや組織にまたがる複雑な処理を連携させる技術が実用化に向けて進展していたことを示しています 5

 

ユーザー生成コンテンツとブログの台頭

 

インターネットが「読む」メディアから「書く」メディアへと進化する中で、ユーザー生成コンテンツ(UGC)の台頭が顕著になりました。シーサーが携帯でもブログが作れる「Seesaa BLOG」を無料で提供開始し、ニフティもTypePadベースの「ココログ」を12月開始するなど、ブログサービスが急速に普及し、個人が手軽に情報発信できる環境が整い始めました 2。livedoorやNTTデータもブログサービスに参入し、ブログが新たなメディアプラットフォームとして注目されました 2。これは、専門知識がなくても誰もが簡単に情報を発信できるプラットフォームの需要が高まり、インターネットが一方通行のメディアから双方向のコミュニケーション空間へと変化し始めたことを示しています。

 

オープンソースの成熟と企業への浸透

 

IBMのEclipseへのコード提供やLinux陣営のデスクトップ開発への注力は、オープンソースソフトウェアが単なるニッチな技術から、エンタープライズ領域においても信頼性と実用性を持つ主要な選択肢へと成熟しつつあったことを明確に示しています 4。これは、後にクラウドインフラの基盤技術としてLinuxがデファクトスタンダードとなる道を開き、ソフトウェア開発と利用のパラダイムシフトを加速させました。

 

SaaSモデルの台頭とユーザー生成コンテンツの隆盛

 

Siebelの「CRM OnDemand」やSalesforce.comのカスタムアプリケーションホスティングへの参入は、ソフトウェア提供モデルが従来のパッケージ販売からサービス型(SaaS/ASP)へと移行する初期の兆候でした 4。同時に、ブログサービスの爆発的な普及は、インターネットが「読む」だけでなく「書く」メディアへと進化し、ユーザー生成コンテンツ(UGC)が台頭するWeb 2.0時代の到来を予感させました 2。これらのトレンドは、今日のクラウドサービス市場の形成と、YouTube、SNSなどのソーシャルメディアの発展に不可欠な基盤を築きました。

 

VI. ハードウェアと新技術の展望

 

2003年11月は、PCおよびエンタープライズ向けハードウェアの進化に加え、ICタグやRFIDといった将来のユビキタスコンピューティングを支える新技術の萌芽が見られた月でした。

 

PCおよびエンタープライズ向けハードウェアの新製品発表

 

ハードウェア分野では、多様な利用シーンに対応する新製品が発表されました。シャープは企業向けの反透過型VGAシステム液晶搭載ザウルスを発表し、モバイル情報端末のビジネス利用を強化する方向性を示しました 4。日本IBMはPowerPC搭載ブレードサーバ「eServer BladeCenter JS20」を発表し、データセンターの省スペース化と高効率化を推進する動きが見られました 4

家庭用エンターテインメント機器では、ソニーがPSXを12月13日に発売すると発表し、ゲーム機とレコーダーの融合という新たなコンセプトを提示しました 1。デジタルカメラ市場では、富士フイルムが「12.3メガ記録」のコンパクト機「FinePix F610」を発表し、高画素化競争が激化していたことが伺えます 1

 

次世代メディア規格の動向

 

次世代の光ディスク規格に関する動きも報じられました。「HD DVD」規格が一部承認へ向かっていることが示され、高精細な映像コンテンツの記録・再生に向けた標準化競争が水面下で進行していました 1

 

ICタグ・RFID技術の実証実験と今後の応用可能性

 

この時期に特に注目されたのは、ICタグ(RFID)技術の多様な実証実験でした。日立がIEEE 802.11b端末用の位置検知システムを発表し、測位誤差1m〜3mの精度を実現したことは、無線LANを活用した高精度な位置情報サービスの可能性を示しました 4

ICタグは、教育現場から産業、エンターテインメントまで幅広い分野で応用が模索されていました。大日本印刷などがICタグによって登下校情報をメールで配信するサービスの実証実験を開始し、教育現場でのICT活用が模索されました 2。また、名古屋モーターショーや六本木ヒルズでRFIDを使った情報提供サービスの実証実験が行われ、リアル空間とデジタル情報の連携が試みられました 2。これらの実験は、物理的なモノや空間にデジタル情報を結びつけ、リアルタイムで情報を収集・提供する能力を持つ、将来の「ユビキタスコンピューティング」や「モノのインターネット(IoT)」という概念の具現化に向けた初期段階の動きと言えます。

市場予測もその将来性を高く評価しており、マクネット調査では、RFIDタグの出荷枚数が2010年には47億6,400万枚に達すると予測されていました 2。さらに、産総研がICタグを利用した「知識分散型ロボット制御システム」を開発するなど、産業分野での応用も進んでいました 2

 

ユビキタスコンピューティングとIoTの萌芽

 

ICタグ/RFID技術の多様な実証実験と、高精度な無線LAN位置検知システムの登場は、2003年11月が「ユビキタスコンピューティング」や「モノのインターネット(IoT)」という概念が、具体的な技術と応用例として萌芽し始めた時期であったことを示しています 2。これらの技術は、コンピューティングが特定のデバイス(PCや携帯電話)に限定されず、環境中に遍在する未来への重要な一歩でした。この時期の実験的な取り組みは、その後のスマートシティ、スマートホーム、産業IoTといった大規模なエコシステムの構築に向けた重要な礎となりました。

 

VII. 業界再編とビジネスモデルの変化

 

2003年11月は、ICT業界の競争激化と市場の成熟に伴い、企業間のM&Aや提携、そして新たなビジネスモデルの模索が活発化した時期でした。

 

主要企業間のM&Aや提携事例

 

この時期には、市場の変化に対応するための活発な業界再編の動きが見られました。米AOLがマルチメディア検索大手の米Singingfishを買収したことは、検索技術におけるマルチメディア対応の重要性が高まっていたことを示唆しています 2。楽天がDLJ証券買収について基本合意したと報じられたことは、IT企業が金融分野へ事業を拡大する動きが見られ、異業種間の融合が進んでいたことを示唆します 2

デジタル音楽配信市場では、米CNETがMP3.comの資産を買収し、サイトが12月2日に停止されるというニュースがあり、デジタル音楽配信市場の再編と淘汰の動きを象徴していました 2。通信業界では、NTTグループ内でNTT-XとNTT-BBの事業統合が発表され、グループ内再編による効率化と競争力強化が進められました 2。また、パワードコムとフュージョンが電話事業の統合に向けて検討を開始するなど、通信業界における再編の動きが活発化していました 2

