【速報】2012年度人工知能学会全国大会(第26回)

山口で開催された 2012年度人工知能学会全国大会(第26回) にて6件の発表を行いました。
発表を見ていただいたみなさま、ありがとうございました。

2I1-R-4-2 複数の分散ファイルシステムを連携する医用画像保存通信システム 南谷 祥之(同志社大学院 工学研究科 情報工学専攻),廣安 知之(同志社大学 生命医科学部 医情報学科),三木 光範(同志社大学 理工学部),横内 久猛(同志社大学 生命医科学部),吉見 真聡(同志社大学 理工学部)
3B1-R-2-4 SVMと学習データ選択によるクラス分類アルゴリズムの検討 大堀 裕一(同志社大学生命医科学部医情報学科),廣安 知之(同志社大学 生命医科学部 医情報学科),横内 久猛(同志社大学 生命医科学部)
3D1-R-13-3 遺伝的プログラミングを用いた角膜内皮細胞の特徴量自動抽出システムの提案 布川 将来人(同志社大学大学院 生命医科学研究科 医情報学コース),山口 浩明(同志社大学 工学研究科 情報工学専攻),小泉 範子(同志社大学 生命医科学部 医工学科),奥村 直毅(同志社大学 生命医科学部 医工学科),横内 久猛(同志社大学 生命医科学部),廣安 知之(同志社大学 生命医科学部 医情報学科)
3E1-R-6-4 個人の感性モデルに基づく対話型遺伝的アルゴリズムを用いた記事推薦システムの提案 宮地 正大(同志社大学 工学研究科 情報工学専攻),廣安 知之(同志社大学 生命医科学部 医情報学科),三木 光範(同志社大学 理工学部),横内 久猛(同志社大学 生命医科学部)
4L1-R-8-8 クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的アルゴリズムによる感性モデルの推定 田中 美里(同志社大学大学院 工学研究科 情報工学専攻),廣安 知之(同志社大学生命医科学部医情報学科),三木 光範(同志社大学 理工学部),吉見 真聡(同志社大学 理工学部),佐々木 康成(同志社大学理工学部インテリジェント情報工学科),横内 久猛(同志社大学 生命医科学部)
4L1-R-8-9 対話型遺伝的アルゴリズムを用いた角膜内皮細胞における専門家の正常・異常判断基準抽出システムの構築 上堀 聖史(同志社大学 生命医科学部 医情報学科),廣安 知之(同志社大学 生命医科学部 医情報学科),横内 久猛(同志社大学 生命医科学部)

学会参加報告書

 報告者氏名 田中美里
発表論文タイトル クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的
アルゴリズムによる感性モデルの推定
発表論文英タイトル Estimation of the Kansei model by interactive Genetic Algorithm using clustering and principal component analysis
著者 田中美里, 廣安知之, 幹光範,吉見真聡,佐々木康成,
横内久猛
主催 人工知能学会
講演会名 第26回人工知能学会全国大会
会場 山口県山口市 教育会館,自治会館,福祉会館
開催日程 2012/06/12-2012/06/15
 

 
1. 講演会の詳細
2012年6月12日から15日にかけて山口県山口市で行われた第26回人工知能学会全国大会[1]に参加いたしました.人工知能学会は名前の通り,人工知能,推論や最適化,機械学習,自然言語処理,またWeb上のデータに関する解析や利用をメインに扱う学会です.運営側には若手の研究者も多く,私も今回は学生PC委員として中日に行われた学生企画の運営などに参加させて頂きました.
私は12日から15日の全日程で参加いたしました.本研究室からは他に宮地,南谷,布川,大堀,上堀が参加しました.また,ISDL(知的システムデザイン研究室)からは6件の発表がありました.その他にも,本研究室のOB/OGでいらっしゃる,大向さん,松村さんも参加されていました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の午前のセッション「ソフトコンピューティング」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,商品推薦に対話型遺伝的アルゴリズム(iGA: interactive Genetic Algorithm)を適用するに当たり,課題となる呈示の多様性維持について解決する[2]という内容です.以下に抄録を記載致します.

iGA (interactive Genetic Algorithm) is the optimization method for Kansei, and we study the application of iGA to product recommendation. In product recommendation, a user has many preferences even in the same category. In this paper, the proposed method using clustering and principal component analysis to detect the multiple preferences and search for a preference was discussed. The recommended products by the proposed method give users higher satisfaction than that of conventional method. To find the effectiveness of the proposed method, the following two experiment were performed. In the first experiment, subjects’ multiple preferences were confirmed and multiple peak landscapes were obtained. The second experiment examined that the proposed method searched effectively for subjective landscapes which have multiple peak.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.なお,今回の質疑では質問者の方が所属を名乗らない状態で質疑となってしまっております.
 
・色の表現は2次元では収まらないはずだが,そこはどう処理しているのか?
この質問に対しては,HSV表色系の色相のみを色の情報として使用した旨ご説明しました.
・ドットと唐草とチェックを混ぜては,正しい結果は得られないのでは?
同一の試行で全ての問題を扱うわけではなく,それぞれ別の試行として扱っている旨ご説明しました.
・クラスタリングでどうやってクラスタ数を自動決定するのか?
今回の手法で用いたSilhouette統計量についてご説明しました.ただ,後ほど確認したところ,どのタイミングで使うのかが分からないという質問であり,一回のインタラクション毎にクラスタリングし直して,峰を推定している旨ご説明しました.
・なぜ他の多様性維持の手法を使わないのか?ニッチングでも良いのでは?
時間が無く,後ほど個人的にご説明しました.島モデルなどの他の手法は一つに収束する可能性を持っており,ランドスケープの形状を求めるという目的には適合していない点ご説明しました.ニッチングについては個体の分布密度を見るという点では,クラスタリングの代替になりうるものであり,良い視点を得られたと思います.
 
2.3. 感想
少々,内容を詰め込みすぎて伝わりにくい発表になってしまったように感じます.次回の発表ではもう少し情報量を減らしてゆっくりと発表できるよう,方針を変えたいと思います.
 
 
3. 聴講
今大会の4件の発表について報告いたします.
 

発表タイトル       : Twitterにおける個人のネットワーク構造と社会的態度の関連性[3]著者                  : 小川祐樹,山本仁志,宮田加久子,池田謙一セッション名       : Webインテリジェンス(1)Abstract            : Whether the contacts with information and the environment of communication which are brought about by the social network in Twitter promote opportunities to come into touch with others who have different opinions, or whether they promote selective contacts. This study, as a basic analysis for exploring these questions, examines the association between the social attitudes of individuals and the friends they form in Twitter as well as the environment of contacts with information, by an analysis which links data from social surveys with logged data of the behaviors of individuals obtained in Twitter.

この発表ではTwitterなどのSNSが,従来言われているように個人の情報環境を多様化させているのか,それとも実際には選択的接触(情報の蛸壺化)を促進させてしまっているのかについて,原発事故における情報発信を対象として調査した結果について発表するものでした.まず,事前の調査では,フォローしている人間が自分と似ていると回答した人ほど,一日のツイート数などと相関が高く,情報が発信することが多かったそうです.また,原発の賛否については,原発に賛成しかつ賛成派が少数であると認識しているユーザ(少数派認知)と,原発に反対で反対派が多数で認識しているユーザ(多数派認知)を比較した場合,多数派の方においてツイート数が有意に高いなどの結果が得られ,選択的接触が促進されている可能性が示唆されたそうです.
 

発表タイトル       : 反転分布に対象性を仮定した関係縮約[4]著者                  : 山川宏セッション名       : インタラクティブ発表(ポスター発表)Abstract            : The function for generating frame (which we call framic wiring composer: FWC) for flexible prediction is not realized on today’s computer and is technologically attractive.   We presume that the FWC function is installed on the hippocampus in the brain, because of some supporting evidences.        Moreover, relationship equivalences (REs) are necessary to implement the FWC function. Findings of hippocampus such as the theta phase precession and the configural association theory were taken into account for designing representation of REs. Distribution equivalent groups (DEGs) which are multi-dimensional partial space containing several cases could be promising candidate of REs.              We estimated the number of DEGs for multi- dimensional binary lattice.        It was shown that DEGs with over 8 or 9 dimensions has enough number of states for classifying potential REs in the hippocampus containing several hundred thousand excitatory neurons.

