【速報】進化計算シンポジウム2012

廣安が、進化計算学会の学会長として参加いたしました。
また、研究室からは下記の4件の発表をしました。
S1-9. 角膜内皮細胞画像におけるGP を利用した細胞領域分割のルール抽出の提案と評価
関谷駿介, 横内久猛, 小泉範子, 奥村直毅, 廣安知之(同志社大学)
S1-14. fMRI による生体情報を用いた対話型遺伝的アルゴリズムの検討
田中美里, 廣安知之, 三木光範, 横内久猛
S3-9. 遺伝的アルゴリズムのための並列処理フレームワーク: GAROP
山中亮典, 廣安知之, 三木光範(同志社大学), 吉見真聡(電気通信大学)
S4-14. 選好情報に基づくMOEA/D の検討*
布川将来人, 渡邉真也(室蘭工業大学), 横内久猛, 廣安知之(同志社大学)

学会参加報告書

 報告者氏名 田中美里
発表論文タイトル fMRIによる生体情報を用いた対話型遺伝的アルゴリズムの
検討
発表論文英タイトル Discussion of interactive Genetic Algorithms using
physiological information by functional Magnetic
Resonance Imaging
著者 田中美里,廣安知之,三木光範,横内久猛
主催 進化計算学会
講演会名 進化計算シンポジウム2012
会場 長野県軽井沢市 ホテルマロウド軽井沢
開催日程 2012/12/15-2012/12/16
 

 
1. 講演会の詳細
2012/12/15から2012/12/16にかけて,長野県軽井沢市で開催されました進化計算シンポジウム2012に参加致しました.本研究室からは私以外に,廣安先生,山中,布川,関谷の5名が参加致しました.進化計算学会は,廣安先生が今年の10月より会長を務められ,日本の進化計算研究の関係者のほとんどが参加している学会となります.本シンポジウムはその年次総会も行われ,多くの研究者が参加し,非常に濃い議論ができる場となっております.
また,本シンポジウムと併設しまして,2012/12/16から2012/12/17にかけて「実問題のための多目的設計探査ワークショップ2012」が開催されました.実際に企業で進化計算を使って製品の設計を行っているケースの紹介など,普段なかなか見えない企業での進化計算の活用法について触れられる機会となっており,廣安先生と田中が参加致しました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の最初のポスターセッションに参加致しました.最初に2分間のフラッシュトークが行われた後,40分間のポスター発表という流れになっております.
今回の発表は対話型遺伝的アルゴリズムに生体情報を使うことを最終目標として,その予備検討の内容での発表となっております.以下に抄録を記載致します.

対話型遺伝的アルゴリズムは人間の選好情報に基づいて対象を最適化する手法であり,ユーザの選好の最適点や選好モデルを推定する手法である.この対話型遺伝的アルゴリズムは最適化の過程において,各個体に対するユーザの評価を必要とするが,ユーザの疲 労による評価基準の揺れや前後の判断などが評価に影響を与えることが指摘されており,評価値を絶対値として,安定的に得ることは難しいとされる.そこで,このユーザの評価についてユーザの手動の評価ではなく,個体評価時のユーザの脳活動情報を取得することで,ユーザの評価値を獲得するシステムについて本研究では提案している.脳の血流量変化から活動部位を測定するfunctional Magnetic Resonance Imaging (fMRI)を用いて個体評価時のユーザの脳活動から評価値を算出する.そしてこれを用いて対話型最適化を行うことで,ユーザの評価に際する負担を軽減するとともに,絶対値としての評価値を取得できると考えられる.本発表では,提案システムの概要について述べた上で,その予備検討としてTシャツを個体とし,その好みを評価した際の実験参加者の脳活動について検証した.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・今回の識別結果は本当に評価値として使えるのか?評価値の脳活動であるのか?
九州大学の高木先生より頂いた質問です.今回識別した結果が好みの識別であるか,それとも設計変数に基づく知覚的な識別であるかという質問でした.頂いて当然の質問でしたが,時間の都合でこれに回答する十分な資料がそろっておらず,後ほど確認するという曖昧な回答になってしまったことが心残りとなっております.
 
