第32回人工知能学会全国大会

6月5日(火)~8日(金)にかけて鹿児島県鹿児島市にて開催されました2018年度 人工知能学会全国大会(第32回)に参加いたしました.本学会は,人工知能学会によって主催された学会で,企業や研究者,学生が参加して,現在ブームである人工知能を用いたセッションがあり,新たな発展や次の方向性に関わる様々なアイディアが提案され、議論されることを目的に開催されています.本研究室からは廣安先生,日和先生,藤原(M2)の3名が参加しました.発表形式は口頭発表でした.発表題目は以下の通りです.

  • 「Well-beingの定量化に向けて:脳機能ネットワークに基づくマインドフルネスの見える化の検討」
     日和 悟,廣安 知之
  • 「マインドフル・ドライビング:fNIRS を用いた自動車運転中の注意状態の分析」
     藤原 侑亮,日和 悟,廣安 知之


本学会では,日和先生がオーガナイザを務める【Well-being Computing】のセッションが開かれ,マインドフルネスや睡眠などWell-beingに関わる研究について多くの発表を拝聴し,貴重な経験をさせていただきました.また,自身の発表では,月例発表会とは異なり,様々な研究分野における専門家の方々から,鋭い質問やアドバイスを頂くことができました.この学会を通じて改めて自身の研究について考え直し,さらに頑張って良い結果を出していこうと思いました.自身の発表以外にも,様々な方面の注目を集めている研究に触れる機会や,人工知能についての歴史から近年の動向まで学ぶ場面があり,とても有意義な時間を過ごせました.




【文責:M2 藤原】


学会参加報告書

 
報告者氏名
 
藤原侑亮
発表論文タイトル マインドフルドライビング:fNIRS を用いた自動車運転中の注意状態の分析
発表論文英タイトル Mindful Driving: Analysis of the attention states during simulated driving using fNIRS
著者 藤原侑亮, 日和悟,廣安知之
主催 人工知能学会
講演会名 2018年度 人工知能学会全国大会(第32回)
(https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2018/)
会場 城山ホテル鹿児島
開催日程 2018/06/05-2018/06/08

 
 

  1. 講演会の詳細

2018/06/05から2018/06/08にかけて,城山ホテル鹿児島にて開催されました2018年度 人工知能学会全国大会(第32回)に参加いたしました.この学会は,人工知能学会によって主催された学会で,企業や研究者,学生が参加して,現在ブームである人工知能を用いたセッションがあり,新たな発展や次の方向性に関わる様々なアイディアが提案され、議論されることを目的に開催されています.私は5日から8日にかけて参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,日和先生が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は7日の午後のAI応用アルゴリズム開発・産業応用(15:50~17:30)に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,発表時間は15分となっておりました.
今回の発表は,マインドフルドライビング:fNIRS を用いた自動車運転中の注意状態の分析という題目で行いました.以下に抄録を記載致します.

抄録中身
私たちは,一日のおよそ50%の間,マインドワンダリング状態であると言われている.運転中におけるマインドワンダリングは,交通事故を引き起こす.マインドフルな運転を実行するためには,運転者を取り囲む対象に適切に注意を向けるべきであるが,それに囚われない状態も必要である.そのため,マインドワンダリングを検出することが重要である.この研究では,運転者のマインドワンダリングを模擬運転中の行動データから定義し,その時の脳活動を機能的近赤外分光法(fNIRS)で調査した.Fractional amplitude low-frequency fluctuation(fALFF)を脳活動の指標として用いた.結果から,運転中のマインドワンダリングは前頭部の脳活動と操舵角の変化によって検出できることが示唆された.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
ABeam Consultingの方からの質問です.こちらの質問は運動するだけでも前頭野は活動するが、体動などの除去はどうしているのかというものでした.この質問に対する私の回答は,今回はバンドパスフィルタをかけたデータで特徴量を算出した.今後の検討事項として、ICAなどを用いた体動除去が挙げられると回答しました.
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は結果のカラーマップはグループの平均か,個人でも同じ結果が言えるのかというものでした.この質問に対して,個人のカラーマップでも,過半数が同じような傾向が見られたと回答しました.
・質問内容3
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は体調などの様々な影響を運転は受けることが考えられるが,眠気などのアンケートや影響をどのように処理しているかというものでした.この質問に対しては,今回は行動データからドライバの状態を定義した.眠気などの状態は考慮できていないと回答しました.
 

