【速報】 第6回 NU-Brainシンポジウム

2月27日(土)に東京 島津製作所 東京支社イベントホール で開催された 第6回 NU-Brainシンポジウム にて2名の学生がポスター発表しました。
非常によく考えられたプログラムで、多くの示唆を得ました。

  • Kanizsa Figure錯視時におけるfNIRSによる脳機能の検討 尾花遼汰(B4)
  • クロスパワースペクトルを用いた個人特性を考慮したSSVEP-BMIシステムによる外部機器操作 木下知奈美(B4)


学会参加報告書

 
報告者氏名
 
木下知奈美
発表論文タイトル クロスパワースペクトルを用いた個人特性を考慮したSSVEP-BMIシステムによる外部機器操作
発表論文英タイトル  
著者 木下知奈美,日和悟, 廣安知之
主催 日本大学
講演会名 第6回 NU-Brainシンポジウム
会場 島津製作所 東京支社イベントホール
開催日程 2016/02/27

 
 

  1. 講演会の詳細

2016/02/27に島津製作所 東京支社イベントホールにて開催されました第6回NU-Brainシンポジウムに参加いたしました.このNU-Brainシンポジウムは,近赤外線分光法を利用した脳機能計測と臨床応用に関する研究活動の成果を公表すると同時に,近赤外線分光法を利用した脳機能計測に関心の高い研究者間の情報交換の場と研究協力促進の機会を提供することを目的に開催されています.
私はポスター発表で参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,B4の尾花さんが参加しました.参加者の中で,私と尾花さんは15:25~16:30で約1分間のショットガンセッション及びポスターによる発表がありました.NIRSに関する研究が中心であったため,EEGを用いた研究はわずかでしたが,ポスターセッションの時間いっぱい,話を聞きに来て頂くことができました.
【第6回NU-Brainシンポジウム】
http://www.nihon-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2015/12/f1a32fa57d947a30bbf13c79437df1aa.pdf
 
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は午後のポスター発表のセッションに参加いたしました.発表の形式は約1分のショットガンセッションの後,約1時間のポスター発表となっておりました.
今回の発表は,「クロスパワースペクトルを用いた個人特性を考慮したSSVEP-BMIシステムによる外部機器操作」です.以下に抄録を記載致します.

SSVEP(Stedy-State Visual Evoked Potentials)は点滅光刺激を見た際に,刺激周波数と同調して発生する脳波である.既存のSSVEPを用いたBMI(Brain Machine Interface)システムでは,ALS(Amyotrophic Lateral Sclerosis)患者など身体の不自由な使用者の車いす操作を可能としている.本研究では従来十分な検討がなされていなかった個人特性を考慮したSSVEP-BMIシステムの構築を行った.本システムは,2つの点滅光刺激を見分けた際の脳波情報を識別し,外部機器の操作を可能とする.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.質問は「2つの点滅光刺激の内,いずれかに意識を集中させた場合,2つの周波数でSSVEPが検出されたのはどうしてか」というものでした.この質問に対して私は「明確に一方に意識を集中できていない可能性がある」と回答しました.この回答に対して「視線追跡を行い,見ていない方を減光するのはどうか」というアドバイスを頂きました.
 
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.質問は「被験者の条件(日時,体調等)が変わった場合にSSVEPの発生状況は変わらないのか」というものでした.この質問に対して私は「今回は日間の検討は行っていない.今回SSVEPを検出できなかった被験者も,もう一度計測を行えば検出できるかもしれない」と回答しました.
 

  • 感想

脳機能計測についてほとんど知識の浅い営業の方や学部3回生に説明したとき,すんなりと伝わらなかったので,もっとコンセプトを簡潔に伝える必要があると思った.しかし,会話の中で徐々に理解してもらい「精度が良くなるとすごくいいシステムになりそうですね」というお言葉を頂き,嬉しかったです.また,自分自身で課題だと思っている部分の質問やアドバイスを頂きました.同じEEGを用いた研究をされている方ともお話しをする機会があり,とても良い経験となりました.S
 
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.

