【速報】人工知能学会

2017年度 人工知能学会全国大会(第31回)ウインクあいち(愛知県産業労働センター)で開催されました。
研究室からは下記の発表を行いました。
題目 3E1-OS-11a-2 瞑想中脳状態の脳機能ネットワーク解析
著者 三好 巧真(同志社大学生命医科学研究科) 日和 悟(同志社大学生命医科学部) 廣安 知之(同志社大学生命医科学部)
題目 3E1-OS-11a-3 瞑想中の前頭部脳活動のfNIRSによる分析
著者 藤井 聖香(同志社大学大学院生命医科学研究科) 日和 悟(同志社大学生命医科学部医情報学科) 廣安 知之(同志社大学生命医科学部医情報学科)
題目 3E2-OS-11b-1 fNIRSを用いた瞑想中の脳状態の検討
著者 片山 朋香(同志社大学 生命医科学研究科 医工学・医情報学専攻) 日和 悟(同志社大学生命医科学部医情報学科) 廣安 知之(同志社大学生命医科学部医情報学科)
題目 3E2-OS-11b-3 脳機能ネットワークに対する相関分析法について
著者 谷岡 健資(和歌山県立医科大学臨床研究センター) 日和 悟(同志社大学生命医科学部医情報学科) 廣安 知之(同志社大学生命医科学部医情報学科) 宿久 洋(同志社大学文化情報学部)
題目 3E2-OS-11b-5 自発性脳活動の強度と機能的結合度に基づく瞑想時脳状態の低次元表現
著者 日和 悟(同志社大学生命医科学部医情報学科) 飯塚 まり(同志社大学大学院ビジネス研究科) 廣安 知之(同志社大学生命医科学部医情報学科)
題目 4B2-OS-23b-4 Thanksシステムによる研究室活性の試み
著者 廣安 知之(同志社大学 生命医科学部 医情報学科,同志社大学 生命医科学部,同志社大学生命医科学部医情報学科) 澤田 淳二(所属なし) 日和 悟(同志社大学生命医科学部医情報学科)

学会参加報告書

 
報告者氏名
 
藤井聖香
発表論文タイトル 瞑想中の前頭部脳活動のfNIRSによる分析
発表論文英タイトル Analysis of frontal brain activity during meditation by fNIRS
著者 藤井聖香, 日和悟, 廣安知之
主催 人工知能学会
講演会名 第31回人工知能学会全国大会
会場 ウインクあいち(名古屋)
開催日程 2017/05/23-2017/05/26

 
 

  1. 講演会の詳細

2017/05/23から2017/05/26にかけて,名古屋のウインクあいちにて開催されました第31回人工知能学会全国大会に参加いたしました.この学会は,人工知能学会によって主催された学会で,企業や研究者,学生が参加して,現在ブームである人工知能を用いたセッションがあり,新たな発展や次の方向性に関わる様々なアイディアが提案され、議論されることを目的に開催されています.
私は全日参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,日和先生,M2の片山さん,M1の三好が参加しました.

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は25日の午後のセッション「Well-being Computing(1)」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表では,“初心者の瞑想時の前頭部脳活動による分析”という題で発表を行いました.
初心者の瞑想時の脳活動を測定し,特徴量の算出,そして熟練者との類似度を算出し,瞑想状態を定量化したという内容で発表を行いました.以下に抄録を記載致します.

近年,ウェルビーイングや作業効率の向上のためにマインドフルネス瞑想が注目されている.本稿では,瞑想初心者が簡単に行うことのできる数息観を用いて瞑想時の脳活動を検討した.本実験では,機能的近赤外分光法(fNIRS)を用いて,簡易に計測できる前頭部のみを計測し,安静時と瞑想時での脳活動の違いを検討した.計測されたデータから低周波振動振幅を算出し,安静時と瞑想時で比較,検討を行った.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
早稲田大学の川島さんからの質問です.こちらの質問は,アンケートは取っているのか,どんなアンケートを取っているのかというものでした.この質問に対する私の回答は,アンケートはとっていて,実験前後に心理状態.実験後に眠気や数息観の達成度を測っていると回答をしました.また,後ほどお話しする機会があり,.更に,アンケートと類似度を組み合わせたほうがよいというアドバイスをいただきました.なかなか,アンケートとの関連を用いた解析ができていないので今後行っていきます.
 