  • 感想

今回,私は初めての口頭発表を行いました.ポスター発表とは異なる緊張感を感じましたが,人工知能学会という様々な研究を行っている方から質問を頂けたのは今後の研究に活かせると思います.また,その質問は私が今後課題として考えていかなければならない良い質問ばかりで,自分の研究を見直す上で良い経験となりました.その中でも,時間通りに発表できた点,ハキハキと発表できた点は良かった点として挙げられます.また,反省点としては,事前準備が不十分であったことが挙げられます.学会準備が計画通りに進まなかったことで,今回推したかったマインドフルドライビングに関しての見せ方がイマイチだったと感じています.また,結果についても,もっと深める必要があったと感じています.今回の反省を生かして,次回の学会に向けて研究を進めていきたいと思います.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の4件の発表を聴講しました.

発表タイトル       : 認知負荷を評価するための適切なfNIRSの解析手法の検討
著者                  : 鈴木 航太、鈴木 達也、嶋田 総太郎、橘 篤導、小野 弓絵
セッション名       : OS-4 Well-being Computing(1)
Abstract          :  近赤外分光法(fNIRS)は被験者が日常生活に近い動作や軽い運動をしているときにもその脳活動を計測できるという利点があり,リハビリテーションや認知課題施行時の認知負荷を定量的に評価する手段として期待されている。しかし現在fNIRSの信号解析手法は一定化しておらず、認知負荷の指標値としてベースラインに対する最大振幅(MAX)、積算振幅(AUC)、一般化線形モデル解析により求められる血流動態応答関数の係数(beta値)など様々な指標が存在する。そこで我々は、マルチタスクの運動認知課題を用いて、課題を行うために必要な認知負荷の量を最もよく示すfNIRS信号の指標を検討した。fNIRSの酸素化ヘモグロビン濃度変化波形において、AUCとbeta値はMaxに比べて認知負荷を反映する行動指標に適した値を取り、これらの2つの指標が運動認知課題において、脳活動の強度を評価するのに適した尺度であることを示唆している。

この発表は,fNIRSを用いた認知作業負荷についての発表でした.実験タスクにリズムタスクを行い,複数の特徴量を指標として用いていました.また,ICAも行っていました.ICAの詳しい説明はありませんでしたが,fNIRSの評価方法は確立されていないことから,様々な特徴量を算出している点は,自身の研究でも検討するべきだと感じました.また,fNIRSの説明が非常にわかりやすかったことが印象に残りました.私もfNIRSを知らない方に向けて説明する時は,見習いたいと思いました.
 

発表タイトル       :健康促進に向けたサーカディアンリズムに着目した睡眠とストレスの分析
著者                  : 髙野 諒、長谷川 智、梅内 祐太、辰巳 嵩豊、髙玉 圭樹、志牟田 亨、家邉 徹、松本 英雄
セッション名       : OS-4 Well-being Computing(1)
Abstract            :本論文は,睡眠とストレスについてのデータから被験者の身体的・精神的な健康状態を日常的に把握し,これらの被験者の健康状態を良好な状態を保つための方策を提示するシステムを構築するために,その基礎となる睡眠とストレスの関係性を明らかにすることを目的としている.この目的のために,被験者のサーカディアンリズムを「夜中に測定された睡眠段階」と「日中に測定されたストレスの大きさ」という測定時間帯の異なる2つのデータを結びつけるための新たな指標として焦点を当て,これら3種類のデータ(睡眠段階・ストレスの大きさ・サーカディアンリズム)の間の関係を明らかにするための分析方法を提案した.この観点からの分析方法の有効性を確認するため,15日間の被験者実験を実施した.測定結果から,睡眠段階,ストレス度,サーカディアンリズムパターンの良し悪しについての指標を算出し,これら3つの指標を包括的に分析することにより,以下のような知見が得られた.(1)これらの3つの指標は,同様の傾向,もしくは真逆の傾向で推移しており互いに影響を及ぼしていること.(2)それらの傾向は,被験者によって書かれた日誌の内容と一致していること.

