【速報】生体医工学シンポジウム2014

生体医工学シンポジウム2014が東京農工大学小金井キャンパスで開催されました。
研究室から下記の発表を行いました。
fNIRSを用いた言語の類似性が脳機能に及ぼす影響の検討
三島康平1、山本詩子2、廣安知之2(1同志社大学大学院生命医科学研究科、2同志社大学生命医科学部)
圧電セラミックセンサを用いたベッド上での行動検知システム
佐藤琢磨1、糠谷祥子2、山本詩子3、田中博4、廣安知之3(1同志社大学大学院生命医科学研究科、2東京医科歯科大学医歯学総合研究科、3同志社大学生命医科学部、4東京医科歯科大学難治疾患研究所)
fNIRS データに対する体動除去手法の比較
中村友香1、山本詩子2、廣安知之2(1同志社大学大学院生命医科学研究科、2同志社大学生命医科学部)
自動的に画像タグへの情報付加機能を持つ医用画像管理システム
西村祐二1、山本詩子2、廣安知之2(1同志社大学大学院生命医科学研究科、2同志社大学生命医科学部)

学会参加報告書

 報告者氏名 西村祐二
発表論文タイトル 学会参加報告書
発表論文英タイトル 自動的に画像タグへの情報付加機能を持つ医用画像管理システム
著者 西村祐二,山本詩子,廣安知之
主催 日本生体医工学会
講演会名 生体医工学シンポジウム2014
会場 東京農工大学 小金井キャンパス
開催日程 2014/09/26-2014/09/27

 
 
1. 講演会の詳細
2014/09/26から2014/09/27にかけて,東京農工大学にて開催されました生体医工学シンポジウム2014(http://www.tuat.ac.jp/~bmes2014)に参加いたしました.
このシンポジウムは生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的としています.
私は26日に公聴し,27日発表いたしました.本研究室からは他に廣安先生,中村,三島,佐藤琢磨が参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は27日の午後のセッション「医療システム」に参加いたしました.発表の形式は1分30秒のショートプレゼンテーションと1時間半のポスター発表となっておりました.
以下に抄録を記載致します.

近年,癌治療や診断技術の進歩による長寿命化や生活習慣の変化に伴い,複数の臓器に癌が発生する多重癌が問題となっている.そのため,定期的に検査を行い,癌の早期発見が非常に重要とされている.
現在,医師による癌の発見のための有力な診断方法として画像診断が行われている.しかし,診断対象となる臓器以外の情報は得ることができず,他で発生した癌を見落とすことが問題となっている.
そのため,診断画像に他の臓器の癌情報などを付加し,複数の臓器の解析情報をつなげることで,多重癌の見落としを防止することが必要である.これより,一枚の画像から他の臓器の情報取得を可能にし,病気の見落としを防止するシステムが求められる.
 
本稿では,画像解析を行った結果や他の画像情報を画像が持つメタデータに付加することで,他の画像の情報取得,見落とし防止を可能にするシステムを提案する.
提案システムで用いる画像として,患者情報など多くの情報を格納できるDICOM (Digital Imaging and Communications in Medicine)  画像を想定している.
ユーザは画像を提案システムにアップロードするだけで,自動的に画像解析が行われる.そして,得られた癌の発病確率などを複数の画像のメタデータへ付加し,ユーザへ通知が行われる.
これより,ユーザは対象としていない他の画像情報を得ることができ,病気の見落とし防止を補助する.
今回,提案システムの有用性を確認するために評価実験を行った.
提案システムの実装では個人情報やセキュリティの問題上,DICOM 画像ではなく,DICOM画像と同等の検討が可能なExif (Exchangeable Image File) データを含むJPEG 画像を対象としたシステムを構築した.
 

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1                                                               
北海道大学大学院保健科学院所属の木村勁介さんからの質問です.こちらの質問は実際に病院で利用されているのか?セキュリティは大丈夫なのか?というものでした.この質問に対する私の回答は,「まだ,医療機関関係者には利用されていません.今後,システムを利用してもらい,様々な意見を貰いたいと考えている.また,本発表ではセキュリティは含めていないが,実際に利用するとなるとVPN接続などネットワーク設定が必要である.」と返答しました.
 
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問はタグにはどんなデータを入れているのか?というものでした.この質問に対する私の回答では「画像の特徴量や,様々な情報を追加できる.ユーザにとって有用な情報を今後追加できるように検討する.」と返答しました.
 
