【速報】第43回日本磁気共鳴医学会大会

2015/09/10から2015/09/12にかけて,東京ドームホテルにて開催されました第43回日本磁気共鳴医学会大会に下記の学生が発表しました。
小淵将吾 ワーキングメモリの負荷量による脳内ネットワークの変化
石田和 ファントム溶液と撮像環境が神経追跡手法に及ぼす影響の検討
大谷俊介 DTIとfNIRSデータを用いた脳活性部位間の神経線維3D描画システムの構築

学会参加報告書

 報告者氏名 小淵将吾
発表論文タイトル ワーキングメモリの負荷量による脳内ネットワークの変化
発表論文英タイトル Load amount difference of working memory affects functional connectivity
著者 小淵将吾,岡村達也,田中美里,山本詩子,廣安知之
主催 日本磁気共鳴医学会
講演会名 第43回日本磁気共鳴医学会大会
会場 東京ドームホテル
開催日程 2015/09/10-2015/09/12

 
 

  1. 講演会の詳細

2015/09/10から2015/09/12にかけて,東京ドームホテルにて開催されました第43回日本磁気共鳴医学会大会に参加いたしました.この大会は,磁気共鳴医学会によって主催され,”I love MRI”のテーマのもと,基礎から臨床現場までの幅広い方々が集まり,modalityとしての進歩,臨床のエビデンスや標準化,現場での創意工夫などの分野でお互いに情報を交換する場となることを目的に開催されています.
私は全日参加いたしました.本研究室からは他に大谷俊介さん,石田和さんが参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は10日の午後のセッション「脳MRS fMRI」に参加いたしました.発表の形式はポスター発表で,3分の講演時間と3分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は, N-back課題を用いて,ワーキングメモリの負荷量を変化させることにより,機能的コネクティビティはどのように変化するのかを検討しました.以下に抄録を記載致します.

【目的】認知活動は機能的結合のネットワークにより形成される.ワーキングメモリ(WM)は情報の処理と保持を担う高次認知機能の記憶システムである.このWMには個人により異なる容量が存在し,文章読解力や論理的推論能力など広範な認知機能との関連があると報告されている.WMの神経基盤はfMRIを用いて,脳領域における脳活動を推定することで研究されてきたが,領域間における情報伝達のネットワークに関してはまだ解明されていない.本研究では,WM負荷量による脳内ネットワークの変化をグラフ理論に基づいた解析手法を用いて検討する.【方法】
本実験では,健常者12名 (男性7名,女性5名; 平均年齢21.3±0.65歳) を対象に行った.N-back課題時(N = 2 and 3)の脳活動を1.5 TのMR装置を用いて取得した.データ解析はSPM8を用いて前処理を行ったのちに,脳活動領域における機能的結合を解析するためconnを用いた.脳領域をAutomated Anatomical Labeling(AAL)より区画分けを行い,それぞれの領域間の脳活動の相関係数を算出し,ネットワークを解析するため,脳領域をノード,領域間の相関をエッジとしてグラフを構成し解析を行った.その際クラスタ分割の質を定量化するModularityを用いて脳領域のクラスタリングを行った.さらに,領域の中心性を示すBetweenness centralityを用いて,ハブ領域を推定した.
【結果・考察】
2-backと3-back課題時の平均正答率はそれぞれ93.85±5.50 %と84.69±6.15 %であり,有意な差があることが示された(t(11) = 4.51, p < 0.01).
2-backと3-backのModularityの最大値はそれぞれ0.3277と0.3494となり,116の脳領域は4クラスタと3クラスタに分割された.これにより,WM負荷量により脳内のネットワーク形成が異なることが示唆された.また,2-backのみに前頭と頭頂のネットワークにおいて高い脳活動の相関がみられたことから,負荷量が適切な場合,前頭と頭頂の機能的結合が形成されると考えられる.一方でBetweenness centralityが最大の領域,つまりハブ領域は2-backと3-backともに側頭葉と小脳の一領域であり,差異がないことから,WMの基礎的なネットワークは側頭葉と小脳を中心とした機能的結合により形成されることが考えられる.
以上より,WM負荷量によって脳内ネットワークは変化することが示された.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問はグラフ理論の特徴量によってどのようなことが結論として言えるのかというものでした.この質問に対する私の回答はModularityという指標で脳内のクラスタが異なること,つまりワーキングメモリの負荷量によって,機能的な繋がりが変化していることがいえると回答しました.
 
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は4-backでのデータはないのかというものでした.この質問に対する私の回答は正式なデータは撮っていない,しかし数人の行動データでは成績は3-backよりも低いものであったと回答しました.

