第16回ITSシンポジウム2018が、2018/12/13-2018/12/14の日程で同志社大学 今出川校地 室町キャンパスにて開催されました。
研究室から
・マインドフルな運転のためのfNIRSによる自動車運転中の脳活動状態の分析 藤原侑亮(M2)
がポスター発表しました。
学会参加報告書
報告者氏名 | 藤原侑亮 |
発表論文タイトル | マインドフルな運転のための fNIRSによる自動車運転中の脳活動状態の分析 |
発表論文英タイトル | An fNIRS analysis of brain activity pattern during simulated driving for promoting ‘mindful’ driving |
著者 | 藤原侑亮, 日和悟,佐藤健哉,廣安知之 |
主催 | 同志社大学,ITS Japan |
講演会名 | 第16回ITSシンポジウム2018(http://www.its-jp.org/event/its_symposium/16th2018/) |
会場 | 同志社大学 今出川校地 室町キャンパス |
開催日程 | 2018/12/13-2018/12/14 |
- 講演会の詳細
2018/12/13から2018/12/14にかけて,同志社大学今出川校地室町キャンパスにて開催されました第16回ITSシンポジウム2018に参加いたしました.この学会は,同志社大学,ITS Japanによって主催された学会で,文理双方の研究者と次世代を担う技術者を含め,最先端の自動運転技術や交通事故削減,環境負荷軽減に加え,道路インフラの維持・発展,社会制度の変革など様々な論点の議論を目的としています.私は13日から14日にかけて参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,日和先生が参加しました.
- 研究発表
- 発表概要
私は13日の午後の対話セッション2(14:00~15:50)に参加致しました.発表の形式はショットガンスライド発表とポスター発表で,発表時間はスライド発表が30秒,ポスター発表が60分となっておりました.今回の発表は,マインドフルな運転のためのfNIRSによる自動車運転中の脳活動状態の分析という題目で行いました.以下に抄録を記載致します.
抄録中身 マインドフルな運転とは,運転時において注意を向けるべき対象に適切に,意図的な注意を向けた状態で運転することである.これを実現するためには,ドライバが自身の注意状態を知覚し,歩行者や標識などの対象に適切に注意を向けることが必要である.本研究では,脳機能イメージング技術を用いたドライバの注意状態の評価について検討する.ドライビングシミュレータにおけるドライバの注意状態を行動データとfNIRSで計測された脳活動データを用いて評価を行った.結果から,行動データと脳活動データに相関が見られ,ドライバの注意状態を評価できる可能性を明らかにした. |
- 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は,脳活動を計測しているが運転支援システムにどのようにして実装するのかというものでした.この質問に対する私の回答は,実装としては2つの考えがあり,一つ目は脳活動を計測するチャンネルを減らし小型のfNIRSを用いることで状態評価が出来る可能性があるということです.二つ目は,車両情報であるステアリングと脳活動の関係をより明らかにすることで,ステアリングから脳活動を推定することで実装が可能であることが考えられるというものでした.
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は今回有意であると選ばれた脳機能ネットワークは全被験者で繋がっているのかというものでした.この質問に対して,今回は全被験者からfast10%_matrixとslow10%_matrixを選び検定しているので,個人ごとのmatrixについては検討出来ていません.なので,今後の検討事項ですと回答しました.
・質問内容3
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は,なぜ脳機能計測にfNIRSを用いているのかというものでした.この質問に対して,fNIRSはEEGと比較し,時間分解能は劣るがノイズに強いこと,機能的解析により状態をより厳密に評価できると考えたためと回答しました.
・質問内容4
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.こちらの質問は,運転の熟練具合で行動データに差が生じるのではというものでした.この質問に対して,本実験に参加した被験者は学生であり運転の熟練具合に関してはそれほど差がないのではないかと考えます.また,運転の熟練者や高齢者を対象とする場合,行動データに差が出ることは考えられますが本実験ではサブタスクにより,注意を分散させることが目的なのでこの実験設計は他の被験者でも有用である可能性が考えられると回答しました.
- 感想
今回の学会は,私にとって最後の学会発表の機会でした.今までに神経科学に関する学会には参加してことがありましたが,今回はドライバや自動車に関する学会でした.良かった点としては,今まで参加した学会の中では最もポスター発表が盛況でたくさんの質問を受けることが出来た点です.その中でも,マインドフル・ドライビング,脳活動を用いてドライバの状態推定をすることに多くの人から興味を持ってもらえた点は自分でも自信になりました.