ドメイン名管理業界でも大きな変化があり、米VeriSignがレジストラ業務の売却手続きを完了したことが報じられました 8。グローバル市場では、Yahoo!が中国企業への買収提案を行うなど、国際的な競争とM&A戦略が活発であったことが伺えます 8

 

オンラインショッピングおよびEC市場の成長と新たなビジネスモデルの模索

 

EC市場は引き続き成長を続け、競争も激化していました。欧州オンラインショッピング調査でeBayがAmazonを大きく引き離して首位を獲得したことは、EC市場における競争の激しさと、地域ごとの特性を示唆しました 6。野村総合研究所(NRI)の調査では、2008年にはEC市場が160兆円、携帯コンテンツ市場が3,706億円に達すると予測され、デジタル経済の大きな成長が見込まれていました 2

ECプラットフォームは、顧客獲得とエコシステム構築に注力していました。楽天がアフィリエイトサービスを開始し、Yahoo!オークションが出品システム利用料を無料にするなど、新たな集客戦略が展開されました 2。また、「創業ナビ」の開設は、オンラインでの会社設立手続きを支援し、デジタル化によるビジネス創出の促進を示しました 2

P2Pネットワークの利用を巡る法的課題が顕在化する一方で、KazaaがP2Pネットワーク上で世界初の映画販売を開始したことは、違法ダウンロードの温床とされたP2Pが、合法的なコンテンツ配信の場としても模索され始めたことを示しました 2

 

コンテンツとメディアのデジタル化

 

デジタルコンテンツの分野では、新たな動きが見られました。ソニーや講談社など15社が電子出版の新会社を設立し、出版業界のデジタル化が本格的に始まったことを示唆します 2。また、バンダイとマイクロソフトがアニメ配信のグローバル展開で提携し、デジタルコンテンツの国際流通が推進されました 2

 

企業業績と市場の動向

 

激しい競争環境下での企業の経営状況も明らかになりました。パワードコムやソフトバンクの中間決算で損失が報告され、市場の厳しさが浮き彫りになりました 2。一方で、NTTは連結純利益3,836億円を計上し、通信インフラを支える安定した収益基盤を維持していました 2

 

成熟市場における統合と多角化

 

2003年11月のICT業界は、AOLによるSingingfish買収やNTTグループの再編、PoweredComとフュージョンの統合検討など、活発なM&Aと提携の動きが見られました 2。これは、市場の成熟と競争激化に対応するため、企業が事業領域の拡大(金融、コンテンツなど)と効率化(統合)を同時に追求していたことを示しています。買収対象がマルチメディア検索や中国のドメイン販売企業など、新たな成長領域に広がっていることや、楽天が金融分野に進出したり、ソニー・講談社が電子出版会社を設立したりと、異業種への参入が見られることから、ICT市場が単一の技術領域に留まらず、コンテンツ、金融、メディアなど、より広範なデジタルエコシステムを形成しつつあったことが伺えます。企業は、競争優位性を確立するために、コア事業の強化と同時に、隣接領域への多角化を進めていました。この時期の業界再編は、後のGAFA(Google, Apple, Facebook, Amazon)のような巨大プラットフォーム企業の台頭を予見させるものであり、デジタル経済における「規模の経済」と「生態系の支配」の重要性を浮き彫りにしました。

 

デジタルコンテンツの収益化とエコシステム構築

 

ソニーや講談社による電子出版の新会社設立、バンダイとマイクロソフトのアニメ配信提携、そしてKazaaによる映画販売の開始は、デジタルコンテンツの収益化と合法的なコンテンツエコシステムの構築に向けた、活発かつ挑戦的な取り組みを示しています 2。これらの動きは、Winny逮捕に象徴される違法ダウンロードの蔓延という課題に直面しながらも、コンテンツ産業がデジタル化の波に適応し、新たなビジネスモデルを模索していたことを示唆します。具体的には、電子出版やデジタルアニメ配信といった動きは、従来のメディア企業がデジタルチャネルを積極的に模索していたことを示しています。また、P2Pの違法利用で悪名高かったKazaaが「世界初の映画販売」に乗り出したことは、法的圧力への対応と、合法的な収益源を確保する必要性の認識から生まれた動きと解釈できます。これは、著作権保護とコンテンツ流通のバランスをどう取るかという、デジタル時代における根本的な課題への取り組みでした。この時期は、デジタル著作権管理(DRM)や新しいコンテンツ配信モデルの開発にとって極めて重要であり、物理メディアからデジタルダウンロード、そしてストリーミングへと移行する現代のコンテンツ消費形態の基礎を築きました。

 

VIII. 結論と今後の展望

 

2003年11月のICT業界は、多岐にわたる分野で急速な進化と変革が進行していたことが明らかになりました。ブロードバンドは高速化と普及を加速させ、IP電話の相互接続や公衆無線LANの展開により、インターネットが社会インフラとしての地位を確固たるものにしつつありました。モバイルテクノロジーは、メガピクセルカメラ搭載携帯電話の登場やFOMAの展開、iモードの国際進出によって、単なる通話ツールから多機能な情報端末へと進化を遂げ、市場の活況を呈していました。

一方で、サイバーセキュリティの脅威は深刻化の一途を辿り、P2Pファイル共有ソフトウェア「Winny」に関する初の逮捕事例は、デジタルコンテンツの著作権保護と利用を巡る法的な課題を浮き彫りにしました。ウイルス、ワーム、スパムの蔓延は広範な被害をもたらし、これに対し企業や政府は、セキュリティソリューションの開発や反スパム法、サイバー犯罪条約といった法的・政策的対応を強化しました。ドメイン名管理におけるWhoisデータベースのプライバシー問題も、インターネットの透明性と個人情報保護のバランスという新たな倫理的課題を提起しました。

ソフトウェアとプラットフォームの領域では、IBMによるEclipseへのコード提供やLinuxデスクトップ開発への注力に象徴されるオープンソースソフトウェアの成熟と企業での採用拡大が見られました。また、Siebelの「CRM OnDemand」やSalesforce.comの参入は、SaaS(Software as a Service)モデルの萌芽を示し、後のクラウドコンピューティングの隆盛を予見させました。同時に、ブログサービスの爆発的な普及は、ユーザー生成コンテンツの時代が到来し、インターネットが双方向のメディアへと進化するWeb 2.0時代の幕開けを告げるものでした。ハードウェア分野では、ICタグやRFIDといった技術の実証実験が活発に行われ、後の「モノのインターネット(IoT)」やユビキタスコンピューティングの基礎が築かれつつありました。

この時期のICT業界は、AOLによるSingingfish買収やNTTグループの再編など、活発なM&Aや提携の動きが見られ、市場の成熟と競争激化に対応するため、企業が事業領域の拡大と効率化を同時に追求していました。また、電子出版やデジタルアニメ配信といった動きは、デジタルコンテンツの収益化と合法的なエコシステムの構築に向けた模索が本格化したことを示しています。

