SSI2016

2016126日から8日にかけて滋賀県にて計測自動制御システム・情報部門学術講演会2016が開催されました.本研究室からは原田(M1),石原(M1)が参加し,原田(M1)が口頭発表とポスター発表,石原(M1)がポスター発表を行いました.発表題目は以下の通りです.

「キックアウト手法を用いた遺伝的アルゴリズムによる脳機能ネットワーク抽出」

原田圭,日和悟,廣安知之,Heiner Zille,Sanaz Mostaghim

「左右手運動想起中の脳波識別における空間フィルタの最適化」

石原知憲,日和悟,田中健太,廣安知之 

本学会は,基礎理論から工学的実システム,さらには社会経済システム,生命システムなど多様な広がりを持つシステム情報分野の研究者,技術者に対して,

1) 各研究領域での研究の成果や動向等の情報を提供する,

2) 新しい研究領域を創造するための交流の場を提供する,

3) システム情報分野での研究や教育のプログラムを発信する,

ことを目的に開催されています.2016年のこの学会は琵琶湖のほとりにある滋賀県立体育館で行われました.会場のすぐ横には琵琶湖があり,滋賀県らしさを感じることができる会場でした. 発表では原田君が15分の口頭発表でSSI優秀発表賞を受賞し,表彰式で表彰されました.同じ研究室の仲間が表彰される姿を見て,うれしい気持ちと同時に悔しい気持ちにもなりました.原田君の表彰を受けて,自分も表彰されるようにこれからより一層研究に力を入れたいと思いました.その後,私もポスター形式での発表を行いました.お互いにたくさんの方にポスターに立ち寄っていただき,自分たちの研究に興味を持っていたくことができました.原田君が汗を流しながら熱心に説明している姿が印象的でした.

私は本学会には初めての参加でしたが,今後研究を行っていく進化計算の内容を含め,良い議論ができたと感じています.また本学会では研究に関する意見交換だけでなく,他の人の研究を聞くことによる発見や気づきがたくさんあり,私にとって大変有意義な時間でした.本学会で頂いたご意見や発見を今後の修士卒業研究に活かしていきたいと思います.

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【文責:M1 石原】

学会参加報告書

報告者氏名 原田圭
発表論文タイトル キックアウト手法を用いた遺伝的アルゴリズムによる脳機能ネットワーク抽出
発表論文英タイトル Functional brain network extraction using a genetic algorithm with a kick-out method
著者 原田圭, 日和悟, Heiner Zille, Sanaz Mostaghim, 廣安知之
主催 公益社団法人 計測自動制御学会 システム・情報部門
学会名 システム・情報部門学術講演会2016(SSI2016: SICE Symposium on Systems and Information 2016)
会場 ウカルちゃんアリーナ(滋賀県大津市) 滋賀県立体育館
開催日程 2016/12/6-2016/12/8

 

  1. 学会の詳細

SICE Symposium on Systems and Information 2016 (SSI 2016)が2016年12月6日~8日にかけて、滋賀県の大津市にあるウカルちゃんアリーナ(滋賀県立体育館)にて開催されました。本研究室からは、原田圭、石原知憲(M1)の2名が参加しました。原田が「キックアウト手法を用いた遺伝的アルゴリズムによる脳機能ネットワーク抽出」という題目口頭発表及びポスター発表を行いました。発表は、学会2日目の12月7日の午前10時20分から10時40分にかけて口頭発表、12時から13時にかけてポスター発表を行いました。また、石原が「左右手運動想起中の脳波識別における空間フィルタの最適化」という題目でポスター発表を行いました。発表は、同日の15時から16時にかけてポスター発表を行いました。両名とも好評でポスター発表では終始、人の足が途絶えず、多くの方に足を運んでもらい、話をすることができました。 私たちが参加したSSI 2016は、琵琶湖を一望できる位置にあり、学会期間である3日間ともに晴れ、素晴らしい環境で学会に臨むことができました。 SSI 2016では、29のセッション・分野が合同で口頭発表やポスター発表をする形式となっており、様々な研究を肌で感じることができました。脳波を用いた研究が多く、fNIRSを用いた研究も目立ちました。また、進化計算の分野においてアルゴリズムの改良を行う研究も見られ、より一層の興味を持ち、ポスターにてお話を深く聞くことができました。 SSI 2016 ホームページ http://www.sice.or.jp/org/SSI2016/