反省すべき点としては,質疑応答での自分の回答が的確かつ端的でなかった点が挙げられます.また,自分の研究のおもしろいポイントを推したりなかったことも挙げられます.これが賞を取れなかった原因の一つだと思います.今回の反省を生かして,修士論文審査会での発表時に活かしていきたいと思います.
- 聴講
今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 「AIと倫理」の議論はなぜ噛み合わないのか? 著者 : 田口 聡志,江間 有沙,曽我部 完,林 秀弥 セッション名 : 企画セッション1 Abstract : 自動運転の進展が社会に及ぼす影響を考える上で,「AIのなす判断の倫理性をどう考えるか?」といった議論は避けて通れない問題である.そして,このようなAIの判断に関する倫理の問題については,様々な立場から多様な議論があるが,しかし,それらの多くは「平行線」で「噛み合っていない」ものが多い.一体なぜこのような倫理の議論は,すれ違うことが多いのだろうか.その理由としては,議論のスタート地点(前提条件)の違いや立場の違い,前提知識の違いなど様々なものが考えられるが,本セッションでは,技術者・法学者・哲学者など多様なパネリストとともに,そのすれ違いの理由を紐解いていくことで,AIと倫理の問題の突破口を探ることを目的とする. |
この発表は,AIの判断に関する倫理についての公開討論でした.近年,発展の著しいAIについて様々な専門家の意見を聞いて,言葉の定義とは難しいものだなと感じました.ある業界での定義と他の業界での定義が同じ言葉でも異なることは自動運転でAIを活用するルールを定める上で障害になるのではと思いました.加えて,個人的にはAIによる判断の機会が増えることであらゆる機会が奪われる可能性があるという話が興味深かったです.
発表タイトル : 自動運転がもたらす社会の変革 著者 : 三好 博昭,糸久 正人,岩本 晃一,紀伊 雅敦,坂井 康一 セッション名 : 企画セッション2 Abstract :自動運転のもたらす社会へのインパクトについては,交通事故の削減,ドライバ不足への対応,モビリティのサービス化(Mobility as a Service)といったように,モビリティ領域での直接的な影響が議論される場合が多い.しかし,自動運転は,こうしたモビリティの変化を通じて,人々の生活のスタイルや都市の構造等にも,間接的に大きな影響を及ぼすものと考えられる.また,自動運転車の生産や稼働に必要なモジュールや情報サービスが,これまでの自動車とは異なる多様な主体から提供される可能性を踏まえると,自動運転は,自動車産業等の産業組織やビジネスエコシステム,さらには,日本の産業構造にも大きなインパクトを与えることになるだろう.このセッションでは,自動運転技術の普及がもたらすこうした社会の変革を議論する. |
この発表は,自動運転のもたらす社会へのインパクトに関するディスカッションで自動運転が産業構造に与える影響が主なテーマでした.現在自動車産業は変革期であり,CASEというコンセプトが掲げられています.今後,10~20年で電気自動車化,人工知能の搭載,所有からシェアリングに変わっていくことから部品メーカーがどこまで対応できるのか,どのくらいの企業が生き残ることが出来るのかが気になりました.
発表タイトル : モビリティーサービスによる社会変革 著者 : 鈴木 裕人 セッション名 : 基調講演 Abstract : 現在,自動車産業は100年に1度の大変革期にある.世界の自動車産業は今後,どのように進化するのか.進化のけん引役になるのは,「自動運転」と「次世代型モビリティーサービス」である.将来の無人運転を視野に入れた自動運転技術と,カーシェアリングやライドシェアリングなどの次世代型モビリティーサービスが融合することで,自動車産業の姿は大きく変わりうる.本講演では,既存の公共交通サービスの抱える課題を踏まえて,自動運転技術と次世代モビリティーサービスに焦点を当て,各国における前提条件をできる限り多面的に考察し,その違いを踏まえた形でそれらの普及シナリオの描出と既存産業へのインパクトを評価する. |
この発表は,変化が著しい自動車業界においてビジネスモデルにどのような影響を与えるかというものでした.私は自動車業界の変革とは自動車業界だけのものだと思っていましたが,交通だけでなく,都市のスマートシティ化やエネルギー関係など幅広く影響を与えることが考えられているころから,来年から自動車業界で働いていく私としては企業のビジネス領域や今後の方針について詳しく学びたいと感じました.
参考文献
- 第16回ITSシンポジウム2018(http://www.its-jp.org/event/its_symposium/16th2018/)