この発表では,海馬の神経回路を模倣したデータマイニング方法を実装し,その処理過程を評価することで海馬での処理過程に関する考察を行っています.発表者の山川先生は,与えられたデータ群についてそのアトリビュートとレコードを同時選択し,共通性のあるデータを抽出するという技術(状況分解)を過去に発表しており,今発表はそのモデルを海馬でのフレーム処理に拡張したものであると考えられます.非常に難解で理解できていない部分が多いのですが,とても面白そうな研究であることは伝わってきました.
 

発表タイトル       : LODAC Museum: Linked Open Datによる博物館情報の統合と                            活用[5]著者                  : 松村冬子,嘉村哲郎,加藤文彦,小林巌生,高橋徹,上田洋,
大向一輝,武田英明セッション名       : Linked DataとオントロジーAbstract            : This paper reports the progress of LODAC Museum project which aims to generate Linked Open Data of museum information in Japan. Collection information of 53 museums is scraped from their websites and converted to LOD. In order to efficiently collect massive amount of data and convert it to LOD, LODAC Distiller, a LOD generator is developed and it consists from two main parts; data processing and metadata design. Semantic MediaWiki is also introduced to enable user annotation to LOD based on metadata schema defined by them. Moreover, three applications that use LODAC Museums and other LODs are developed and discussed; Yokohama Art Spot, CamCat and go2museum.

この発表は,研究室OGの松村さんによる発表で,作成したアプリケーションの紹介でした.LODを用いた博物館情報の共有で,全国100箇所以上の博物館情報の登録をしたこと,それに伴い登録時のデータ変換の手間を省くために博物館員などの専門家が利用しやすい変換ルール作成用のインタフェースを構築したことなどを発表されていました.また,これと類似した欧州におけるLODの取り組みとしてEuropeana[6]を紹介し,その連携についても述べています.
 

発表タイトル       : ロボット実験によるVicarious trial-and-error(VTE)の役割の解析[7]著者                  : 松田英子,Julien Hubert,池上高志セッション名       : ソフトコンピューティングAbstract            : Vicarious trial-and-error (VTE) is a type of conflict-like behavior, observed in route selection tasks[Tolman, 1939, Muenzinger and Flecher]. Studies of VTEs have shown a correlation between the number of VTEs exhibited by a system with its learning efficiency. At the onset of learning a task, the number of VTEs increases, and when the learning reaches its plateau, it decreases. From experiments of rats, VTEs have been reported in T-maze experiments of rats who were shown to be simulating their next decisions internally before acting[Johnson and Redish, 2007]. The question we explore in this paper concerns the role of VTE. Basing ourselves on a model developed by [Bovet and Pfeifer, 2005], we created a computer simulation and ran robotic experiments to compute the number of VTEs during the learning of a T-maze task.

この発表では餌を探すラットが道を選択する際に首を左右に振って迷っている行動(仮の試行錯誤(VTE: Vicarious trial-and-error))から,意識の生成過程を調べるというもので,コンピュータシミュレーションから解析をおこなったものです.過去の研究より,VTEが観察される際,ラットは脳内で選択シミュレーションを行って選択肢を吟味しているとされています.実験では視覚や触覚,報酬系の接続モデルを密な結合モデルと疎な結合モデルの2種を用意し,それぞれの学習の進捗とVTEの発生頻度について検証しました.成功率は2つのモデルに大きな差はなく,疎な結合モデルはVTEが急激に減少して一定を保つのに対し,密な結合モデルではVTEがゆっくりと減少する傾向が見られました.また,密な結合モデルの方が疎な結合モデルよりも,異なる環境下での成功率の分散が小さく,環境変化に対して頑強である旨が示唆され,冗長な結合がVTE,ひいては意識の発生を生み,また環境への柔軟な対応に寄与していると考えられるという内容でした.
 
参考文献
[1] 2012年度人工知能学会全国大会(第26回) , http://www.ai-gakkai.or.jp/conf/2012/
[2] 田中美里, 廣安知之, 幹光範,吉見真聡,佐々木康成,横内久猛, “クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的アルゴリズムによる感性モデルの推定”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 4L1-R-8-8, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-625.html, 2012
[3] 小川祐樹,山本仁志,宮田加久子,池田謙一, “Twitterにおける個人のネットワーク構造と社会的態度の関連性”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 1C1-R-5-4, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-342.html, 2012
[4] 山川宏, “反転分布に対象性を仮定した関係縮約”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 3N1-OS-21, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-29.html, 2012
[5] 松村冬子,嘉村哲郎,加藤文彦,小林巌生,高橋徹,上田洋,大向一輝,武田英明, ” LODAC Museum: Linked Open Dataによる博物館情報の統合と活用”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集,  3C2-OS-13b, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-619.html, 2012
[6] Europeana, http://www.europeana.eu/portal/
[7] 松田英子,Julien Hubert,池上高志, “ロボット実験による Vicarious trial-and-error(VTE) の役割の解析”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 4L1-R-8-7,
https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-623.html, 2012
 

学会参加報告書

報告者氏名 上堀聖史
 発表論文タイトル 対話型遺伝的アルゴリズムを用いた角膜内皮細胞における専門家の正常・異常判断基準抽出システムの構築
  発表論文英タイトル Constraction of System for Experts in Corneal Endothelial Cells to Extract Benchmarks of Normal and Abnormal Conditions Using interactive Genetic Algorithm(iGA)
著者 上堀聖史, 廣安知之, 横内久猛
主催 人工知能学会
講演会名 第26回 人工知能学会全国大会
 会場 山口県教育会館、ゆ~あいプラザ山口県社会福祉会館、山口県自治会館,他
開催日程 2012年6月12日(火)~15日(金)
 

 

  1. 講演会の詳細

社団法人人工知能学会は,人工知能の研究を進めるため,情報交換や研究交流をすることを目的として設立された学会です.その第26回目の全国大会が,6/12~15の間,山口市にて開催されました.今回の全国大会のテーマは,「文化,科学技術と未来」です.2012年度の大会では,昨年度の口頭発表に加え,発表者と参加者がインタラクティブに議論できる,インタラクティブ発表も行われました.
私は6月15日(金)のソフトコンピューティングセッションにて発表を行いました.同セッションでは田中美里氏も発表を行いました.13日では,知識の利用と共有セッションで南谷祥之氏,14日では,Webマイニングセッションで宮地正大氏,AI応用セッションで布川将来人氏,機械学習セッションで,大堀裕一氏が発表しました.
 

  1. 研究発表

2.1.    発表概要
私は6月15日(金)のソフトコンピューティングセッションにて発表を行いました.発表形式は口頭で,15分間の講演と5分間の質疑応答を行いました.
今回の発表は対話型遺伝的アルゴリズムを用いた角膜内皮細胞における専門家の正常・異常判断基準抽出システムの構築です.
以下に抄録を記載致します.

6月15日(金) ソフトコンピューティング 口頭発表細胞生物学を主とする専門家は,細胞の状態判断を主観的に行う.そのため,状態の境界を定量的に示すことはできない.そこで,対話型遺伝的アルゴリズムを用いた角膜内皮細胞における専門家の正常・異常判断基準抽出システムを構築する.本システムは,多様な特徴を表現するため生成した疑似細胞画像を用い,専門家に掲示する.予備評価実験の結果,本システムが判断基準を抽出できることを確認した.Experts major in cell biology judge status of cells subjectively, especially about corneal endothelial cells. There- fore, benchmarks that experts judge the status of cells are less certain in the present circumstances.We construct a system that extracts their benchmarks of normal and abnormal conditions quantitatively in corneal endothelial cells. We generate pseudo images of corneal endothelial cells for showing to experts to represent versatile features in this system The algorithm of this system is Paired Comparison interactive Genetic Algorithm (PC-iGA). To analysis the images generated by this system on judgement of experts, it is possible to extract their benchmarks in cellular status. We attempted a preparatory evaluation experiment by an agent. As a result, we confirmed that this system can extract benchmarks.