・脳活動から得られる識別結果の方が,より人間の感性を反映しているというのは事実か?
お名前を控え損ねてしまいましたが,恐らく学生の方から頂いた質問です.こちらの質問は,私が本研究の背景として設定している,iGAの評価値取得の課題(正常な評価値を常に得られない,周囲の評価値に影響されるなど)を踏まえた質問でありましたが,完全にサーベイ不足で,きちんと答えることができませんでした.次回までに関連資料を見つけて背景をしっかりと固めておきたいと思います.
 
2.3. 感想
普段は比較的結果やデータのまとまった段階で発表するので,質問もこちらの想定ないのもの(もしくは誤解に基づくもの)が多いのですが,今回は始めたばかりの研究内容ということで,たくさんの真っ当なご指摘や新たな検討課題などを得ることができ,とても面白い発表だったと思います.また,iGAについて新たに研究を始めた方ともお知り合いになれるなど,実りの多い研究会となりました.
 
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 意思決定者が複数の解を同時に評価できない状況での単純な対話型進化計算アルゴリズムの実装著者                  : 星野洸一郎,能島祐介,石渕久生セッション名       : セッション2Abstract            :対話型進化計算は,一般的な進化計算の個体評価に関する部分を人間が行う手法であり,意思決定者の嗜好に合わせた解の探索ができるという点で,汎用性の高い手法である.対話型進化計算の実装における主な問題点は,様々な面で意思決定者の能力には限界があることである.例えば,計算によって生成された数千個の解を1つ1つ意思決定者が評価することは不可能であることは容易にわかる.本論文では意思決定者が必要最低限の能力で解を評価することを想定した単純な対話型進化計算モデルを定式化し,実装を行う.我々の対話型進化計算モテルでは以下に挙ける3つのことを前提とする.まず1つ目は,意思決定者が同時に評価できる解は1つだけであるとする.すなわち,意思決定者は解を1つずつ順に評価を行う.2つ目の前提は,意思決定者は提示された解に対して,1つ前に提示された解よりも“良かった”か“悪かった”かの評価のみ行うことができるものとする.つまり,意思決定者は現在提示されている解と,直前に提示された解とのみ比較を行い評価する.この前提は,意思決定者が直前に提示された1つの解だけを明確に記憶していると考えられるためである.3つ目の前提は意思決定者が行う評価回数には限界が存在することである.これらの前提のもとで対話型進化計算による最適解の発見を目的とする.

対話型進化計算の制約の1つにユーザの評価の難しさがありますが,それを2つの比較で解決するものとしては,この分野では最近は対話型差分進化が多く用いられてきました.今回の手法は,進化戦略を用いていますが,そこに評価順と言うアプローチを加えた点に新規性があります.一対比較において,より高い評価値を得られる1個の個体を最小手数で得るための戦略が興味深く,また今後はさらに複数の高い評価値の個体を得ることを計画しているそうですが,どのような手順でそれを成すのか,今後が楽しみな研究であると思います.
 

発表タイトル       :A Study on Mappings for Evolutionary Many-objective Distribution Search著者                  : Hernán Aguirre,Akira Oyama,Kiyoshi Tanakaセッション名       : セッション3Abstract            : Multi-objective evolutionary algorithms (MOEAs) seek to find trade-off solutions with good properties of convergence to the Pareto front, well spread, and well distributed along the front. A good distribution of solutions is usually assumed to be uniform. However, other distributions are often desired, either because of preferences or because they are required to extract relevant knowledge about the problem in order to provide useful guidelines to designers during the implementation of preferred solutions.We focus on distribution search in many-objective optimization, where in addition to good convergence towards the optimal Pareto front we are required to find a set of trade-off solutions spread according to the distribution we seek to achieve. Methods based on relaxed forms of Pareto dominance, such as ε-dominance, can be used to search for a desired distribution of solutions.
In this work, we adopt Adaptive ε-Ranking with a randomized sampling procedure that applies ε-dominance with a mapping function f(x)→εf ′(x) to bias selection towards the distribution implicit in the mapping. We analyze the effectiveness of Adaptive ε-Ranking with three linear mapping functions for ε-dominance. These mappings try to produce distributions of solutions evenly spaced, spaced by a distance that increases linearly from the center towards the extremes of objective space, and spaced by a distance that decreases linearly from the center towards the extremes. In addition, we study the importance of recombination to properly guide the algorithm towards the distribution we seek to find. As test problems, we use functions of the DTLZ family with M = 6 objectives, varying the number of variables N from 10 to 50. We show that in many-objective problems, in addition to setting a proper mapping function, recombination plays a significant role to induce the distribution we aim to achieve.