2003年11月のICT業界の動向は、デジタル技術の進歩がもたらす光と影の両面を鮮やかに示しています。一方で、より高速なネットワーク、より高機能なデバイス、そして新たなサービスの創出といった目覚ましい革新が進展しました。他方で、この進歩の「影」として、サイバー犯罪の激化、プライバシー侵害の懸念、そしてデジタルコンテンツの法的課題といった問題が顕在化しました。これは、技術革新が単独で進行するのではなく、常に社会、法律、倫理といった多角的な側面との相互作用の中で進むことを示唆しています。新しい技術が新たな機会を生み出す一方で、予期せぬ課題や悪用の可能性も同時に生じさせるという、デジタル進歩の二面性は、この時期から現在に至るまで、ICT業界が直面し続けている根本的な特性です。

これらの動向は、その後のICTランドスケープの基礎を築きました。ブロードバンドのさらなる普及は、動画配信やクラウドサービスの基盤となり、モバイル技術の進化はスマートフォンの登場とモバイルファーストの社会を牽引しました。サイバーセキュリティの課題は、国家レベルの戦略や専門産業の発展を促し、オープンソースやSaaSはソフトウェア開発とビジネスモデルの主流となりました。そして、ICタグやRFIDの萌芽は、IoTとして現実世界とデジタル世界を結びつける新たなフロンティアを開拓しました。2003年11月は、まさに現代のデジタル社会の原型が形成されつつあった、極めて重要な時期であったと言えるでしょう。

2003年10月における主要ICTニュース:業界概観

エグゼクティブサマリー

 

2003年10月は、情報通信技術(ICT)分野にとって極めて重要な時期であり、ソフトウェアの目覚ましい進歩、ブロードバンドインフラの急速な拡大、モバイル技術における画期的な発展、そしてサイバーセキュリティに対する懸念の高まりが特徴でした。マイクロソフトのような主要企業は、新たな主力製品を発表し、一方ではオープンソース運動が既存の規範に挑戦を続けました。同時に、太陽嵐のような地球外の事象が、技術システムの脆弱性を浮き彫りにしました。特に日本は、国内での革新と戦略的提携が活発であり、地域および世界のICT進化における主要な牽引役としての役割を示しました。

この月には、マイクロソフトがOffice 2003の発売により戦略的な転換を図り、オープンソースとの競争が激化しました。米国ではブロードバンドの導入が急速に進み、インターネットガバナンスに関する重要な議論が巻き起こる中、VeriSignのSite Finderサービスを巡る論争が注目を集めました。日本国内では、NTTグループが次世代ネットワーク技術(GMPLS/MPLS)をリードし、ソフトバンクBBがブロードバンドサービスを拡大、NTTドコモは新たなFOMA端末の開発やソニーとのFeliCaに関する戦略的合弁事業を通じてモバイル通信を進化させました。また、「ハロウィーン太陽嵐」は、世界の通信およびナビゲーションインフラに対する外部からの脅威を改めて認識させる出来事となりました。

以下の表は、2003年10月に発生した主要なグローバルICTイベントを簡潔にまとめたものです。

表1:2003年10月における主要なグローバルICTイベント

日付 カテゴリ イベント概要 主要企業/組織 関連情報源
10月3日 ソフトウェア Python 2.3.2リリース Python Software Foundation (PSF) 1
10月6日 ソフトウェア SCO対IBM Linux訴訟:SGIが声明発表 Silicon Graphics (SGI), SCO Group, IBM 2
10月7日 インターネットインフラ VeriSign Site Finderサービス一時停止 VeriSign, ICANN 3
10月21日 ソフトウェア Microsoft Office System 2003発売 Microsoft Corp. 4
10月28-30日 外部イベント ハロウィーン太陽嵐による技術システムへの影響 (地球軌道上の宇宙機、GPS、航空会社など) 6
10月31日 ハードウェア/モバイル Sony EricssonがGPRS/Wi-Fi PCカードを発売 Sony Ericsson 7
10月全体 インターネットインフラ 米国におけるブロードバンド導入の著しい増加 (米国家庭) 8
10月全体 サイバーセキュリティ APECがサイバーセキュリティ対策を強化 APEC加盟国 9

 

1. グローバルソフトウェアとオペレーティングシステム

 

 

1.1. Microsoft Office System 2003の発売と戦略転換

 

2003年10月、マイクロソフト社は最新版のOfficeソフトウェアであるOffice 2003を発売し、1億5000万ドルの広告キャンペーンを展開しました。これは、経済が不安定な状況下でも顧客にアップグレードの価値を納得させることを目的としていました 4。この発売は、世界最大のソフトウェアメーカーであるマイクロソフトにとって、戦略の大きな転換を反映していました。同社は、従来のOfficeスイート(Word、Excel、PowerPointなどのプログラムパッケージ)を単に推進するのではなく、高価なサーバーソフトウェアを含む新しいOfficeの「システム全体」を強調することで、競合他社との差別化を図ろうとしました 4

ビル・ゲイツ会長は、ニューヨークでの発売発表において、コラボレーションと生産性向上に資するソフトウェアの機能が、企業の予算が厳しい中でも製品の売上を牽引すると述べました。同時に、彼はLinuxなどのオープンソースプログラムからの挑戦を退け、「我々が持っているものとフリーソフトウェアが持っているものの距離は、今日これまで以上に大きい」と発言しました 4。Office 2003の主要プログラムにおける変更は比較的控えめでしたが、Outlookの電子メール、カレンダー、アドレス帳は大幅に刷新され、最も注目すべき改善点と評価されました。また、パッケージ内のプログラムは、インターネットに親和性の高いXML形式でファイルを保存できるようになりました 4。さらに、マイクロソフトは、機密文書の閲覧、転送、印刷を制御する情報権利管理(IRM)ソフトウェアも発表しました 4

この大規模なキャンペーンとゲイツ氏のオープンソースに対する直接的かつやや軽視した発言は、マイクロソフトがオープンソースを、特にビジネスソフトウェア市場における自社の優位性に対する信頼できる、成長する脅威と認識していたことを示唆しています。Officeスイートと並行してサーバーソフトウェアを推進するという「戦略転換」は、顧客をより広範なマイクロソフトのエコシステムに囲い込み、個々のアプリケーションでオープンソースの代替品に切り替えることを困難にしようとする試みでした。これは単なる製品発売ではなく、侵食しつつあるパラダイムに対する市場シェアを守るための戦略的な動きと見なすことができます。