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は、7日の午前10時20分から10時40分にかけて口頭発表、12時から13時にかけてポスター発表に参加致しました。 今回の学会発表では,脳機能の重要なネットワークの抽出時間の高速化を目的としたキックアウト手法を提案致しました。キックアウト手法は、遺伝的アルゴリズムの一部に導入され、先行研究より30%近く処理時間を削減し、変わらぬ性能を発揮することが示唆されました。1時間にわたるポスターセッションでしたが、様々な方に多くのご意見を頂きました.以下に抄録を記載致します.

著者らは,非侵襲脳機能計測で得られる脳活動データから,課題実行に関連する脳機能ネットワークの抽出方法を提案している.提案手法は,遺伝的アルゴリズムによる特徴選択と機械学習による識別により,複数の脳活動状態の識別率が最大となるような脳機能ネットワークを抽出する.本研究では,提案手法の高速化のため,最適化時に評価値が悪いと推測される個体の評価計算を行わないことで計算時間を削減するキックアウト手法を導入し,その有効性を示した.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました. 2.2.1 口頭発表 ・質問内容1 脳機能ネットワークを解析することに意味があるのか、なぜ従来の解析方法で脳機能の解析を行わないのか、という質問を受けました。この質問に対して私は、従来の賦活解析とは異なる脳機能ネットワークという解析を行うことで新たな知見の獲得を得られるため、と回答しました。また、発表後もお話しを聞きに行き、fNIRSの解析でMRIの解析方法が使えないことなど、さらなる議論をすることもできました。 ・質問内容2 キックアウト手法による8時間の時間削減によって重要な組み合わせを取りこぼしている可能性はないのか、それなら、8時間かかっても探索して方がいいのではないのか、という質問を受けました。この質問に対して私は、現在は9被験者の18データで40時間要しているが、今後は被験者を増加させると時間がより増加すること、また選択チャンネル数を増加させることでさらに時間を要するため、時間削減に気を使うことが必要であると述べました。提案手法の根幹となる部分なので、その背景からより繊細に理論立てて考える必要性を感じました。 2.2.2 ポスター発表 ・質問内容1 脳の図をポスターにあるような3次元で描画するにはどのようにすればよいですか、という質問を受けました。その質問に対して私は、まずfNIRS計測時に磁気計測して、その三次元位置データをもとにMATLABにて再現する、という方法を述べました。 ・質問内容2 キックアウトした個体とそうでない個体とで、SVMによる識別をしたら面白そうではないか、という質問を受けました。この質問に対して私は、実際考えたことがなく面白いアイデアと感じ、設計変数を軸にとってうまく行うことができるかもしれないと回答しました。 ・質問内容3 キックアウト手法による時間削減もいいが、時間削減の王道は目的関数の近似であるので、そちらも調べて活用してはどうか、という質問を受けました。この質問に対して私は、その方法について詳しくありませんと正直に伝え、簡単に内容について教えて頂きました。内容としては、目的関数を近似する関数を実際の目的関数の結果のサンプリングから作成し、近似関数内で最適化を行い、その結果を目的関数に代入するといった方法でした。

  • 感想

本学会では、多くの先生方の推薦によってポスター発表だけでなく口頭発表も行うことができました。推薦したくださった先生方には感謝の気持ちでいっぱいです。また、口頭発表を行ってからポスター発表を行う、という予定だったためか、私の研究に大変興味を持っている方々にポスターに足を運んでいただきました。そのため、深い議論もすることができ、1時間という発表時間を有効に、そして瞬く間に終了しました。 また、昨年参加した進化計算シンポジウム2015や今年参加したCEC2016で出会った、先生方、とも改めてお話することができました。先生方だけでなく、多くの学生と話す機会にも恵まれ、これからも研究を進めていこうという意欲が掻き立てられました。また最後には、SSI優秀発表賞にも選んで頂きました。研究室の学生や先生をはじめ、多くの方々に支えられ、そして運営に携わっていました方々にも助けて頂きました。感謝致します。

  1. 聴講

今回の学会では,下記の3件の発表を聴講しました.