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.味の素の方からの質問でした.こちらの質問は,熟練者に近づくためのフィードバックのアイディアはあるか?という質問でした.この質問に対する回答ですが,具体的にフィードバックのアイディアはまだ考えられていないという回答をいたしました.しかし,現在発売されている瞑想を支援するデバイスと脳状態を用いて2つのデバイスによる実験は考えていると回答しました.
 
・質問内容3
静岡大の竹林洋一さんからの質問でした.こちらの質問は,サイエンティフィックとフィードバック,どちらに重点を置いているか?という質問でした.この質問に対する回答ですが,現在はサイエンティフィックに重点を置いていると答えました.しかし, 解明され始めたらフィードバックにも重点を置きたいと回答いたしました・
 

  • 感想

初めての口頭発表で,スライドを作ってみたものの,全体像やリアリティがなく,全く外部に伝わらないスライドとなっていました.スライド作成にあたって,全体像やリアリティがどれだけ重要なのか理解することができました.
発表においては,研究室内や大学内以外の全く知らない方の前での発表は初めてだったので非常に緊張しました.特に質問について,どのような質問が来るのかなかなか予測がつけられず,どんな質問が来るのだろうと緊張をしていました.実際に発表が始まり,途中でエクセルのデータとのリンクを切っておらず文字化けをしていました.加えて最も重要なスライドで文字化けしてしまい,一番大事な結果を伝えられませんでした.スライドが正しく表示されるのか,接続はうまくいくのか.こういった前準備は非常に大切なことであるにも関わらず,確認せず本番を迎えてしまい,非常に後悔しました.先生方にも大変ご迷惑をおかけしました.
発表だけを見るとあまりよい感想が言えるような学会ではありませんでしたが,学会自体は人工知能学会ということでAIなどを使った様々な分野の研究発表がありました.人工知能,なかなか難しく,理解が追いつかない発表も多々あり,勉強する必要があるなと痛感しました.個人的には,お酒を試飲するような発表や仕掛学など人工知能のイメージとは異なる発表もありおもしろかったです.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の5件の発表を聴講しました.

発表タイトル       : インタラクティブな人工知能を目指して ― HAIとIIS ―
著者                  : 山田誠二
セッション名       : 基調講演
Abstruct            : 現在AIへの過大な期待が渦巻く中,実際にはAIが人間並の知的処理を行うことは難しく,AIにできることは断片的なサブタスクに過ぎません.よって,AIと人間が助け合ってより高度な問題解決を行うインタラクティブAIの研究が重要かつ必然であると考えられます.本講演では,インタラクティブAIの実現を目指した研究プロジェクトである,ヒューマンエージェントインタラクションHAIと知的インタラクティブシステムIISについて紹介します.HAIは,人と擬人化エージェントやロボットとのインタラクションをデザインする研究分野であり,我々日本の研究グループが開拓し,現在国際会議が開催されるまでに発展しています.一方IISは,インタラクティブ機械学習をベースとして,人間とAIの協調システムを目指すもので,こちらもインタラクションデザインをメインテーマとしています.これらの研究プロジェクトの背景,考え方,目的,研究例についてお話しします.

この発表は人工知能学会の最初の講演でした.現在の人工知能ブームや人工知能学会の現在の話など,人工知能がよく分かっていない私にもとても分かりやすく,入りやすい講演でした.AIの2つのプロジェクトについて話していただきました.人工知能を使った研究を私はしていませんが,AIの第3ブームが来ている中,こういった基本的な概要がしっかり理解しておくべきだと思いました.
従来,この分野で採られてきたアプローチは….手法の…については,とても素晴らしい発想だと思います.特に…の部分は自身の研究への応用が可能であると感じられました.具体的には…として利用できると思います.
 

発表タイトル       : 脳機能画像解析のための深層生成モデル
著者                  : 田代哲生
セッション名       : AI応用-ヘルスケア(1)
Abstruct            : 機械学習を用いた脳画像解析による疾患の発見方法は,一般に特徴抽出, 識別器学習の二つの段階に分けて行われる.この手法は一定の精度を得られるが, 特徴抽出の際,識別に有用な特徴が得られない可能性がある.一方,オープンデータの増加によって,特徴抽出と識別器学習を同時に行う深層学習を用いた脳画像解析が可能になりつつある.本発表では,深層生成モデルを用いればどの程度の精度で診断可能になるかを検討する.