クライアント側のアプリケーション(Office)とサーバー側のインフラストラクチャを統合し、IRMを導入するというこの動きは、より緊密に連携したエンドツーエンドのマイクロソフトエコシステムを構築するための初期の、しかし萌芽的な試みを示唆しています。2003年時点では明示的にクラウドベースではありませんでしたが、デスクトップアプリケーションを超えて制御と機能を拡張するというこの戦略は、将来のエンタープライズソフトウェアが統合プラットフォームや、マイクロソフトのサーバー製品や権利管理が中心となる可能性のあるサブスクリプションモデルへと向かう方向性を示唆していました。コラボレーションを阻害する可能性への懸念は、プロプライエタリなエコシステムと相互運用性の間の初期の緊張関係も指摘しており、これは将来のクラウドおよびエンタープライズソフトウェアに関する議論を支配するテーマとなるでしょう。

 

1.2. オープンソースの動向:SCO対IBM Linux訴訟の進展

 

2003年10月6日、シリコン・グラフィックス(SGI)はLinuxコミュニティ向けに公開書簡を発表し、LinuxカーネルとSCOグループが所有するUNIX System Vのソースコードを包括的に比較した結果を報告しました。SGIのソフトウェア担当副社長であるリッチ・アルトマイヤー氏が執筆したこの書簡によると、SGIの「徹底的な比較」では、SCOのソフトウェアと「議論の余地がある程度関連している可能性のある」「些細な」コードセグメントしか見つからなかったと述べています。この書簡はまた、SGIがXFS(eXtensible File System)を不適切に貢献したというSCOの主張にも異議を唱えました 2

SCO対IBM訴訟は、LinuxにおけるUNIXコードの知的財産権を巡る主要な法廷闘争でした。SCOは、IBMがSCOのプロプライエタリなUNIXコードをLinuxカーネルに貢献したと主張していました。SGIの公開声明は、Linuxコミュニティにとって極めて重要な検証を提供し、尊敬される業界プレーヤーがSCOの主張のほとんどが根拠に乏しいことを発見したことを示しました。この公的な支持と技術的な検証は、SCOの訴訟が引き起こそうとしたFUD(恐怖、不確実性、疑念)を軽減するのに役立ち、オープンソース開発モデルの協調的で自己修正的な性質を強化しました。これは、コミュニティが企業パートナーの支援を受けて、法的な攻撃から自らを守ることができることを示しました。

 

1.3. Python 2.3.2のリリースとその影響力の拡大

 

Python Software Foundation(PSF)は、2003年10月3日にPythonプログラミング言語のバージョン2.3.2のリリースを発表しました。これはPython 2.3の2番目のメンテナンスリリースであり、バージョン2.3.1で見つかったいくつかのビルドおよびパッケージングの問題を修正し、2.3リリース以来2ヶ月間の経験に基づいた多くの機能強化が組み込まれていました 1

Pythonは、強力でアジャイルなプログラミング言語であり、プログラマーの生産性を大幅に向上させると評されていました。C、C++、Java、Visual Basicなどの他の言語のプログラマーにとっても非常に習得しやすいとされていました。この言語は、世界中の数万の企業や組織でミッションクリティカルなアプリケーションの基盤として使用されており、そのユーザーベースは急速に拡大していました。Pythonは、ソフトウェアコストの削減、リスクの軽減、および積極的なスケジュールへの対応のために、大規模なシステム開発でますます使用されていました 1。リリース時、Python 2.3はAppleの最新OS Xリリースに同梱されており、Google、Industrial Light & Magic、NASA、ニューヨーク証券取引所、Philips、Rackspace、RedHat、Disneyなど、多くの企業の技術インフラストラクチャにおいて重要な役割を担っていました 1

SCO対IBM訴訟がオープンソースのオペレーティングシステムに対する法的課題を浮き彫りにした一方で、Python 2.3.2のリリースは、主要な企業内でのオープンソースプログラミング言語の成熟と広範な実用的な導入の拡大を示しました。これは、オープンソースが単なる代替手段ではなく、コスト削減やアジリティといった利点に牽引され、デスクトップOSの競争を超えてアプリケーション開発やインフラストラクチャにおける基盤技術となっているという広範な傾向を示しています。

 

2. ハードウェアの革新と市場動向

 

 

2.1. 新製品の発売とコンポーネントの進歩

 

2003年10月には、モバイルおよびワイヤレスネットワーキング技術の継続的な融合を示す新製品がいくつか発売されました。Sony Ericssonは、ノートPCユーザーがセルラーネットワークとWi-Fiネットワークの両方にアクセスできるようにする、GPRSとWi-Fiの複合PCカードであるGC79を発売しました 7。Intelは、Centrinoモバイルテクノロジーに高速な802.11a機能を加えたワイヤレスローカルエリアネットワーク(WLAN)チップセットを発表しました 7。これらの個別の製品発表は、モバイルコンピューティングを真にモバイルにするための明確な業界トレンド、すなわち複数のワイヤレス接続オプションの統合を示しています。GPRS/Wi-Fiカードは、セルラーデータ(より広範なカバレッジ用)とWi-Fi(ホットスポットでの高速化用)間のシームレスな切り替えを可能にし、IntelによるCentrinoの強化は、Wi-Fiをラップトップ向けにより堅牢で高速な標準とすることを目指しました。これは、単一モード接続の限界を克服し、「常時接続」アクセスを可能にする戦略的な取り組みを示しており、将来のスマートフォンやモバイルインターネット体験の基盤となるものでした。

より広範なPCコンポーネント市場では、継続的な段階的改善が見られました。Tom’s Hardwareは、2003年10月のレビューとニュースを掲載し、新しいNVIDIAカード、MicrosoftとLogitechの光学マウス、Maxtorの300GBハードドライブやHitachiのDeskStar 7K250といった様々なストレージソリューションに言及しました 10。産業用コンピュータハードウェアも、Compact PCIシステム用のErniバックプレーンといった進展が見られました 11。これらの動向は、コアPCコンポーネントにおける性能、ストレージ容量、およびユーザーインターフェースデバイスに焦点を当てた継続的な改善を示しています。

 

2.2. 新興技術と科学的評価

 

ICTの直接的な製品発売ニュースではありませんが、2003年10月には、現代の様々な技術の基盤となる科学的進歩が評価されました。ノーベル生理学・医学賞は、磁気共鳴画像法(MRI)に関する発見に対して、ポール・ラウターバーとピーター・マンスフィールド卿に共同で授与されました 2。また、ノーベル物理学賞は、超伝導体と超流動体の理論に関する業績に対して、アレクセイ・アブリコソフ、ヴィタリー・ギンツブルク、アンソニー・レゲットに授与されました 2