発表タイトル       : シバヤギの発情行動推定手法の提案と発情検出システムの検討著者                  : 加賀翔大朗 荒川俊也 (愛知工科大学)セッション名           : SS13-7 : 統計的学習および推定とその応用概要: 発情行動の管理はあらゆる動物の雌雄交配において重要である。特に能動的性行動を定量評価するにあたっては、熟練した評価者が雌シバヤギの行動を目視観察することによって為されている。しかし、サンプル数が大規模になったり、長時間の観察が必要になった場合、このように絶えず観察する必要がある手法は、非常な労力であり、時間も掛かる。また、観察結果は観察者の主観に依存する。そこで、隠れマルコフモデルによる推定結果と、専門家の目視行動による判定結果は、大凡一致しており、隠れマルコフモデルによる推定は妥当であることが示唆された。この結果を踏まえて、現在開発中の大型動物の行動データロギングシステムの概要についても紹介する。

この聴講は、隠れマルコフモデルというキーワードとシバヤギの発情行動推定がどのように組み合わさっている研究なのか、興味を持ったので聞きに行きました。課題として、発情行動を定量評価する指標が人間による目視しかないことがあげられ、それに対してシバヤギをトラッキングすることを行われていました。具体的には、何もしない状態、雌が雄に近づいていく状態、雄と雌が近い状態の3状態を仮定し、3状態の隠れマルコフモデルによる検証と、おおよその傾向が一致することを聞きました。一番印象的だったのは、シバヤギは雄がフェロモンを出して、雌が雄に近づいていくということでした。私の研究とは分野がかなり離れていますが、楽しく聴講することができました。

発表タイトル:騙し構造を持つ最適化問題への適用を考慮したニッチングGAの提案著者    : 齋藤誠、小野典彦、永田裕一(徳島大学)セッション名       : GS02-10:知能工学概要:騙し構造を有する関数最適化問題に対する有望なニッチングGAの1つとして、適応的近傍探索ANSがある。しかし、ANSは各世代で解集団中の高々1個体しか更新しないため、良好な解を効果的に特定することは難しい。本研究では、この問題点を軽減するため、ANSのアイデアを発展させて、各世代で複数の個体群を更新可能な世代交代モデルと多親交叉に基づくニッチングGAを提案すると共に、その性能を実験的に評価する。

まず、タイトルに「最適化問題」、「ニッチングGA」と私が興味を持っているキーワードがタイトルに入っていたのでポスターへ足を運びました。ニッチングGAがどのような狙いがあるものなのか、そしてその問題点は進化速度が遅い点であり、そこをどう改善するか、お話を聞きました。主に保存戦略と交叉方法を変更されていて、初めて聞くアイデアで議論も盛り上がりました。

発表タイトル: 広画角ドライビングシミュレータによる周辺視野域警報に関する研究著者    : 高橋宏(湘南工大)、伊藤誠(筑波大学)セッション名:O1-3(口頭発表)、SS10-19: 高度運転支援・自動運転技術の開発と評価に関わるドライバ行動分析概要:中心視野と周辺視野の視覚的刺激に対する脳内の処理機序の違いに着目し、周辺視野域へ視覚的刺激を提示する装置を構築する。視野角左右70°横方向6m縦方向1.5mのスクリーンを持ち、自動車運転支援への周辺視野内情報提示の有効性を検討するため、走行景色のCGが投影される。手動運転時のドライバへの情報提示効果やLevel3自動運転時のTOR対応評価などを検討する。