  • 感想

時間内に簡潔にまとめられた発表ができたと感じました.脳内のネットワークに関する質問もあり,充実した発表でした.しかし,臨床にどのように応用していくのかなど,周辺知識がまだたりないことを痛感いたしました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : Multi-band GE-EPI法を用いた脳機能イメージングにおける最適パラメータの検討著者                  : 菅原翔, 福永雅喜, 小池耕彦, 濱野友希, 滝沢修, 定藤規弘セッション名       : 脳MRS fMRI
Abstruct            : ミネソタ大学で開発されたMulti-band (MB) GE-EPI法(Moeller et al., 2010)は、多重励起パルスによる複数スライスの混合信号を、多チャンネルコイルの持つ感度分布を利用して単スライス画像に分離する方法である。本法は、従来よりも遥かに短いTRで全脳撮像を可能にする。fMRIでは、TR短縮に伴う単位時間あたりのサンプル数増加は、統計解析上の検出力を向上させる。一方、同時励起スライス数の増加は、送信系への負荷を増大させるとともにスライス分離精度の低下をもたらす。本研究では、MB GE-EPI法を用いて、同時励起スライス数の増大が機能的信号雑音比とスライス間の分離精度に与える影響を検討し、脳機能解析を想定した撮像パラメータの最適化を行った。
測定は、3T-MRI装置(Verio, Siemens, Germany)および32ch head coil、標準 phantom (NiCl2 – CuSO4) を使用した。実験1では、同時励起スライス数を1から14まで変化させ(MB factor = 1 – 14)、TRは各MB factorにおける最小値を採用した(221 – 2,560ms)。それぞれのMB条件での3分間の計測より得られた信号値の時系列平均を、TRから算出されるサンプル数を考慮した時系列標準誤差で割った値を機能的信号雑音比とし、条件間で比較した。その結果、機能的信号雑音比は同時励起スライス数とともに上昇するが、MB factor = 6でプラトーに達することが示された。実験2では、TR = 15s に固定しimage SNRを一定に保った上で、MB factor を1から14まで変えて撮像を行った。各MB factorとMB1で撮像した同一スライスの信号強度比を計算し、ランダム・ノイズに由来する誤差範囲に収まるボクセル数をスライス分離精度の指標として比較した。その結果、スライス分離精度は同時励起枚数が増えるとともに線形に低下した。以上の結果から、機能的信号雑音比とスライス分離精度を考慮すると、予想される神経活動の効果量に応じてMB factor = 6(最小TR = 501ms)を上限としてパラメータを設定することが望ましいと考えられる。

この発表はMulti-band GE-EPI法で撮像したfMRI画像の最適パラメータを探索するという発表でした.従来,パラメータに関しては経験則で決めていたが,機能的信号値の雑音比の比較,スライス間分割制度の比較を行い,最適なパラメータを検討していました.比較方法が勉強になったため,通常のGE-EPI法で試すことにより、同志社におけるMRIの最適パラメータを算出したいと感じました.
 

発表タイトル       :Multi-Band EPI を用いた Q-ball imaging tractography による錐体路描出と新たな比較法の提案著者                  : 鈴木雄一, 國松聡, 三津田実, 神谷昂平, 丸山克也, Yacoub Essa, 渡辺靖志, 更科岳郎, 井野賢司, 佐藤次郎, 矢野敬一, 大友邦セッション名       : 拡散トラクトグラフィー
Abstruct            : 【目的】撮像時間が短縮可能な多断面同時励起かつ同時信号収集技術であるMult-Band(MB) EPIを併用してDWIを撮像し、Q-ball imaging(QBI)を用いて錐体路tractographyを描出し、どのような特徴や傾向が生じるか検討した。またtractographyの評価法についても検討した。
【対象と方法】対象は健常人ボランティア男性12名(平均年齢28.3歳)。使用装置はSiemens 1.5T MRI MAGNETOM Avanto B17。従来法としてDWIをMPG 64軸、b-value 3000 [s/mm2]、2.8mm等方性ボクセル、撮像時間8分49秒で撮像し、錐体路を描出した。またMB factor=2(2枚同時励起同時撮像)を使用して5分27秒に撮像時間のみ短縮した時間短縮法と、時間短縮した分MPGを104軸に増加し、撮像時間8分51秒のMPG増加法とでそれぞれ錐体路QBI tractographyを描出し、従来法との類似度としてDICE係数を求めた。またtractographyでは用いられていないが、画像や構造の類似度を表現できるSSIM(Structural SIMilarity)も算出、さらにそのSSIM mapを作成し、tractographyの類似度検証にも応用可能か検討した。
【結果および考察】全例において錐体路を描出することが可能であったが、MB-EPIを併用した場合、描出体積は従来法に比べ減少傾向であった。DICE係数は、時間短縮条件で0.632、MPG増加条件で0.669あった。またSSIMでは0.939、および0.940であり、ほぼ差が無いという結果になった。またDICEとSSIMとの相関係数は0.64、寄与率は0.41となり正の相関が認められた。
【結論】MBF=2のMB EPIを併用することで、時間短縮法の撮像時間は従来法に比べ約40%短縮可能であった。しかしQBI錐体路tractographyの描出類似度は、従来法の約65%だった。一方MPG増加法も、同程度の構造類似度を示し、MPGを増加させても大きな差が生じなかった。またSSIMにおいても同様の傾向を得ることができた。従って、今回の検討ではMPG印加軸数の増加のメリットはほとんどなかったと言え、tractography評価においてSSIMを用いた評価の可能性が示唆された。

この発表はMulti-Band EPIを用いたトラクトグラフィーのためのQ-ball imagingにおける画像精度の比較を検討した発表でした.トラクトの比較として従来使用されていたDICE係数に加えSSIMを用いていました.今後のトラクト比較においてこれらの係数が使用できると考え,勉強になりました.
 

