JAMIT2016

2016年7月21日から23日かけて千葉大学西千葉キャンパスのけやき会館にて開催されました,第35回日本医用画像工学会大会(JAMIT2016)に参加いたしました.本研究室からは,田中那智(M2),石田直也(M1),岡田(M1),郡(M1)が参加しました.また,横内先生,山本先生も参加されていました.発表形式は田中,郡がポスター発表で,石田,岡田が口頭発表でした.発表演題は以下の通りです.
「腹腔鏡動画における腸間膜内走行血管 〜ヒストグラム平坦化を用いた指標の検討〜 」
田中那智,郡悠希,横内久猛,萩原明於,小座本雄軌,日和悟,廣安知之
「腹腔鏡画像における表在血管抽出手法の検討」
郡悠希,田中那智,横内久猛,萩原明於,小座本雄軌,日和悟,廣安知之
「培養角膜内皮細胞の画像による品質評価 ~定量的評価指標の自動抽出~ 」
石田直也,後藤優大,奥村直毅,小泉範子,日和悟,廣安知之
「胃部NBI内視鏡画像におけるテクスチャ解析を用いた画像処理による病変部位の検出方法 ~色情報の利用検討~」
岡田雄斗,市川寛,八木信明,日和悟,廣安知之
今年のJAMIT2016は,近年流行りのDeep Learningについて3名の先生方の「ディープラーニング―その基礎と医用画像応用―」というチュートリアルで始まり,「IoT時代の医療・ヘルスケア」「バイオイメージングの革新的技術開発『共鳴誘導で革新するバイオイメージング』」「医用画像工学におけるスパースモデリング」というシンポジウムが開かれるなど,医用画像処理の分野の発展がとても期待できるような講演が多数ありました.
私自身初めての発表ということもあり,とても緊張し,練習通りに上手くいかない部分もありましたが,元気よく楽しく発表できたと思います.また,ポスター発表では予想よりとても多くの方に来ていただき,様々な質問・意見をいただくことができました.初めての学会参加でしたが,とても充実した発表となり,今後に繋がるとても良い経験をすることが出来ました.
 
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【文責:M1郡】
学会参加報告書

 報告者氏名 郡 悠希
発表論文タイトル 腹腔鏡画像における表在血管抽出手法の検討
発表論文英タイトル Superficial blood vessel extraction method in laparoscopic images
著者 郡悠希, 田中那智, 横内久猛,萩原明於,小座本雄軌,日和悟,廣安知之
主催 日本医用画像工学会
講演会名 第35回日本医用画像工学会大会(http://jamit2016.jamit.jp/index.html)
会場 千葉大学 西千葉キャンパス けやき会館
開催日程 2016/07/21-2016/07/23

 
 

  1. 講演会の詳細

2016/07/21から2016/07/23にかけて,千葉大学西千葉キャンパスけやき会館にて開催されました第35回日本医用画像工学会大会に参加いたしました.この第35回日本医用画像工学会大会は,日本医用画像工学会によって主催された学会で,医用画像や医用画像処理を中心テーマとし,内科系,外科系医師や画像診断医,放射線技師,さらに医用画像を研究テーマとする工学系,情報系学科の研究者,医用画像に関連した企業の方々などが集う学会です.
私は全日参加いたしました.本研究室からは他に横内先生,山本先生,田中那智さん,石田直也,岡田が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は22日午前のセッション「ショートプレゼンテーション」,23日午後のポスター発表に参加いたしました.発表の形式はショートプレゼンテーション1分20秒(質疑応答無)で,ポスター発表は1時間説明となっておりました.
今回は,腹腔鏡画像における表在血管抽出手法の検討について発表致しました.以下に抄録を記載致します.

腹腔鏡手術は開腹手術に比べ難易度が高く,医師への負担も大きいことから,様々な術中支援システムの開発が進められている.我々は大腸に対する腹腔鏡手術において,表面から深部へと層に分かれて存在する血管を術中画像からリアルタイムで抽出し,血管の3次元構造を可視化する術中支援システムの構築を目的としている.そのためには,各層毎に血管を抽出する必要がある.本研究では表面に存在する表在血管の抽出の検討を行った.本手法では,腹腔鏡画像に対して他分野で用いられる血管抽出手法を参考にBlackHat処理を用いて表在血管抽出を行った.適用した血管抽出手法では,複数の構造要素やパラメータを使用する.本稿では表在血管に最適な構造要素とパラメータについて比較検討を行った.その結果,表在血管の抽出に最適な構造要素は3×17の矩形構造要素であった.この構造要素を用いることでより精度の高い抽出結果が得られた.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
ポスター発表のため,全質問に対し質問者の氏名を控え損ねてしまいました.
 
・質問内容1
NBI画像に対しても試したのか?というものでした.
この質問に対して私は,NBIで撮影した動画もいただいたので本手法を実際に適応させています.しかし,精度等の評価についてはまだ行えていません.と回答しました.
 
・質問内容2
G成分をなぜ使用するのか?というものでした.
この質問に対しては,血管は赤色,脂肪は黄色が主なので最も差が大きくなるGreenの成分を使用しました.と回答しました.
 