 
2.2.    質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
座長の狩野均先生(筑波大学)のご質疑
細胞画像のモデル(分裂などの様子)はL-systemを用いるというのが知られているが,今回離散ボロノイ図を用いてモデルを構築した理由
私の回答
角膜内皮細胞は多角形の形状をした細胞が整列した特徴をもっており,ボロノイ図というものも同様の特徴をもっているため,ボロノイ図でモデルを構築できるのではないかと考え,今回はボロノイ図を用いた.ご指摘いただいたL-systemに関しても今後検討したい
・質問内容2
座長の狩野均先生(筑波大学)のご質疑
実験結果について,構築したシステムは,細胞面積SDが小さくなっていることを示しているが,これはシステムが提示した細胞画像のうち細胞面積SDが小さい値を示した画像を常に選択しているから当然の結果ではないか
私の回答
今回の実験では,実際にの人ではなく専門家エージェントを用いた予備実験であり,システムの評価実験である.エージェントのもつ判断基準が細胞面積SDであると設定し,本実験はエージェントの判断基準を抽出できるかの確認実験である.実験結果として,エージェントの選択した細胞画像の特徴量を算出した所,細胞面積SDのみ一定の傾向を得たため,システムはエージェントが細胞面積SDを判断基準としていたことを確認し,実験設定通りになったという結果である
 
・質問内容3
某大学の先生
考えられるパラメータの数と種類が既知なのであれば,今回のシステムを使用しなくても,専門家が自分で設定して細胞培養を行えばいいのでは
私の回答
(質問の意図がよく理解できず)検討すると回答
 
2.3.    感想
初めての学会参加であり,発表は緊張しました.想定質問はいくつか用意していましたが,受けた質問は,うまく発表が伝わっていなかったと感じられた質問内容でした.今回の発表で,日頃の発表練習不足が感じさせられました.しかしながら,今回の学会参加で,自分の実力不足を再確認できたので,いい経験になったと思いました.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル :ロボット実験による Vicarious trial-and-error(VTE) の役割の解析著者         :松田英子(東京大学大学院)セッション名: ソフトコンピューティング

この発表は,ネズミなどに見られるVicarious trial and error(VTE)と呼ばれる,頭を左右に振って迷っているように見える「仮の試行錯誤」を,ロボット上にシミュレーションし実験う行うことで,VTEの役割を明らかにするという研究内容であった.VTEがある程,課題を解く精度は低いと思っていたが,発表者の実験結果としては,VTEは課題を解く能力に直接影響はないというものであった.発表内容は難しいものであったが,興味深い内容であった.
 

発表タイトル :人間行動モデルCHARMの看護師研               修への実践に向けて

著者           : 西村悟史
セッション名 : 知識の利用と共有

近年,実際に臨床現場で起こりうるシナリオをシミュレーションする,看護シミュレーション研修が行われているが,その際に用いる看護手順書のあらゆる問題点を解決するため,CHARMと呼ぶ人間行動モデルを提案するという発表であった.発表内容に沿っていないかもしれないが,CHARMをiPadに導入することで,どのような手順で目的を遂行するかを明確にし,看護行為の手順と内容を定着させることが期待できるのではないかと感じた.
 
 
 

発表タイトル  :進化的なアトラクタ形成による室  内レイアウトシステム

  著者             :久保田義則(埼玉工業大学大学院)
セッション名         :ソフトコンピューティング

この発表では,良いレイアウトを見つけるのが困難と考えられる,デザインの知識や経験のないユーザのために,ユーザの好みを反映したレイアウト提案システムの構築するという研究である.アトラクタ空間によるオブジェクトの引き込みを行い,それによってできた配置をユーザに提示する操作を繰り返し,ユーザの好みを反映したオブジェクトの配置を提案する.ユーザの好みを反映するという,人間の感性を扱うものとしてはiGA以外はあまり知らなかったため,興味深かった.
 

学会参加報告書

報告者氏名 布川将来人
発表論文タイトル 遺伝的プログラミングを用いた角膜内皮細胞の特徴量自動抽出システムの提案
発表論文英タイトル Automatic extraction systems of feature values of corneal endothelial cells using Genetic Programming
著者 布川将来人,山口浩明,小泉範子,奥村直樹,横内久猛,廣安知之
主催 人工知能学会
講演会名

2012年度人工知能学会全国大会(第26回) 

会場 山口県教育会館,福祉会館,他
開催日程 2012/06/12~2012/06/15
 

 
1. 講演会の詳細
2012/06/12から2012/06/15にかけて,山口県にて開催されました2012年度人工知能学会全国大会(1)に参加いたしました.この学会は,人工知能学会によって主催された発表会で,データマイニング,自然言語処理,機械学習等の人工知能に関する様々な研究について発表を行う場となっています.発表自体が聞けませんでしたが,脳科学とAIやLinked Dataとオントロジーなどのセッションも行われていました.
私は13-15日のみ参加いたしました.本研究室からは他に田中さん,宮地さん,南谷さん,上堀,大堀が参加しました.また,ISDLからも吉見先生をはじめ多くの学生が参加していました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は14日の午前のセッションの一つである「AI応用(1)」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,….以下に抄録を記載致します.

抄録中身角膜内皮細胞画像から細胞領域画像を抽出,領域画像から特徴量(細胞密度,細胞サイズ)を計測する.細胞領域画像抽出の手法として,遺伝的プログラミングによって自動構築した画像処理フィルタを用いる.既存画像処理ソフトであるImageJとの比較を行い良好な結果が得られた.

2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は
「現状では,ユーザー(研究者)が画像に対して色々と処理をして特徴量を取っているが,提案手法を用いるとそれだけで特徴量を計測できるのか?」
というものでした.この質問に対する回答ですが
「はい,正確には既存のソフトでも特徴量は計測できるのですが,特徴量抽出の前に行う画像処理において提案手法では,学習データを用いることで自動で行えます.」
 
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は
「結果において提案手法(GP)が既存手法(ImageJ)に劣る画像が存在するが,なぜそのような結果になったのか?」
というものでした.この質問に対する私の回答は
「ImageJで用いた領域分割のフィルタは提案手法に組み込まれているフィルタとは異なったフィルタであるため,領域が整った形をした画像においてImageJで用いたフィルタ(形状による分割)が良好に働いたためだと考えられます」
 
2.3. 感想
今回の発表は少し練習が足りていなかった事と緊張でぎこちない発表になってしまいました.
次回からはより練習していくようにしたいです.
また,内容についても考察等が無かったため,次回は結果に対して考察を加えられるようにデータの整理,検討を行っていきたいです.
 
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : Web上の議論に対する頻出部分木マイニング2)著者                  : 東條亮平,澤村一セッション名       : データマイニング「データマイニング(3)」Abstruct            : In recent years, SNS, Blog and Twitter are popular in the world. The information communicated by people around the world in place on the Web, have a argumentation format which consists of its conclusion and rationale basically. The frequent argumentation in place on the Web is based on the thought that people have in common. In the previous study, Itoya proposed a method for mining frequent structures from the data consinsting of a set of argumentation trees, and he did mining for proof was done by philosophers such as Thomas Aquinas.  But mining for argumentation on the Web has not been done yet. In this paper, we do mining for argumentation on the Web, and we consider results of mining.

この発表はWeb上で行われる議論の内容を木構造(議論木)で表現し,その木構造の中から頻出部分木マイニングを行う事で,議論内でどのような意見が多く,それはどういう思想や信念からくるのかを抽出するといった発表でした.
この発表では,議論分析ツール(Araucarua)を用いて議論内容を木構造にし,SLEUTHアルゴリズムと呼ばれる手法を用いて部分木のマイニングを行っていました.
背景等は私の研究等とは特に関係のないもですが,木構造の部分木抽出は今後やっていかなければならない課題なので今後の参考にできればと考えています.
 

発表タイトル       :ユーザ間類似度と模擬育種法を用いた受験校選定支援システムの提案3)著者                  :飯沼浩之,菱山玲子セッション名       :AI応用「AI応用(1)」Abstruct            :When students choose a high school, there are some problems that they don’t have a clear reason for their choice and a multidirectional choosing high school support is a burden for teachers. Then I aimed at the construction of the system which put collaborative filtering and simulated breeding together. The purpose is reducing teachers’ burden and considering students’ taste. And I showed the possibility of the suggestion system by the experiment for active high school examinees and their teachers.