この発表では,fMRIを用いた実験で得られた画像を深層学習によって解析するという発表でした.この発表は私の脳機能研究と少し近いため,とても入りやすい発表でした.発表の内容そのものは深層学習ということで難しい内容となっていましたが,この発表で私が最も感心したのは,発表者の田代さんの発表のしかたでした.スライドの作り方や発表での説明が非常にわかりやすく,私がこう言う発表にしたいと思っていた発表をなさっていたように感じました.深層学習を私の研究に入れるのは,まず私がかなり理解を深めないとなかなか取り組めませんが,田代さんの発表の仕方については自分の発表にも活かしたいと思いました.
 

発表タイトル       : 嗅覚刺激による相反する運動課題の同時学習
著者                  : 松田英子
セッション名       : 味覚・嗅覚と記号システム(1)
Abstruct            : 相異なる二つの運動課題を続けて学習する際、色を用いて運動の違いを被験者に意識させることが、同時学習を促進することが知られている。本実験では嗅覚刺激を用いて、相反する運動課題の同時学習の過程を調べた。実験の結果、記憶の強化を促す神経伝達物質(ノルアドレナリン)を放出するレモンの香りによって、相反する運動学習が促進されることが示された。

このセッションでは日本酒の試飲や米菓の配布など,発表のテーマに沿った実物を聴講者にも配布するなど,セッション自体がとても工夫されたセッションで興味深かったです.その中でも,松田さんの発表は,嗅覚の有無もしくは種類によって同時学習はできるのかといった発表でした.結果は匂いの種類にかかわらず,有無によって同時学習は可能となるということでした.しかし,香りは記憶を想起させると言われており,これは必ず脳と関係があると思いました,これを脳科学にも応用したら面白いんだろうなと思いました.
 

発表タイトル       : 医療従事者に患者の「痛み」を伝える生体情報計測と可視化技術の検討
著者                  : 松田 康宏
セッション名       : Well-being Computing(2)
Abstruct            : 柔道整復とは運動器の損傷に対して徒手的な施術を与え回復を目指す治療である.柔道整復師が症状を把握するには痛みの評価が極めて重要であるが,現状は口頭聴取やVisual analog scaleによる患者の主観的な評価に留まっている.本発表では関節可動域を増大させる施術の前後において,痛みの認知に関わる前頭前野活動の計測から,疼痛感覚の変化を推定する手法について検討した我々の研究結果について報告する.

この発表では,fNIRSを用いており,痛みが柔道整復によって痛みに関わる前頭前野がどうなるかという研究でした.同じfNIRSということで,解析手法などに非常に興味を持ちました.アンケートと関連させた結果となっており,私が課題としている部分だったのでとても参考になりました.また,私が知らない2CHのfNIRSを使用しており,足を動かしながらの測定ということで体動除去などが気になり質問をさせていただきました.発表後も声をかけていただき,ぜひアステム社のfNIRSを!とオススメをいただきました.
 

発表タイトル       : 語り継ぐに値する物語の共創
著者                  : 遠藤幹子
セッション名       : 仕掛学:再価値化のデザイン(2)」
Abstruct            : 新興国での社会課題解決について、導入技術の技能継承マニュアルを整備してもプロジェクト終了と同時にその価値の再生産が不調に終わる。そこで筆者は、ザンビア共和国の農村部で実践した「マタニティハウス建設の物語とコミュニティの同時生成」について紹介する。絵画、踊り、歌などの芸術表現活動を参加住民が共有することで、地域住民への施設の周知や、建築計画から完成後の主体的な運営参加に引き込む仕掛けについて論じる。

このセッションでは,仕掛学ということで私も初めて聞いた分野でした.前日に廣安先生から仕掛けとはについてお話をきましたが,なかなか仕掛とは難しい定義だなと感じていました.この発表では実際に新興国に行かれて創造性をもたせ,成功経験をさせ,さらに技術継承,共感という流れで,いかに才能を伸ばすかという仕掛けをした遠藤さんのセンスに感心しました.更に詳しく聞きたくなるような話の内容でした.その発表は,遠藤さんの発表ではありませんでしたが,ぜひ遠藤さんのお話も聞きたいと思いました.
 