以前WCCI2010でもお会いしたHernán先生による発表でした.少し誤解している部分もあるかもしれませんが,多数目的問題を解く際の,目的関数空間での非劣解の分布が収束に与える影響について調べたものになります.ε-dominanceのεの値をパレート解の中央や端でスケールさせることで個体の選択を偏らせ,たとえば意思決定者の望む収束を得たりなどの効果を期待するものであるそうです.今回はパレートの中央を優先する,パレートの端を優先するパターンなどで,収束やGDの変化を確認しました.両目的を満たす個体ではなく,端の個体を優先的に選択するパターンの方が,比較的収束が良く見えたのが面白かったです.
 
参考文献
1)    進化計算シンポジウム2012 | 進化計算学,
 http://www.jpnsec.org/symposium201203.html

学会参加報告書

 報告者氏名 山中亮典
発表論文タイトル 遺伝的アルゴリズムのための並列処理フレームワーク: GAROP
発表論文英タイトル
著者 山中亮典, 廣安知之, 三木光範, 吉見真聡
主催 進化計算学会
講演会名 進化計算シンポジウム2012
会場 長野県軽井沢ホテルマロウド
開催日程 2012/12/15-2012/12/16
 

 
1. 講演会の詳細
2012/12/15から2012/12/16にかけて,長野県軽井沢にて開催されました進化計算シンポジウム2012に参加いたしました.このシンポジウムは,進化計算学会 [http://www.jpnsec.org/]によって主催されたシンポジウムで,進化計算に携わる国内研究者の交流を主目的として,進化計算に関する最新動向やアルゴリズムなどの議論を行い,進化計算を発展させることを目的に開催されています.
私は15,16日とも参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,田中,布川,関谷が参加しました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は16日の午前のセッション3に参加いたしました.発表の形式はポスター発表で,約90分間の発表となっておりました.
今回の発表は,遺伝的アルゴリズムを並列化させる際のフレームワークGAROPを定義し,並列モデルを実現するためのライブラリを提供することで,遺伝的アルゴリズム開発者の負担を軽減することを目的としました.また,作成したライブラリの評価として,GAROPを用いた新しい遺伝的アルゴリズムを提案し,効果を示しました.
 
2.2. 質疑応答
今回のポスター発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
こちらの質問はそもそもGAROPとは何か,というものでした.この質問に対する私の回答は,用意していた資料を用いて詳細を説明しました.
・質問内容2
提案手法について,エリート個体の推移を満たり,ことなる環境で実験すると面白い,というアドバイスをいただきました.
 
・質問内容3
GAROPは私にも使えますか,という質問を頂きました.もちろん使えます,と返答しました.
 
 
2.3. 感想

 初のポスター発表ということで,緊張しながらも楽しみにしていました.結果的には,十分な議論を行うには口頭での発表よりもポスター発表の方が向いていると感じました.

 
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 複数GPUを用いたACOによるQAPの高速解法著者                  : 筒井茂義,藤本典幸セッション名       : セッション2

ACOをマルチGPU上で実装した場合,実行時間および回探索性能がどのように変化するかを検討する内容でした.具体的な実装方法までは説明されておりませんでしたが,一般的な並列モデルをマルチGPU上で実行することは,通信量などの問題から複数探索集団によるものが優秀な結果を残していました.
 