この発表は高校受験の際の受験校の推薦を支援するシステムの構築を目的としており,その手法として過去のDBから協調フィルタリングで候補を絞り,その候補の中から模擬育種法と呼ばれる手法を用いてユーザーに合った候補を絞っていくという手法でした.
この模擬育種法というのは聞いていた限りではGAの評価部分を人が行うということだったのでiGAと同じものであると思われます.iGAなどのインタラクティブな手法の問題点である評価負担を減らす方法として,事前に候補を絞っておくのは悪くない手法だとかんじました.
ただ,候補を絞る際にもある程度の膨らみを持たす必要性があるのではないかとかんじました.

発表タイトル       :複数の時系列データの比較に基づく言語化の試み著者                  :小林 瑞季  小林 一郎セッション名       :意味と理解のコンピューティングAbstruct            :. This paper proposes a method of linguistic summarization of the relation among multiple time-series data by comparing them. The relation among the data is found by correlation coefficient and then it is categorized into main three relations: (i) the same trends, (ii) synmmetrical trends, and (iii) no correlation. Symbolic Aggregate approXimation (SAX) is applied to the data categorized into these three types for coding numerical data, and then significant parts between objective two time-series data are extracted by the extended edit distance we have proposed.

この発表では,複数の時系列データの関係性を分かりやく表現することを目的としており,その手法として,まず時系列データの相関係数をとり,時系列変化が(1)類似(2)対称(3)関連性無の3パターンに分類する.次に時系列データに対してSAX法を用いて文字列化し,この文字列を編集距離と呼ばれる指標を用いて比較を行う.この際に先程の相関関係の3つのパターンによって変種距離を変化させることによって類似部分,対称部分の抽出を行うといった手法であった.
本研究室で用いられているNIRSも時系列データであるため何か参考になる部分もあると思われるが,編集距離等について詳しくわからなかったため,どこに考慮すべき点があるかまでは考えられなかった.ただ,類似している部分だけでなく対称的な動きをしている部分にも何か意味があるのならば参考にできるのではないかとかんじた.
 
参考文献
1)    2012年度人工知能学会全国大会(第26回)JSAI2012
2)      東條亮平,澤村一.「Web上の議論に対する頻出部分木マイニング」
https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/pdf/294.pdf
3)      ユーザ間類似度と模擬育種法を用いた受験校選定支援システムの提案
https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/pdf/133.pdf
 

学会参加報告書

報告者氏名 南谷祥之
発表論文タイトル 複数の分散ファイルシステムを連携する医用画像保存通信システム
発表論文英タイトル Distributed PACS Cooperating Multiple Distributed File System
著者 南谷祥之, 廣安知之, 三木光範,横内久猛,吉見 真聡
主催 人工知能学会
講演会名 第26回 人工知能学会 全国大会
会場 山口県教育会館
開催日程 2012/06/12-2012/06/15
 

 
1. 講演会の詳細
2012/06/12から2012/06/15にかけて,山口県にて開催されました人工知能学会 全国大会に参加いたしました.本学会は,人工知能に関してデータマイニングやロボット技術など幅広い分野の方の研究発表が行われていました.
私は13〜15日に出席し,本研究室から田中,宮地,上堀,大堀,布川が参加,またOBの松村さんが参加されていました.三木研究室からも吉見先生やM1数名が参加されていました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は2日目13日の午前のセッション「知識の利用と共有(3)」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.以下に抄録を記載致します.

本研究では,各医療機関が分散ファイルシステムを構築し,それらを連携させた医用画像保存通信システム(PACS)を提案する.対象とする医用画像DICOMは,データ量の大きな実画像データと患者情報等のメタデータから構成されている.本システムは各医療機関がこのメタデータから構成されるデータベースを保持する一方,外部に分散的に存在するデータベースから検索を可能にするシステムである.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
パナソニック本社R&Dの方からの質問を頂きました.
【質問内容】「実際に医療現場で他の病院のデータを見る機会って意外とないと思う.どのような状況を想定しているのか?現状どんな状況があるのか教えて頂きたい.」
 
【回答】「現状,欧米ではセカンドオピニオンなどが進んでいるが,欧米に比べまだまだ日本ではそのような意識が少ない.医療情報を共有するようなシステムを構築することで,患者の方が複数の医療機関を受診するようになれば良いと思う.また,今後高齢化が進む中で,簡易な医療器機で自宅において撮影した医用画像を医療機関に送信するようなシステムも求められると考える.」
 
 
・質問内容2
東京大学後期博士課程所属の亀田さんからの質問を頂きました.
【質問内容】「病院に導入するにあたって,法律的・環境的な障害はあるか.例えば,DICOMという特別な規格は障害にならないか.」
 
【回答】「正直なところ,医療システムは法律の問題があり,構築したシステムの導入については目処が立っていない.DICOM規格については,規格名を聞いたことのない方も多いかも知れないが,医療分野において一般的に用いられている規格でありこれが障害となることはない.」
 
 
2.3. 感想
発表は,聴講者40人ほどの発表であった.セッション自体は医療関係の発表が集められたという印象であった.発表自体は既に何回か発表を経験しているので,SACSISの時に比べ落ち着いて発表が出来たと思う.
質疑では,発表内容に関してではなく,研究背景に関しての質問を頂いた.内容に関してでは泣く,背景に関してとなった原因としては,やはり自身の発表内容が薄かったことが問題だったと感じている.他の発表者でもGUIを作成したと発表を行っていた方がいたが,「発表に加えてポスターセッションも出るので,そこでGUIを触って欲しい.」と発表されてた.
今回の内容では,GUI,評価実験ともにまだまだと感じているが,この方のように,聴講者の方に実際に触って頂けるインタフェースの開発,自分が納得出来る実験結果を示せるようにしたい.
 
3. 聴講
今回の講演会で聴講しました発表の中から,3件報告させて頂きます.

発表タイトル       :機関横断型文献情報Wikiによるコミュニティヘースのメタテータ対応付けの試み著者                  : 日向野達郎
セッション名       : 知識の利用と共有(3)
Abstruct :現在Web上には,「CiNii」や「J-GLOBAL」等の,Web上で閲覧することのできる論文や書籍等の文献検索サイトと呼ばれるサービスが存在している.過去から最新の研究成果や,関連研究の調査の際に非常に便利なサービスとして多くの研究者に利用されている.しかし,それぞれ別々の機関によってメタデータが管理されているため,複数のサイトを横断的に検索することができない.そのため,網羅的に文献を探しているユーザにとっては,複数のサイトで検索を繰り返す必要があり,非常に手間がかかってしまうというのが現状である.
本研究では,機関の枠を超えて文献情報を横断的に検索することを可能にするサービスの開発を目的としている.このためには各機関がメタデータに対してそれぞれ割り当てている固有の識別番号(論文ID,著者ID等)を互いに対応付ける必要がある.そこでMediaWikiを用いることによって,複数の文献検索サイトのメタデータを容易に対応付けることを可能にする枠組みを提案している.本論文では,主に人物情報を対象として,MediaWiki上で対応付けが可能であるかどうかを検証した結果を報告する.具体的には,各文献検索サイトから機械的にメタデータを収集し,MediaWikiに自動的に登録するシステムを試作し,登録されたデータを人手で名寄せする作業を行い,MediaWikiの仕組みが有効であることを示す.

この発表では,ウェブ上に存在する同一著者の文献にも関わらず別著者としてまとめられているものを,メタデータを用いて統一していこうという発表でした.WikipediaやCiNii,他の研究者情報などから研究者情報を抽出しそれらを結ぶシステムを構築していました.大量のデータをまとめる際には,メタデータ情報が重要となってきますが,各サイトから横断的にメタデータを取得し,対応付ける点は,各病院が保有する情報を共有する際に応用できるのではないかと感じました.
 