参考文献

  • 2017年度人工知能学会(第31回), https://www.ai-gakkai.or.jp/jsai2017/

学会参加報告書

 
報告者氏名
 
三好巧真
発表論文タイトル 瞑想中脳状態の脳機能ネットワーク解析
発表論文英タイトル Brain functional network analysis of brain states during meditation
著者 三好巧真, 日和悟, 廣安知之
主催 一般社団法人 人工知能学会
講演会名 2017年度 人工知能学会全国大会(第31回)
会場 ウインク愛知
開催日程 2017/05/23-2017/05/26

 
 

  1. 講演会の詳細

2017/05/23から2017/05/26にかけて,ウインク愛知にて開催されましたJSAI2017に参加いたしました.このJSAI2017は,人工知能学会によって主催された研究会で,AI研究者を中心に,他分野の研究者も参加して,AIを用いた様々な分野の研究の活性化を図るための議論を行うことを目的に開催されています.
私は全日程,参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,日和先生,M2片山さん,M1藤井さんが参加しました.
 
 
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は25日の午後のセッション「Well-being Computing」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分の講演時間と5分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,「瞑想中脳状態の脳機能ネットワーク解析」です.以下に抄録を記載致します.

Well-beingを実現する手法として注目されるマインドフルネス瞑想に対して,近年,脳科学の観点から研究が盛んに行われている.本研究では,瞑想状態のフィードバックを目的として,瞑想中の脳状態の定量的評価を行っている.本稿では,fMRIを用いて計測した瞑想時の脳活動データに対し,グラフ理論に基づいた脳機能ネットワーク解析により,瞑想状態を定量的に評価可能な特徴量を検討する.

 
 
 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
株式会社働きごこち研究所所属の藤野貴教さんからの質問です.こちらの質問は2点ありました.1点目の質問は,「MRIでの状況下で瞑想を行った場合もマインドフルネスといえるのか.」というものでした.この質問に対して私は,「MRIに入ることはストレスと感じる人もいる.日常的に計測可能な機器での計測結果との比較を行って整合性を取っている.」と回答しました.また,日和先生の補足により,「マインドフルネス瞑想はある対象に注意を向ける訓練.MRI内でも呼吸に注意を向けられるとマインドフルネスだといえる.」と回答しました.2点目の質問は,「今回の研究における新たな発見は?」という質問でした.この質問に対して私は,「脳機能としての新たな知見はないが,Degreeを算出することによってマインドフルネスを評価することができるようになったということが新たな発見.」と回答しました.
 
・質問内容2
株式会Preferred Networks所属の城戸隆さんからの質問です.こちらの質問は2点ありました.1点目の質問は,「熟練者だけを分類する特徴量はなかったのか.」というものでした.この質問に対して私は,「熟練者を指標に初心者の瞑想状態を検討した.そのため熟練者のみでわかれる特徴量については検討していない.」と回答しました.2点目の質問は,「今回のネットワークより,熟練者も注意散漫になっているということが分かったのか.」というものでした.この質問に対して私は,「ネットワークと活動は異なる.DMNとACCの結合は,DMNの活動があったときにACCによっ気づくことができる状態ということであるため,熟練者に注意散漫な時間があったとは限らない.」と回答しました.
 

  • 感想

今回の発表は,私にとって初めての学会発表であったため,緊張もありましたが,セッション自体も大変盛況で多くの方に聴講していただき,コメントをいただいた,充実した発表になりました.人工知能の学会であったため,脳科学の観点からは少し離れた発表をおこないましたが,面白いといっていただけたのでとてもよかったです.今回の発表を通じて,他の分野の観点を取り入れた解析の必要性を感じたので,今後は多方面に知識を広げてきたいと感じました.反省点として,発表前にはスライドの出力の問題があり,十分な準備ができていなかったので,以降の学会発表では準備を怠らないように気を付けます.
 
 
 
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の4件の発表を聴講しました.
 
 
 

発表タイトル       : 観光客の散策行動を考慮したエリア単位の行動分析
著者                  : 武田直人,西村拓哉,戸田浩之,関洋平
セッション名       : データマイニング-データマイニング応用(1)
Abstruct            : 観光客の移動軌跡情報を利用した分析は,観光振興において重要である.従来の分析では,移動軌跡が一点に留まる滞留点の発見とそれに基づく行動分析が行われてきた.本研究では,観光客の滞留だけでなく,散策行動も併せて抽出する手法を提案する.実験の結果,各観光地に対して滞留エリア,散策エリアといった意味付けを行うことができ滞留だけを考慮する分析よりも多くの観光客の行動や移動を捉えられたので報告する.