さらに、バイオテクノロジー分野では、「ゲノムチップ」が登場し、企業はヒト組織サンプル中のすべての遺伝子を一度にスキャンできる製品を競って販売し始めました。これは、低コストと高速化を約束するものでした 2。これらの点は、ICTの影響が従来のコンピューティングや通信デバイスをはるかに超えて広がっていることを総合的に示しています。MRIの先駆者たちの評価は、ICTによって可能になり、ICTを可能にする基礎的な科学研究が、医学のような分野をいかに変革するかを示しています。ゲノムチップは、ICTの方法論(高スループットデータ処理やチップ設計など)が、他の科学分野を革新するために直接応用され、純粋科学と応用技術の境界線を曖昧にしていることを示しています。これは、ICTが単独の産業としてではなく、多様な分野を横断する実現力として機能していることを強調しています。

 

3. インターネットインフラとブロードバンド導入

 

 

3.1. 米国におけるブロードバンド接続の急速な成長

 

2001年9月から2003年10月の間に、米国におけるブロードバンドインターネット接続を持つ世帯の割合は、9.1%から19.9%へと2倍以上に増加しました。これは、1200万世帯の増加に相当します 8。この成長は、同時期のダイヤルアップユーザーの12.7%(560万世帯)の減少を大幅に相殺し、ダイヤルアップから高速接続への明確な移行を示していました。2003年10月時点では、ケーブルモデムがブロードバンド世帯の56.4%を占め、依然として優勢でしたが、DSLも大幅に普及し、43.6%を占めるようになりました 8

ブロードバンドの普及率は、VCR、インターネット自体、パーソナルコンピュータといった過去の多くの人気技術を上回る速さで進展していました 8

表2:米国におけるブロードバンド導入統計 – 2001年対2003年

指標 2001年9月 2003年10月 変化 関連情報源
ブロードバンドインターネット接続を持つ米国世帯の割合 9.1% 19.9% +10.8%ポイント 8
ブロードバンド世帯数の増加 990万世帯 2240万世帯 +1250万世帯 8
ダイヤルアップユーザーの減少 -560万世帯 8
ブロードバンド技術のシェア:ケーブルモデム 66.4% 56.4% -10.0%ポイント 8
ブロードバンド技術のシェア:DSL 43.6% (2001年から大幅増) 8

全体的なブロードバンド導入は急増していましたが、特に地理的な観点から明確な「デジタルデバイド」が出現していました。ブロードバンドの利用率は、都市部(40.4%)に比べて農村部(インターネット世帯の24.7%)で低かったのです 8。農村部のダイヤルアップ世帯が高速インターネットを利用しない理由として「利用できない」と回答する割合は、都市部の世帯(4.7%)と比較して著しく高かった(22.1%)です 8。これは、利用可能性の問題が格差の大部分を占めていることを示唆しています。この状況は、ユニバーサルアクセスに対する初期の政策課題を浮き彫りにし、市場原理だけではこの格差を埋めることができない可能性を示唆しており、将来の未サービス地域へのブロードバンド展開を促進する政府の取り組みの必要性を暗示しています。また、これはブロードバンドの恩恵(例:Eコマース、オンライン教育)が人口全体に均等に分配されていないことも示唆しています。

 

3.2. オンライン行動と活動への影響

 

ブロードバンドユーザーは、ダイヤルアップユーザー(51.1%)と比較して、日常的にインターネットを利用する傾向が強く(66.1%)、特にエンターテイメント(オンラインラジオ/テレビ/映画でブロードバンドユーザーは30.9%、ダイヤルアップユーザーは17.3%)、バンキング、製品やサービスの購入といった、より広範なオンライン活動に従事していました 8。ブロードバンドを利用するインターネットユーザーのより高い割合(22.1%)が8種類以上のオンライン活動に従事していたのに対し、ダイヤルアップユーザーでは10.6%でした 8

ブロードバンドへの移行は、単なる速度の向上ではありませんでした。それは、デジタル経済の拡大と日常生活の変革を根本的に可能にするものでした。高速化により、より豊富なコンテンツ(ストリーミングメディア)や、より複雑な取引(オンラインバンキング、Eコマース)、そしてより頻繁なエンゲージメントが可能になりました。これは、インターネットがニッチな情報ツールから、商取引、エンターテイメント、および不可欠なサービスのための統合プラットフォームへと移行しつつあることを示しており、デジタルファーストのビジネスモデルの広範な採用と、より「常時接続」の消費者文化の基盤を築きました。

 

3.3. ICANNとVeriSign Site Finder論争

 

2003年10月は、VeriSignの「Site Finder」サービスを巡る論争が支配的でした。このサービスは、タイプミスされたURLを自社のサイトにリダイレクトするもので、集団訴訟、ICANN会議、そしてインターネットコミュニティからの広範な批判を招きました 3。このサービスは、DNS関連トラフィックの急増と、100万人のユーザーに影響を与えたOCNのDNSサーバー障害(過負荷が原因とされた)の中で、2003年10月6日から7日にかけて一時的に停止されました 3。一時停止にもかかわらず、VeriSignはサービスの正当性を主張し、再開の意向を示したため、ICANNとの間で継続的な議論が繰り広げられました。最終的に、この問題は月末にICANNの介入により解決されました 3

この事件は、インターネットガバナンスと、商業的利益とインターネットの開放性および安定性の原則との間のバランスに関する重要な初期の試金石となりました。これは、強力なプレーヤーが商業的利益のために基本的なインターネットプロトコル(DNS解決など)を一方的に変更しようとすると、規制当局やユーザーを含む広範なインターネットエコシステムから強い抵抗に直面することを示しました。この出来事は、ユーザー体験と基本的なインターネットアーキテクチャが、潜在的に破壊的な商業的革新からどのように保護されるべきかについて先例を確立し、将来のネット中立性やプラットフォーム制御に関する議論を予見させるものでした。

 

4. モバイル技術と電気通信政策

 

 

4.1. グローバルな3G導入とハンドセット開発

 

2003年は、3G標準が世界的に導入され、「モバイルインターネットの時代」が始まり、スマートフォンの台頭への道が開かれた重要な年でした 12。Hutchison Whampoaの「Three」ブランドは、英国で最初の3Gネットワークを開始し、初期の3Gハンドセット(Motorola A830、NEC e606、NEC e808)をリリースしました。ネパールもまた、南アジアで最初に3Gサービスを開始した国の一つとなりました 12。この期間は、従来の携帯電話の限定的なWAPブラウザ(Nokia 7110など)を超えて、真のインターネットアクセスが可能なデバイスへの移行を示す、モバイルインターネットにとって基礎的な時期でした。