・質問内容3
なぜ表在血管を抽出するのか?というものでした.
この質問に対しては,大腸には深部と表面の血管が存在するため,各々で血管抽出を行い3Dで表示するなどを行えば,血管の層構造を可視化することがする可能である.また,表面の血管を抽出できれば削除も可能であり,正確に削除できれば深部の血管の検出もより正確にすることも可能である.そのため,表面の血管の抽出を行っています.と回答しました.
 
・質問内容4
ファントムなどで血管のモデルを造ったりして試したりしているのか?というものでした.
この質問に対する回答は,現在は画像から画像上で表面であると考えられる血管の抽出を行っているため,ファントム等でモデルを作成したりはしていません.と回答しました.
・質問内容5
抽出目標画像は正確なのか?というものでした.
この質問に対する回答は,現在私が目視で血管であると判断したものを抽出目標とし,医師の方と少しdiscussionを行った状態です.そのため,今後医師の方とよりdiscussionを行い,医師の求める血管の抽出領域を反映させた抽出目標画像を生成する予定です.と回答しました.
 
・質問内容6
腸間膜内走行血管やハレーションに対する誤抽出への対策は具体的にどのようなものを考えているのか?というものでした.
この質問に対する回答は,腸間膜内走行血管は共同研究者が抽出を行っているので,その抽出領域を私の抽出領域から外し,ハレーションン等はHSV色空間を用いて閾値を決め,前処理で削除を行い,本手法を適応させる予定です.と回答しました.
 
・質問内容7
静止画だけでなく動画でも行っているのか?というものでした.
この質問に対しては,実際に動画でも適応させている.と回答しました.
 
・質問内容8
動画であれば速さはどれくらいなのか?というものでした.
この質問に対しては,円形手法であれば20~30fpsであると回答しました.
 
・質問内容9
全体画像のサイズはいくらなのか?というものでした.
この質問に対しては,720×480【pixel】であると回答しました.
 
・質問内容10
腸間膜内走行血管と表在血管は別々に抽出する必要があるのか?表在血管の抽出手法で深部の血管が取れたらそれでいいのか?というものでした.
この質問に対する回答は,現在,血管の層構造の可視化を目的に行っているので,別々で抽出することを目指しています.と回答しました.
 
・質問内容11
再現率と適合率の違いは何か?というものでした.
この質問に対する回答は,再現率は実際の血管のうちどれだけ抽出できているかを表しており,適合率は抽出した血管のうちどれだけ正しいかを表しています.そのため,誤抽出が多くなると適合率が低下してしまいます.と回答しました.
・質問内容12
BlackHat処理を行う際,画像の端に対して何か処理を行っているのか?というものでした.
この質問に対しては,画像の端では膨張,収縮処理に影響が出ないように補間しています.しかし,現在は切り取った画像に対して血管抽出を行っているがですが,実際の画像では画像の端に内視鏡の映像はないため影響はなく,医師も真ん中のあたりがとれていれば問題ないとおっしゃっていました.と回答しました.
 

  • 感想

初めての学会発表ということもあり,すごく緊張しました.ショートプレゼンテーションでは1分20秒という短い時間で研究内容を伝えるため,どの部分を伝えるべきか,どの様に発表するとインパクトがあるのかと自らの研究を見返すとても良い機会になったと思います.ショートプレゼンテーション本番では,緊張からなかなか練習通りに発表はできませんでしたが,元気よくは発表できたと思います.またポスター発表本番では,想像以上に多くの方が私の発表を聞きに来て下さり,とても楽しく多くの事を議論させていただく事が出来ました.ポスター発表でも元気よく積極的に声をかけ,発表できたと思います.しかし,ポスター発表の際に,結果の図を下に記載していたため,結果を見る時に屈んでみてもらわなければいけなかったので,ポスターの配置について次回はもう少し考えたいと思いました.また,ポスターを拝見しに行った際,多くの人のポスターに自ら声をかけていくことが出来なかったので,次回は自分の発表だけでなく,拝見する際にももう少し積極的に頑張りたいと思いました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の4件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : Image-based Neural Networksの医用画像処理・認識応用著者                  : 鈴木 賢治セッション名       : チュートリアルAbstruct            :近年,畳み込みニューラルネットや深層学習といった,画像を直接学習する機械学習が大いに注目されている.本講では,私のラボで20年以上続けている,画像を直接学習するニューラルネットの医用画像処理・認識への実践的応用を紹介する.画像を直接学習するニューラルネットによれば,領域分割や特徴量抽出することなく,医用画像からの病巣の検出や判別を,極めて高い正確度で行える.また,胸部画像における肋骨と軟組織の分離やCT画像の被曝線量低減など,医用画像処理への応用とその商品化についても紹介する,更には,深層学習との密接な関係についても触れる.

この発表は,MTANN(Massive training artificial neural network)について,MTANNとCNN(Convolutional Neural Network)の比較についての発表でした.MTANNとは,教師付きの画像認識学習を行っており,パターンの強調・減弱が可能であるとおっしゃっており,CTの画像から結節を強調して検出することも可能であるとおっしゃっていました.MTANNはCNNに比べてシンプルな構造を用いているため,学習データが少なくても問題がないところが利点だとおっしゃっていました.実際に,CT画像から骨と血管を分けるには,医用画像は顔ほど複雑ではないので3層で上手く分割することができるとおっしゃっていました.また,肋骨検出にも同様のことが言え,逆に層を増やしても識別率はあまり変わらないという結果がでたとおっしゃっていました.血管検出に用いることが出来るので,私の研究にも上手く応用できるのではないかと感じました.Neural Networkについて知識が薄いため,難しい発表内容でしたが医用画像にNeural Networkを使用するという新しい考えに興味を持ち,とても面白い発表でした.
 
