Research Complex 第8回人材育成フレームワークレクチャー

2017年11月9日に同志社大学学研都市キャンパスの快風館にて開催されましたResearch Complex 第8回人材育成フレームワークレクチャーに参加いたしました.本研究室からは郡(M2)が参加しました.発表形式はポスター発表で,発表題目は以下の通りです.

  • 「多目的最適化手法を用いたfMRIデータに対する重要な脳機能ネットワークと脳領域の抽出」 郡悠希,日和 悟,廣安 知之


この学会は,けいはんなリサーチコンプレックス事業が主催する学会で,フレームワークレクチャーを通じ大学・研究機関の研究者が進める研究内容や,研究が目指す未来像などを掘り下げ,話し合うことを目的に開催されています.そのため,学生だけでなく企業の方も参加しており,研究内容も様々でした.今回のフレームワークレクチャーでも,ポスター発表の他に「ヒューマンモデリング技術に基づく生活支援ロボット」と「自閉スペクトラム障害(ASD)が示す感覚運動情報処理の非典型性」の講演があり,自分の研究分野とはまた違った話を聞くことが出来ました.
今回は二回目のポスター発表ということもあり,あまり緊張せずに様々なことを議論し合うことが出来ました.この発表会では様々な分野の方がいらっしゃるため,どの様な背景でどの様な研究をしているのかをきちんと伝えられるように注意して発表を行いました.ポスター発表に来て下さった方々には面白い研究だと言って興味を持っていただけ,背景だけでなく手法や結果についてなどより深い議論をさせて頂くことが出来ました.今回の発表では,企業の方や他の研究室の学生など様々な背景を持つ研究室外の方と議論し,様々な考え方に触れることが出来たので,とても良い刺激を受けることが出来ました.今後もこの経験を活かして頑張っていきたいと思います.



【文責:M2 郡】


学会参加報告書

 
報告者氏名
 
郡 悠希
発表タイトル 多目的最適化手法を用いたfMRIデータに対する重要な脳機能ネットワークと脳領域の抽出
発表英タイトル Extraction of important functional brain networks and brain regions for fMRI data using multi-objective optimization method
著者 郡 悠希,日和 悟,廣安 知之
主催 けいはんなリサーチコンプレックス事業
講演会名 平成29年度 第8回人材育成フレームワークレクチャー
(http://keihanna-rc.jp/events/event/h29-fwl-8-submit/)
会場 同志社大学学研都市キャンパス快風館 (京都府 木津川市)
開催日程 2017/11/09

 
 
 

  1. 講演会の詳細

2017/11/09に同志社大学 学研都市キャンパス 快風館にて開催されました平成29年度 第8回人材育成フレームワークレクチャーに参加いたしました.本研究室からは,私のみ参加いたしました.
この学会は,けいはんなリサーチコンプレックス事業が主催する学会で,フレームワークレクチャーを通じ大学・研究機関の研究者が進める研究内容や,研究が目指す未来像などを掘り下げ,話し合うことを目的に開催されています.そのため,学生だけでなく企業の方も参加しており,研究内容も様々でした.
 
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は9日15:40~の「けいはんな研究シーズ発表会/交流会」に参加いたしました.発表の形式はポスター発表1時間でした.
今回は,多目的最適化手法を用いた特徴量選択によりfMRIデータから重要な脳機能ネットワークを抽出する手法の検討について発表致しました.以下に抄録を記載致します.

同一タスクであっても難易度に応じて脳機能は変化する。快と不快を感じる画像を提示した場合も同様である。本研究は、この様な二つの脳機能状態の分類精度を最大にする特徴の選択手法の提案を行う。提案手法では、特徴選択が自動的に決定される。多くの特徴候補が存在する場合、これは特徴の選択数を最小にすることと分類精度を最大にすることとの間のトレードオフをもたらす。そのため、多目的遺伝的アルゴリズムを用いて、トレードオフの関係を示すパレート解を得る。次に、パレート解を調べることにより、可能な限り少ないスパース特徴を選択する方法を提案する。実験では、fMRIで得られた2つの状態の機能的脳画像データを用い、重要な脳領域とその協調ネットワークを抽出する問題に適応した。結果から、特徴がより容易に把握できることが示され、提案手法が脳の状態に関連する領域における理解を深めることが示された。

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,3名から以下のような質疑を受けました.
 