インフラ面では、MotorolaがブラジルのVivoのCDMA2000 1xネットワーク向けに基地局と伝送機器を供給する契約を締結しました 7。また、Panasonic初のBluetooth対応携帯電話であるX70が認定を受けました 7。これらの進展は、高度なモバイルネットワークインフラの拡大と、短距離無線技術のハンドセットへの統合を示しています。

この時期は、携帯電話が主に音声と基本的なテキストのためのデバイスから、真のインターネットアクセスが可能なデバイスへと移行する重要な転換点を示しています。この変化は単に速度の向上にとどまらず、将来のスマートフォン時代を定義するであろう全く新しいアプリケーションやサービス(例:ストリーミングコンテンツ、リッチなウェブブラウジング)を可能にしました。また、これは、ネットワーク事業者とハンドセットメーカーがこの新興モバイルインターネットエコシステムでの優位性を巡って競い合い、インフラとデバイスの革新に多大な投資を行うことになる、新たな競争環境の始まりを意味していました。

 

4.2. 電気通信政策に関する議論

 

2003年10月、連邦控訴裁判所は、移動衛星サービス(MSS)のライセンス付与に関する連邦通信委員会(FCC)の決定に対するモバイルフォン業界の統合要求を却下しました 7。これは、サービス拡大にとって不可欠な、スペクトル割り当てとライセンスに関するワイヤレス業界内の継続的な規制および法的紛争を示しています。

また、有力な議員は、農村部でのタワー展開のためにワイヤレスキャリアがユニバーサルサービス補助金を受け取るべきだと主張し、上院が「収入が急減するにつれてUSF(ユニバーサルサービス基金)をいじる」可能性を示唆しました 7。これは、未サービス地域への電気通信サービスの拡大と、そのような取り組みを支援するための財政メカニズムに関する政策議論を浮き彫りにしています。さらに、新しい法案は、ワイヤレス業界およびその他のビジネスセクターに対するより厳しい反トラスト法違反の罰則を提案しました 7。これは、ICTセクター内の市場集中と競争慣行に対する立法府の監視を示しています。国家電気通信情報局(NTIA)組織法の再承認(H.R. 2482)も提案され、基本歳出に関する第151条が改正されました 13。これは、電気通信政策および研究に対する政府の継続的な監督と資金配分を意味します。

これらの政策議論は、古い電気通信モデルのために設計された規制枠組みが、モバイル、インターネット、従来の通信サービス間の急速な融合に追いつくのに苦慮していたことを明らかにしています。例えば、ワイヤレスの農村部補助金への焦点は、従来のユニバーサルサービス原則を新しいモバイル技術に適用しようとする試みを示しています。反トラスト法案は、ますます統合され集中する産業における市場支配力への懸念を示唆しています。この時期は、動的に変化するICT環境において、イノベーション、競争、公共アクセスをバランスさせようとする、政策立案者にとっての適応段階を示しています。

 

5. サイバーセキュリティの状況

 

 

5.1. APECによるサイバーセキュリティ対策の強化

 

2003年10月、APEC加盟国は、増加するサイバー攻撃に対抗するため、国内のサイバー犯罪対策ユニットと国際的なハイテク支援連絡窓口を同年10月までに設置することに合意しました。また、政府や企業に助言を行うCERTコーディネーションセンターも設立されました。いくつかの開発途上国は、サイバーセキュリティ対策の強化に向けた支援を受けることになりました 9。この取り組みは、「インターネット攻撃の頻度、巧妙さ、規模が増加している」という懸念に起因しており、APECの自由貿易・投資目標が脅かされる危険性があるという認識に基づいています 9

このAPECの取り組みは、サイバーセキュリティが単なる技術的なIT問題ではなく、急速に戦略的な地政学的および経済的懸念へと昇格したことを示しています。国際協力と開発途上国における能力構築への重点は、サイバー脅威が国境を越えるものであり、世界の商業と安定を守るためには集団的な防御が必要であるという理解を示唆しています。この時期は、反応的なインシデント対応から、グローバル経済に対するサイバー脅威がもたらすシステム的なリスクを認識し、積極的かつ国際的に調整されたサイバーセキュリティ政策とインフラ開発へと移行したことを示しています。

 

5.2. 注目すべきハッキング事件と脆弱性

 

2003年には、ハクティビストグループ「Anonymous」が結成されました 14。これは、サイバーセキュリティとデジタルアクティビズムの分野における、重要ではあるが論争の的となる存在の起源を示しています。また、2003年10月には、英国当局が企業に対して「なりすまし(spoofing)」について警告を発しました 3。これは、サイバー攻撃の一般的な経路であるオンライン通信におけるなりすましに関する継続的な懸念を浮き彫りにしています。

この時期は、従来の金銭目的の犯罪者や国家支援型のアクターを超えたサイバー脅威の多様化を示しています。ハクティビズムの出現は、イデオロギー的な混乱という新たな側面を加え、なりすましのような基本的な、よく知られた脆弱性が依然として有効であることを示しています。これは、サイバーセキュリティ戦略が、様々な動機を持つ幅広い脅威アクターに対処するためにその範囲を広げ、一般的な攻撃ベクトルについてユーザーを継続的に教育する必要があることを示唆しており、脅威の状況が成熟しつつも、ますます複雑化していることを示しています。

 

6. 外部イベントが技術に与える影響

 

 

6.1. 2003年ハロウィーン太陽嵐:衛星、GPS、通信への影響

 

2003年10月下旬、史上最大級の太陽フレア(10月28日)を含む一連の巨大な太陽嵐が地球を襲いました。これにより、過去70年間で6番目に強い地磁気嵐が発生しました 6。これらの嵐は、世界中および宇宙の技術システムに広範な混乱を引き起こしました。

地球軌道上の宇宙機の半数以上が影響を受け、衛星テレビやラジオサービスが断続的に中断されました。日本の科学衛星は修復不能な損傷を受け、いくつかの深宇宙探査ミッションはセーフモードに入ったり、完全にシャットダウンしたりしました。国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士は、高レベルの放射線から身を守るために退避しなければならず、これはミッション史上2度目の出来事でした 6

通信面では、北極上空を飛行する航空便で通信障害が発生し、運航が中断されました。南極の科学グループは5日以上にわたる完全な通信遮断に見舞われました。測量、深海・陸上掘削、その他の航空便で使用されるGPSシステムも影響を受けました 6

この出来事は、現代のICTインフラの脆弱性と相互接続性を鮮明に浮き彫りにし、自然な地球外現象に対するその感受性を露呈しました。これは、技術の進歩にもかかわらず、衛星ナビゲーション、グローバル通信、宇宙探査といった重要なシステムが宇宙天気の影響を受けやすいままであることを強調しました。これは、より大きなレジリエンス計画、宇宙天気予報、そして敏感な電子機器のより堅牢なシールドの必要性を示唆しており、サイバーセキュリティ以外のリスクが、技術に依存する世界に同様に壊滅的な影響を与える可能性があることを強調しています。