発表タイトル       : Hyper-Heuristicsを用いた多目的遺伝的局所探索の最適なパラメータの決定著者                  : 明渡直哉, 能島裕介, 石渕久生セッション名       : セッション4

この発表では,そもそものHyper-Heuristicsの定義が気になりました.メタGAとどう違うのか,現在の研究状況はどうなっているのかによって研究の意義も変わってくるように感じました.手法としては,ほぼメタGAと同様に感じられたため,今後どのような発展があるのか気になる内容でした.
 

学会参加報告書

 報告者氏名 関谷駿介
発表論文タイトル 角膜内皮細胞画像におけるGPを利用した細胞領域分割のルール抽出の提案と評価
発表論文英タイトル

Proposal and evaluation of extracting rules for cell

segmentation using GP in corneal endothelial cell images

著者 関谷駿介, 横内久猛, 小泉範子, 奥村直毅, 廣安知之
主催 進化計算学会
講演会名 進化計算シンポジウム2012
会場 長野県軽井沢市ホテルマロウド軽井沢
開催日程 2012/12/15-2012/12/16
 

 
1. 講演会の詳細
2012/12/15から2012/12/16にかけて,長野県軽井沢市にて開催されました進化計算シンポジウム2012に参加いたしました.このシンポジウムは,進化計算学会によって主催されたシンポジウムで,国内外の進化計算の研究者が合宿形式でじっくりと議論する機会を持つ事を目的に開催されています.
私は15,16日とも参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,田中さん,山中さん,布川さんが参加しました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の午前のセッション1に参加いたしました.発表の形式は,最初にショートプレゼンが2分間行われた後,約40分間のポスター発表となっておりました.
今回の発表は,角膜内皮細胞画像における画像の部分ごとの特徴に応じた細胞領域分割処理を目的として,遺伝的プログラミングを用いた手法の提案と評価について発表いたしました.以下に抄録を記載致します.

 遺伝的プログラミングは木構造の組み合わせを最適化する自動プログラミング手法である.この遺伝的プログラミングを用いて,角膜内皮細胞画像の細胞領域分割を行うための画像処理フィルタの組み合わせを最適化する手法が現在提案されている.既存手法では,学習データを細胞画像の一部から切り取り,木構造フィルタを生成する.しかしながら,生成した木構造フィルタは画像全体に対するロバスト性が低いため,画像の部分ごとに特徴が大きく異なる全体画像に適用すると適切な領域分割ができない.そこで,条件分岐ノードを用いたルールを含めた木構造フィルタの生成を本研究では提案している.条件分岐ノードは,分割した領域と学習データ全体の画素値の中央値・平均値・標準偏差の差によって行う画像処理を振り分けるルールを持つ.これにより画像の部分ごとの特徴に応じた画像処理ができると考えられる.本発表では,一枚の学習データ及びその全体画像に対する提案手法の性能について検証した.

 
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
フランス国立情報学自動制御研究所のYouhei Akimotoさんからの質問です.質問は学習データを複数使用しないのはどうしてか,というものでした.この質問に対する私の回答は,複数の学習データを使用することで,目標画像も手作業で複数作成しなければならないため,その時のユーザ負担を考慮し,今回は1つの学習データを用いた,でした.
 
・質問内容2
電気通信大学の佐藤寛之先生より頂いた質問です.質問は実験で生成した木構造フィルタに条件分岐ノードはどのくらい含まれていたのか,というものでした.この質問に対する私の回答は,今回の最良個体ではルートノードの1つのみだった.その原因として条件自体が細胞領域分割に適したものではなかった可能性がある,でした.この質問は検討しておくべき課題でしたが,準備不足で論理的な回答ができなかったのが心残りです.
 
2.3. 感想
初めての学会発表でしたが,発表形式がショートプレゼンとポスター発表であったため,比較的緊張せずに発表することができました.今回得られた実験結果は良い結果ではなかったため,鋭いご指摘やアドバイスをたくさん頂き,有意義な議論をすることができました.次回の発表では提案手法を改良して,良い結果・準備をもって臨みたいと思います.
 