従来,この分野では観光客の滞留から観光エリアの抽出が行われてきました.本発表の手法では,散策行動もあわせて観光エリアを抽出しています.滞留の測位点と散策の測位点に対して,D-starと呼ばれるクラスタリングを用いており,この手法は,tobiiで計測可能な注視とサッカードに適用することで,監視エリアのようなものを抽出できるのではないかと考えました.
 
 
 

発表タイトル       : テキストマイニングを用いた転職サイトの会員離脱予測
著者                  : 上門雄也,大和田勇人,金盛克俊,鈴木正昭
セッション名       : データマイニング-ビッグデータ活用
Abstruct            : 転職サイトは企業の求人広告を載せ,掲載料をもらうことで収益をあげている.なので,転職希望者が多ければ多いほど収益が多くな.しかし,転職希望者は転職サイトに登録しても一度も応募せず離脱してしまうことが多い.そこで,本研究は職務経歴書を用いて離脱する会員と離脱しない会員の違いを特定する.また,会員の登録情報とテキストデータを統合することで会員の離脱予測の精度を上げる.

この発表では離脱要因の抽出手法に着目しました.これは職務経歴書からテキストマイニングによって単語を抽出し,文書を行列に変換,出現頻度によって特徴量を削減し,ランダムフォレストを用いて重要度を算出して特徴量を削減,決定木分析を行います.この手法は自分の研究においても特徴量の選択に適用することが可能ではないかと考えており,参考にする必要があると考えました.
 

発表タイトル       : スパースコーディングを用いた脳活動の意味表象推定に関する精度向上への取り組み
著者                  : 川瀬千晶,小林一郎,西本伸志,西田知史,麻生英樹
セッション名       : 脳科学とAI(1)
Abstruct            : fMRIを使用し測定した動画視聴時のヒトの脳活動データとその動画を説明する文書の分散意味表現をそれぞれスパースコーディングを用いて辞書と係数に分解し,これらの係数同士の対応関係を捉えることで新しく観測された脳活動データに対して言語表象を推定する.スパースコーディングを介して推定を行うことで精度の向上を確認した.また,重要単語を考慮した意味表象を作るなどの工夫を行い,提案手法の正当性の追認を行った.

この発表では,現在脳機能イメージングの分野で研究の進んでいる内容に関する発表が行われていました.提案手法のようにスパースコーディングを用いることで脳活動の意味表象推定を行うと,結果の観点を変えることで,あるタスクにおいて活動する重要な領域の抽出が可能になるのではないかと考えました.
 
 
 

発表タイトル       : 医療従事者に患者の「痛み」を伝える生体情報計測と可視化技術の検討
著者                  : 松田康宏,鈴木達也,小野塚實,小野弓絵
セッション名       : Well-being Computing
Abstruct            : 柔道整復とは運動器の損傷に対して徒手的な施術を与え回復を目指す治療である.柔道整復師が症状を把握するには痛みの評価が極めて重要であるが,現状は口頭聴取やVisual analog scaleによる患者の主観的な評価に留まっている.本発表では関節可動域を増大させる施術の前後において,痛みの認知に関わる前頭前野活動の計測から,疼痛感覚の変化を推定する手法について検討した我々の研究結果について報告する.

この発表で着目したのは,結果が主観評価と相関を持っていることです.どの脳機能研究においても,主観評価との検討は行う必要があり,相関があることで結果の信憑性が高まると思いました.自分自身の研究においてもアンケートとの比較を行うことが必要であると感じました.
学会参加報告書

報告者氏名 片山 朋香
発表論文タイトル fNIRS を用いた瞑想中の脳状態の検討
発表論文英タイトル An fNIRS study of brain states during meditation
著者 片山 朋香,日和 悟,廣安 知之
主催 人工知能学会
講演会名 2017年度人工知能学会全国大会
会場 ウインクあいち
開催日程 2017/5/23 ~ 2017/5/26

 
 

  1. 講演会の詳細

2017/05/23から2017/05/26にかけて,愛知県の名古屋市(ウインクあいち)にて2017年度人工知能学会全国大会に参加いたしました.この学会は,人工知能に関する研究の知識と発展の普及を図るために,最新かつ革新的な研究の情報を交換することや研究成果について議論することを目的に毎年開催されています.
私は,23日から26日の全日に参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,日和先生,藤井聖香さん,三好巧真さんが参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は25日の午後のWell-being Computing(2)というセッションに参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,15分発表し,その後,質疑応答をしました.
今回の発表は,「fNIRS を用いた瞑想中の脳状態の検討」 という題目で発表を行いました.以下にアブストラクトを記載致します.