2.3. 感想
ほとんどの人が他分野の研究をなされている人ばかり,とても勉強になる学会であった.また,通常知り合うことのできない他大学や企業の人達と知り合うことができた.発表に関してはwebビューアのセキュリティはどうなっているのか?など一般的な質問が大半でしたが現状の医療現場についてやアドバイスもいただけて大変よかった.今回,提案システムのムービーを用意していたので,そのムービーを見せながら説明を行った.やはり言葉で説明するよりも映像をみてもらうほうがよく理解してらえるなと感じた.ipadなどのタブレット端末は学会には必須だなと思った.また,様々な分野の研究を聴くことのできる学会なので,今後研究室からももっと多くの人に参加してほしいと感じました.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 臓器移植への応用を目指した過冷却保存法著者                  :松崎稜、木村元彦、大橋和義
セッション名       :人工臓器
Abstruct            :現行の臓器移植では、ドナーの臓器の長期保存が困難であるため、その提供の効率面に問題を抱えている。本研究では過冷却保存法に着目し、その基礎研究として、過冷却現象を安定して起こすための条件を決定することを目的とした。

この発表は臓器を長期保存するための基礎研究でした.この研究の手法は静磁場内に静置されたサンプルに対し、共鳴周波数をもつ交流磁場を印加することで、過冷却現象の促進、安定化するといったものでした.交流磁場を使用する点については,とても素晴らしい発想だと思います.特に再生医療などの分野への応用が可能であると感じられました.
 

発表タイトル       :ウェアラブルNIRSシステムの開発と筋ポンプ機能評価への応用著者                  :横溝良幸、高橋良介、田川信之介、西浦章起、星詳子、高橋英嗣
セッション名       :生体計測2
Abstruct            : NIRS(near-infrared spectroscopy)は, 生体透過性に優れた近赤外光を用いて生体組織の酸素化状態を体表面から非侵襲的に計測する技術である. 現在市販されている多チャンネルNIRS装置は, 装置が大型かつ高価であり, また計測用光学プローブと装置本体が多数の光ファイバーでつながっているため, 被験者の行動が大きく制限され, 運動時の計測や小児や精神疾患者等での計測が困難である. これらの問題を解決するためには,小型軽量で長時間身につけても邪魔にならないウェアラブルなNIRS装置が必要である. われわれは, 2チャンネルのウェアラブルNIRSシステム(saga university wearable NIRS, swNIRS)を開発し, その有用性を階段昇降時の下肢筋酸素ダイナミクスの無拘束連続計測から証明した.

この発表では小型のNIRSを開発する研究でした.これは従来とは異なり小型軽量で長時間身につけても邪魔にならないウェアラブルなNIRS装置で研究室で行われている研究に応用できるのではないかと感じました.
参考文献
1)    生体医工学シンポジウム2014, http://www.tuat.ac.jp/~bmes2014/home.html
学会参加報告書

 
報告者氏名
 
中村友香
発表論文タイトル fNIRSデータに対する体動除去手法の比較
発表論文英タイトル Comparison of Method for Removing Motion Artifacts from fNIRS Data
著者 中村友香,山本詩子,廣安知之
主催 日本生体医工学会 関東支部、北海道支部、甲信越支部、関西支部、中国四国支部、九州支部
講演会名 生体医工学シンポジウム2014
会場 東京農工大学 小金井キャンパス
開催日程 2014/09/26-2014/09/27

 
 

  1. 講演会の詳細

2014/09/26から2014/09/27にかけて,東京農工大学 小金井キャンパスにて開催されました生体医工学シンポジウム2014に参加致しました.この生体医工学シンポジウム2014は,日本生体医工学会 関東支部,北海道支部,甲信越支部,関西支部,中国四国支部,九州支部(http://jsmbe.org/)によって主催されたシンポジウムで,生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的として開催されています.今年度は,電気学会 医用・生体工学技術研究会が同時開催されていました.
私は26,27日ともに参加致しました.本研究室からは他に廣安先生,横内先生,西村,三島,佐藤が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は27日の午後のセッションGroup-2P 「生体信号処理」に参加致しました.発表の形式はショートプレゼンテーション2分,90分のポスター発表となっておりました.
今回の発表は,既存手法であるWienerフィルタを用いた体動除去手法を用いた場合と比較し,提案手法であるICAと加速度センサとの相関を用いた体動除去手法で精度が向上したというものです.以下に抄録を記載致します.