 

発表タイトル       : Surgical field retrieval for intelligent laparotomy video archive system(開腹手術映像の知的アーカイブシステムの開発)著者                  :Takayuki Kitasaka,Shinji Goto,Shun Sugita,Hayate Tominaga,Hiroaki Sawano,Yasuhito Suenaga,Kazunari Misawa,Kensaku  MORIセッション名       : ポスターAbstruct            : In studying the laparotomy from surgical videos, there is a critical issue that the heads or hands of a surgeon and assistants screen the surgical field frequently. A new archive system is needed so that the surgical field is always revealed by deleting such obstructions. We develop an intelligent laparotomy video archive system using multiple cameras. It can delete the obstructions by fusing multiple video sequences. As the result of the experiment using a torso model, the surgical field was revealed effectively.

この発表では,開腹手術映像に対して患部を隠してしまう手や頭の映り込みを複数台のカメラを使用して取り除き,死角を画像処理によって可視化し,質の高い手術教材の作成を目的に行っていらっしゃいました.位置合わせにはマーカーやグローブを使用しており,開腹範囲の位置を決めるマーカーは全てではなく,1点のみを位置合わせをして行っていました.実際の動画も拝見させて頂きましたが精度もよく,大まかな手術の手順等の教材としては使用していけるのではないかと思いました.しかし,合成の際に多少のズレが存在しているため,手術中に用いることや,細かな部分の確認を行うには少し改善の余地があるように感じました.北坂さんも今後ズレを修正し,手術室での評価も行っていくとおっしゃっていました.また,取り除く対象としては,まず動きがあるものを対象としているとおっしゃっていましたが,器具は手術教材には必要不可欠なので取り除いていないとおっしゃっていました.実際に使用する際に何が必要で何を削除すべきなのかを考えることは,自分の研究でも,医師の求める血管はどれで,逆に必要のない部分はどこなのかを考える部分と共通していると感じ,改めて医師の方とdiscussionをしていく必要性を感じました.今回の学会ではCT画像等に対する画像処理が多く,内視鏡や手術映像に対する画像処理の発表が少なかったので,とても興味深い発表でした.

発表タイトル       : Enhancement of the whole blood vessel pattern using robust principal component analysis and respiration-oriented motion vector field(ロバスト主成分分析と時相関変形を用いた血管走行全体の強調)著者                  : Yuri KOKURA,Yukinojo KITAKAMI,Hideyuki KATO,Yoshihiko OOKA,Takashi OHNISHI,Hideaki HANEISHIセッション名       : ポスターAbstruct            : Digital subtraction angiography (DSA) is one of imaging methods using X-ray image and is commonly conducted to clearly visualize the vessels information during intervention with a catheter. In order to obtain a fine DSA image, patients have to hold their breathing. However, steady breath hold is a burden or the patients and is sometimes difficult for elder patients. We propose a blood vessel enhancement method with consecutive digital angiographic images acquired under the natural breathing. The method consists of a robust principal component analysis (RPCA)and complementary processing. RPCA separates the consecutive images into a low-rank component and a sparse component. The information of contrast media is included into the sparse component .In complementary processing; the resultant low-rank component is deformed by free-form deformation in order to obtain the deformation field for motion correction. Then, we applied the deformation field to the corresponding sparse component and processed images are integrated. We applied the proposed method to 45sets of angiographic images. We confirmed that RPCA enables to generate satisfactory enhanced angiographic images. Thin vessels as well as major vessels were clearly observed on the enhanced angiographic images. The complementary processing was applied to discontinuous vessel images and confirmed that it enables to generate enhanced whole blood vessel image.

この発表は,レントゲンで造影像と透視像を撮影し,その差分から血管像を生成するDSA(Digital Subtraction Angiography)に対して,撮影時の息止めは高齢者をはじめ,患者にとって負担となるという問題から,自然呼吸下造影像を用いて不連続部位の少ない血管像の生成を行っていました.手法としては,元画像(造影像)にロバスト主成分分析を行い,肋骨など時間的変化の緩やかな低ランク成分と血管内の造影剤の流れなど時間的変化の急激な成分に分割し,低ランク成分の中でも横隔膜で位置合わせを行い,それに対応する血管造影像を合成して血管の位置合わせも行うというものでした.ロバスト主成分分析を用いて,時間的変化の違いから画像を分割するという手法は,私の研究でも器具の除去などに使っていけるのではないかと感じました.血管抽出という部分では,私の研究と同じなのでとても面白い発表でした.
 