 

発表タイトル       : 特別講演著者                  : 有川節夫(九州大学)セッション名       : 特別講演
Abstruct            : 予稿集なし

この発表では,人工知能の分野で非常に有名な方の講演を拝聴しました.講演自体は英語での発表で,正直なところ内容に関しては詳しくは分かりませんでした.ロボットサッカーのAIや,対話技術に関する技術を非常に愉快に講演されていました.興味深く感じた事は質疑応答に関してです.300人規模の会場だったのですが,東大の(助?)教授の方が質問をされていて,「自分の研究ではこのような事をしているが,有川さんはこうなのですか?」と相手にもメリットを感じさせるような質問をしていた点です.質問の後,是非ディスカッションしましょうという会話になっていたのですが,質疑の仕方に非常に好感を持ちました.まずは,質疑をするという事が重要ですが,相手に興味を持って頂くような質問を行うことも同時に重要だなと感じました.
 
 

発表タイトル       :ライフゲームのネットワーク表現と自己組織化臨界著者                  :香山 喜彦セッション名       :ソフトコンピューティング
Abstruct            :セルオートマトン(CA)は,グリッド上に配置されたセルの状態が,近接するセルの状態に依存した単純なルールに従って時間発展する模型であるが,多様な振る舞いを持つものが知られており,Wolframによって4つのクラスに分類されている[Wolfram1983].特にクラスIVに属するルールは,自己組織化や計算万能などとの関連から多くの研究がなされてきた.一方,我々の身近に存在する様々な複雑系のネットワークは,スモールワールド性[Watts1998]やスケールフリー性[Barabási1999]の特徴を持つことが知られている.そこで我々は,CAの動的振る舞いをネットワークで視覚化することで,Wolframクラスとネットワーク構造との関連性を明らかにすることを目的として“CAのネットワーク表現”を提唱した[Kayama2010,2011].[Kayama2011]では1次元の代表的なルールについて議論し,2次元のルールとして最も有名であり,クラスIVに属するConwayのライフゲーム(Life)のネットワーク表現についてスケールフリー性を確認した[Kayama2012].これは,BakらによるLifeゲームでの自己組織化臨界(SOC)の確認と直接関連する結果である[Bak1987,1989].そこで本稿では,Lifeのネットワーク表現を紹介するとともに,SOCとの関係について考察する.
Lifeのネットワーク表現によると,初期状態から過渡時間を経た後の休止状態は,生き残ったパターン同士が相互にリンクされたネットワークで表現される.このネットワークは,臨界状態における1セル摂動による雪崩現象を発生させる原因となる緊張状態を可視化しており,そのネットワーク構造は,自己組織化臨界の特徴であるフラクタル構造により,スケールフリー性を持つと考えられる.ここでは,ネットワーク理論のパラメータを用いて,実際に自己組織化臨界を確認し,休止状態のネットワークがスケールフリー性を持つことを示す.

この発表では,下原先生の授業で習いましたセルオートマトン(CA)によるライフゲームのネットワーク表現について取り扱っていました.ライフゲームの理論をグリッド上で広がるネットワークを可視化する手法について検討していました.グリッド向けファイルシステムGfarmを用いている私の研究に対しても,今後遠隔地間で共有を行う際,複数の病院から同一データを検索する際の最適化に応用できるのではないかと感じました.
 
 
参考文献
1)    第26回人工知能学会全国大会, http://www.ai-gakkai.or.jp/conf/2012/
 

学会参加報告書

 報告者氏名 田中美里
発表論文タイトル クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的
アルゴリズムによる感性モデルの推定
発表論文英タイトル Estimation of the Kansei model by interactive Genetic Algorithm using clustering and principal component analysis
著者 田中美里, 廣安知之, 幹光範,吉見真聡,佐々木康成,
横内久猛
主催 人工知能学会
講演会名 第26回人工知能学会全国大会
会場 山口県山口市 教育会館,自治会館,福祉会館
開催日程 2012/06/12-2012/06/15
 

 
1. 講演会の詳細
2012年6月12日から15日にかけて山口県山口市で行われた第26回人工知能学会全国大会[1]に参加いたしました.人工知能学会は名前の通り,人工知能,推論や最適化,機械学習,自然言語処理,またWeb上のデータに関する解析や利用をメインに扱う学会です.運営側には若手の研究者も多く,私も今回は学生PC委員として中日に行われた学生企画の運営などに参加させて頂きました.
私は12日から15日の全日程で参加いたしました.本研究室からは他に宮地,南谷,布川,大堀,上堀が参加しました.また,ISDL(知的システムデザイン研究室)からは6件の発表がありました.その他にも,本研究室のOB/OGでいらっしゃる,大向さん,松村さんも参加されていました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の午前のセッション「ソフトコンピューティング」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,商品推薦に対話型遺伝的アルゴリズム(iGA: interactive Genetic Algorithm)を適用するに当たり,課題となる呈示の多様性維持について解決する[2]という内容です.以下に抄録を記載致します.

iGA (interactive Genetic Algorithm) is the optimization method for Kansei, and we study the application of iGA to product recommendation. In product recommendation, a user has many preferences even in the same category. In this paper, the proposed method using clustering and principal component analysis to detect the multiple preferences and search for a preference was discussed. The recommended products by the proposed method give users higher satisfaction than that of conventional method. To find the effectiveness of the proposed method, the following two experiment were performed. In the first experiment, subjects’ multiple preferences were confirmed and multiple peak landscapes were obtained. The second experiment examined that the proposed method searched effectively for subjective landscapes which have multiple peak.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.なお,今回の質疑では質問者の方が所属を名乗らない状態で質疑となってしまっております.
 
・色の表現は2次元では収まらないはずだが,そこはどう処理しているのか?
この質問に対しては,HSV表色系の色相のみを色の情報として使用した旨ご説明しました.
・ドットと唐草とチェックを混ぜては,正しい結果は得られないのでは?
同一の試行で全ての問題を扱うわけではなく,それぞれ別の試行として扱っている旨ご説明しました.
・クラスタリングでどうやってクラスタ数を自動決定するのか?
今回の手法で用いたSilhouette統計量についてご説明しました.ただ,後ほど確認したところ,どのタイミングで使うのかが分からないという質問であり,一回のインタラクション毎にクラスタリングし直して,峰を推定している旨ご説明しました.
・なぜ他の多様性維持の手法を使わないのか?ニッチングでも良いのでは?
時間が無く,後ほど個人的にご説明しました.島モデルなどの他の手法は一つに収束する可能性を持っており,ランドスケープの形状を求めるという目的には適合していない点ご説明しました.ニッチングについては個体の分布密度を見るという点では,クラスタリングの代替になりうるものであり,良い視点を得られたと思います.
 
2.3. 感想
少々,内容を詰め込みすぎて伝わりにくい発表になってしまったように感じます.次回の発表ではもう少し情報量を減らしてゆっくりと発表できるよう,方針を変えたいと思います.
 
 
3. 聴講
今大会の4件の発表について報告いたします.
 

発表タイトル       : Twitterにおける個人のネットワーク構造と社会的態度の関連性[3]著者                  : 小川祐樹,山本仁志,宮田加久子,池田謙一
セッション名       : Webインテリジェンス(1)
Abstract            : Whether the contacts with information and the environment of communication which are brought about by the social network in Twitter promote opportunities to come into touch with others who have different opinions, or whether they promote selective contacts. This study, as a basic analysis for exploring these questions, examines the association between the social attitudes of individuals and the friends they form in Twitter as well as the environment of contacts with information, by an analysis which links data from social surveys with logged data of the behaviors of individuals obtained in Twitter.

この発表ではTwitterなどのSNSが,従来言われているように個人の情報環境を多様化させているのか,それとも実際には選択的接触(情報の蛸壺化)を促進させてしまっているのかについて,原発事故における情報発信を対象として調査した結果について発表するものでした.まず,事前の調査では,フォローしている人間が自分と似ていると回答した人ほど,一日のツイート数などと相関が高く,情報が発信することが多かったそうです.また,原発の賛否については,原発に賛成しかつ賛成派が少数であると認識しているユーザ(少数派認知)と,原発に反対で反対派が多数で認識しているユーザ(多数派認知)を比較した場合,多数派の方においてツイート数が有意に高いなどの結果が得られ,選択的接触が促進されている可能性が示唆されたそうです.
 