 

7. 日本におけるICTの主要な動向

 

 

7.1. NTTグループの革新とインフラ開発

 

2003年10月24日、NTT持株会社は、次世代フォトニックネットワークを実現するGMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)と高度なIPサービスを提供するMPLS(Multi-Protocol Label Switching)の相互接続に世界で初めて成功したと発表しました 15。これは、全国規模での高品質かつ高信頼な映像通信を可能にするための重要な一歩でした。さらに、2003年10月23日には、NTT持株会社が「21世紀知的社会基盤の実現に向けた広帯域ネットワーク共同実験」を発表し、映画1本を1秒で送受信できる世界最高速の43Gbit/s実験回線の運用を開始しました 15。これは、超高速ブロードバンドに対するNTTのコミットメントを示すものでした。

一方で、2003年10月31日、NTT東日本は、初期化が未実施のIP電話対応機器が誤って顧客に送付された件について謝罪し、対応を発表しました。これにより、誤ったインターネット接続やIP電話サービスの使用につながる可能性がありました 15。これは、IPベースの新しいサービスを大規模に管理・展開する上での課題を浮き彫りにしました。

これらの成果は、段階的な改善ではなく、ネットワークアーキテクチャにおける根本的なブレークスルーを意味します。NTTを通じて、日本はネットワーク速度とインテリジェンスの限界を積極的に押し広げ、将来のブロードバンドおよびIPサービスを定義する技術に投資していました。これは、高度な電気通信インフラにおける競争力を維持するという国家的な戦略的焦点を示しており、日本が既存の技術を採用するだけでなく、ネットワーク革新におけるグローバルリーダーとしての地位を確立していることを示唆しています。

 

7.2. ソフトバンクBBのブロードバンドサービス拡大(「Yahoo! BB」)

 

ソフトバンクBB株式会社は、2003年10月末に「Yahoo! BB」総合ブロードバンドサービス進捗レポートを発表しました 16。このレポートは、同社のブロードバンドサービスの成長と拡大を詳細に報告したもので、IP電話サービス「BBフォン」は2003年9月までに300万ユーザーを超えていました 16

さらに、ソフトバンクBBは、2003年10月27日に日本オラクルと協業し、ブロードバンドIPネットワークと「Oracle 10」を組み合わせた「ユーティリティコンピューティングサービス」を提供し、「次世代コンピューティング環境」を構築すると発表しました 16。また、2003年10月24日には、日本最大級のブロードバンド番組ガイドウェブサイト「Yahoo! BBブロードバンドガイド」を開設しました 16。ソフトバンクBBは、2004年1月に「BBフォンIPセントレックス」(仮称)の提供を開始する計画も発表しました。これは、約300万人の「BBフォン」ユーザー間の無料通話を提供し、企業の通信コストを大幅に削減するものでした 16

ソフトバンクBBの戦略は、単にインターネットアクセスを提供するだけでなく、ブロードバンドを中心とした包括的なエコシステムを構築することでした。IP電話の急速な成長とIPセントレックスの計画は、IP上での音声サービスの積極的なコモディティ化を示唆しており、従来の通信モデルに挑戦するものでした。コンテンツガイドやユーティリティコンピューティング事業は、コアとなるブロードバンド接続の上に付加価値サービスを重ねることを示しており、顧客のデジタルライフスタイルと企業ニーズをより多く取り込もうとしていました。これは、プロバイダーがバンドルサービスや統合ソリューションを通じて差別化を図ろうとする、競争の激しい日本市場を示唆しています。

 

7.3. NTTドコモのモバイルデバイスとサービス開発

 

2003年10月31日、NTTドコモは、コンパクトフラッシュカード型FOMA(3G)端末「P2402」の開発を発表しました。この端末は、PCとのビデオ通話を可能にし、高速パケット通信(下り最大384kbps)に対応していました 15。これは、この種のFOMA端末としては初の試みであり、PDAやPC向けに設計され、モバイルブロードバンドとコンピューティングデバイスの統合への取り組みを強調するものでした。

また、2003年10月27日には、NTTドコモとソニーがFeliCa事業に関する合弁会社の設立で基本合意に達しました。この提携は、「オープンなFeliCaプラットフォーム」を通じて新たなライフスタイルを提案することを目的としていました 15。FeliCaは、日本で広く利用されている非接触型スマートカード技術であり、特に決済や交通機関で活用されていました。この協業は、その応用範囲を拡大することを狙いとしていました。

これら2つの開発は、日本のモバイル技術融合における明確なリーダーシップを浮き彫りにしています。P2402 FOMAカードの開発は、モバイルブロードバンドがパーソナルコンピューティングの延長として見なされ始めた初期段階を示しており、統合型スマートフォンの先駆けとなりました。FeliCa事業の合弁会社設立は、決済や認証を中心に、非接触技術を日常生活に組み込むという戦略的な動きを示しており、世界のトレンドに先駆けていました。これは、通信キャリアとハードウェアメーカー間の強力な連携によって、モバイル技術が通信を超えてデジタルサービスや日常取引の中心的なプラットフォームへと急速に進化している、日本独自の市場を示唆しています。

 

7.4. 北九州市のIT拠点都市への変貌

 

2003年10月、福岡県北九州市は、鉄鋼需要の低迷への対応として、「eソーシング」を通じて新たな産業と雇用を創出することを目指し、一大IT拠点都市へと積極的に変貌を遂げつつありました 17。同市は、2002年7月に「北九州e-PORT構想」を策定し、2002年8月までに日本テレコム主導のインターネットデータセンター(IDC)を設立していました。その目標は、中小企業が低コストでITを導入できるよう支援し、IT関連産業を育成する「eソーシング」という新しいIT産業を創出することであり、「地域活性化モデル」として注目を集めていました 17

この事例は、伝統的な重工業に依存していた地域が、ICTインフラとサービスへの戦略的投資を通じて多様化を追求するという、より広範な経済トレンドを示しています。中小企業のIT導入支援を目的とした「eソーシング」モデルは、地域におけるデジタル変革を促進し、新たな雇用機会を創出することに焦点を当てていることを示唆しています。これは、ICTがそれ自体の一産業としてだけでなく、地域経済の活性化と知識ベース経済への移行を促進する触媒としての役割を強調しています。

 

7.5. 災害対策ICT研究(NICT)

 

2003年10月、情報通信研究機構(NICT)は、消防庁消防研究センターと共同で、マルチホップおよびアドホック機能を備えた無線LANアクセスポイントを用いた音声通信実験を実施しました 18。これらの機能は、損傷した建物内からの高速データ通信が可能な消防署用無線機、通信インフラが途絶した災害地域における移動局間の通信、および緊急本部での一時的なLANシステムでの使用に可能性を秘めていると特定されました 18