fNIRS (functional near-infrared spectroscopy) 装置は,脳活動に伴う脳血流変化を計測する.しかし,頭部の動きや傾斜などの体動による脳血流変化が脳活動として誤認される可能性がある.そのため,fNIRSデータから体動成分を除去する必要がある.以前我々は,fNIRSデータの遅れ時間を考慮し,ICA (independent component analysis) を用いた体動除去手法を提案した.しかしICAによるfNIRSデータの分離信号と加速度の相関が低く,体動成分の特定が困難であった.そのため,本稿では体動成分の特定に相関係数だけではなくt検定を用いた手法を提案する.また提案手法の有効性を検討するため,既存手法であるWienerフィルタを用いた体動除去手法との比較を行う.

 

  • 質疑応答

今回のポスター発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問は,fNIRSについてで,何を使用して計測しているのか,どこを測っているのか,頭蓋骨の影響は受けないのか,というものでした.この質問に対して,fNIRSは近赤外光を使用し,大脳皮質の脳血流変化を計測している,近赤外光であるため頭蓋骨は透過し影響は受けない,と回答しました.
 
・質問内容2
質問は,体動は生じるのか,口の動きによる成分も除去することができるのか,どのような体動が一番脳血流に影響を与えるのかというものでした.この質問に対して,被験者に静止をお願いしても動いてしまうことがある,加速度センサで動きを計測することができれば除去することができる,大きな動きが脳血流に最も影響を与える,と回答しました.
 
・質問内容3
質問は,タスクがない場合はどのような結果が得られるのか,というものでした.この質問に対して,体動による大きな脳血流変化を除去することができ,脳活動による脳血流の増加は見られないという結果が得られる,と回答しました.
 
・質問内容4
質問は,正解はどうやってわかるのか,というものでした.この質問に対して,今回は体動を含まず暗算の計算タスクのみを行っているデータを計測している,と回答しました.
 
・質問内容5
質問は,タスクによる脳活動は残っていたか,というものでした.この質問に対して,提案手法においてタスクによる脳活動は除去されずに残っていた,と回答しました.
・質問内容6
質問は,どのような実験をやったのか,というものでした.この質問に対して,暗算の足し算の計算タスク中に眠気による大きな頭部の動きを想定した体動を生じさせた,と回答しました.
 
・質問内容7
九州大学の方の質問です.質問は,ICAによる分離信号のうち何個を体動として除去しているのか,ΔSNRおよびΔCCはどれくらいの値になるのか,というものでした.この質問に対して,18個の分離信号のうち11個の分離信号を体動とみなし除去している,参考文献中では体動除去後のΔSNRは2.0~9.0,ΔCCは0.001~0.45の値である,と回答しました.また,コントロール群のデータをたくさん計測し体動除去後のデータとヒストグラムを作って比較してはどうか,被験者を増やし既存手法と提案手法のΔSNRおよびΔCCの値で検定を行い有意差があるといいのではないか,というアドバイスをいただきました.
 
・質問内容8
横内先生からの質問です.質問は,実際の計測者に体動除去手法を使用してもらい,手法や結果を評価してもらうとどうなるのか,この手法を適用できるため実験前に被験者に静止の指示をしなくてもよい,その結果実験中の被験者の緊張感がなくなりリラックスができるようになるか,というものでした.この質問に対して,今後検討していきたい,と回答しました.
 
・質問内容9
質問は,ICAはどのように計算しているのか,どのようにして体動や脳活動がわかるのか,加速度センサの種類と大きさはどのようなものか,脳血流ではない体動も除去することができるのか,というものでした.この質問に対して,予備資料を用いながらICAの原理や計算方法について説明しました.また,ICAによる分離信号と加速度センサの信号を相関係数で比較することにより体動成分を特定している,加速度センサはATR-Promotions社製のTSND121で37mm(W)×46mm(H)×12mm(D)の22gである,脳血流ではない体動も加速度センサのようなセンサで計測することができれば提案手法を用いて体動成分のみを除去することができのではないか,と回答しました.
 