発表タイトル       : ヒトの成長による内部構造の長期間にわたる変化を可視化するシステムの開発著者                  : 服部 麻木,鈴木 直樹,中田 亮輔,小幡 聡,神保 教広,宗崎 良太,赤星 朋比古,田口 智章,家入 里志,橋爪 誠セッション名       : 医用画像処理Abstruct            :われわれの研究グループでは,ヒトの四次元現象の中でも歩行や心拍動といった短い時間に生じる内部構造の変化を可視化するシステムの研究開発を継続して行なっており,これまでに本大会でも報告を行なってきた.これらの四次元現象よりも長い時間のレンジで生じる変化,ヒトの成長や治療した部位の変化を可視化し解析することは,診断や治療,そして将来の予測などに有用であると考える.今回,特に大きな変化が生じる小児の成長を対象とし,5年ほどの間に複数回撮影されたX線CTデータを用いて,長い時間の間にどのように内部構造が変化していくのか可視化するための表示手法の開発を行なった.本発表では,生体肝移植や先天性横隔膜ヘルニア治療後の小児の数年間にわたるX線CTデータを用いた結果について報告する.

この発表では,特に変化の激しい小児期の成長を解析する「小児の発育をみる四次元画像シミュレーション」の作成についての発表でした.小児の成長過程で撮影された複数のX線CTデータを用いて撮影間の変化を補間することで,小児の骨や臓器など体内の各部が成長によってどの様に変化していくのかを理解しやすくするために可視化する手法の開発を行っていました.今後は,ヒトの内部構造の長期間にわたる変化だけでなく,成長過程における様々な検査で得られる臓器の機能の変化などに対応できるような改良を行っていく予定であるとおっしゃっていました.術後の経過観察だけでなく,今後健常者のデータ数も増やしていくことで発症予測等にも使っていける素晴らしい研究だと感じました.
 
 
参考文献

  • 第35回日本医用画像工学会大会予稿集CD-ROM

学会参加報告書

報告者氏名 田中那智
発表論文タイトル 腹腔鏡動画における腸間膜内走行血管の検出法〜ヒストグラム平坦化を用いた手法の検討〜
発表論文英タイトル Extracting Mesenteric Blood Vessel in Laparoscopic Colon Cancer Surgery Video Images -Mesenteric Blood Vessel Extracting Index using Histogram Equalization-
著者 田中那智,郡悠希,横内久猛,萩原明於,小座本雄軌,日和悟,廣安知之
主催 日本医用画像工学会
講演会名 第35回日本医用画像工学会大会
会場 千葉大学西千葉キャンパスけやき会館
開催日程 2016/07/21-2016/07/23

 
 

  1. 講演会の詳細

2016/07/21から2016/07/23にかけて千葉大学西千葉キャンパスけやき会館にて開催されました,第35回日本医用画像工学会大会に参加いたしました.この学会は,日本医用画像工学会によって主催された学会で,医用画像工学や,それに関する研究の連絡提携を計るため,またそれにより学術の発展と人類の福祉に寄与する事が目的とされています.
私は全日参加いたしました.本研究室から他に,修士1回生の岡田,郡,石田が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は22日の午前のショートプレゼンテーションと23日の午後のポスター発表に参加いたしました.ショートプレゼンテーションの発表の形式は,1分20秒の講演時間でポスター発表時間は1時間となっておりました.
今回の発表は,「腹腔鏡動画における腸間膜内走行血管の検出法〜ヒストグラム平坦化を用いた手法の検討〜」とし,昨年の報告した手法の改善を図った内容でした.以下に抄録を記載致します.

近年,大腸癌手術には多くの場合,腹腔鏡が用いられる.腹腔鏡手術において外科医は損傷してはならない腸間膜内走行血管を探索,回避して癌の切除を行う.腸間膜内走行血管は腸間膜に埋没しているため,探索行程に手術時間の多くを費やす事が医師への大きな負担となる.我々は腸間膜内走行血管の位置を得られた動画上に提示する事で医師の負担軽減を目指す.本稿では,腸間膜内走行血管か否かの識別を行う特徴量として,得られた画像に対してヒストグラム平坦化を行い,その色情報を指標とした場合の検討を行った.ヒストグラム平坦化を用いる事で腸間膜内走行血管とそれ以外の部分の色情報のコントラストを強調する事が可能となる.その結果,より目標検出領域に近い形状で腸間膜内走行血管が検出され,再現率の向上が見られた.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
ソニーの山口様より,「ヒストグラム平坦化画像を出力として見せるだけではダメなのか?」という質問を頂きました.この質問に対し,「手術の際に医師は自然な色味の画像において血管の位置を提示してほしいという意見を頂いている」と解答しました.
 
・質問内容2
千葉大学の小倉様より,「色や明るさが変化すると結果に影響しないのか?」という質問を頂きました.この質問に対し,「昨年報告した手法では明るさ等の影響を受けますが,ヒストグラム平坦化を行う事で他の患者や明るさが変わっても検出できる事が多くなり,汎用性の向上も見られた」と解答しました.
 
・質問内容3
近畿大学の篠原様より,「ヒストグラム平坦化により誤検出は増えないのか?」という質問を頂きました.この質問に対し,「確かに再現率の上昇率と比較して少しではあるが,適合率は減少しており,誤検出の削減が今後の課題である」と解答しました.
 
・質問内容4
名前は控え損ねてしまいましたが,「どれくらい深い血管まで取れるのか?」という質問を頂きました.「具体的に検出可能な深度の検証は行っていないため不明ですが,脂肪の色が変化していれば検出できるため,現段階では医師が見えるところから血管の全体像をイメージする補助をする事を目標としています.」と解答しました.
 