発表タイトル       : 自動車搭乗中のNIRS脳計測に対する基礎的検討
著者                  : 高橋聖,山崎純,古川一喜
セッション名       : 一般講演
Abstruct            : 近赤外線分光法(NIRS)による脳活動計測は,計測が簡便なため,様々な分野への応用が期待される.しかし,被験者の姿勢変動や,外部環境の変化が脳活動計測へ影響を与えることが報告されている.より広い分野へのNIRSの応用を考えた場合,これらの影響の把握および除去に対する検討が重要となる.我々は,自動車搭乗中のNIRSによる脳活動計測に関して研究を進めている.自動車搭乗中は,車両の加減速や旋回に伴い,搭乗者にもG(重力加速度)がかかるとともに,姿勢変動も生じるため,NIRS脳計測に影響を与えることが予想される.本報告では,自動車搭乗中のNIRS脳機能計測に対する基礎検討として,いくつかの車両走行パターンにおいて自動車搭乗中のNIRS脳計測と,加速度および角速度の同時計測を行い,車両走行が自動車搭乗中のNIRS脳計測に与える影響を考察した.

この発表は,車両走行パターンにおいて,搭乗者にかかるG姿勢変動が,NIRS脳計測に与える影響について検討していた.EEGを用いて自動車搭乗中を脳計測行う際にも,何らかの影響が与えられると考えられるので,このような検討は必要だと感じました.
 

発表タイトル       :機械学習を用いたASD診断補助指標の開発
著者                  : 栁澤一機,綱島均
セッション名       : 一般講演
Abstruct            : 近年,NIRSによる脳活動計測は,発達障害や精神疾患の診断補助方法として注目されている.しかし,NIRS信号の特徴を定量的に評価することが難しいという問題がある.そこで,本研究では,課題時と安静時のそれぞれの脳活動パターンを評価する指標を開発し,ASD(Autistic Spectrum Disorder)者と健常者の脳活動を機械学習を用いて識別する方法について検討を行う.

この発表は安静時と課題時のNIRS信号の特徴について評価を行っているものでした.ローレンツプロットによる評価指標や変局点に注目した評価方法などは,他のNIRS研究にも使えそうだと思いましたが,NIRSに対する知識がほとんどなく,理解は難しかったです.
学会参加報告書

 
報告者氏名
 
尾花遼汰
発表論文タイトル Kanizsa Figure錯視時におけるfNIRSによる脳機能の検討
発表論文英タイトル  
著者 尾花遼汰,蜂須賀啓介,奥野英一,廣安知之
主催 日本大学学部連携研究推進シンポジウム
講演会名 第6回 NU-Brainシンポジウム¹
会場 島津製作所 東京支店イベントホール
開催日程 2016/02/27

 
 

  1. 講演会の詳細

2016/02/27に,島津製作所 東京支店イベントボールにて開催されました第6回NU-Brainシンポジウムに参加いたしました.このNU-Brainシンポジウムは,日本大学,島津製作所によって主催されたシンポジウムで,光脳機能イメージングの研究開発,および臨床応用に関する研究の活性化を図るための活動の成果を公表すると同時に,近赤外線分光法を利用した脳機能計測に関心の高い研究者間の情報交換の場と研究協力促進を目的に開催されています.
私は27日に参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,木下が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は27日の午後のセッション「ポスター発表」に参加いたしました.発表の形式は,60秒のショットガンセッションおよびポスター発表となっておりました.
今回の発表は,Kanizsa Figure錯視時におけるfNIRSによる脳機能の検討という題目で,錯視計測を行った計測データから,錯視に関する機能を有する領域の推定について発表を行いました.以下に抄録を記載致します.

