【速報】角膜カンファランス2018


学会参加報告書

報告者氏名 小林渓太郎
発表論文タイトル 接触型角膜内皮スペキュラを用いた自動パノラマ画像作成ソフトウェアの開発
発表論文英タイトル Development of automatic panoramic image creation software using contact type corneal endothelium specular
著者 小林渓太郎, 奥村直毅, 日和悟, Theofilos Tourtas, Victor Augustin, Friedrich E. Kruse, 小泉範子, 廣安知之
主催 日本角膜学会・日本角膜移植学会
講演会名 角膜カンファランス2018
会場 グランドプリンスホテル広島
開催日程 2018/02/15-2018/02/17

 
 

  1. 講演会の詳細

2018年2月15日から17日かけて広島県広島市のグランドプリンスホテル広島にて開催されました,角膜カンファランス2018に参加いたしました.この学会は,日本角膜学会及び日本角膜移植学会によって主催され,を目的として開催されています.
私は15日,16日にポスター発表いたしました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は15日,16日に「主として生理・生化学に関する演題」でポスター発表いたしました.発表の形式は1時間のポスター討論でした.
今回の発表は,接触型角膜内皮スペキュラを用いた自動パノラマ画像作成ソフトウェアの開発で,以下に抄録を記載致します.
 

【目的】フックス角膜内皮ジストロフィ(FECD)患者の角膜内皮は部位により差異があり、guttaeにより角膜内皮の観察が困難である等の理由により再現性高く評価することが困難である。今回、我々は接触型角膜内皮スペキュラにより得られた広範囲の撮影動画を元に自動的にパノラマ画像を生成するソフトウェアの開発を行った。【方法】Erlangen大学で接触型角膜内皮スペキュラ(CellCheck, Konan Medical, Inc.)により正常者1名、FECD患者3名の角膜内皮を広域で動画撮影した。撮像動画からフーリエ変換した周波数画像を用いて焦点の合った画像(合焦画像)を自動的に抽出し、パノラマ画像を生成するソフトウェアを作製した。コントロールとして眼科専門医が合焦画像を肉眼的に選択した画像を用いてパノラマ画像を作成した。【結果】接触型角膜内皮スペキュラにより得られた撮像動画からソフトウェアにより合焦画像を自動的に抽出し、パノラマ画像を作成できた。正常者では、眼科専門医の合焦画像の選択によるパノラマ画像と同等の画像がソフトウェアにより得られた。一方で、FECD患者では、重度のguttaeが広範囲に認められる範囲で眼科専門医と比べて合焦していない像も選択する傾向が認められた。【結論】角膜内皮細胞の撮像動画から合焦画像を抽出し、連結することで角膜内皮のパノラマ画像を生成するソフトウェアを作製した。本ソフトウェアはFECDの進行の評価に応用できると考えられる。

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
 
・質問内容1
質問者は京都府立医科大学の田中先生で,画像中のスケールバーは正しいのか,という質問でした.この質問に対してある程度正しい,と回答しました.
 
・質問内容2
質問内容1に続いて,パノラマ画像を評価する上で,スケールバーが正しいという担保はどうするのか,という質問でした.この質問に対して,担保するべきなのか分からないが,担保するべきだと思うため,今後は担保することも検討する必要がある,と回答しました.
 
・質問内容3
CellCheckは日本で使われているのか,という質問でした.この質問に対して,使われていると回答しました.
 

  • 感想

今回の学会は,私にとって初めての医療系の学会でした.情報系の発表をしている方が自分以外におらず,周りが化学系,生物系の発表をされている中でのポスター討論でした。そのため,1日目は雰囲気に呑まれ,中々,上手く討論することができませんでした.しかし,2日目では場の空気にも慣れ,良い討論をすることができました.特に,専門家との討論から機器の使い方やその機器による課題など情報系以外の部分を深く知ることが出来たことが,私にとって大きな収穫となりました.また,情報系が分からない方に対しても分かるように伝えることができました.そして,学会参加前は角膜の知識が乏しかったですが,学会を通して,内皮以外の角膜の分野について勉強することができ,また自分のしている研究が角膜の領域において,どの立ち位置に当たるのかを知ることができました.次回の学会では,分野が違う方たちと,より多くの討論ができるよう,今回の学会を活かしたいと思います.