この取り組みは、災害対応と公共安全におけるICTの極めて重要な役割に対する国家的な戦略的認識を示しています。商業的な進歩とは異なり、この研究は、従来のインフラが機能しない状況下で通信とデータフローを維持するという緊急の必要性によって推進されています。これは、特に災害の多い国である日本において、経済成長を超えたICTの社会的価値を強調し、極限状況に対応できる堅牢で適応性の高い通信システムを構築するための積極的なアプローチを浮き彫りにしています。

 

7.6. 日本におけるドメイン名とインターネットサービスニュース

 

2003年10月には、日本のドメイン名関連で重要なニュースがいくつかありました。GMO「お名前.com」が、新たに開放された中国の「.cn」ドメインの登録を開始し、ファーストサーバが「.com」と「.net」ドメインの登録料金を国内最安値に値下げしました 3。これは、ドメイン登録市場における競争の激化と国際化を示唆しています。

また、ドメイン登録者の個人情報保護に関する議論も行われました 3。これは、インターネットコミュニティ内で高まるプライバシーへの懸念を反映しています。さらに、OCNのDNSが再び障害を起こし、100万人ものユーザーに影響を与えました 3。これは、インターネットインフラの安定性に関する継続的な課題を浮き彫りにしています。

表3:2003年10月における日本国内の主要ICTニュース

日付 企業/組織 イベント概要 関連情報源
10月3日 Python Software Foundation (PSF) Python 2.3.2リリース (グローバルニュースだが日本の技術シーンにも関連) 1
10月7日 ソフトバンクBB 「BBフォン」ユーザー数が300万人を突破 16
10月23日 NTT持株会社 世界最高速43Gbit/s実験回線の運用開始 15
10月24日 NTT持株会社 GMPLSとMPLSの相互接続に世界で初めて成功 15
10月24日 ソフトバンクBB 日本最大級のブロードバンド番組ガイドウェブサイト「Yahoo! BBブロードバンドガイド」開設 16
10月27日 NTTドコモ & ソニー FeliCa事業に関する合弁会社設立で基本合意 15
10月27日 ソフトバンクBB & 日本オラクル 「ユーティリティコンピューティングサービス」提供で協業 16
10月31日 NTTドコモ コンパクトフラッシュカード型FOMA「P2402」の開発を発表 15
10月31日 NTT東日本 「IP電話対応機器」の初期化未実施機器送付に関する謝罪と対応 15
10月全体 北九州市 鉄鋼業からITハブ都市への変革を推進 17
10月全体 情報通信研究機構(NICT) 災害対策ICTに関する研究実験を実施 18

これは、日本のインターネットエコシステムが急速な商業的拡大を遂げるとともに、規模と複雑性に関連する課題に直面していたことを示しています。ドメインサービスにおける競争は健全な市場を反映していますが、プライバシーに関する議論やDNS障害は、急速に拡大するデジタルインフラに内在する「成長痛」を明らかにしています。これは、普及が進む一方で、その基盤となる安定性とユーザー保護メカニズムがまだ発展途上にあり、継続的な注意が必要であることを示唆しています。

 

結論と展望

 

2003年10月は、ICT分野にとって非常にダイナミックで形成的な月であり、技術の進歩、戦略的な市場の変化、そして新たな政策課題が同時に発生しました。ブロードバンドと3Gの急速な導入は、モバイルインターネット時代の基盤を築き、ユーザーの行動を根本的に変化させ、新しいデジタル経済を可能にしました。マイクロソフトのような主要なソフトウェア企業は、成長するオープンソースとの競争に直面して戦略を適応させ、オープンソース運動自体も成熟度と企業での導入を拡大しました。VeriSign Site Finder論争のような重要な事件は、インターネットガバナンスと商業的革新と公共の利益のバランスを巡る継続的な議論を浮き彫りにしました。さらに、太陽嵐のような外部イベントは、技術に依存する世界の固有の脆弱性を強調し、レジリエンスに関する検討を促しました。特に日本は、次世代ネットワークインフラへの積極的な投資、革新的なモバイルソリューション(FeliCa)、およびITを通じた地域経済の多様化において際立っていました。

2003年10月に観察されたトレンドは、その後の20年間におけるICTの主要なテーマの多くを予見させるものでした。高速インターネットの普及、スマートフォンとモバイルファーストサービスの台頭、オープンソースソフトウェアの継続的な影響力、サイバーセキュリティの極めて重要な重要性、そしてインターネットガバナンスの継続的な進化です。デジタルデバイド、インフラのレジリエンス、イノベーションとユーザー保護のバランスといった、この時期に顕著であった課題は、今日に至るまで業界の軌跡を形成し続けています。この月は、デジタル変革を推進する力の縮図として機能し、私たちが現在暮らす相互接続されたデータ駆動型世界の舞台を設定したと言えるでしょう。

年収500~1000万円の仕事がなくなっていく米国

C Netの梅田さんの記事
もちろんアメリカでは,1千万以上の仕事がなくならないのだが,それを行っている人が,実はアメリカ生まれでなかったり,お父さん,お母さんはアメリカ生まれでない人に独占される可能性はある.
一方,日本では高い仕事ができる人になればよいという気持ちになることもあるかもしれないが,高い仕事が日本にこなくなる可能性がある.
いずれにせよ,競争はグローバルで行われている以上,ゆとり教育などといっていると,中国,インドに勝って高い仕事がやってくるわけがない.

固有IDのシンプル・シナリオ

もう各サイトで取り上げられている結城さんの固有IDのシンプル・シナリオ
固有IDについては,来秋からの授業で取り上げることは確定.そして結城さんの文章をテキストに決定.
結城さんの文章はわかりやすい.読みやすい.ポイントが抑えられている.これは誰の目にもあきらかであろう.
それらはどこからやってくるのか?
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Is Dean for Real?

さきほど千羽鶴を書いた.
アメリカでもネット関連でわけのわからないことになっているようだ.
TIMEの記事
米大統領選挙・民主党候補の指名獲得レースで大異変が起きている。泡沫候補に過ぎなかった元バーモント州知事のハワード・ディーン(54)が、ネットをテコに大躍進、ジョン・ケリー上院議員やリチャード・ゲッパート下院院内総務を相手にトップ争いを演じているのだ。
海外ボツ!News
これはLessingのブロッグが多分に影響を与えたのであろう.
ハワードディーンはレッシングが休みの際に代わりにブロッグを書きこんでいたのだ.
なんだかすごい時代になってきたものだ.