発表タイトル       : MRIから迫る脳科学 Overview著者                  : 定藤規弘セッション名       : MRIからせまる脳科学
Abstruct            :MRIを脳科学研究に適用する潮流の画期は1990年代初頭のBOLD法開発であった。1980年代、入力を心理的差分法による課題で制御し、出力たる神経活動を脳血流としてO-15標識水PETを用いて計測することより、特定の心的過程に対応する脳領域を画像化する方法(差分法による脳賦活検査)が確立していた。1990年代に入り、BOLD法による機能的MRIの確立と共に脳機能地図の研究は急速に一般化した。MRIの提供する高分解能の解剖学的情報の上に、経頭蓋磁気刺激や経頭蓋直流電気刺激などによる神経活動への干渉結果とBOLD法による結果が統合されることにより、機能性検証を含めた脳機能地図の研究は大幅に進んだ。脳機能地図の研究は、脳血流のみならず灰白質密度を測度としても可能であり、統計数理的解析手法の開発により局所脳構造と長期的な学習結果、あるいは遺伝子多型の関係をも定量的に扱われるようになった。PETに比べて時間的解像度に優れる機能的MRIによって、局所神経活動のゆらぎを領域間での相関として捉えるネットワーク解析が可能となった。ネットワーク解析においても、差分法による脳賦活検査と同様に特定の心的状態への対応づけが重要であり、機械学習を用いた手法の開発と適用が進んでいる。さらに、拡散強調画像法を用いた神経線維描出によってヒト全脳の白質構造が明らかになりつつあり、機能的なネットワーク解析の解剖学的基盤を与えるものである。以上のようにMRIの及ぼす脳科学へのインパクトは甚大である。今後も、新しい計測手法の開発と、得られた画像データへの統計数理的解析手法の適用が相まって、ヒト脳機能解明を究極のゴールとして展開していくものと予想される。特に、コホート調査によって、ヒト脳機能を発達から老化にいたる生涯の時間軸に沿って理解するにあたり、MRIは重要な役割を果たすことが期待される。その際に機能・解剖画像の定量的バイオマーカー化が重要な課題となるであろう。

この発表はMRIを用いた脳科学研究の解説でした.初期の解析方法や,現在の解析などを時系列に紹介していただきました.概要は把握できたため,今後詳細情報についても勉強し,解析の提案に役立てたいです.
 
参考文献

  • 第43回日本磁気共鳴医学会大会, https://confit.atlas.jp/guide/event/jsmrm2015/top

学会参加報告書

報告者氏名 石田和
発表論文タイトル ファントム溶液と撮像環境が神経追跡手法に及ぼす影響の検討
発表論文英タイトル Analysis of phantom solution and imaging environment-The effect for the nerve fiber tracking method-
著者 石田和,山本詩子,廣安知之
主催 日本磁気共鳴医学会
講演会名 第43回日本磁気共鳴医学会大会
会場 東京ドームホテル
開催日程 2015/09/10-2015/09/12

 
 
 

  1. 講演会の詳細

2015/09/10から2015/09/12にかけて,東京ドームホテルにて開催されました第43回日本磁気共鳴医学会大会に参加致しました.本学会では,MR医学に従事する学生や研究者,また,医療関係の従事者によって,核磁気共鳴に関わる新しい知見や技術の報告や今後の臨床応用についての議論が行われました.また,MRにおける撮像環境やシーケンス,臨床的な実験だけでなく,MRI撮像時の被験体として用いられるファントムの研究等も増加傾向にあり,より高度な議論が求められている学会です.
私は10,11,12日の3日間参加いたしました. 本研究室からは他に, M2の小淵さんと大谷さんが参加しました.
 
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は10日に行われました「拡散・トラクトグラフィー」のポスターセッションに参加致しました.発表の形式は,講演時間が3分間と質疑応答が3分間の計6分間の発表時間でした.
今回の発表は,ファントム溶液と撮像環境が神経追跡手法に及ぼす影響の検討という題で発表しました.発表内容は神経線維追跡手法における手法精度の検討を支援することの出来る被験体である塩化鉄水溶液を用いたファントムを作成し,また撮像環境による違いも神経繊維追跡精度の影響しているのかの検討も行いました.詳細に関しましては以下に抄録を記載致します.

