第15回進化計算学会研究会が2019年3月7-8日の日程で横浜国立大学(神奈川)にて開催されました。
研究室からは下記の2名の学生が発表しました。
- Double Niched Evolutionary Algorithm (DNEA)のナップサック問題への適用と検討 大澤僚也(M1)
- 田中(B4)
学会参加報告書
報告者氏名 |
大澤僚也 |
発表論文タイトル | Double Niched Evolutionary Algorithm (DNEA)のナップサック問題への適用と検討 |
発表論文英タイトル | Application and study of Double Niched Evolutionary Algorithm (DNEA) for knapsack problem |
著者 | 大澤僚也, 日和悟, 廣安知之 |
主催 | 進化計算学会 |
講演会名 | 第15回進化計算学会研究会 |
会場 | 横浜国立大学 理工学部講義棟A1階 106教室 |
開催日程 | 2019/03/07〜2019/03/08 |
- 講演会の詳細
2019/03/07〜2019/03/08に横浜国立大学 理工学部講義棟A1階 106教室にて開催されました第15回進化計算学会研究会に参加いたしました.進化計算学会研究会は,最先端の質の高い研究についてじっくりと議論するとともに,次世代を担う若手の研究者(学生を含む)のための研究発表の機会を提供することを目的に開催されています.
本研究室からは廣安先生と私,M0の田中が参加いたしました.
- 研究発表
- 発表概要
私は8日の10時15分より開催されたセッションの「ポスターセッション3」に参加いたしました.発表の形式はフラッシュートーク2分を含めた1時間半のポスター発表となっておりました.
以下に発表内容の要約を記載致します.
マルチモーダル最適化は現実の世界の問題としてよく見られる。本発表では,最近Liu, Ishibuchi, Nojimaらによって提案されたdouble niched evolutionary algorithm (DNEA) が,多目的0/1ナップサック問題の解獲得に及ぼす影響を,従来手法との比較によって検討する.また,実問題への影響をfMRIデータに対する重要な脳機能ネットワーク抽出問題へ適用することによって検討する. |
- 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
決定変数空間の多様性を確認するのであれば決定変数のNichingだけで良いのではないかという質問を頂きました.この質問に対し,目的関数空間の多様性の維持による広範な解の獲得が必要であるため,Double Nichedである必要があると回答しました.しかし,目的関数空間のみ,決定変数空間のみでNichingを行った結果をとの比較は確かに行うべきだと感じました.
・質問内容2
決定変数空間を評価するのにHyper volumeでは意味がないのではないかという質問をいただきました.この質問に対し,目的関数空間のHyper volumeを確認した上で,決定変数空間を散布図において比較した結果も議論しているので,両方の空間で検討して,比較した結果を元に次の項目の議論をするために載せていると答えました.
・質問内容3
設定しているDNEAのパラメータはどうのようにして決定しているのかという質問をいただきました.この質問に対し,目的関数空間のパラメータは,事前に行った比較実験で目的関数空間における拡がりが最も良い成績だったものを利用していると答えました.
・質問内容4
パラメータを問題に最適なものを適宜選択する適応型にすることはできないのかという質問をいただきました.この質問に対し,DNEAの元論文でもパラメータ適応型のDNEAの考案が今後の課題として述べられていたと
- 感想
今回の発表は1年ぶりの外部での発表でした.さらに進化計算学会という,分野の専門家が集まった学会での発表は初めてでした.フラッシュトークを含め1時間30分のポスター発表を行いました.発表の時間中は絶え間なく聴講に来てくださる方々がいて,あっという間に時間が経過したような感覚でした.来てくださっている先生方の多くは進化計算のエキスパートのため,次にどのような確認したら良いか,実問題に応用するための意見交換など多くの議論をポスターセッションの時間外でも交わすことができて非常に有意義な研究会であったと思います.