 

  • 感想

ショートプレゼンが1分20秒という事で非常に短い時間かつショートプレゼンとポスター発表が別日程という条件でしたが,ポスターに興味を示してくださる方が多数いらっしゃった事大変嬉しく思いました.質問を頂いていない方も含めると,30名,あるいはそれ以上の方にお話しする事ができました.医師の方より,これは使えそうという意見を頂く等,昨年と比較してポジティブな反応が多かったと感じました.一方で今回,内視鏡関連の先生が少なかったのか,「私のフィールドでは…」という新鮮なご意見を頂くこともありました.今回頂いた意見を次回からの発表や修士論文に活かしたいと感じました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

 発表タイトル        : radiogenomics著者                   :甲斐 千遥,内山 良一,白石 順二,藤田 広志セッション名       : 診断支援Abstruct :ポストゲノム時代に入り,Imaging Phenotypeを中心に進められてきた放射線医学の研究に,Genotypeの新しい視点を加えるRadiogenomics と呼ぶ新しい研究領域が形成されつつある.本研究の目的は,アルツハイマー関連遺伝子APOEε4と脳形態変化の関係を分析し,個別化医療を支援するCADシステムを開発することである.まず,SPMを使用して 3 次元脳MR画像の解剖学的標準化を行い,複数の解剖学的領域に関心領域を設定した.つぎに,各関心領域で正常標準脳からの変化を求めて,萎縮の程度に関する画像特徴量を計算し,APOEε4との関係性を調べた.実験の結果,APOEε4の有無によって脳萎縮の部位に違いがあることが明らかになった.遺伝子の種類に応じて異なる部位の萎縮の程度を定量評価し,医師に客観的な判断材料を提供する,個別化医療を支援する次世代型のCADシステムの開発が期待できる.

この発表では画像特徴量に遺伝子を追加して新しいCADシステム開発を行っていました.アルツハイマーの識別を行うため画像診断を行うが,その際,遺伝子のタイプによって,病状の進行度に対する脳の萎縮の程度が異なる事を利用しています.珍しい研究だと思ったが,NeuroImaging等では参考にした文献があるようで,今後ますます期待がかかる面白い研究だと思いました.
 

発表タイトル       :Surgical field retrieval for intelligent laparotomy video archive system著者                  :Takayuki Kitasaka,Shinji Goto,Shun Sugita,Hayate Tominaga,Hiroaki Sawano,Yasuhito Suenaga,Kazunari Misawa,Kensaku Moriセッション名       : ポスターAbstruct            : In studying the laparotomy from surgical videos, there is a critical issue that the heads or hands of a surgeon and assistants screen the surgical field frequently. A new archive system is needed so that the surgical field is always revealed by deleting such obstructions. We develop an intelligent laparotomy video archive system using multiple cameras. It can delete the obstructions by fusing multiple video sequences. As the result of the experiment using a torso model, the surgical field was revealed effectively.

この発表では,開腹手術の指導用動画において医師の体等の視界の妨げをなくす事を目的としていました.複数の角度から撮影した映像をHomography行列による変換で重ね合わせ,遮蔽物を透過表示しています.診断支援,手術支援などに触れる事が多いですが,画像処理の活躍するフィールドとして新鮮に感じました.医師の需要を引き出せるようになっていきたいと感じます.
 

発表タイトル       :画像処理の基礎と応用の間著者                  :本谷 秀堅セッション名       : ディープラーニング–その基礎と医用画像応用–Abstract            :Neural Networkが画像処理システムの性能を大幅に上げつつある。画像処理システムを構築する古典的な枠組みにおいては、画像からの特徴抽出処理と、その特徴を利用する対象の識別処理を個々に作り上げていた。一方のNeural Networkを利用する構築法では、特徴抽出と識別処理とが同時に実現される。このことは、特に画像からの特徴抽出をボトムアップにデザインしてきたエンジニアの多くには、驚きを持って迎えられている。本講演では、そもそも古典的な枠組みにおける難点がどこにあり、それがNeural Networkでどのように解かれつつあるのかを探りたい。

この発表はディープラーニングがどのように使われるか,どこで活躍できる可能性について述べられていました.終始とても面白い話でしたが,病理画像の細胞の輪郭抽出の仕組みや,一部答え画像を作ると,全ての答え画像を作成するという事も可能であるといった部分の解説は,非常に興味深かったです.ディープラーニングはトレンドですが,しっかりと特性を見極めて使えるようになっていきたいです.
 
参考文献

  • 第35回日本医用画像工学会大会論文集CD-ROM

学会参加報告書

 報告者氏名 石田直也
発表論文タイトル 培養角膜内皮細胞の画像による品質評価~定量的評価指標の自動抽出~
発表論文英タイトル Evaluate quality of image for corneal endothelial cells~ Automatic extraction of quantitative indicators ~
著者 石田直也,奥村直毅,小泉範子,廣安知之,日和悟
主催 千葉大学
講演会名 第35回日本医用画像工学会大会
会場 千葉大学 けやきキャンパス
開催日程 2016/7/21~2016/7/23

 
 

  1. 講演会の詳細

2016年7月21日―23日に開催されました第35回日本医用画像工学会大会に参加致しました.この学会は,医用画像や医用画像処理を中心テーマとして,医師・研究者・学生が集い,医工連携を感じさせる学会でした.
今年度は,特別講演でディープラーニングを用いた医用画像処理について発表されていました.本来は画像処理学会であるため,今年度はディープラーニングの基礎について丁寧に講演がされており,今後の流行としてCNNやDCNNを用いることが増えてくることを実感致しました.
また,私は全日参加し,岡田君,郡さん,田中那智先輩も参加致しました.また,横内先生や,山本詩子先生もいらっしゃっていました.
 