この研究は、口頭発表形式で聴講しました。発表の冒頭で、覚えてほしいキーワードを述べて、そして発表のコンテンツを簡単に示し、会場内の全員が共感できる背景から発表されていました。私も気づけば発表を聞き入ってしまっていたほど、発表がうまく参考にすべき提示・話し方であったと感じました。また、研究内容では実際の道路映像を用いておられ、被験者を如何に実体験に近づけるかという点に緻密さを感じ、今後の研究が楽しみでした。

学会参加報告書

報告者氏名 石原知憲
発表論文タイトル 左右手運動想起中の脳波識別における空間フィルタの最適化
発表論文英タイトル
著者 石原知憲,日和悟,田中健太,廣安知之
主催 公益社団法人計測自動制御学会 システム情報部門
講演会名 SSI2016
会場 滋賀県立体育館
開催日程 2016/12/06~08
  1. 講演会の詳細

計測自動制御学会 システム・情報部門(SANDI)は基礎理論から工学的実システム,さらには社会経済システム,生命システムなど多様な広がりを持つシステム情報分野の研究者,技術者に対して,1)各研究領域での研究の成果や動向等の情報を提供する,2)新しい研究領域を創造するための交流の場を提供する,3)システム情報分野での研究や教育のプログラムを発信する,ことを目指して活動している.私は7日,のポスター発表と口頭発表に参加いたしました.本研究室からは他に原田が参加しました.

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は7日の午前の口頭発表とポスターセッションに参加いたしました.発表の形式は口頭発表で発表時間が45秒,ポスター発表で,発表時間が60分となっておりました. 以下に抄録を記載致します.

Electroencephalogram (EEG) recorded in Brain Computer Interface(BCI) experiments is generally noisy, non-stationary, and contaminated with artifacts derived from a body move and experiment environment. Common spatial pattern (CSP) has proven to be very useful to extract subject specific, discriminative motor image alleviating these effects and been mostly applied for the experiments based on MI-BCI. EEG data filtered with band-pass filter has been known to improving the classification rate on MI-BCI and a wide filter band (7-30Hz) has been usually adopted for CSP.However, a filter band has been indicated that the optimized subject-specific filter band could better improve the classification accuracy in number of studies. Recently, sparse regression has been applied to optimize a filter band and shown its efficiency in CSP feature extraction to alleviate overfitting(Zhang et al., 2015). However, this proposed method adopt non-subject specific filter band(4-40Hz) to perform bandpass filtering on raw EEG by using a set of overlap- ping sub-bands. In this study, we optimized this wide filter band with Genetic Algorithm and adopted a sparse filter band common spatial pattern(SFBCSP) for optimizing the spatial patterns. As a result, experimental results demonstrate that proposal method help improve the classification performance.
  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました. ・質問内容1 「何CHを使って脳波計測を行っているのか?データの説明をしてください。」 質問者の氏名を控え損ねてしまいました.この質問に対する回答ですが「今回用いたデータはオープンソースであるBCIコンペティションのデータです.扱っているデータは実験プロトコル(ポスター内の図)に従って計測された訓練経験のある被験者9人の運動想起時の脳波データです.計測CHはC3,Cz,C4の3CHで計測部位は運動想起に関連する運動野付近のCHになっています.」とお答えしました. ・質問内容2 Common Spatial Patternでは具体的にどんなことをしているのか?」 質問者の氏名を控え損ねてしまいました.この質問に対して私は「CSPは各クラス間(左手想起と右手想起)での脳波の分散値を左右の運動想起識別における特徴量として抽出しています.各クラスにあたる運動想起時の脳波の時系列プロットに白色化をかけ,直行させたのちPCAをかけることでCH数次元分の主成分を求めます.ここで求めた第一主成分は最終主成分と直行しており,第一主成分を表すベクトルは左手想起時の脳波の分散値を最大化させ,右手想起時の脳波の分散値を最小化させるベクトルになっています.同様に最終主成分のベクトルは右手想起時の脳波の分散を最大化,左手想起時の脳波の分散値を参照化させるベクトルとなります.この特徴ベクトルによって計算される分散値の差を利用して識別に必要な特徴量を抽出しています.」とお答えしました. ・質問内容3 「どういったモチベーションで運動想起型のBCIの研究を行っているのですか? 研究が進むと、どんなうれしいことがありますか?」 質問者の氏名を控え損ねてしまいました.この質問に対する回答は,「モチベーションとしては身体的に不自由のある人のQOLを向上させることを目的に研究をスタートさせましたが, 最近では運動想起時の脳活動の解明に重きを置いています.運動想起時の脳活動を脳波からとらえることで種々のインターフェイス開発に寄与し,結果的に神経疾患患者のQOL向上につながると考えています.今回の研究発表ではBCIシステムが被験者にチューニングしていくような内容になっているため,この研究が進めば訓練なしでも操作可能な運動想起型BCIの構築につながると考えています.」とお答えしました. ・質問内容4 SFBCSPとは何か?」 北陸先端科学技術大学院大学 藤原さんからの質問です.この質問に対する私の回答は「SFBCSPはCSPの拡張版です.前処理で行うバンドパスフィルタのバンド幅をオーバーラップさせながら細かくサブバンドを形成し特徴量の数を増やします.増やした特徴量に対してCSPで特徴抽出を行い,各特徴量を運動想起ごとに並べることでCSP特徴量行列を作成します.作成した特徴行列と教師信号を用いてL1正則項を持つLasso回帰を行い,特徴行列のスパース化を行うためのスパースフィルタ係数を求めます.このスパースフィルタにより識別に及ぼす影響の小さい特徴行列の成分はゼロ化が行われ,効率的な特徴抽出が行えます.」とお答えしました.また脳波のフェーズロックという性質やフェーズスロープインデックス,脳波の研究をするにあたり読んだ文献などの紹介をいただきました. ・質問内容5 「なぜ遺伝的アルゴリズムを使用したのか?」 質問者の氏名を控え損ねてしまいました.この質問には「今後より大きな組み合わせ最適化問題を考えていくために,まず勉強もかねて周波数帯域を遺伝的アルゴリズムで最適化を行いました.今後はCH選択やその他の特徴量選択も複合的に考慮していきたいです.」とお答えしました. またこの方から遺伝的アルゴリズムの基本的な考え方と世代数,初期個体数の決め方についてもアドバイスをいただきました.