抄録中身【目的】DTI解析による神経線維の走行の推定においては,線維周辺の水分子の拡散情報を用いて神経線維の走行方向を推測し描画を行う.その際,描画された神経線維と実際の脳内の神経線維の構造が一致しない可能性が存在する.また,実物と取得データとの比較のための被検体には死後脳や動物モデルを用いるケースがあるが,保存や再現性の問題がある.そこで本研究では,脳の神経線維を模擬した再現性のあるファントムを作成した.さらに,撮像時におけるパラメータの違いとファントム溶液の違いが神経追跡に及ぼす影響の検討を行った.これは,撮像環境やファントム素材が撮像データに影響を与えることで,神経追跡に影響を及ぼす可能性がある.【方法】撮像実験には日立メディコ社製ECHELON Vega 1.5 T MRI装置を用いた.撮像パラメータは,パラメータA をTR/TE 2923/90.4 ms,Voxel size 1.88×1.88×3 mmと設定し,パラメータB をTR/TE 2923/90.4 ms,Voxel size 3×3×3 mmと設定した.ファントムは直径約5.3 μmの中空糸(東レ製)を用い比較的単純な構造である直線構造の神経線維束を模して作成した.ファントム溶液には造影効果が期待される塩化鉄水溶液と,純水を用いて比較検討を行った.比較項目として,信号対雑音比 (SNR),平均FA値,追跡された線維の長さの平均を指標として調査を行った.また線維追跡における神経追跡手法にはEuler法を用いた(FA > 0.25,変化角 < 90°).
【結果・考察】純水,塩化鉄水溶液共にパラメータBによる撮像データの方が,SNR,平均FA値が共に高い値を示す傾向が見られた.よって,パラメータBにおけるデータはパラメータAにおけるデータよりもノイズが少なくFA値が全体的に高い値を示すデータが得られると考えられる.また,純水より塩化鉄水溶液を入れたファントムでSNRが高い結果が得られた.これは,塩化鉄水溶液に含まれる金属イオンの常磁性から得られる造影効果が影響し,プロトンの緩和時間を短縮させ,信号強度が高くなったためであると考えられる.よって,塩化鉄水溶液をファントム溶液として用いることで線維追跡を行う描画手法の検討に際して,より信頼性のあるデータを提供できると考えられる.

 
 
 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
東京大学 医学部 付属病院 放射線部 所属の鈴木雄一さんからの質問です.こちらの質問は,「今回作成したファントムにおいてfiber trackingした結果,fiberの長さは均一になっているのか?また,今回のfiber trackingにおけるFA値の閾値は?また,塩化鉄を用いているが作成ファントムの保存や再現性は大丈夫なのか?」というものでした.この質問に対する私の回答は,「現状,均一かどうかの判断は描画された結果から目視で判断するしかないため,目視では均一であったと思われる.FA値の閾値は0.2以上です.また,塩化鉄を用いているため保存には限界があると考えられる.再現性に関してはまだ検討できていません」というものでした.
 

  • 感想

今回,中空糸を用いてファントムを作成したということ自体は,聴衆に伝えることが出来たと思いますが,結果で,fiber trackingの結果を載せていなかったことから,どのくらいの精度が得られるファントムなのかが正確に伝わりきらなかったのかなと思います.また,今回の発表内容では次ブウの研究してきた分野ではないことから,圧倒的にファントムの作成における知識量が足りなく,有意義な議論の場に引きこむことが出来なかったと感じます.次回の研究発表の場では,聴衆が聞きたい,見たいと思える結果をしっかりと提示,自分の研究でも,他の研究でも前知識を整え,より活発な議論が行えるように準備したいと思います.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル    :Diffusion Tensor Imagingを用いた性能評価用ファントムと自動解析ソフトウェアの開発著者                  : 橘篤志, 岩尾悠真, 佐野ひろみ, 川口拓之, 立花泰彦, 福士政広
セッション名    : 拡散・トラクトグラフィー
Abstruct            :【目的】Diffusion Tensor Imaging(DTI)は水拡散の方向依存性を表した撮像法であり,見かけの拡散係数や拡散異方性を定量できる。我々は昨年DTIの性能評価(QC)を目的として,拡散異方性をもつDyneema(Dy)線維を利用したDTIファントムの開発について報告した [1]。本研究では他のバイアスを除いた性能評価を行うため,DTIファントム画像へ自動的にROIを設定し定量的指標を求めるソフトウェアを開発した。今回は領域抽出の正確さについて検証した。
【方法】Dyとの比較用に毛細管を配置したガラス製のキャピラリープレート(CP)を用意し,各サンプルを直径10 mmのケースへ入れ土台ファントムへ設置した(MRI軸のXY平面においてDyを0°, 45°, 135°, 240°, 300°, CPを90°の位置へ設置)。3T MRI(SIEMENS, Verio)にてDTI撮像を行った(RESOLVE, MPG6軸)[1][2]。画像をソフトウェアで読み込み,b0画像を用いて閾値処置により各サンプルケース領域の自動抽出を行った。解析時に主成分分析を用いて再度ROIの調節を行い直径D mmのROIを抽出した。領域抽出の正解値としてb0画像を基にマニュアルにてROIを作成した。自動抽出とマニュアルとの重なり具合をJaccard係数(1に近い程重なりが多い)にて評価し,各サンプル領域におけるFA値,ADC値の結果を比較した。
【結果】Jaccard係数は 0.5755 (D = 4 mm) となった。マニュアルにおけるFAは 0.45±0.21 (CP), 0.45±0.22 (Dy 5本),ADCは 1.5±0.36 ×10-3 mm2/s (CP), 1.3±0.40 ×10-3 mm2/s (Dy 5本) となった。自動抽出におけるFAは 0.43±0.24 (CP, D = 4 mm), 0.45±0.22 (Dy 5本, D = 4 mm),ADCは 1.4±0.39 ×10-3 mm2/s (CP, D = 4 mm), 1.3±0.41 ×10-3 mm2/s (Dy 5本, D = 4 mm)となった。
【結論】解析ソフトウェアを用いてCP,Dyを自動抽出しDTI情報を計算する事が可能であり,マニュアル抽出の結果とも近い値となった。本ソフトウェアはDTIファントムと組み合わせることによりDTIのQCに有効であることが示された。
【文献】1)橘篤志. 他. 第42回日本磁気共鳴医学会大会.2014;P-3-211, 2)David A.P. et al. Magn Reson Med. 2009;62:468-475