発表タイトル       : 反転分布に対象性を仮定した関係縮約[4]著者                  : 山川宏
セッション名       : インタラクティブ発表(ポスター発表)
Abstract            : The function for generating frame (which we call framic wiring composer: FWC) for flexible prediction is not realized on today’s computer and is technologically attractive.   We presume that the FWC function is installed on the hippocampus in the brain, because of some supporting evidences.        Moreover, relationship equivalences (REs) are necessary to implement the FWC function. Findings of hippocampus such as the theta phase precession and the configural association theory were taken into account for designing representation of REs. Distribution equivalent groups (DEGs) which are multi-dimensional partial space containing several cases could be promising candidate of REs.              We estimated the number of DEGs for multi- dimensional binary lattice.        It was shown that DEGs with over 8 or 9 dimensions has enough number of states for classifying potential REs in the hippocampus containing several hundred thousand excitatory neurons.

この発表では,海馬の神経回路を模倣したデータマイニング方法を実装し,その処理過程を評価することで海馬での処理過程に関する考察を行っています.発表者の山川先生は,与えられたデータ群についてそのアトリビュートとレコードを同時選択し,共通性のあるデータを抽出するという技術(状況分解)を過去に発表しており,今発表はそのモデルを海馬でのフレーム処理に拡張したものであると考えられます.非常に難解で理解できていない部分が多いのですが,とても面白そうな研究であることは伝わってきました.
 

発表タイトル       : LODAC Museum: Linked Open Datによる博物館情報の統合と                            活用[5]著者                  : 松村冬子,嘉村哲郎,加藤文彦,小林巌生,高橋徹,上田洋,
大向一輝,武田英明
セッション名       : Linked Dataとオントロジー
Abstract            : This paper reports the progress of LODAC Museum project which aims to generate Linked Open Data of museum information in Japan. Collection information of 53 museums is scraped from their websites and converted to LOD. In order to efficiently collect massive amount of data and convert it to LOD, LODAC Distiller, a LOD generator is developed and it consists from two main parts; data processing and metadata design. Semantic MediaWiki is also introduced to enable user annotation to LOD based on metadata schema defined by them. Moreover, three applications that use LODAC Museums and other LODs are developed and discussed; Yokohama Art Spot, CamCat and go2museum.

この発表は,研究室OGの松村さんによる発表で,作成したアプリケーションの紹介でした.LODを用いた博物館情報の共有で,全国100箇所以上の博物館情報の登録をしたこと,それに伴い登録時のデータ変換の手間を省くために博物館員などの専門家が利用しやすい変換ルール作成用のインタフェースを構築したことなどを発表されていました.また,これと類似した欧州におけるLODの取り組みとしてEuropeana[6]を紹介し,その連携についても述べています.
 

発表タイトル       : ロボット実験によるVicarious trial-and-error(VTE)の役割の解析[7]著者                  : 松田英子,Julien Hubert,池上高志
セッション名       : ソフトコンピューティング
Abstract            : Vicarious trial-and-error (VTE) is a type of conflict-like behavior, observed in route selection tasks[Tolman, 1939, Muenzinger and Flecher]. Studies of VTEs have shown a correlation between the number of VTEs exhibited by a system with its learning efficiency. At the onset of learning a task, the number of VTEs increases, and when the learning reaches its plateau, it decreases. From experiments of rats, VTEs have been reported in T-maze experiments of rats who were shown to be simulating their next decisions internally before acting[Johnson and Redish, 2007]. The question we explore in this paper concerns the role of VTE. Basing ourselves on a model developed by [Bovet and Pfeifer, 2005], we created a computer simulation and ran robotic experiments to compute the number of VTEs during the learning of a T-maze task.

この発表では餌を探すラットが道を選択する際に首を左右に振って迷っている行動(仮の試行錯誤(VTE: Vicarious trial-and-error))から,意識の生成過程を調べるというもので,コンピュータシミュレーションから解析をおこなったものです.過去の研究より,VTEが観察される際,ラットは脳内で選択シミュレーションを行って選択肢を吟味しているとされています.実験では視覚や触覚,報酬系の接続モデルを密な結合モデルと疎な結合モデルの2種を用意し,それぞれの学習の進捗とVTEの発生頻度について検証しました.成功率は2つのモデルに大きな差はなく,疎な結合モデルはVTEが急激に減少して一定を保つのに対し,密な結合モデルではVTEがゆっくりと減少する傾向が見られました.また,密な結合モデルの方が疎な結合モデルよりも,異なる環境下での成功率の分散が小さく,環境変化に対して頑強である旨が示唆され,冗長な結合がVTE,ひいては意識の発生を生み,また環境への柔軟な対応に寄与していると考えられるという内容でした.
 
参考文献
[1] 2012年度人工知能学会全国大会(第26回) , http://www.ai-gakkai.or.jp/conf/2012/
[2] 田中美里, 廣安知之, 幹光範,吉見真聡,佐々木康成,横内久猛, “クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的アルゴリズムによる感性モデルの推定”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 4L1-R-8-8, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-625.html, 2012
[3] 小川祐樹,山本仁志,宮田加久子,池田謙一, “Twitterにおける個人のネットワーク構造と社会的態度の関連性”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 1C1-R-5-4, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-342.html, 2012
[4] 山川宏, “反転分布に対象性を仮定した関係縮約”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 3N1-OS-21, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-29.html, 2012
[5] 松村冬子,嘉村哲郎,加藤文彦,小林巌生,高橋徹,上田洋,大向一輝,武田英明, ” LODAC Museum: Linked Open Dataによる博物館情報の統合と活用”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集,  3C2-OS-13b, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-619.html, 2012
[6] Europeana, http://www.europeana.eu/portal/
[7] 松田英子,Julien Hubert,池上高志, “ロボット実験による Vicarious trial-and-error(VTE) の役割の解析”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 4L1-R-8-7,
https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-623.html, 2012
 

学会参加報告書

 報告者氏名 田中美里
発表論文タイトル クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的
アルゴリズムによる感性モデルの推定
発表論文英タイトル Estimation of the Kansei model by interactive Genetic Algorithm using clustering and principal component analysis
著者 田中美里, 廣安知之, 幹光範,吉見真聡,佐々木康成,
横内久猛
主催 人工知能学会
講演会名 第26回人工知能学会全国大会
会場 山口県山口市 教育会館,自治会館,福祉会館
開催日程 2012/06/12-2012/06/15
 

 
1. 講演会の詳細
2012年6月12日から15日にかけて山口県山口市で行われた第26回人工知能学会全国大会[1]に参加いたしました.人工知能学会は名前の通り,人工知能,推論や最適化,機械学習,自然言語処理,またWeb上のデータに関する解析や利用をメインに扱う学会です.運営側には若手の研究者も多く,私も今回は学生PC委員として中日に行われた学生企画の運営などに参加させて頂きました.
私は12日から15日の全日程で参加いたしました.本研究室からは他に宮地,南谷,布川,大堀,上堀が参加しました.また,ISDL(知的システムデザイン研究室)からは6件の発表がありました.その他にも,本研究室のOB/OGでいらっしゃる,大向さん,松村さんも参加されていました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の午前のセッション「ソフトコンピューティング」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,商品推薦に対話型遺伝的アルゴリズム(iGA: interactive Genetic Algorithm)を適用するに当たり,課題となる呈示の多様性維持について解決する[2]という内容です.以下に抄録を記載致します.

iGA (interactive Genetic Algorithm) is the optimization method for Kansei, and we study the application of iGA to product recommendation. In product recommendation, a user has many preferences even in the same category. In this paper, the proposed method using clustering and principal component analysis to detect the multiple preferences and search for a preference was discussed. The recommended products by the proposed method give users higher satisfaction than that of conventional method. To find the effectiveness of the proposed method, the following two experiment were performed. In the first experiment, subjects’ multiple preferences were confirmed and multiple peak landscapes were obtained. The second experiment examined that the proposed method searched effectively for subjective landscapes which have multiple peak.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.なお,今回の質疑では質問者の方が所属を名乗らない状態で質疑となってしまっております.
 
