2014年7月24日から26日かけて東京慈恵会医科大学で開催
「
林沼 勝利, 山本詩子,市川寛,八木信明,廣安知之
今年のJAMIT2014のテーマが「
最後になりますが、
【文責:M1林沼】
学会参加報告書
報告者氏名 |
林沼勝利 |
発表論文タイトル | テクスチャ解析を用いた内視鏡画像における早期胃癌の評価手法の検討 |
発表論文英タイトル | Evaluation Method for Early Gastric Cancer in Endoscopic Image Using Texture Analysis |
著者 | 林沼勝利 山本詩子 市川寛 八木信明 廣安知之 |
主催 | 日本医用画像工学会 |
講演会名 | 第33回日本医用画像工学会大会 |
会場 | 東京慈恵会医科大学 |
開催日程 | 2014/07/24-2014/07/26 |
1. 講演会の詳細
2014/07/24から2014/07/26にかけて,東京慈恵会医科大学にて開催されました第33回日本医用画像工学会大会(JAMIT2014)に参加いたしました.このJAMIT2014は,日本医用画像工学会によって主催された大会で,本大会は「医用画像工学と臨床現場の連携」というテーマで開催されました.私は全日程参加し,また本研究室からは他に廣安先生が参加されました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私はポスター展示発表にて発表いたしました.発表の形式は24日に1分30秒のショートプレゼンテーション,および25日に1時間程度のポスター説明を行いました.
今回の発表では,テクスチャ解析を用いて内視鏡画像における早期胃癌の進展範囲の評価を行う手法の検討を行いました.以下に抄録を記載致します.
現在,内視鏡を用いて早期胃癌の治療を行う際,医師は胃の粘膜の模様や微小血管の走行状態を観察することにより正常部位と病変部位の判断をしている.しかし,正常部位から病変部位にかけての変化の様子を定量的に評価する指標は存在していない.そこで本研究では,NBI併用拡大内視鏡で撮影された画像に対してテクスチャ解析を行うことにより,変化の様子を定量的に示す手法を提案する.本手法では,windowを走査して同時生起行列より6種類,ランレングス行列より5種類の特徴量を求める.次に,正常部位と病変部位で最も有意差のある特徴量をもとに等高線を描画した.また,複数の特徴量の統合を行い,カラーマップを作成することにより変化の様子を示した.その結果,等高線を描画することにより正常部位と病変部位の境界線が得られ,カラーマップにより病変部位の変化の様子が示された. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいましたが,「進展範囲の診断ではなく,深達度の診断が重要ではないのか」という質問をいただきました.この質問に対しては,「医師の方からDemarcation Line周辺の定量的な評価ができるといいとの話をうかがっている」と回答いたしました.
・質問内容2
山口大学の木戸先生より,「関心領域はどのように設定しているのか」との質問をいただきました.この質問に対しては「画像内視鏡全体を関心領域にしている」と回答いたしました.
・質問内容3
質問というよりは助言ですが,滋賀県立大学の畑中先生より「労力をいとわないのであれば差分統計量など他にも特徴量はいろいろとあるので試してみてはどうか?」とのコメントをいただきました.
2.3. 感想
今回は初めてのポスター発表でした.思った以上に多くの人がポスターに集まってくださり,有意義な議論ができたと思います.また,私と同様の研究を見つけることができ,今後の研究が楽しみとなりました.しかし,ショートプレゼンはあまり上手にできたとはいえず,今後自分の研究を手短に伝える練習をしなければいけないなと思いました.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
発表タイトル :医工連携の難しさ-自身の10年の経験から- 著者 :林 秀樹 セッション名 :シンポジウム SY2:医・工連携 Abstract : 「医工連携を一つ屋根の下で」を謳い文句に、なんの工学的バックグラウンドも持たない、根っからの消化器外科医が一人、突然エンジニアの集団の中に放り込まれた!一体ここで自分に何ができるのか?最初に立ちはだかった思想の壁。医工学って何?臨床家は常にブラックボックスの中を追い求める。なんで人の体にこんなことが起こるのか?こんな治療をしたら、どう変わるのか?その傍らで、エンジニア達はひたすら自分たちの持てる技術を役立てられる医療のシーンを探し続けている。中々見つからない両者の交点。そんな中で、明るい道筋を示してくれたのは、私の元に集まってくれた学生達だった。 |
この発表は医師の側から見た医工連携に関するお話でした.普段あまり聞くことのない医師の側からのお話を聞くことができ,今後研究していくうえで医師の方と相談する際どういった点に注意していけばいいのかとても勉強になりました.