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 運動器の再生医療
著者                  : 越智 光夫
セッション名       : 特別講演
Abstruct            : 現在日本は超高齢社会へと移行し,変形性関節症をはじめとする高齢者の運動器疾患の治療や予防が喫緊の課題となり,ロコモーティブシンドローム(ロコモ)として国民の認知度を上げる運動を整形外科医は推進している.関節軟骨は血行のない組織のため,いったん損傷すると自己修復できないと言われており,軟骨欠損治療は永らく困難な課題であったが,近年の組織工学や再生医療の進歩によって,新たな治療法が確立されつつある.

この発表は,主に関節の軟骨についての再生医療についてでした.軟骨は損傷してしまうと再生することができず,従来の治療法は体の一部分から損傷部分に移植する方法がとられていました.この研究では,損傷した軟骨から一部を採取し,それを自家培養した軟骨を損傷部分に移植する再生医療を行いました.課題として,損傷した箇所に自家培養軟骨を定着させる必要がありました.その問題を,磁気による方法で解決しました.自家培養軟骨を磁気標識として,磁石を用いて非侵襲で損傷部分にターゲティングすることで,副作用も無く効果的な結果を得られました.再生できない,という点で角膜内皮と似ていることに興味を持ちました.磁気によるターゲティングは今後,非侵襲という点で重要な治療法になると考えました.
 

発表タイトル       : 角膜内皮再生医療
著者                  : 奥村 直毅
セッション名       : シンポジウム1
Abstruct            : 角膜内皮障害に対する治療法はDSAEKやDMEKといった角膜内皮移植の開発により2000年代初めより大きな進化を遂げた.一方で,複数の研究チームが従来の角膜移植を超えることを期待して,再生医療により治療法の開発に取り組んできた.我々は,培養した角膜内皮細胞をシート状ではなく,混濁液として前房内に注射するという方法での移植法(細胞注入療法)の開発に取り組んできた.細胞の移植技術だけでなく,ヒト角膜内皮細胞が通常の培養法ではほとんど増殖せず,容易に線維芽細胞様に形質転換して機能を喪失することも再生医療の実現化を阻む原因であった.しかし,まだ改良すべき余地はあるものの,現在では複数の新しい培養技術を組み合わせることで大量培養が可能になった.

この発表は,これまでとこれからの角膜内皮再生医療についてでした.角膜内皮細胞を培養するだけではなく,どのように移植するのか,輸送し使用するまでの保存方法など勉強することができました.この発表から,自分の研究の立ち位置がどこに当たるのかを再確認することができました.今後,培養角膜内皮細胞を用いた治療が実現されるにあたって,自分の研究の重要性も再認識することができました.
 

発表タイトル       : 自家培養口腔粘膜および角膜上皮細胞シートを用いた眼表面再建術 -普遍的治療を目指した挑戦-
著者                  : 大家 義則
セッション名       : シンポジウム1
Abstruct            : 角膜上皮幹細胞疲弊症は,角膜輪部に存在する角膜上皮幹細胞が化学外傷やスティーブンジョンソン症候群などの疾患によって消失し,混濁と血管を伴った異常結膜上皮が角膜上に侵入することで視力低下や羞明などの症状をきたす疾患である.この疾患に対して他家角膜移植が主に行われてきたが,多くの国においてドナー不足の状態であることから手術を行うことが難く,行えたとしても術後合併症である拒絶反応や感染性角膜炎により長期予後は極めて不良である.自家培養口腔粘膜および角膜上皮細胞シート移植はドナー不足と拒絶反応の問題を一気に解決する画期的な治療法であり,様々なグループが行ってきたこれまでの臨床研究により,その有効性および安全性がある程度確認されてきた.

この発表は, 口腔粘膜を採取し,自家培養した口腔粘膜を角膜上皮細胞シートとして用いた眼表面再建術についてでした.自家培養のため,拒絶反応やドナー不足などの課題を解決できます.角膜内皮再生と同様に,ドナー不足が解消されるという点で興味を持ちました.現在は治験を行っているため,将来的にこの治療法が普遍的になることは素晴らしいことだと思いました.
 
参考文献

  • 角膜カンファランス2018 http://www.congre.co.jp/cornea2018/