  • 感想

今回の学会は私にとって3回目の研究発表を行う場でした.口頭発表は45秒間で自分の研究の概要を,ポスターセッションでは研究の詳細について発表しました.私は進化計算の新世代というセッションで発表を行い,たくさん先生,学生の方から研究についてご指導をいただきました.今回は先輩の研究内容を学外で発表する学会だったため不安な部分もたくさんありましたが自分の研究に応用できる点や運動想起型BCIの面白い部分,自分の研究の強みについて気づくことができました.また先輩の研究内容も含め改善点や足りない部分を再認識することができました.今回の学会で脳波を扱った研究をしている方が数名おり,その方たちと研究の難しさや苦労を含めディスカッションをすることができました.ディスカッションの中で自分の分野に対する知見を広げることもできました.私はBCI操作におけるバンドパスフィルタの帯域幅の最低化というテーマで発表しましたが,遺伝的アルゴリズムの話よりもシステムとしてのSFBCSPや運動想起型BCIシステムとして考えるべき点を中心にご指導をいただきました.また他分野の先生方から実験設計についてもたくさんご指摘をいただきました.今回の学会でもたくさんの発見があり,毎日が大変有意義な時間でした.また学会に参加できるように毎日の研究に精進していきたいと考えています.

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.

発表タイトル       : 記号コミュニケーションン課題における脳配送同期構造の変化著者                  : 藤原正幸 橋本敬 李冠宏 奥田次郎 金野武司 鮫島和幸 森田純也セッション名       : ポスター発表Abstruct            : 人間は言外の意味や意図を伴う記号コミュニケーションを行うがその成立過程や脳神経メカニズムは未解明である.本稿ではPhase locking value(PLV)と呼ばれる脳波位相同期の指標を用いて,記号コミュニケーション成立の初期と周期における脳波チャンネル間の機能的結合性を解析した.その結果,初期と終期間で相手のメッセージを受け取ったあとの,戦時におけるPhase locking statics(PLS)に有意な差があること,特に終期には早い潜時で前頭部と後頭部間で長距離の同期が強まることを示した.これは,記号コミュニケーション成立の前後の認知活動の違いを反映していると考えられる.