集中力の向上,ネガティブなことから距離を置くスキルが身につくことを目的に,近年,マインドフルネス瞑想が注目されている.本稿では,より日常に近い状態で全脳116チャンネルの計測が可能なfunctional near-infrared spectroscopy(fNIRS)を用いて,瞑想熟練者と初心者の数息観時の脳状態を検討した.安静時と瞑想時の機能的コネクティビティ解析を行った結果, 瞑想熟練者は,安静時と比較して瞑想時に中前頭回眼窩部が瞑想に必要のない部位との結合が切れ,上頭頂小葉は他の部位と協調して自己の身体感覚を処理している状態になった.初心者は,安静時と比較して瞑想時に注意制御に関わる部位のみで協調して活動し,視覚野との結合は少なくなった.したがって,初心者は瞑想熟練者と脳状態は異なったが,注意制御はできていたと示唆された.

 
 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.テンプレートを作成した脳血流変化とテンプレートマッチングをしたときの脳血流変化は同じかという質問を受けました.この質問に対して,同じと回答しました.含有率が高いのは当たり前,他の熟練者でも同じ結果が得られたら信頼性があるのでは,とご指摘いただきました.今回の発表では,含有率が高くなるテンプレートを作成できたことから定量化できたことが成果と回答しました.今後,テンプレートの作成に関してさらに検討する必要があると感じました.
 
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.脳機能と脳血流変化との関連はあるのかという質問を受けました.脳血流変化って脳機能というより血管の走行によるといったコメントでした.この質問に対して,脳が活動すると脳血流変化つまりオキシヘモグロビンが増えるといった回答をしたのですが,計測装置についての説明が不十分でした.
 
・質問内容3
質問者の氏名を控え損ねてしましました. NIRSの前処理と結合を見ているだけなのかという質問を受けました.バンドパスフィルターを処理していることと,刺激がない瞑想を計測しているため脳のネットワークを検討していると回答しました.
 
・質問内容4
関西学院大学の学生の方から,テンプレートを作成するときに0.1秒で窓をずらすのはなぜかといった質問を受けました.fNIRS装置のサンプリング周期が0.1秒だからと答えました.窓幅とずらす時間はまだ検討が不十分であり,今後の課題だと考えています.
 

  • 感想

今回,人工知能学会のWell-beingセッションという初めて作ったセッションでの発表となりました.そのため,興味を持ってくれる人がいるのか,どういった分野の人が聞きに来てくれるかわからなかったのですが,席も埋まるくらいたくさんのかたがいらっしゃって盛況だったと思います.初めての学外の口頭発表と就職活動を平行して行ったので大変でした.しかし,予定を立て,準備を間に合わせることで自分が発表したかったことを伝えられたと思います.質問もたくさんしていただけて,検討が不十分である部分に気付くことができました.また,この学会のセッションのテーマは多岐にわたり,様々な最新の研究について知ることができました.学会の発表者も増えており,どのセッションにも人で溢れていて本当に注目されている分野だと実感しました.人間と人工知能が協調するためにはどうすればよいか様々な発表を通して考える機会になったと思います.今回の経験を通して,最新の研究を聞くことや,自身の成果を発表することで気づきが多くある機会になったと思います.今後,修士論文に向けて,さらに研究を深めていきたいと考えています.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の4件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 対話を通じた子供の学びにロボットの複数体化が及ぼす影響
著者                  : 飯尾 尊優,吉川 雄一郎,石黒 浩
セッション名       : ロボットと実世界-ヒューマンロボットインタラクション(1)
Abstract            : ロボットの複数体化により子供に高度な対話感を与えることによって,子供の学びがより促進されるのではないかという仮説を検証するため,複数ロボット対話システムを構築し,複数ロボットとの対話と単体ロボットとの対話の影響を比較する実験を行った.その結果,被験者は複数のロボットとの対話の方が,ロボットが被験者の意見を正しく理解し,ロボットの対話で分からない部分が少なく,勉強になったと感じたことを明らかにした.