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 遺伝的プログラミングにおける遺伝的局所探索法の有効性の検証著者                  : 細川長洋,花田良子,小野景子,棟安実治セッション名       : セッション2
Abstruct            :遺伝的アルゴリズムをはじめとする進化計算で種々の最適化問題を解く際には主探索オペレータである交叉の設計が重要である.特にグラフなど組合せ的な構造を解空間に持つ離散問題においては,両親の形質を受け継ぐよう,問題固有の構造,性質を考慮した交叉の設計が重要である.複雑な制約や設計変数間依存を有する組合せ最適化問題を解くにあたり,解の詳細な調節が可能な局所探索を探索オペレータに併用させることが非常に有効であることから,局所探索に基づいた多段階探索交叉Multi-step Crossover Fusion(MSXF)およびdeterministic MSXF (dMSXF)が提案されている.本研究では交叉MSXF,dMSXFをGPにおける交叉に採用する.木構造の局所探索にあたり,両親間に共通するグラフパターンを保存すべき形質ととらえ,それに基づく近傍と距離を定義する.局所探索では共通部分を破壊しないような近傍生成法を導入する.連続関数同定問題にMSXF,dMSXFを適用し,有効性を検証する.

この発表はGPの交叉に局所探索に基づいたMSXFとdMSXFを適用した結果を検証した発表でした.自分の研究でもGPを用いていますが,まだ勉強し始めたばかりであるため,GPの応用的な交叉手法が数多く提案されていることに驚きました.このような手法を勉強していくことで自身の研究への応用が可能であると感じられました.
 

発表タイトル       : 学習分類子システムにおける最適行動獲得のための個体選択法著者                  :中田雅也,Pier Luca Lanzi,松島裕康,佐藤寛之,高玉圭樹セッション名       : セッション3
Abstruct            :強化学習と遺伝的アルゴリズムから構成される学習分類子システム(Learning Classi
er System:LCS4)は,有用なマイニング手法として注目されている.現在主流のLCSである正確性に基づくLCS(Accuracy-based LCS: XCS)は,全状態行動空間を学習する必要があり,多大な学習回数を要するという問題が存在する.この問題に対し,我々は最大報酬を得る行動(最適行動)をもつ分類子のみ学習するLCS(XCS with Adaptive Action Mapping: XCSAM)を提案した.しかしながら,XCSAMをはじめとするLCSは,環境状態(データ)の次元数の増加に伴って,一般化性能が著しく低下する.これは,状態行動空間の増加により学習する分類子が増加することで,学習効率が低下するためである.そこで本論文では,まず,XCSの従来個体選択法について,XCSとXCSAMにおける同選択法の効果の比較を行う.そこから,XCSAMにおいて選択すべき分類子の性質を特定し,これらの分類子を適切に選択する機構を備えた個体選択法を構築する.最後に,提案個体選択法を用いたXCSAMを,高次元データの分類問題(Multiplexer問題とデータマイニング問題)に適用し有効性を評価する.

親個体の選択に圧をかけることで,少ない学習回数で効率的に報酬を得られる事ができるという発表でした.結提案手法と既存手法の比較に検定を用いることで,より信頼性のあるデータにしている所も良かったと思います.ポスターの作りと発表の仕方に手が込んでいて,手法と良い結果が聞き手にとって伝わりやすい発表でした.
参考文献
1)    進化計算学会, http://www.jpnsec.org/
 

学会参加報告書

報告者氏名 布川将来人
発表論文タイトル 選好情報に基づくMOEA/Dの検討
発表論文英タイトル MOEA/D based on preference date
著者 廣安知之,渡辺真也(室蘭工業大学),横内久猛,廣安知之
主催 進化計算学会
講演会名 進化計算シンポジウム2012
会場 ホテルマロウド軽井沢
開催日程 2012/12/15 – 2012/12/16
 

 
1. 講演会の詳細
私は2012年12月15日から2012年12月16日にかけて新潟県ホテルマロウド軽井沢にて開催されました進化計算シンポジウム2012¹⁾に参加致しました.進化計算シンポジウム2012は,遺伝的アルゴリズム(GA)や粒子群最適化(PSO)などの進化計算のアルゴリズムや実応用に関する研究のポスター発表を行う学会であり,学生同士の交流を深める為に合宿形式で行われる学会です.
私は23日(金) の口頭発表にて講演致しました.また,本研究室からは廣安先生,田中さん,山中さん,布川,関谷の5名が参加しました.
 