この発表は,被験者の健康状態を良好な状態を保つための方策を提示するシステムを構築するために,その基礎となる睡眠とストレスの関係性を明らかにすることを目的としている研究でした.
近年,睡眠に関する研究が盛んに進められている中で,私自身も興味を持っている分野でした.
睡眠段階と日中のストレスとを包括的に分析している点が自身の研究にも通ずるものがあり,興味深いと思いました.
 

発表タイトル       : マインドワンダリングからの復帰に要する時間の瞑想経験による変化
著者                  :川島 一朔、髙橋 徹、藤野 正寛、熊野 宏昭
セッション名       : OS-4 Well-being Computing(2)
Abstract            : Mindfulness-Based Intervention (MBI) と呼ばれる、マインドフルネスを涵養するための瞑想といったトレーニン技法やそれらを主軸としたグループセッションが、Mind-Wandering (MW) の柔軟性を高め、Well-beingに貢献すると考えられている。MWの柔軟性とは、MWから素早く注意を切り替える能力を意味する。MBIによる効果を検討する上で、柔軟性を言語報告で測定することはできない。なぜなら、自身のMWに気がつく練習を行うMBIは、MWについての自己報告におけるバイアスに影響を及ぼす可能性があるためである。MWの柔軟性を測定するための、言語報告に依存しない方法が求められる。そこで我々は、近年発表された、MWの強度を1秒間隔の脳波と機械学習で推定する手法を用いた。これにより、14分間の瞑想中のMWの変動を観察した。続いてそれを4つの意識フェーズに分類し、被験者報告から分類の妥当性を一部確認した。最後に、MWに陥っている意識フェーズから集中している意識フェーズへ復帰するのにかかる時間を、MWの柔軟性の指標として算出し、瞑想経験量と相関することを示した。

この発表はマインドワンダリングからの復帰時間を脳波と機械学習で推定する研究に関してでした.マインドワンダリング状態の検出に関する研究が注目されている中で,切り替える時間に着目している点にまず驚きました.それに加えて,マインドワンダリング状態を評価し,フィードバックシステムを構築できるレベルまで達している点から,自身の研究もそのレベルまで持っていきたいというモチベーションになりました.
 

発表タイトル       : Fontender:コミック創作のためのフォント融合による文字デザイン手法
著者                  : 斉藤 絢基、中村 聡史
セッション名       : AI応用-アルゴリズム開発・産業応用
Abstract            :コミックの創作を行う際,キャラクタのセリフやナレーションなどで用いられる文字をキャラクタの性格や場面の雰囲気に合わせた文字デザインを行うが,日本語フォントはその文字数の多さから,英語フォントに比べバリエーションが少なく,また高価であるため,その場その場にあった文字デザインをすることは容易ではない.そこで本研究では,任意の既存のフォントを組み合わせて新たなフォントを作り出す手法を実現し,そのフォントの組み合わせ度合いを自在に変化させることによって,新たなフォントを生成する手法を提案する.また,提案手法を用いたコミックで使用する文字のデザインを支援するプロトタイプシステムを実装し,提案手法の有用性を議論する.

この発表は,コミックの場面に合わせてセリフのフォントをDeep Learningを用いて変化させる手法の提案に関する研究でした.発表で実際にデモがあったので,行っている研究のイメージがしやすかったです.私が最も興味を持った点は,その場に応じたフォントを生成してくれる点です.多数フォントの中でその場に応じたフォントを選ぶのは難しいと感じていました.それがこのシステムを用いることで解決できると考えました.プロジェクト科目の参考にしたいと思います.
 
参考文献

  • 2018年度 人工知能学会全国大会(第32回)

https://confit.atlas.jp/guide/event/jsai2018/table/20180605