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は,23日午前に開催された医用画像処理のセッションに参加し,口頭で発表を行いました.口頭発表は,8分の発表と4分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,培養角膜内皮細胞の画像による定量的評価アルゴリズムについて発表致しました.以下に抄録を記載致します.
 
 
 

抄録中身近年,重症の視力障害を生じる角膜内皮障害に対する再生医療の開発が行われている.2013年には培養ヒト角膜内皮移植の臨床研究が開始された.再生医療を用いた治療法は角膜から内皮細胞を抽出,培養,移植して行われる.この際,培養角膜内皮細胞の品質評価は,医師が細胞の密度,形状,面積を目視によって確認することで行われており負担が大きい.そこで,医師の負担軽減を目的とした評価支援システムの作成を行う.先行研究では,角膜内皮細胞画像の細胞領域分割が行われているが,教師有り学習であるため手動作業を含んでいた.そこで,自動領域分割,精度の向上,さらに各細胞から形状等の特徴量をどのように取得するかが課題であった.提案システムは,3つの品質指標それぞれを定量的に計測可能にした.さらに細胞の形状,面積についてはカラーマップを作成することで定量的かつ効率的な評価を可能にした.本発表では,品質指標の精度について検証を行う.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑,提案を受けました.
・質問内容1
立命館大学所属の健山先生から頂いた質問です.その質問内容は,低品質画像かどうかはどのように判断しているのですかとの質問です.これに対する回答として,密度等を計測し,カラーマップ表示して視覚的に判断できると返答致しました.発表内容にて,カラーマップの説明がされていなかったため,次回の発表では,図の説明はしっかりとしたいと思います.
 
・質問内容2
千葉大学所属の菅先生からの質問です.その質問内容は,悪画質画像は,どうして悪画質なのか,それは培養が失敗しているのですかとのことでした.これに対して,こちらは専門家によって撮像されたもので,その際にピントがずれてしまったことが原因であり,細胞自体の品質は良好であると答えました.
 
・質問内容3
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.その質問内容は,細胞のセグメンテーションには,細胞境界を抽出するアプローチと,細胞領域に注目するアプローチの二種類があると思うのですが,どちらですかとのことでした.それに対する返答として,前者の細胞境界に注目して,強調・抽出するようにアプローチをしていることを述べました.また,先生から,両方のアプローチを統合的に行っている手法もあるとの助言を頂いたので,確認しようと思います.
 

  • 感想

今年度のJAMITは,CTやMRなどの3D画像を用いた研究が多く,どの研究室でもすごく難しいことをしているなという印象でした.また,著名な画像処理の先生や,医師の方がいらっしゃっていました.ポスター発表をしていた那智先輩,郡さんはお話ししていましたが,私は一切お話しをすることができず少し残念に思いました.このような点で初めての学外学会は悔いが少々残るものとなってしまいました.
しかし,異なる研究分野においても定量的な評価やROIの強調が目的とされており,その手法に関して様々なことを吸収できたと思います.中でも,MTANNというディープラーニングに近い手法や,BoTW,BoVWは内視鏡画像からの新しい特徴量抽出に有効ではないかと考え,是非検討してみたいと考えています.

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : Imaged-Bsed Neural Netwoksの医用画像処理・認識応用著者                  : 鈴木賢治セッション名       : ディープラーニングAbstruct            :近年,畳み込みニューラルネットや深層学習といった,画像を直接学習する機械学習が大いに注目されている.本講では,私のラボで20年以上続けている,画像を直接学習するニューラルネットの医用画像処理・認識への実践的応用を紹介する.画像を直接学習するニューラルネットによれば,領域分割や特徴量抽出することなく,医用画像からの病巣の検出や判別を,極めて高い正確度で行える.また,胸部画像における肋骨と軟組織の分離やCT画像の被曝線量低減など,医用画像処理への応用とその商品化についても紹介する,更には,深層学習との密接な関係についても触れる.

発表内容は主に,Massive-training artificial NN (MTANN) とCNNの違いについて触れ,画像処理においてはMTANNの方が有用であることを発表していました.
MTANNは,画像ごとの特徴量を学習するのではなく,画像をパッチ分割し,それをROI協調用フィルタの学習に用います.これがCNNとの一番大きな違いであり,病変の抽出や協調においてはCNNよりも学習速度が速く,正確な結果が得られるとのことでした.講演中には実例として,肺結節があげられていました.MTANNを用いて肺結節を強調させ,肺血管を減弱することで視認性が向上したという報告が成され,既存のフィルタ処理よりもそれが良好な結果を示すことは一目で判断ができるほどでした.
このMTANNは,私の研究テーマである胃がんの協調や,進展範囲の診断において,癌である部位の協調ができるのではないかと考え,今後さらに調査をしていこうと思いました.さらに,画像ごとにパラメータを決めるのではなく,自動で調節されることもこの技術の素晴らしい点でありました.
 