発表タイトル :NBI内視鏡画像を用いた早期胃がん病変のコンピュータ支援診断 著者 :長見諭,徐睿,平野靖,木戸尚治,阿部清一郎,坂本琢,斎藤豊 セッション名 : OP4:CAD Abstract :内視鏡を用いた胃がん診断には,病変部の表面構造と血管構造が考慮される.NBI (Narrow Band Imaging) を用いた画像は血管や粘膜微細模様が強調され,病変部の表面構造,血管構造の詳細な観察が可能となる.医師の診断では,病変部と正常な粘膜を比較しながら行うが,目視による診断には定量的な判断基準が存在しないため,医師の主観が介在する可能性がある.そこで本研究では,NBI内視鏡画像を用いて病変部の表面構造,血管構造を定量評価し,腫瘍部と非腫瘍部の2クラスに分類することを目的とした.実験データには国立がん研究センターで撮影され,医師によって腫瘍部,非腫瘍部に関心領域が設定された胃NBI内視鏡画像を用いた.分類のための特徴量には,SIFT (Scale-Invariant Feature Transform) 特徴量を用いた.SIFTによって得られた特徴量に主成分分析(Principal Component Analysis : PCA) を行い,Bag-of-Features法により病変部の分類を行った.leave-one-out法により実験した結果,SIFTの場合識別率82.14%,SIFT+主成分分析の場合識別率83.93%を得た. |
この発表では,NBI内視鏡画像をSIFT特徴量とBoF法を用いることにより癌・非癌の分類を行っていました.私と同様の研究を行っており,今後の研究にとても役に立つ発表でした.
発表タイトル :大腸Endocytoscopyによるコンピュータ自動診断システム 著者 : 森悠一, 工藤進英, 若村邦彦, 三澤将史, 小川悠史, 久津川誠, 工藤豊樹, 林武雅, 宮地英行, 石田文生, 井上晴洋 セッション名 : OP4:CAD Abstract : 【背景】Endocytoscopy (Olympus)は450倍の超拡大観察により、消化管粘膜における細胞核を可視化し、病理診断予測を高精度で可能とする次世代内視鏡である。今回、Endocytoscopy画像に対するコンピュータ自動診断システム(CAD)を構築、評価した。【方法】構築されたCADは、元画像からの処理領域の切り出し・R成分画像での大津の2値化・各種フィルタリングによる核の抽出・核の種々の因子計測・診断アルゴリズムへの因子計測結果の代入、という過程を経て診断にいたるシステムである。診断アルゴリズムは、核の諸因子と病理診断との関連性を多変量解析して作成した。このCADの精度を、大腸Endocytoscopy画像331枚(腫瘍226枚, 非腫瘍105枚)を用いて予備的に評価した。【結果】CADへの画像のインプット後、全例で瞬時の病理診断予測のアウトプットが可能だった。腫瘍/非腫瘍の鑑別診断能は感度82%, 特異度93%, 正診率89%であった。【結論】Endocytoscopyを用いたCADは十分な診断精度があり、臨床応用への可能性が示された。 |
この発表では,Endocytoscopy画像における腫瘍・非腫瘍の識別を行っていました.著者は医師であり,提案されているシステムを実際の臨床現場で使われていて面白そうな研究ではあったのですが,システムの詳細なアルゴリズムがわからず残念でした.
参考文献
1) 第33回日本医用画像工学会大会予稿集CD-ROM