・色の表現は2次元では収まらないはずだが,そこはどう処理しているのか?
この質問に対しては,HSV表色系の色相のみを色の情報として使用した旨ご説明しました.
・ドットと唐草とチェックを混ぜては,正しい結果は得られないのでは?
同一の試行で全ての問題を扱うわけではなく,それぞれ別の試行として扱っている旨ご説明しました.
・クラスタリングでどうやってクラスタ数を自動決定するのか?
今回の手法で用いたSilhouette統計量についてご説明しました.ただ,後ほど確認したところ,どのタイミングで使うのかが分からないという質問であり,一回のインタラクション毎にクラスタリングし直して,峰を推定している旨ご説明しました.
・なぜ他の多様性維持の手法を使わないのか?ニッチングでも良いのでは?
時間が無く,後ほど個人的にご説明しました.島モデルなどの他の手法は一つに収束する可能性を持っており,ランドスケープの形状を求めるという目的には適合していない点ご説明しました.ニッチングについては個体の分布密度を見るという点では,クラスタリングの代替になりうるものであり,良い視点を得られたと思います.
 
2.3. 感想
少々,内容を詰め込みすぎて伝わりにくい発表になってしまったように感じます.次回の発表ではもう少し情報量を減らしてゆっくりと発表できるよう,方針を変えたいと思います.
 
 
3. 聴講
今大会の4件の発表について報告いたします.
 

発表タイトル       : Twitterにおける個人のネットワーク構造と社会的態度の関連性[3]著者                  : 小川祐樹,山本仁志,宮田加久子,池田謙一
セッション名       : Webインテリジェンス(1)
Abstract            : Whether the contacts with information and the environment of communication which are brought about by the social network in Twitter promote opportunities to come into touch with others who have different opinions, or whether they promote selective contacts. This study, as a basic analysis for exploring these questions, examines the association between the social attitudes of individuals and the friends they form in Twitter as well as the environment of contacts with information, by an analysis which links data from social surveys with logged data of the behaviors of individuals obtained in Twitter.

この発表ではTwitterなどのSNSが,従来言われているように個人の情報環境を多様化させているのか,それとも実際には選択的接触(情報の蛸壺化)を促進させてしまっているのかについて,原発事故における情報発信を対象として調査した結果について発表するものでした.まず,事前の調査では,フォローしている人間が自分と似ていると回答した人ほど,一日のツイート数などと相関が高く,情報が発信することが多かったそうです.また,原発の賛否については,原発に賛成しかつ賛成派が少数であると認識しているユーザ(少数派認知)と,原発に反対で反対派が多数で認識しているユーザ(多数派認知)を比較した場合,多数派の方においてツイート数が有意に高いなどの結果が得られ,選択的接触が促進されている可能性が示唆されたそうです.
 

発表タイトル       : 反転分布に対象性を仮定した関係縮約[4]著者                  : 山川宏
セッション名       : インタラクティブ発表(ポスター発表)
Abstract            : The function for generating frame (which we call framic wiring composer: FWC) for flexible prediction is not realized on today’s computer and is technologically attractive.   We presume that the FWC function is installed on the hippocampus in the brain, because of some supporting evidences.        Moreover, relationship equivalences (REs) are necessary to implement the FWC function. Findings of hippocampus such as the theta phase precession and the configural association theory were taken into account for designing representation of REs. Distribution equivalent groups (DEGs) which are multi-dimensional partial space containing several cases could be promising candidate of REs.              We estimated the number of DEGs for multi- dimensional binary lattice.        It was shown that DEGs with over 8 or 9 dimensions has enough number of states for classifying potential REs in the hippocampus containing several hundred thousand excitatory neurons.

この発表では,海馬の神経回路を模倣したデータマイニング方法を実装し,その処理過程を評価することで海馬での処理過程に関する考察を行っています.発表者の山川先生は,与えられたデータ群についてそのアトリビュートとレコードを同時選択し,共通性のあるデータを抽出するという技術(状況分解)を過去に発表しており,今発表はそのモデルを海馬でのフレーム処理に拡張したものであると考えられます.非常に難解で理解できていない部分が多いのですが,とても面白そうな研究であることは伝わってきました.
 

発表タイトル       : LODAC Museum: Linked Open Datによる博物館情報の統合と                            活用[5]著者                  : 松村冬子,嘉村哲郎,加藤文彦,小林巌生,高橋徹,上田洋,
大向一輝,武田英明
セッション名       : Linked Dataとオントロジー
Abstract            : This paper reports the progress of LODAC Museum project which aims to generate Linked Open Data of museum information in Japan. Collection information of 53 museums is scraped from their websites and converted to LOD. In order to efficiently collect massive amount of data and convert it to LOD, LODAC Distiller, a LOD generator is developed and it consists from two main parts; data processing and metadata design. Semantic MediaWiki is also introduced to enable user annotation to LOD based on metadata schema defined by them. Moreover, three applications that use LODAC Museums and other LODs are developed and discussed; Yokohama Art Spot, CamCat and go2museum.

この発表は,研究室OGの松村さんによる発表で,作成したアプリケーションの紹介でした.LODを用いた博物館情報の共有で,全国100箇所以上の博物館情報の登録をしたこと,それに伴い登録時のデータ変換の手間を省くために博物館員などの専門家が利用しやすい変換ルール作成用のインタフェースを構築したことなどを発表されていました.また,これと類似した欧州におけるLODの取り組みとしてEuropeana[6]を紹介し,その連携についても述べています.
 

発表タイトル       : ロボット実験によるVicarious trial-and-error(VTE)の役割の解析[7]著者                  : 松田英子,Julien Hubert,池上高志
セッション名       : ソフトコンピューティング
Abstract            : Vicarious trial-and-error (VTE) is a type of conflict-like behavior, observed in route selection tasks[Tolman, 1939, Muenzinger and Flecher]. Studies of VTEs have shown a correlation between the number of VTEs exhibited by a system with its learning efficiency. At the onset of learning a task, the number of VTEs increases, and when the learning reaches its plateau, it decreases. From experiments of rats, VTEs have been reported in T-maze experiments of rats who were shown to be simulating their next decisions internally before acting[Johnson and Redish, 2007]. The question we explore in this paper concerns the role of VTE. Basing ourselves on a model developed by [Bovet and Pfeifer, 2005], we created a computer simulation and ran robotic experiments to compute the number of VTEs during the learning of a T-maze task.

この発表では餌を探すラットが道を選択する際に首を左右に振って迷っている行動(仮の試行錯誤(VTE: Vicarious trial-and-error))から,意識の生成過程を調べるというもので,コンピュータシミュレーションから解析をおこなったものです.過去の研究より,VTEが観察される際,ラットは脳内で選択シミュレーションを行って選択肢を吟味しているとされています.実験では視覚や触覚,報酬系の接続モデルを密な結合モデルと疎な結合モデルの2種を用意し,それぞれの学習の進捗とVTEの発生頻度について検証しました.成功率は2つのモデルに大きな差はなく,疎な結合モデルはVTEが急激に減少して一定を保つのに対し,密な結合モデルではVTEがゆっくりと減少する傾向が見られました.また,密な結合モデルの方が疎な結合モデルよりも,異なる環境下での成功率の分散が小さく,環境変化に対して頑強である旨が示唆され,冗長な結合がVTE,ひいては意識の発生を生み,また環境への柔軟な対応に寄与していると考えられるという内容でした.
 