 

発表タイトル       :ヒトの成長による内部構造の長期間にわたる変化を可視化するシステムの開発著者                  :服部麻木,鈴木直樹,中田亮輔,小幡聡,神保教広,宗崎良太,赤星朋比古,田口智章,家入里志,橋爪誠セッション名       :医用画像処理
Abstruct            : われわれの研究グループでは,ヒトの四次元現象の中でも歩行や心拍動といった短い時間に生じる内部構造の変化を可視化するシステムの研究開発を継続して行なっており,これまでに本大会でも報告を行なってきた.これらの四次元現象よりも長い時間のレンジで生じる変化,ヒトの成長や治療した部位の変化を可視化し解析することは,診断や治療,そして将来の予測などに有用であると考える.今回,特に大きな変化が生じる小児の成長を対象とし,5 年ほどの間に複数回撮影されたX線CT データを用いて,長い時間の間にどのように内部構造が変化していくのか可視化するための表示手法の開発を行なった.本発表では,生体肝移植や先天性横隔膜ヘルニア治療後の小児の数年間にわたるX 線CT データを用いた結果について報告する.

この講演では,実例として小児CT画像(9か月と2年)の3D画像を,それぞれ領域分割し,対応するボクセルを線形でつなぐことで,その間の成長を推定し,アニメーションにしていました.この研究による最大の利益は,手術予後を観察する際に,どれだけの治療効果がみられたかを時間経過とともに見ることができるようになることです.また,この研究が標準的な検査となれば,この経過観察を健常者に対して行い,病気の発症メカニズムの解明につながることも期待できると思いました.
 
 

発表タイトル       :Radiogenomicsによるアルツハイマー早期検出のためのコンピュータ支援診断著者                  :甲斐 千遥, 内山 良一, 白石 順二, 藤田 広志セッション名       :診断支援Abstruct            : ポストゲノム時代に入り,Imaging Phenotypeを中止にに進められてきた放射線医学の研究に, Genotypeの新しい視点を加えるRadiogenomicsと呼ぶ新しい研究領域が形成されつつある.本研究の目的は,アルツハイマー関連遺伝子APOEε4と脳形態変化の関係を分析し,個別化医療を支援するCADシステムを開発することである.まず,SPMを使用して3次元脳MR画像の解剖的標準化を行い,複数の解剖学的領域に関心領域を設定した.つぎに,各関心領域で正常標準脳からの変化を求めて,萎縮の程度に関する画像特徴量を計算し,APOEε4との関係性を調べた.実験の結果,APOEε4の有無によって脳萎縮の部位に違いがあることが明らかになった.遺伝子の種類に応じて異なる部位の萎縮の程度を定量評価し,医師に客観的な判断材料を提供する.個別化医療を支援する次世代型のCADシステムの開発が期待できる.

多くの病気は,遺伝的要因に環境的要因が加わることで発症します.しかし,現在行われている研究は年齢や喫煙歴といった環境因子や画像などの診断材料を基に診断支援を行ってきました.そこで,この研究は遺伝子という新しい視点を加えることで,個別化医療に対応する次世代型CADシステムを作成しようとするものです.このような研究内容は,海外で多く研究がなされるようになっていますが,日本ではほぼ研究者がおらず,実に次世代型のCADシステムとしてふさわしいと思いました.
この研究内容が確立されれば,人は遺伝子によってなりやすい病気,なりにくい病気を理解することができます.それによって環境的要因(生活習慣等)を変えることで予防ができる時代が来ると考えました.さらには,遺伝子操作によって,特定の病気が存在しなくなるとも考えられました.
また,この発表者の学生は,発表の仕方や受け答えに無駄がなく見習いたく思い,とても印象に残っています.
 
学会参加報告書

 報告者氏名 岡田雄斗
発表論文タイトル 胃部NBI内視鏡画像におけるテクスチャ解析を用いた画像処理による病変部位の検出方法~色情報の利用の検討~
発表論文英タイトル The Lesion Detecting Method of Stomach on Narrow Band Endoscopy Image using Texture Analysis ~The Analysis of Using Color Information~
著者 岡田雄斗,市川寛,八木信明,日和悟,廣安知之
主催 日本医用画像工学会
講演会名 第53回日本画像工学会大会(JAMIT2016)
会場 千葉大学西千葉キャンパスけやき会館
開催日程 2016/07/21-2016/07/23

 
 

  1. 講演会の詳細

2016/07/21から2016/07/23にかけて,千葉大学西千葉キャンパスにて開催されましたJAMIT2016(http://jamit2016.jamit.jp/index.html)に参加いたしました.この学会は,医用画像や医用画像処理を中心テーマとして,画像診断医や内科系,外科系医師,放射線技師.さらに医用画像を研究テーマとする工学系,情報系学科の研究者,医用画像に関連した企業の方々などが集う学会です.
私は全日参加いたしました.本研究室からは他に横内先生,田中那智,石田直也,郡が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は23日の午前のセッション「医用画像処理」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,8分の講演時間と4分の質疑応答時間となっておりました.
以下に抄録を記載致します.