 
この発表では,Dyneema繊維を用いたファントムを作成し,そのファントムに対してDTI画像からROIを自動的に設定し,定量的な指標を作成するという研究内容で,土台となるファントムに,6方向分のDyneema繊維が充填されたファントムを設置し,角度の違う方向に対しても自動的にROIを抽出できるか検討を行っていました.結果,全ての方向に対してROIが正しく設定され,エラー無くfiberが抽出可能とのことでした,DTIstudioやDSIstudioではROIを手動で設定しなければいけないので,この自動化の成功は非常に有益で,自分の作成プログラムにも構築してみたい機能であると思いました.
 

発表タイトル    :異方性を考慮した拡散尖度画像を推定する手法(eDKI)の臨床
応用に関する検討著者                  :鶴田航平,立花泰彦, 神谷昂平, 入江隆介, 鎌形康司, 堀正明,
鈴木通真, 中西淳, 佐藤秀二, 濱崎望, 服部信孝, 青木茂樹セッション名    :脳拡散1
Abstruct            :【背景・目的】 拡散尖度イメージング(DKI)は,パラメータの計算の複雑化のため,計算エラーの増加や撮像時間の延長が問題である.このため臨床での評価はロバスト性が高い代わりに異方性を加味できない平均画像 (mean K) に限定されることが多い.一方,eDKI(立花ら, 2014年本学会)は少ないMPG軸数からでも拡散異方性を加味した 拡散尖度(axial K(AK),radial K(RK))を安定して推定できるが,実際の症例への適応は検討されていない.実症例において少ないMPG軸数から計算したeDKIの有用性について検討する.
【方法】健常者8名(平均74.1±3.6歳),特発性正常圧水頭症(iNPH)患者22名(75.3±4.7歳)を対象とし,3T MRI装置を用いて拡散強調像を撮像(MPG:32軸; b値=0,500,1000,1500,2000,2500s/mm 2; Δ/δ=39.2/27.7ms; TR/TE=3000/80ms)した.得られた全画像(32軸),およびこのデータを間引いて20軸,15軸分の画像を抽出したデータより,従来法 (2005, Jensen et al.)およびeDKIを用いてAK,RKを計算した.拡散テンソル情報より皮質脊髄路を同定し,同領域のAK,RKの平均値を健常者群とiNPH群で比較した(Mann-Whitney 検定;P<0.05を有意).手法間の結果の一致性,およびMPG軸数を減らした場合の両者の結果の再現性を評価した.
【結果】32軸の検討ではどちらの手法でもAKの平均値はiNPH群で低く, 差は有意であった ((eDKI)健常: 0.76(0.63, 0.83); iNPH: 0.56(0.49, 0.67); P<0.05; (従来法)健常: 0.75(0.63, 0.88); iNPH: 0.52(0.45, 0.79); P<0.05; 各群の値は中央値(最小値, 最大値)を示す).またeDKIではこの結果が20軸や15軸の検討でも再現された(それぞれ健常: 0.76(0.63, 0.82); iNPH: 0.56(0.49, 0.67); P<0.05,健常: 0.76(0.64, 0.84); iNPH: 0.57(0.49, 0.66); P<0.05). 一方,従来法では20軸では結果が再現されたが(健常: 1.07(0.77, 1.34); iNPH: 1.18(0.87, 1.45); P<0.05),15軸では大部分のピクセルがエラーとなり評価できなかった.RKはいずれの検討でも群間に有意差はなかった.
【結論】eDKIはMPG軸数が少ない場合でもAK,RKを評価でき有用である.

 
この発表では,近年,注目を集めているDKI手法の中でも少量のMPG数から安定して拡散尖度を取得可能なeDKI手法の生体情報の取得に対する有用性を検討した研究で,従来のDKI手法では15軸未満のデータから拡散指標となるAK,RKを算出するのは困難であったが,eDKI手法を用いることで,より少ないMPG軸数の撮像でも有効なAK,RKが算出可能とのことでした.今年の春に参加したEchelon ユーザーズ ミーティングでは,DKI手法では,MPG軸情報が15軸以上は必ず必要であると伺っていたので,そのDKIの欠点を補うことの出来る手法があるというのは,個人的に新しい知見でした.ですが,やはりeDKI手法でも拡散指標にAKやRKを用いているとのことなのでDKI手法側からTractography側にアプローチするのは困難であると感じました.
 