この発表は脳波の位相同期構造の変化に着目した研究でした.こちらの研究室では脳波の位相方向の相関値を計算し,脳の機能的コネクティビティを見る研究を行っていました.私の研究では非侵襲的に計測可能なEEGを用いたもので,脳波を用いた機能的コネクティビティに対する知見を持っていませんでした.またPhase locking value (PLV) やPhase locking statics(PLS)など脳波の新たな指標についても学ぶことができました.同じ生体信号である脳波を用いた研究でしたが,全く異なる解析手法,アプローチであったため大変興味深いものでした.特に信号波形の位相方向のずれに着目した点は,自身の研究を進めていくうえで有益であると感じられました.

発表タイトル       : フィードバックに対する予期が運動関連の脳活動に与える影響の評価著者                  : 簑原凛 温文 浜崎峻資 前田貴記 安棋 田村雄介 山川博司渋谷賢 大木紫 山下淳 浅間一セッション名       : ポスター発表Abstruct            : 運動麻痺患者に対する効果的なリハビリ手法を構築するために,運動に関わる神経基盤を明らかにすることが重要である.本研究ではリハビリにおいて重要とされる運動主体感という感覚に着目し,その感覚を構成する要素の一つである“フィードバックに対する予期”が運動関連の脳活動に与える影響を調べることを目的とした.聴覚刺激のタイミングを操作することによりフィードバックに対する予期が異なる課題条件からなる実験を設計し,それぞれの条件に取り組む間のEEGを記録した.実験で得られた脳波信号から運動準備電位を算出し,比較検証を行った.現時点ではサンプル数の不足により統計的に有意な差は見られなかった.予期が同一な条件においては運動とそれに対するフィードバックの間の関係が学習され,その結果から立ち上がりの遅れとして反映されると考えられ,被験者の拡充による追加実験が求められる.

この発表は私と同じ研究である運動想起型BCIの研究でした.運動想起型BCI操作を行う際の訓練におけるフィードバックの予測が脳波に与える影響の研究でした.フィードバックを行う感覚を意図的に変えることでフィードバックに対する予測の統制を行っていました.運動を行う前には準備電位という種類の事象関連電位が発生しており,運動の予測と運動主体感には何らかの関係があるとのことでした.フィードバックに関する影響を検討したテーマはいくつかありましたが運動前の脳波活動についての発表はこの一件であり自分の研究にとっては新しい発想でした.今後被験者を訓練していくことを考えていく中で,考慮すべき点だと思いました.

発表タイトル   : 聴覚刺激によるフィードバックが運動想起型BCIの訓練に及ぼす影 響著者                  : 戸敷創 矢野史郎 近藤敏之セッション名       : ポスター発表Abstruct            : 近年,運動想起型BCIのための視覚フィードバック訓練に関するいくつかの研究が行われているが,運動観察が運動想起と同様の反応を引き起こすことなどいくつかの欠点がある.一方,聴覚フィードバックによるBCI制御についても研究が行われているが,訓練効果については,研究されていない.本研究では,BCIニューロフィードバック訓練における聴覚刺激の利用可能性について調査した.

この発表は私と同じ研究である運動想起型BCIの研究でした.中でもシステム側の研究ではなく操作者である被験者の訓練に関する研究でした.フィードバック方法としては運動想起時に現れるERDを評価値として,聴覚フィードバックを2グループに分けて行っていました.対照群には2段階の聴覚フィードバックを,実験群には7段階でフィードバックを行っていました.結果としては運動想起の出来具合を細分化しフィードバックを行ったほうが,訓練効果が高まるとのことでした. 今後被験者を訓練していくことを考えていく中で,考慮すべき点だと思いました.   参考文献

  • SSI2016 プログラム
  • SSI2016 http://www.sice.or.jp/org/SSI2016/