我々のグループはNarrow Band Imaging(NBI)内視鏡によって得られた胃部画像において,早期胃がんの進展範囲を定量的に評価するために,同時生起行列とランレングス行列を組み合わせた特徴量を用いて解析する手法の提案を行った.本稿では,これまで入力画像をグレースケールに変換して,特徴量を求めていたのに対して,ヒトの視覚処理に近似した色空間であるHSV,HLS,YCrCb,Labの4つの色空間の色情報において特徴量を算出した.また,従来の手法では特徴量を基に作成したカラーマップを目視することで病変部位の検出を行っており,検出精度の検討を行っていなかった.そのため,Support Vector Machine(SVM)を用いた識別を行い,病変部位と正常部位の閾値を求めることで,検出精度を算出し検討を行った.その結果,胃がんの病変部位を検出する手法において,色相情報が有効であることが示唆された.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問ですが,これまで長い間内視鏡画像を用いた棒編部位の検出が行われているがそれをまとめ,比較したものがないため,是非ともまとめを作成してほしいとの感想をいただきました.この質問に対しては,今後従来の手法との比較を行う上で,自分でまとめを行っていく必要があると思うため,できれば作成していきたい,と回答しました.
 

  • 感想

今回初めての口頭発表でした.はじめはかなり緊張してしまい何度かかんでしまいましたが,後半の結果や考察では落ち着いて発表することができいい経験となりました.ただ今回は内視鏡関連の研究を行っている方が少なかったのかあまり質問を得ることができなかったため,その点に関しては残念でした.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : Image-based Neural Networksの医用画像処理・認識応用著者                  : 鈴木 賢治セッション名       : ディープラーニング -その基礎と医用画像応用-
Abstruct            : 近年,畳み込みニューラルネットや深層学習といった,画像を直接学習する機械学習が大いに注目されている.本講では,私のラボで20年以上続けている,画像を直接学習するニューラルネットの医用画像処理・認識への実践的応用を紹介する.画像を直接学習するニューラルネットによれば,領域分割や特徴量抽出することなく,医用画像からの病巣の検出や判別を,極めて高い正確度で行える.また,胸部画像における肋骨と軟組織の分離やCT画像の被曝線量低減など,医用画像処理への応用とその商品化についても紹介する,更には,深層学習との密接な関係についても触れる.

この発表はMTANNと呼ばれる機械学習を画像処理に用いた研究でした.従来,この分野ではCNNと呼ばれる機械学習が用いられていましたが,CNNは画像を入力していました.それに対して,MTANNは画像とともに入力画像の小領域で学習を行い出力画像は,学習したMTANNで入力画像を走査することで得られます.これにより,入力画像から特徴量を求めることなく,CNNより高い精度での学習が行えるとのことで,これからの研究でディープラーニングを用いるときに有用な結果が出るのではないかと考えられます.
 

発表タイトル       : Radiogenomicsによるアルツハイマー早期検出のためのコンピュータ支援診断著者                  : 甲斐 千遥セッション名       : 診断支援
Abstruct  :ポストゲノム時代に入り,Imaging Phenotypeを中心に進められてきた放射線医学の研究に,Genotypeの新しい視点を加えるRadiogenomicsと呼ぶ新しい研究領域が形成されつつある.本研究の目的は,アルツハイマー関連遺伝子APOEε4と脳形態変化の関係を分析し,個別化医療を支援するCADシステムを開発することである.まず,SPMを使用して3次元脳MR画像の解剖学的標準化を行い,複数の解剖学的領域に関心領域を設定した.つぎに,各関心領域で正常標準脳からの変化を求めて,萎縮の程度に関する画像特徴量を計算し,APOEε4との関係性を調べた.実験の結果,APOEε4の有無によって脳萎縮の部位に違いがあることが明らかになった.遺伝子の種類に応じて異なる部位の萎縮の程度を定量評価し,医師に客観的な判断材料を提供する,個別化医療を支援する次世代型のCADシステムの開発が期待できる.

この発表で着目したのは画像処理技術だけではなく遺伝子情報も加味してアルツハイマーの研究を行おうとしたところである.これは従来とは異なり,画像以外の情報である遺伝子情報を使用しており,アルツハイマー患者の脳活動と遺伝子情報の関連を調べようとしており,様々な観点から予防や治療を行うことができるようになるのではないかと思いました.
 

発表タイトル       : Computer-Aided Treatment Strategy(CATS)による脳腫瘍患者の予後予測著者                  : 脇山 怜セッション名       : 診断支援
Abstruct            : コンピュータ支援診断の技術は,病変の存在診断や鑑別診断の支援を目的とした開発が行われており,これを患者の予後予測に応用した研究は少ない.本研究の目的は,脳腫瘍患者の予後予測を行い,治療計画の支援をするComputer-Aided Treatment Strategy(CATS)システムを開発することである.本研究では,79名のテント上悪性星細胞腫の患者データを用いて実験を行った.これらには,臨床所見,画像所見,生存時間の情報が含まれている.本研究では,コックス回帰モデルを用いて被験者の生存関数を推定し,その精度評価を行った.また,CATSがどのようにして最終的な生存関数を出力したのか医師が理解できるようにNomogramを作成した.CATSは,患者の予後に関する客観的な情報を医師に提供するため,脳腫瘍患者の治療計画の支援に活用が期待される.

この発表で着目したのは予後予測も一緒に行うことで患者によりいい環境を与えようとしていることである.従来のCADシステムでは,その場での診断支援しかしていないが,そこにその後の生存率や発症する病気がわかれば,患者のQOLが向上し,よりよい治療を受けられるようになると思いました.
 
 
参考文献

  • 第35回日本医用画像工学会大会論文集CD-ROM