発表タイトル    :透析用止血圧迫綿の異方性拡散ファントムとして経時的安定性
評価著者                  :酒井晃二, 中川稔章, 山田惠セッション名    :拡散・その他
Abstruct            :【目的】拡散MRI技術の進展に伴い、プロトコル開発時にさまざまなパラメータを設定したり、最適な組み合わせを試行することが必要になってきている。これまにも拡散異方性を有するファントムの提案は行われている。それらは、植物由来であって隔日間測定の安定性に欠けるものや化学繊維等を特殊に圧縮した拡散異方性ファントムなどである。本報では、植物由来のものと比較して安定であり、特殊な圧縮手法を用いなくても容易に利用できる拡散異方性ファントムとして、従来圧迫止血に用いられてきた透析用止血圧迫綿に着目した。透析用止血圧迫綿は、綿糸等を一方向に圧縮したものであるため、吸収された水分が異方性を持つ移動をすることは容易に観察される。しかしながら、透析用止血圧迫綿の拡散異方性ファントムとしての能力、安定性は不明である。そのため、本報では、透析用止血圧迫綿のADCおよびFAの経時的安定性を評価した。
【方法】透析用止血圧迫綿(直径20mm、長さ30mm、白十字、東京)を直交3方向に配置し、水道水に一昼夜浸漬した後、ヘッドコイル(20ch)を用いて30日間に渡り(9回)DTI測定を行った。DTI測定パラメータ等は以下の通りである:MAGNETOM Skyra 3T(Siemens Healthcare, Erlangen, Germany);FOV=24 cm; thickness=2.4 mm; DTI (EPI);TR=8,400 ms; TE=83 ms; b値=1,000 mm2/sec; GRAPPA(a.f.=2); MPG=10;温22.0℃。1回の観測あたり5回繰り返し測定を行い、DTI解析後、トラクトに基づくFAおよびADCを得た(Diffusion Toolkit)。ROIはファントムの中央にマニュアルで設定した。日間変動は5回平均値のSDにより評価した。
【結果】平均ADCは、1.70 sec/mm2 (SD; 0.293)であり、30日間の平均ADCの変動は0.03 sec/mm2(1.59%)であった。平均FAは、0.15(SD; 0.07)であり、30日間の平均FAの変動は0.002(1.46%)であった。
【結言】透析用止血圧迫綿は、異方性拡散ファントムとして安定性を有する。

 
この発表では,DTIファントムとして,より安価で入手が容易なファントム繊維を検討しており,従来,流血時に対して用いられる止血圧迫綿をファントム繊維として用いられている.この結果より30日間の平均FA値では約0.002(1.46%)の変動率で,30日間の平均ADC値では約0.03 sec/mm^2(1.59%)と非常に安定したデータが得られることが分かっています.よって本研究室でも止血圧迫綿を用いることでより安定したデータが提供できるファントムが作成できると考えられる.
 
学会参加報告書

報告者氏名 大谷俊介
発表論文タイトル DTIとfNIRSデータを用いた脳活性部位間の神経線維3D描画システムの構築
発表論文英タイトル 3D drawing system to combine DTI data of nerve fibers and fNIRS data of activated brain regions
著者 大谷俊介,山本詩子,廣安知之
主催 日本磁気共鳴医学会
講演会名 第43回日本磁気共鳴医学会大会
会場 東京ドームホテル
開催日程 2015/09/10-2015/09/12

 
 

  1. 講演会の詳細

2015/09/10から2015/09/12にかけて,東京ドームホテルにて開催されました第43回日本磁気共鳴医学会大会に参加いたしました.この第43回日本磁気共鳴医学会大会は,日本磁気共鳴医学会によって主催された研究会で,学生と研究者と医療従事者が参加して,基礎から臨床現場までの幅広い方々が一同に集って,modalityとしての進歩,臨床のエビデンスや標準化,現場での創意工夫などの分野でお互いに情報を交換する場を目的に開催されています.
私は10,11,12日の3日間参加いたしました.本研究室からは他に,小淵,石田和が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は10日の午後のセッション「拡散・トラクトグラフィー」に参加いたしました.発表の形式はポスター発表で,3分の講演時間と3分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,DTIとfNIRSデータを用いた脳活性部位間の神経線維3D描画システムの構築という題で発表しました.発表内容は提案システム用いることで,DTIとfNIRSデータで,機能的に繋がりが示唆された領域間に構造的な繋がりの存在が確認できるというものです.以下に抄録を記載致します.