*島津製作所の北村さんからの質問です。
・質問内容1
識別はどの様に行っているのか?というものでした.
この質問に対して,ポスターの図を使用しながら選択したネットワークの相関係数を用いて,SVMで識別していることを回答しました.加えて,特徴空間内に被験者数×2(快・不快)のデータがある事も伝えました.
 
・質問内容2
最適化はどの様に行っているのか?というものでした.
この質問に対しては,遺伝的アルゴリズムのコンセプトを簡単に説明し,ポスターの図を使用しながらより良いネットワークパターンだけが残るように多目的最適化している事を伝えました.
 
・質問内容3
商品化を考えた時,識別率90%と100%の脳機能ネットワークならばどちらを使用するべきなのか?というものでした.
この質問に対して,100%のネットワークにもBaseのネットワークは存在しており,異なるネットワークを付け加えることで識別率が100%になっている.つまり,+αのネットワークにバラつきが見られる.そのため,90%でもBaseネットワークを使用した方がおそらく良いと思いますと回答しました.これに対して,北村さんより学習データとテストデータを分けて,Baseのネットワークで未知のデータに対して実際にどれだけ識別することが出来るのか調べた方がより良いという御指摘を頂きました.
 
・質問内容4
実験はどの様に行っているのか?というものでした.
この質問に対しては,ポスターの図を使用しながら実験設計について説明し,被験者に事前に画像評価を行ってもらっていることも伝えました.
 
・質問内容5
賦活みるのと何が違うのか?というものでした.
この質問に対して,高次脳機能は脳領域が単体で働くのではなく,協調して働いているという前提があるため,賦活ではなく脳領域間の協調関係を表す脳機能ネットワークに焦点を当てていると回答しました.
 
 
*製薬会社にお勤めの方ともう一名からの質問です.
質問者の氏名や所属を聞き損ねてしまいました.
 
・質問内容1
波形が逆の所も見つけることが出来るのか?というものでした.
この質問に対して,この手法では2状態で相関係数に違いがあるネットワークが抽出されるので,波形が逆(相関が負)のネットワークを抽出する可能性もある.しかし,今回は相関係数が0以上でネットワークが繋がると仮定し,相関行列を0で閾値処理しているため負の相関をもつネットワークは抽出できませんと回答しました.
 
・質問内容2
世界的に脳機能ネットワークの研究は行われているのか?というものでした.
この質問に対しては,これまでは賦活の研究が幅広く行われてきたが,最近では脳機能ネットワークについての研究も増えてきていると回答しました.
 
・質問内容3
脳機能ネットワークについて機能とそれに関連するネットワークのまとめはもう出ているのか?というものでした.
この質問に対して,私が調査している限りではまだ確かなものは出ていないが,一部の機能については様々な研究結果のまとめから特定のネットワークとの関係が示されている機能もあると回答しました.
 
・質問内容4
今回は不快に関連する脳機能ネットワークだけ抽出されたのか?というものでした.
この質問に対しては,今回の研究結果では不快時に協調するネットワークが抽出されました.と回答しました.また,これに対して不快の方が人間の防衛反応的に出やすいのではないかというご指摘を頂きました.そのため,その可能性も大いにあるため,本実験では被験者に事前に画像評価を行ってもらい使用する画像を選択していることも伝えました.
 
・質問内容5
最適化はどの様に行っているのか?というものでした.
この質問に対しては,遺伝的アルゴリズムのコンセプトを簡単に説明し,ポスターの図を使用しながらより良いネットワークパターンだけが残るように多目的最適化している事を伝えました.
 