  • 感想

昨年度参加した際にたくさんお話をした方ともう一度お会いすることができ,覚えていただけており,話しかけていただきとてもうれしく思いました.また,研究に関するディスカッションを今年度も行うことができました.NIRSや信号処理をはじめ様々な分野のたくさんの発表を聞くことができ,とても勉強になりました.また,私の発表では提案手法を使ってみたいといって聞きに来て下さる方がとても多かったように思います.ポスター発表であったため,発表者と質問する方で直接会話ができるため,質問だけでなくアドバイスをいただけ,ディスカッションもたくさんすることができました.特に自分が興味を持った研究では疑問点や知りたいことなど納得がいくまで話を聞くことができ,とてもよかったです.とても有意義で充実した時間を過ごすことができました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル          : 音楽聴取中のリズム変化に対する脳磁界活動の評価
著者                     : 竹下悠哉,横澤宏一
セッション名       : 脳・神経機能
Abstruct : 音楽聴取が心身に与える影響の研究は100年以上前からおこなわれているが,いまだに一定の成果を示せていない.音楽聴取による心身への影響は低侵襲な方法で測定する必要があり,心拍数や心拍変動解析による自律神経指標を使用することが望ましいと報告されてきた.しかし,これらの測定法では時間分解能という点から,音楽の重要な要素である旋律の評価が行えない.そこで本研究では,聴取楽曲中のリズム変化がどのように知覚されるかを検討するため高い時間分解能を有するとともに脳内の活動源推定が可能な脳磁計(Magnetoencephalography,MEG)を用いて楽曲聴取中のリズム変化による脳磁界応答を記録した.

この研究では,一定のリズムの中で付点を用いてリズムを前後にずらした時の脳内活動をMEGにより検討されていました.リズムを前にずらした際に大きな反応が見られていました.これは音を聞いてからの反応ではなく,期待による影響ではないかと言われていました.音楽療法の即興演奏で注意を向けたいときなどに用いることができるのではないかとのことです.また,現在はsin波の音を用いているのでピアノなどでも検討していきたいとのことでした.少しリズムがずれるだけで脳活動が変化することにとても興味を持ちました.
 

発表タイトル          : Inspection of the head movement artifact removal method from EEG by ICA and filtering
著者                  : Kazuki Onikura,Keiji Iramina
セッション名       : 脳・神経機能
Abstruct : Artifacts which contaminate EEG signals make it difficult to analyze EEG. The aim of this study is the removal of artifacts, especially those caused by motion, to be able to measure EEG in any situation.
In previous study, motion artifact components were separated by Independent Component Analysis (ICA) from EEG which contained artifacts and artifact components were detected by values of accelerometer. This method had several problems, so we introduced an improved artifact removal method which based on ICA and filtering.

この研究では,EEGのデータに対するICAとフィルタを用いた動きによる体動除去手法を提案されていました.ICAを適用する時間幅の検討も行われていました.また,体動の特定には加速度と角速度との相関,2倍の標準偏差を用いられていました.ICAで体動とみなされた成分にも脳波が含まれているのでhigh pass filterを用いてよりアーチファクトの選択的除去を実現されていました.体動の種類は被験者に指示していないそうです.体動除去の評価に迷われていました.
 

発表タイトル       : ウェアラブルNIRSシステムの開発と筋ポンプ機能評価への応用
著者                  :横溝良幸,高橋良介,田川信之介,西浦章起,星詳子,高橋英嗣
セッション名       : 生体計測II
Abstruct : NIRS(near-infrared spectroscopy)は, 生体透過性に優れた近赤外光を用いて生体組織の酸素化状態を体表面から非侵襲的に計測する技術である. 現在市販されている多チャンネルNIRS装置は, 装置が大型かつ高価であり, また計測用光学プローブと装置本体が多数の光ファイバーでつながっているため, 被験者の行動が大きく制限され, 運動時の計測や小児や精神疾患者等での計測が困難である. これらの問題を解決するためには,小型軽量で長時間身につけても邪魔にならないウェアラブルなNIRS装置が必要である. われわれは, 2チャンネルのウェアラブルNIRSシステム(saga university wearable NIRS, swNIRS)を開発し, その有用性を階段昇降時の下肢筋酸素ダイナミクスの無拘束連続計測から証明した.

この研究では,ウェアラブルNIRSを作成し,階段昇降時の下肢筋の計測を行われています.静脈圧の変化を,カテーテルを使用せずに計測が可能となるそうです.しかし,装置を付ける位置で再現性が低いところが残念に思いましたが,傾向はみることができるそうです.小型であるため,どのような場所でもどのような部位でも計測することができ,とても便利であると感じました.階段昇降時の計測を行われていましたが,体動の影響は受けないのかが気になりました.
 
参考文献