抄録中身[目的]本研究の目的は精神疾患の発症メカニズムの解明に繋がるであろう脳内ネットワークの解明を行うことである.そのため,DTIデータを用いた神経追跡手法により得られる脳神経線維の走行とfNIRS(functional Near-Infrared Spectroscopy)から得られる脳活性部位を3D可視化するシステムを構築した.本稿では提案システムを用いて,RST(Reading Span Test)課題を行った際,時間的に変化する脳活動部位の付近を通る神経線維を検討することを目的とする.[方法]提案システムはDTIデータを用いた神経線維の3次元座標データ,fNIRSの脳血流量変化データを用いて,活性部位付近の神経線維を3次元で描画するシステムである.本システムを用いた評価実験では短文を読みながら文中の指定された単語を記憶するRST課題時の複数の活性部位の関係性を検討した.本課題に必要な部位は前頭前野背外側部(Brodmann Area 9,46),ウェルニッケ領域(BA 22),運動野周辺(BA 4)とされている.課題成績が高い被験者,低い被験者各1名の脳血流変化データ,脳神経線維データを用い,各被験者が課題を行った際の時間的に変化する脳活動部位の付近を通る神経線維神経線維の描画を行った.それらの描画結果の比較を行い,課題成績による活性部位付近の神経線維の関係性を調査した.
[結果]RST課題に必要とされる部位である前頭前野背外側部,ウェルニッケ領域,運動野周辺の付近の神経線維に着目した.すると,高成績者のみタスク開始と同時にタスクに必要な脳部位を巻き込む神経線維を発火させるための構造的ネットワークの存在が確認された.この理由から暗記を効率良く行うことが可能となり,高成績に繋がったと考えられる.これらの結果からRST成績によって脳特定部位の神経線維の繋がりの構造には違いがあることが示された.
[結論]本システムを用いることで,DTIとfNIRSデータから活性部位付近の神経線維を可視化することで脳内ネットワークの解明に繋がることが示唆された.以上より,脳機能情報と構造情報を同時に検討することで時系列で変化する部位を活性させるために発火する神経線維を確認することが可能となり,より高度な議論を行うことが可能である.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容
東京大学医学部付属病院 放射線部所属の鈴木雄一さんからの3つ質問を頂きました.
1つ目の質問は,「DTI撮像条件は」というものでした.この質問に対する私の回答は,「前々回に発表した石田和のポスターに記載しているものと同様です」というものでした.
2つ目の質問は,「脳領域を繋ぐ神経線維が正しいかどうかの評価を行ったのか」というものでした.この質問に対する私の回答は,「評価を行っていないが評価する方法が今のところない」というものでした.
3つ目の質問は,「被験者の数は」というものでした.この質問に対する私の回答は,「高成績者,低成績者ともに一名でやっている,今後増やして信憑性を高めていく」というものでした.
 

  • 感想

本発表の一番の肝である「異なるモダリティを融合させている」という点に関しての質問がなかったことから興味を引かす発表が出来なかったのでないかと思います.また,質問をしてくれた方が座長さんのみだったので,すごく残念でした.説明は丁寧に出来たと思うが,ポスターだけでも内容を理解してもらえるような工夫が必要だと感じました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.

発表タイトル             : アルツハイマー病診断におけるADCmapの臨床有用性の検討著者                            : 高橋洋人,石井一成,渡邉嘉之,田中壽,有澤亜津子,松尾千聡,村上卓道,富山憲幸セッション名              : 脳DTI・DWI
Abstruct            :【目的】アルツハイマー病<AD>診断におけるADCmapの臨床有用性をvoxel-based analysisにて評価する。【方法】25名のAD患者<Group A>と20名の認知障害のない患者<Group B>が対象。全員が3D T1強調画像と 2D 拡散強調画像を3T-MRIで撮像された。両側の海馬,楔状部、前後帯状回の皮質灰白質を対象にautomatic volumetric measurement of segmented brain image system <AVSIS>を用いて容量とADC値を算出。Group間の容量、ADC値の有意差をANOVA with Bonferroni correctionで検定。また皮質灰白質の容量とADC値のそれぞれで、Group間での局所の相違についてSPM8を用い検定。【結果】 容量はGroup AがGroup Bに比して楔状部【mean-value<cm3>: Group A/B = 18.57/21.56】、前部帯状回【mean-value<cm3>: Group A/B = 6.17/8.20】で有意に低下<P<0.05>。ADC値はGroup AがGroup Bに比して両側の海馬【mean-value<x10-6mm2/sec>: Group A/B = right 1012.85/868.84; left 1067.68/891.77】、後部帯状回【mean-value<x10-6mm2/sec>: Group A/B = 1016.46/874.54】で有意に増加<P<0.05>。SPMではGroup AがGroup Bに比して両側の海馬、楔状部、後部帯状回で、ADCが有意に高い領域は、容量が有意に低下した領域に比べて、より拡大した<P<0.001> 。【結語】ADCmapのvoxel-based analysisによる拡散情報は、高い定量性と再現性で、AD診断に寄与する。

この発表で着目したのは,アルツハイマー病<AD>診断を拡散強調画像で評価していることです.拡散強調画像は神経線維を描出するために必要なデータであるため,この画像を用いることで,精神疾患などの病気を診断することが可能であることが述べられている.
そのため,自信の研究も精神疾患を判断できるツールになる可能性を高いと考えることが出来ました.
 