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は16日のセッション4に参加いたしました.発表の形式はショートプレゼン及びポスター発表で,2分30秒の口頭発表の後,50分定程度のポスター発表を行う形でした.
 
今回の発表では, 多目的進化型アルゴリズムの一つであるMOEA/Dの一改良手法として,ユーザの選好情報を探索に用いることで,探索性能の強化を図った手法の提案を行いました.発表タイトルは「選好情報に基づくMOEA/Dの検討」です.
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.
質問内容は,「提案手法では目的関数空間内にユーザが参照点を設定するとのことですが,目的関数空間が4次元以上の場合可視化するのは困難だと思われますがどのように参照点の設定を行いますか?」というものです.
私の回答は「目的関数空間が4次元以上の場合はそれぞれの分布の最大値と最小値などを提示する事で設定を行う事ができると考えています.実利用を考えた時,目的関数空間における理想値はユーザが把握していると考えられるため,問題ないと考えています.」です.
 
2.3. 感想
ショートプレゼンでは緊張してしまい早口になってしまいました.毎度口頭発表では緊張してしまうので,もっと練習が必要だと感じました.ポスター発表では提案手法について一定の理解を得られたと感じましたが,同じセッションに多目的最適化の研究をされている方々が多かった為,あまり専門的な質問や意見はいただけませんでした.
 
 
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル          :勾配を利用した局所探索法によるハイブリッドロケットエンジン概念設計への応用

著者                  :横内直樹,渡辺真也
セッション名       :セッション1

Abstruct :多目的進化型アルゴリズムを用いて得られたパレートフロントに対して,より精度の高いパレートフロントを求める為の局所探索手法の提案の発表でした.

この提案手法では近似勾配を利用し探索方向が一意に定まった解候補の更新に基づいており,探索過程にランダムな要素を完全に排除したものとなっている.また,パレートフロント全体を隙間なく検出するメカニズムを有しており,テスト問題においてパレートフロント全体を高精度に隙間なく近似可能な解集合の生成に成功している.

この発表では,多目的進化型アルゴリズムによって得られた解に対して提案手法である局所探索を行う事で,パレートフロントの居所最適性を上げるという手法をハイブリットロケットエンジン問題に適応した結果に関する発表でした.以前の発表でテスト関数ではかなり良好な結果を得ていたにも関わらずロケット問題ではあまり良い結果を得られていませんでした.
私もテスト関数だけでなく実問題への応用ができるような手法を提案したいと考えています.
 

発表タイトル       : 遺伝的プログラミングにおける遺伝的局所探索法の有効性の検証著者                  : 細川長洋,花田良子,小野景子,棟安実治
セッション名       : セッション2
Abstruct            : 遺伝的プログラミング(GP)における局所探索手法に関する論文.

 
遺伝的アルゴリズムにおいて有効な交叉手法とされている多段階探索交叉Multi-step Crossover Fusion(MSXF)とdeterministic MSXF(dMSXF)をGPに適応する方法とその結果に関しての論文である.本論文では木構造における近傍距離の定義を行い,その近傍に基づいて多段階探索交叉を行う.近傍距離としてはまず,木としての構造が似ているのかどうか,次に類似構造部分と非類似構造部分でそれぞれノードの中身がどうなっているかを比較し距離を意義する方法を取る.
この発表は医用画像班でも問題となっている,木構造の近傍に関する論文であり今後の研究において用いる事ができるのではないかと考えています.
 
参考文献
1)    進化計算シンポジウム2012, http://www.jpnsec.org/symposium201203.html