科学館に来場したお客さんに対して,複数のロボットと対話するという実験を行っていました.その際に,キネクトで深度情報を計測,アンケート調査を行っていました.実際に私自身が科学館で実験に参加したことがあったことと,とてもインタラクティブな発表だったため,興味を持って発表を聴くことができました.この研究を聞いて,被験者の実験に対するモチベーションによっても結果に影響があると考えました.被験者にとって,この実験は自身が被験者であるという感覚があまりなく,自発的に興味をもって参加できるというところがよいと思いました.また,キネクトやVisual Analog Scaleによるアンケートは私も実験時に使用しており,実験時の様子を情報収集する際に役立つことや,タブレットを使用してアンケートを行うことで効率的にデータ処理ができることが参考になりました.
 

発表タイトル       : kinectを用いた習慣逆転法を支援するシステムの構築
著者                  : 立石 光,曽我 真人
セッション名       : 身体知の表現と獲得(2)
Abstract            : 現在、多くの人が無意識に行ってしまう癖に苦しんでいる。癖の治療方法の1つとして、習慣逆転法というものが存在する。これは行動療法である。具体的な行動目標を繰り返し実行することで自分をコントロールする力を身に着けていく。本研究では、習慣逆転法を、Kinectを用いてより効率的に治療を進めるために、音声による通知を使用者に行うシステムを構築する。また、システムの有用性について検証していく。

キネクトを用いて被験者の日常的なデータをとり,無意識下の癖を検知することで,音声によって通知するシステムについての発表でした.システムの有用性を評価するために行った実験において,被験者が計測されていることを意識しないために指示を与えないということをしていました.実験の一番の難しさは,実験環境や指示の統一性,再現性だと考えています.実験の条件の指示を与えれば,被験者が実験を意識するという問題があったのですが,何も与えなければ統一性がない問題があると思います.条件が変われば得られる結果も変わってしまうので,十分検討すべきところだと改めて思いました.リアルタイムで人の状態を検知することとフィードバックするというのは私自身の研究にも通じるところがあると考えています.どのようにフィードバックするのかというところも今後,課題として考えていきたいと思います.
 

発表タイトル       : Well-Being Computing: AIで身体的・心理的・社会的健康を得られるか?
著者                  : 高玉 圭樹
セッション名       : Well-being Computing(1)
Abstract            : 本講演では,「身体的な健康」だけでなく,「心理的や社会的な健康」も一緒に考えることの重要性を主張するとともに,これらすべての側面に関して良好な状態を導くコンピューティング技術とその学問として“well-being computing”を提唱し,そのポテンシャルを睡眠の観点から示す.

私が発表した同じセッションのWell-being computingでの招待講演です.Well-beingという心理的,社会的に健康な状態を睡眠中に焦点を当てて,コンピューティング技術からどう導くのか,お話していただきました.マットレス型の生体計測センサを用いて,睡眠段階を推定する方法を提案されていました.老人ホームや病院において活用されることが想定されており,多くの人の睡眠状態を把握できることで,注目して様子を見る必要がある人を効率的に発見することができます.また,多くの人の睡眠状態を把握することで,睡眠状態,睡眠障害の改善につながると思います.デバイスを装着せず,日々のデータをとれるという状態がよいと思いました.今している研究がどのように活用することができるか考える必要があると思いました.
 

発表タイトル          : 医療従事者に患者の「痛み」を伝える生体情報計測と可視化技術の検討
著者                  : 松田 康宏,鈴木 達也,小野塚 實,小野 弓絵
セッション名       : Well-being Computing(2)
Abstract            :柔道整復とは運動器の損傷に対して徒手的な施術を与え回復を目指す治療である.柔道整復師が症状を把握するには痛みの評価が極めて重要であるが,現状は口頭聴取やVisual analog scaleによる患者の主観的な評価に留まっている.本発表では関節可動域を増大させる施術の前後において,痛みの認知に関わる前頭前野活動の計測から,疼痛感覚の変化を推定する手法について検討した我々の研究結果について報告する.

小型のfNIRS装置を用いて,痛みの程度を可視化することを目的とした研究でした.同じ計測装置を使った研究だったため,興味を持って聞くことができました.人の状態を計測し,可視化するためには,被験者に計測の負担をかけず評価することが必要不可欠です.現在,全脳のfNIRS装置を用いており,人の状態をフィードバックするためには,より小型で簡易な装置との関係を検討する必要があります.どのように脳血流変化とアンケート結果を関連づけるのかという点を参考に聞くことができました.
 
参考文献