参考文献
[1] 2012年度人工知能学会全国大会(第26回) , http://www.ai-gakkai.or.jp/conf/2012/
[2] 田中美里, 廣安知之, 幹光範,吉見真聡,佐々木康成,横内久猛, “クラスタリングと主成分分析を用いた対話型遺伝的アルゴリズムによる感性モデルの推定”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 4L1-R-8-8, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-625.html, 2012
[3] 小川祐樹,山本仁志,宮田加久子,池田謙一, “Twitterにおける個人のネットワーク構造と社会的態度の関連性”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 1C1-R-5-4, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-342.html, 2012
[4] 山川宏, “反転分布に対象性を仮定した関係縮約”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 3N1-OS-21, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-29.html, 2012
[5] 松村冬子,嘉村哲郎,加藤文彦,小林巌生,高橋徹,上田洋,大向一輝,武田英明, ” LODAC Museum: Linked Open Dataによる博物館情報の統合と活用”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集,  3C2-OS-13b, https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-619.html, 2012
[6] Europeana, http://www.europeana.eu/portal/
[7] 松田英子,Julien Hubert,池上高志, “ロボット実験による Vicarious trial-and-error(VTE) の役割の解析”, 人工知能学会全国大会(第26回)予稿集, 4L1-R-8-7,
https://kaigi.org/jsai/webprogram/2012/paper-623.html, 2012
 

学会参加報告書

 
報告者氏名
 
宮地 正大
発表論文タイトル 個人の感性モデルに基づく対話型遺伝的アルゴリズムを用いた記事推薦システムの提案
発表論文英タイトル Suggestion of the article recommendation system based on the user’s Kansei model using interactive Genetic Algorithm
著者 宮地正大, 廣安知之, 横内久猛, 三木光範
主催 人工知能学会
講演会名 人工知能学会第26回全国大会
会場 山口県社会福祉会館
開催日程 2012/06/12-2012/06/15
 

 
1. 講演会の詳細
2012年(平成24年)6月12日から6月15日に,山口県社会福祉会館にて開催されました,人工知能学会第26回に参加し,発表いたしました.
本研究室からは田中さん,南谷,布川,大堀,上堀,宮地が参加いたしました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は3日目の14日にWebマイニング(1)セッションにて発表を行いました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,「個人の感性モデルに基づく対話型遺伝的アルゴリズムを用いた記事推薦システムの提案」について発表を行いました.
以下に抄録を記載致します.

本論文では,ユーザに内在する感性モデルを対話型遺伝的アルゴリズムを用いて同定し,その情報からパーソナライズされた記事推薦手法を提案する.

提案手法では,感性モデルにおける概念語ネットワークによる単語間の類似度を近傍の定義とすることで,遺伝的操作を可能とし,推薦記事を探索する.

シミューレションにより,本手法により類似したキーワードを主題とする記事が推薦結果に現れる可能性を示す.

In this paper, we propose the article recommendation method using the user’s Kansei model that is derived by interactive Genetic Algorithm. In this research, we assume that each user has own Kansei model and user’s preference is related to the function of Kansei model. In the proposed method, a novel neighborhood definition and degree of similarity between words by the concept network in the Kansei model is proposed. Using the real data of web report, an example of neighborhood definition and degree of similarity are described and some results are examined.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者:IBM研究所 西山さん
内容:特徴語の抽出はタイトルの情報のみから行ったのか.TF/IDFだけだと専門用語が埋もれてしまうのではないか
回答:抽出はレポートの内容全てのデータを用いた.専門用語は必然的にIDF値が高くなるので現れていることを確認している.別の適切な手法があるならば試してみたい.
 
・質問内容2
質問者:IBM研究所の方
内容:交叉においてルーレット選択しているのはなぜ
回答:ある程度ランダム性を持たせることで多様な個体の生成を確保している
ランダムウォークでうまくいく可能性もある.
 
・質問内容3
質問者:IBM研究所の方
内容:ネットワーク構造ではなくシソーラスを使って上位概念をたどるのが一般的な手法だと思うが,なぜそうしなかったのか
回答:上位の一般的な単語に収束してしまうことが多いため,今回は単純な関係性を扱った
 
・質問内容4
質問者:座長 岡崎直観 先生(東北大学)
内容:今後どうやって手法の優位性を示すつもりなのか
回答:感性を扱っている以上,被験者実験によるアンケート調査がメインになると思う
 
2.3. 感想
個人の感性モデルに基づく対話型遺伝的アルゴリズムを用いた記事推薦システムの提案についての口頭発表を行いました.
発表した会場は小さな部屋だったのですが,人気のセッションであったようで約40人の方々に聞いていただきました.発表自体はやや緊張して伝えきれたか不安でしたが,4人の方から質問をいただき,有意義な議論ができました.同セッションではWebマイニングというタイトルでしたが,情報推薦に関わる発表が集められており,最新の研究動向なども知ることができる良い経験となりました.
今回の人工知能学会は約800人が参加しており,同じ情報系であっても自分とはなかなか関わりがなかった研究分野の方々もたくさん参加されており,様々なお話を聞くいい機会となりました.
また,同じ研究室博士後期課程の田中美里さんを始めとした,学生実行委員の方々による企画も充実しており,参加されていた先生との少数人数によるグループディスカッションや観光なども合わせて楽しませて頂きました.また,開催地が温泉街ということもあり,発表や議論の疲れを十分に癒すことも出来ました.
 
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.

発表タイトル       : Wikipediaの概念ベクトルを用いた単語間関連度の推定
著者                  : Chan Patrick (大阪大学大学院 基礎工学研究科)
土方 嘉徳(大阪大学 大学院基礎工学研究科)
西田 正吾(大阪大学)
セッション名       : 2C1-NFC-2 近未来チャレンジセッション「NFC-2 (サバイバル)Wikipediaマイニング」
Abstract            : 情報検索や自然言語処理においては,単語間の関連度がよく用いられる.本稿では,Wikipedia記事を用いて概念ベクトルを生成することで,単語間関連度の推定手法を提案する.提案手法では,Wikipedia記事内における単語の頻度情報とレイアウト情報を用いて,概念ベクトルの要素値を計算する.人手で与えた単語間関連度のデータセットを用いて,推定手法の有効性を検証する.

この発表は単語間の関連度計算をWikipediaの記事を用いて自動構築する手法について述べていた.一般的に用いられているESA,リンク情報や頻度情報,共起確率なども使っているが,一番特徴的な部分として,文書のレイアウト情報を用いている点だと感じた.ここでいうレイアウト情報とは記事中で特定単語がWebページ上のどこに現れているかという情報で,太字や色付き文字などが該当するようである.従来の自然言語処理手法では抽出しにくかった関連度を推定できる可能性を感じる研究でした.

発表タイトル       : 単語間関係を利用した関連番組検索の検討
著者                  :山田 一郎(NHK放送技術研究所)
宮崎 勝(NHK放送技術研究所)
住吉 英樹(NHK放送技術研究所)
古宮 弘智(NHK放送技術研究所)
田中 英輝(NHK放送技術研究所)
セッション名       : 3E1-R-6 Webマイニング「Webマイニング(1)」
Abstract            :テレビ番組のオンデマンドサービスでは、番組選択中の視聴者に関連番組を提示する機能が重要となる。そこで我々は、EPGに含まれる番組概要文を利用して効果的な関連番組を検索する研究を進めている。本稿では、Webから取り出した単語間の関係(因果関係や上位下位関係など)を利用して番組間の類似性を評価することにより、関連番組を検索する手法を提案する。

この発表はテレビ番組を個人の嗜好を考慮した上で推薦する手法について言及していました.主にタグ情報から単語間の関連度を用いることで類似する概念を推薦する手法でした.2つの番組概要に出現する名詞の関係をグラフで表現し,ランダムウォークによりグラフ上のノード間の関連度スコアを算出することにより文書間の類似度の評価していた.解析ツールとしてALAGINフォーラムで公開されている意味的関係抽出サービスを用いているそうなので,個人的に調べておく必要がある.
 

発表タイトル       : 技術文書の情報編纂: 課題・特長・手段を表す表現の抽出と利用
著者                  : 西山 莉紗(日本アイ・ビー・エム株式会社 東京基礎研究所)
セッション名       : 3B3-NFC-4 近未来チャレンジセッション「NFC-4 (卒業セッション)情報編纂の基盤技術 」
Abstract            : これまで筆者らは特許明細書から技術が解決している課題や、技術がもたらす効果を抽出・整理することで価値の高い発明の発見を助ける、特許文書マイニングツールの研究開発に取り組んできた。本発表ではこれまでに発表してきたこれらの取り組みについて今一度振り返るとともに、今後の展望について述べる。

この発表は技術文書から情報抽出を行う手法について述べていました.課題表現,特徴表現,手段表現などの情報抽出を対象としており,それの対する課題や発表者が取り組んできた複数の問題解決のアプローチについて事細かに説明を述べていました.文脈パターンの解析による手法を取り扱っており,日本語特有の文末表現などからの意味理解などのアプローチなど様々な状況を考慮していました.私は構文解析などに関しては詳しくなかったので,非常に勉強になる研究発表でした.
参考文献
1)    2012年度人工知能学会全国大会(第26回), http://www.ai-gakkai.or.jp/conf/2012/