- 聴講
今回の講演会では,下記の4件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 距離ベース排他戦略導入によるニッチ花火アルゴリズム 著者 : 余俊,高木英行 セッション名 : ポスターセッション1 Abstruct : なし |
この発表では,花火アルゴリズムというこの研究会では唯一のアルゴリズムに関する性能評価を行っていました.花火アルゴリズムとは,花火が打ち上げられた際に花火の炸裂点を中心にスパークを発生する機構を模倣したアルゴリズムで,炸裂点を親個体,スパークする範囲内にランダムで生成された個体を子個体として世代の更新を行っていくものでした.しかし親個体の数と比較してスパーク個体の数が非常に多く,関数評価回数が非常に無駄になっているような気がしました.この発表では,その無駄を少しでもなくすために,スパーク範囲が他の親個体と重複する範囲は探索しないようなニッチングを行っていました.しかし,適応度の評価が数値で行われていなかったため,性能が今ひとつわかりにく発表になっていてもったいないとも感じました.しかし,新たなアルゴリズムに対して様々な提案をしていく発表は聴いていて非常に楽しかったと思いました.
発表タイトル :Differential Evolutionを用いたAdversarial Examplesの生成に関する基礎的検討 著者 :串田淳一,原 章,高濱 徹行 セッション名 : ポスターセッション2 Abstruct : なし |
この発表は学生による発表ではなく,広島市立大学の串田先生によるポスターセッションでした.adversarial examplesとは機械学習モデルに誤分類をさせる人工的な画像であり,少ないpixelの変化を画像データに反映させることで,機械学習モデルに誤分類させるのを目的としていた.実際に結果として猫の画像の全体のRGB値をわずかに変化させ,1ピクセルだけ全く別の値に変化させた画像で機械学習モデルに誤認識させることに成功していた.しかし,発表中に質問にあったように進化計算手法にDEを用いる必要性は存在しないようで,今後よりこのadversarial example画像生成に適した進化計算手法を調査して広範な画像に対応できるようになると,GANを中心とした画像生成手法の新たな切り口として活躍できそうであると感じました.
発表タイトル :リンケージ同定を用いた多目的進化計算手法のコストから見た性能検証 著者 :泉谷光祐,棟朝雅晴 セッション名 : 口頭セッション1 Abstruct : なし |
この発表ではリンケージ同定を行った際の計算コストについての議論が中心でした.比較対象としてMOEA/DとMOEA/Dにリンケージ同定を導入したMOEA/D-LIEM,MOEA/DにCMA-ESの解生成手法を導入したMOEA/D-CMAを用いていました.結果としてDTLZ問題のように比較的簡単な問題では,リンケージ同定を行うことなく最適化をする方が評価回数的には優れているが,パレート最適解を獲得するランタイムはリンケージ同定を行った方が早く終わるという結論でした.リンケージ同定は目的関数ごとに評価回数を消費してしまうため,多目的・多数目的最適化においては関数評価回数で比較すると不利になってしまうことがよくわかる発表だったと思います.しかし,ランタイムによる比較で現実の実行時間では勝るという切り口は面白いと思ったと同時に,各自の計算環境に左右される比較になってしまうので,ベンチマーク用の環境も学会として定義があるとより比較しやすいのかと感じました.
発表タイトル :初期の探索を効率化した実数値遺伝的アルゴリズム 著者 :西阪和貴,飯間等 セッション名 : ポスターセッション4 Abstruct : なし |
この発表では,初期の探索を効率化するために,初期個体からエリートのみを一定個数抜き出して,それらのみで個体群を作成し,ある一定回数関数評価を行って,より良い個体を獲得しよういう試みがされていました.解集団を分割することで,より早期に最適解を獲得する試みは非常に面白いと感じました.しかし,解の多様性は個体数が少ないことからも,見込めないのではないかと思いました.実際に評価実験結果でも,多峰性問題においては性能に大きな差が現れていないので,局所解から脱出するアプローチを工夫することで,初期個体生成のアプローチとしては良いものへ適応できるのではないのかと思いました.
参考文献
“第15回進化計算学会研究会”, http://www.jpnsec.org/symposium201901.html