 

  • 感想

今回は二回目のポスター発表ということもあり,あまり緊張せずに様々なことを議論し合うことが出来ました.この発表会では様々な分野の方がいらっしゃるため,どの様な背景でどの様な研究をしているのかをきちんと伝えられるように注意して発表を行いました.目標通り,どの様な研究なのか上手く伝えることが出来たため,面白い研究だと言って興味を持っていただけ,手法や結果についてなどより深い議論をさせて頂くことが出来ました.発表時間が短かったため,多くの方とお話しすることはできませんでしたが,ポスター発表としてはとてもよく出来たと思いました.企業の方や他の研究室の学生など様々な背景を持つ研究室外の方と議論することは様々な考え方を吸収することができ,とても良い刺激を受けることができたと思います.今後も積極的に様々な人に自分の研究を発表し,意見交換をしていきたいと思いました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : ヒューマンモデリング技術に基づく生活支援ロボット
発表者              : 小笠原 司
(奈良先端科学技術大学院大学 副学長・情報科学研究科 教授)
セッション名       : 講演Ⅰ

この発表は,近年のロボティクス分野の成果や傾向と講演者の研究室で行っている生活支援ロボットを作成する上で重要となるヒューマンモデリングについての講演でした.近年のロボティクス分野では,Amazonなどがロボティクス・チャレンジを開催し,成果をopenにして業界全体で技術力を向上させようという試みが行われていました.また,ヒューマンモデリングの研究では,ロボットにヒトと同じ行動をさせるためにヒトの触覚情報や視線の解明,行動の分類などを行っていました.例として触覚情報では,ロボットの動きにはすべり(摩擦)が重要であると考え,ヒトがモノを持ち上げる時に指のどの領域がどの程度滑っているのかを調査し,すべり情報からポインティングデバイスの作成等を行っていました.
また,質疑応答でロボットを作る際にどこまでヒトと同様に作るのかという話があり,とても興味深く思いました.物をつかむ行動でも人と同じ動きではなく,ロボットならではの動きの方が効率がいい場合などがあり,人と同じ動きでなくても良いのではないかという話でした.しかし,別の意見として人と違う動きをする場合,ヒトはその動きを予測できないため,恐怖心が生まれ共存が難しくなるという考えがありました.また,安全性や性能などの評価では,比較対象がヒトであるため,ヒトの動きに寄せてしまうという意見もありました.ロボットは日常生活様なのか生産用なのかで形状や動きを変えていく必要があると感じました.また,ロボットと人の共存は難しい問題だと感じましたが,技術的には遠い未来ではないのではないかとこの講演を聞き感じました.
 
 

発表タイトル       : 自閉スペクトラム障害(ASD)が示す感覚運動情報処理の非典型性
発表者              : 加藤 正晴 (同志社大学 赤ちゃん学研究センター 准教授)
セッション名       : 講演Ⅱ

この発表では,自閉症にどの様な症状があるのかと自閉症がコミュニケーションや社会性そのものではなく,それを支える感覚にどの様な影響を与えているかの研究発表でした.自閉症の症状は主に①実行機能の低さ,②全体より部分に対する意識,③他社の気持ちが分からないといった3つの症状があります.各症状において健常者と患者で実験を行い,比較しながら説明されとてもわかりやすかったです.
また,感覚に対しては世間的に自閉症の症状と言われている顔認知の際の視線の動きや声の調整,感覚過敏について紹介されていました.視線の動きでは,視線に対する恐怖から患者は目元ではなく口元を見てしまうと考えられていたが,ただ顔認知の情報収集が上手くいっていないだけである可能性を示唆していました.声の調整でも患者はフィードフォワード制御よりフィードバック制御に影響を受けやすく,聴覚と運動制御のまとめ上げが苦手なのではないかという可能性を挙げていました.最後に感覚過敏について,患者は刺激に敏感なのではなく刺激に対してストレスを感じやすいということを言っていました.どの症状に対しても様々な実験が行われており,とてもわかりやすく納得のいく結果が多かったです.
この様に一つ一つ実験を行う事で,病気の症状を情報処理メカニズムから解明しており,とても興味深い研究だと感じました.この様な実験と脳機能の解析を同時に行えば,脳機能のさらなる解明や病気に対する治療方法の解明などに繋がるのではないかと感じました.