発表タイトル             :TSE-DWIを用いたDirect Coronal Diffusion Tensor Imagingによる腰神経評価能の検討著者                            :坂井上之,渡辺淳也,能勢毅一,村山大知,越智茂博,梁川範幸, 米山正己セッション名              : 頭頸部 脊髄・脊椎
Abstruct                   :【目的】腰部神経障害の程度を評価する方法として、Diffusion Tensor Imaging(DTI)が用いられている。一方Echo planner imaging (EPI)法を用いた従来の報告では、画像歪みによる影響が大きく、問題とされる。本研究の目的は、歪みを低減可能なTurbo spin-echo(TSE)法を用いたDTIの腰部神経評価能を検討することである。
【方法】Philips社製 MRI装置 Ingenia 1.5T、及び32ch Body coilを用いた。自作アスパラガスファントムを用いて、撮像条件はvoxel size 3.8×3.8×4.0mm3、TR 2000ms、TE 60ms、NSA 6回、scan time 7分とし、冠状断撮像を行った。撮像条件の最適化を図るため、b-factorと軸数を変化させ、Fractional anisotoropy(FA)値及びλ1の評価を行った。また健常ボランティアを対象としてDiffusion Tensor Tractography(DTT)による腰部神経の評価を行い、TSE法とEPI法との比較を行った。【結果】b-factorが大きくなるほどSNRは低下し、計測不良のためFA値及びλ1が低下した。b-factorが小さいと、血管や骨、筋組織等の背景信号が目立ち、b-factor200ではDTT描出不良となった。背景信号が抑制され、かつSNRが保たれる至適なb-factorは400程度と考えられた。一方,軸数を増加させるとFA値はやや低下するが,λ1に有意な変化はみられなかった。DTTにおいては,軸数が多いほど良好に描出された。TSE法ではEPI法によるDTTと比較し、歪みの影響が少なく、関心領域中の広範囲に腰部神経を描出可能であった。【考察】Body coilを用いる腰部神経DTI では、良好なSNRが得られにくいため、b-factorをある程度低く設定する必要があった。また腰部神経のDTT評価では、脊柱管内から椎間孔外までの広い範囲の評価が必要となるため、複雑な走行を評価する上で軸数を増加させることが有用であった。また腰部神経撮像の場合、呼吸や体動が描出能低下の原因となるが、軸数増加による加算効果が描出能向上に寄与したと考えられた。【結語】TSE-DWIを用いた腰神経DTIは、冠状断撮像による広範囲の観察、歪みを低減したDTT作成及びFA値計測が可能であった。

この発表で着目したのは,DTIが脳神経を評価でだけでなく,腰部の神経も評価することが可能であるということです.これは今までの慢性腰痛を定量的に診断することが可能となり,発痛源の有無を判断できるようになる.また今後は,神経構造と痛みの相関を検討することが必要と考えられ,さらに飛躍する分野であると感じました.
 
 
 
 
 

発表タイトル             :脳のデフォルトモードネットワークと予測言語性IQ及び予測動作性IQとの関連について著者                            :水野健吾, 長村晶生, 飯高哲也, バガリナオ エピファニオ,礒田治夫セッション名              : 脳拡散2
Abstruct                   :【目的】安静時に活発に活動し、自己内省に関連する機能を有すると考えられる脳のDefault mode Network(DMN)は種々の精神疾患に関与するとする報告がある。DMNと認知機能との関連が明らかになれば、精神疾患の診断や予後推定の指標となる可能性がある。本研究ではDMNと、知的機能の簡易評価であるJARTから算出した予測言語性IQ(predicted verbal IQ, VIQ)及び予測動作性IQ(predicted performance IQ, PIQ)との関連を明らかにすることを目的とした。【方法】対象はインフォームドコンセントを得た健常ボランティア37名(男性24名、女性13名、24歳-61歳 [平均年齢38.05歳])とし、rs-fMRI及びT1-MPRAGEのデータを取得した。解析には ICA Based Analysis及びSeed Based Analysisを用いた。ICA解析では、FSLのアドインであるMELODICによりICAを行いDMNのコンポーネントを抽出し、SPM8を用いてこれらとVIQスコア及びPIQスコアとの重回帰分析を行った。Seed解析ではConnを使用し、PCCをSeed領域とし、PCCとのfunctional connectivityとVIQスコア及びPIQスコアとの重回帰分析を行った。なお、共変量として年齢、性別を考慮し、統計閾値はp<0.001とした。【結果・考察】DMN活動と各スコアの関連について、内側前頭回、上前頭回及び中前頭回などで、VIQスコアに比べPIQスコアに有意に相関する脳活動が認められた。PCCとのfunctional connectivityと各スコアの関連について、上前頭回、内側前頭回がVIQスコアに比べPIQスコアに有意に相関する脳活動を認めた。内側前頭回、上前頭回および中前頭回は、知能指数と有意に関連するとの報告があり、この結果は認知機能と脳活動の関連を反映した結果であると考えられた。認知機能に関連するとされる脳領域は、Task-Positive活動を観察した先行研究でVIQにより強い相関を示す領域であると報告されているが、Task-Negative的に働くDMNでは逆転した有意活動を示した可能性があると考えられた。【結論】脳機能とJARTスコアに有意な相関が見られた領域は、認知機能に関与する領域と考えられた。種々の精神疾患にて同様の解析を行うことで、診断、予後推定の新たな指標となる可能性が示唆された。

この発表で着目したのは,DMNと認知機能との関連が明らかになれば、精神疾患の診断や予後推定の指標となる可能性があるということです.自身の研究目的にも通じるところがあるため,興味を持ちました.本研究では,脳機能データのみで解析を行っていたので,脳機能を繋ぐ構造ネットワークも同様に検討することで,より精度が高まる研究になると感じました.