【目的】
視覚情報は,脳内の情報処理によって知覚される.その際,錯視現象と呼ばれる,実際に存在しない物体を知覚してしまう事がある.現在錯視は広告など多くの分野で利用されているが,交通事故を誘発する可能性も秘めていることから,錯視のメカニズムを解明するために様々な研究が行われている.そこで本研究では,fNIRSを用いてKanizsa Figure錯視時における脳血流変化を検討することで,錯視時の活性領域の検討を行った.
【実験方法】本実験は事象関連デザインを採用した.Kanizsa Figure錯視を為すillusion taskと,錯視を為さないrandom taskの2種類の画像刺激を2 s ずつ,計15 回無作為に提示した.測定機器はfNIRS装置(ETG-7100:日立メディコ社製)を使用し,3×10ホルダ1枚による47CHで後頭部を中心に計測した.被験者は21~24 歳の男性7名と女性3名の計10名(右利き10 名)を対象とした.
【活性CHの定義】錯視に関連するCH を特定するため,加算平均処理法を施した同一CHにおいて両taskの相関係数の閾値が-1~0.2 の値を示すCH を錯視CHと定義した.錯視CH と選定されたCH の中で活性部位を判定するために,錯視CHにおいて平均積分値以上を示したCHを活性CHとし,Broadman領域毎の活性CHの割合を左右半球に分類した.
【結果および考察】Kanizsa Figure錯視においてV2野の活性が報告されており(1),本研究においても両半球において,V2野はillusion taskの方が,random task よりも活性CHの占める割合は上回った.今回の被験者の利き手は右であったことから,左半球での活動がより優位に生じた可能性が考えられる.今回反応の生じた左半球の角回は,意味の抽出に関連するとの報告もある(2).本研究においても,illusion task 時に本来空白である空間に,図形を認知することで活性した可能性が示唆された.紡錘上回はワーキングメモリに関連する領域とされる.また視触覚を利用した錯覚研究で,右半球の紡錘上回は被験者が錯覚状態に陥ったと感じる度合いと正の相関があり,紡錘上回は錯覚に関連する機能を担っている可能性が報告されている.本研究においても,同様の領域が活性したことから,右半球紡錘上回にあたる領域は錯視と関連のある可能性が示唆された.
 
  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は,本研究における最終的な目標はどの様に考えているのか,というものでした.この質問に対する私の回答は,簡易fNIRS装置を用いた運転時の脳血流計測による,錯視時注意喚起システム等の構築であると返答いたしました.
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.現段階では錯視による脳機能の関連性を調べているだけなのであれば,MRIを用いて,特定個所の目星を付けた方がよかったのでは,というものでした.この質問に対する私の回答は,今回は日常に近い環境下での計測の行えるfNIRS装置を利用したが,今後はMRIとfNIRS装置による同時計測に取り組むことも視野に入れていると返答いたしました.
・質問内容3
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は,事象関連デザインによる実験設計での画像提示感覚が短いため,ブロックデザインで実施した方がよかったのでは,というものでした.この質問に対する私の回答は,当初,HRF(HRF:hemodynamic response function)を用いた解析を考えており,この実験モデルを採用した.しかし現状実施できていないため,実験モデルの変更は今後の検討事項とすると返答いたしました.
 

  • 感想

 一年間取り組んできた本研究に,多くの方から興味を持って下さり非常に嬉しかったです.また頂いた多くの意見などを参考に,もう一度新たな解析に取り組んでいきたいと思う研究に対する熱意をより抱くことが出来ました.

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : いまさら聞けないNIRSでの脳血流計測
著者                  : 小栗宏次
セッション名       : 特別講演1
Abstruct            : 近赤外光を用いて頭皮上から非侵襲的に脳機能マッピングする装置として開発されたNIRSは,1996年に多チャンネル計測装置光トポグラフィの開発により,脳機能を広い範囲でマッピングすることが可能となり注目されるようになった.その後20年,現在では多くの研究機関や医療機関でNIRSを用いて脳研究が進められるようになってきている.こうしたNIRSによる脳活動の計測は,脳活動の発展という意味では歓迎すべきことではあるが,一方でその計測手法や解析手法については研究機関により曖昧な部分も見られる.ここでは,NIRSによる脳血流計測の基本に戻って改めて検証してみた.

この発表は我々が日々触れているNIRSで設定しているレストは適切なのか,体動の影響はどの程度なのか,血流動態分離の影響はどの程度あるのかといった基礎的なところに立ち返る素晴らしい機会となりました.NIRS研究は学術的な蓄積が十分でないため,大学や企業を問わず研究者一丸となって,情報共有をすることの重要さを再確認することが出来ました.
 
参考文献

  • 第6回NU-Brainシンポジウム

http://www.me.cit.nihon-u.ac.jp/lab/tsuna/events/NUbrain2016.pdf