9月20日(金)21日(土)に九州大学伊都キャンパスにて生体医工学シンポジウム2013が開催されました.
本研究室からは廣安教授,西村祐二(M1),大久保祐希(M1),吉田倫也(M1),中村友香(M1),後藤真櫻(M1)の6名が参加しました.
西村,大久保,吉田,中村,後藤は約2分間のショートプレゼンテーションと1時間のポスターによる発表を行いました.
発表題目は以下の通りです.
・「MapReduceによるDICOM画像からの特徴量高速抽出システム」
西村祐二,山本詩子,廣安知之
・「肘関節屈曲運動における左右識別のための脳波を用いた特徴量の検討」
大久保祐希,山本詩子,廣安知之
・「学習データの選択と識別による医用データの3クラス分類手法の検討」
吉田倫也,大堀裕一,山本詩子,廣安知之
・「協調作業による相互作用が脳活動に及ぼす影響のfNIRSを用いた基礎的な検討」
後藤真櫻,山本詩子,横内久猛,廣安知之
・「ICAと加速度センサを用いたfNIRSデータに対する体動除去手法の検討」
中村友香,山本詩子,廣安知之
生体医工学シンポジウムは生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的としています.
西村は9月20日(金)に,大久保,吉田,後藤,中村は9月21日(土)に発表いたしました.
全員が違うセッションで参加しましたが,ショートプレゼンテーション・ポスターともに無事に発表を終えることができました。
本シンポジウムでの演題のテーマは幅広く,最初から最後まで興味深く発表を聞くことができました.
ポスター発表では,1時間の中で,興味のある発表を全て周りきることができませんでした.
私自身は初めての学会であったこともあり,ショートプレゼンテーションもポスターもとても緊張しました.
2分という短い時間の中で聴講者に「聞きたい」と思わせる研究紹介をすること,そしてポスターでは来訪者との対話をしながら相手の知りたい情報を簡潔に伝えることがいかに難しいのかを体験することができました.
ポスター発表では,沢山の方々に研究を紹介し,そして自分の研究について議論を交わすことができ,大変有意義な時間を過ごすことができました.
多くのアドバイスや質問をいただき,自分の研究の課題点を知ることができました.
大変貴重な経験を積むことができたと感じています.
今回いただいたアドバイスを生かして,今後の研究に励んでいきたいと思います.
最後になりましたが,学会参加にあたり,先生方をはじめ,研究室の皆様には大変お世話になりました.
この場をお借りして,厚く御礼申し上げます.
ありがとうございました.
【文責:M1後藤】
学会参加報告書
報告者氏名 | 大久保祐希 |
発表論文タイトル | 肘関節屈曲運動における左右識別のための脳波を用いた特徴量の検討 |
発表論文英タイトル | Feature extraction for right-left discrimination in motor imagery using electroencephalogram |
著者 | 大久保祐希, 山本詩子, 廣安知之 |
主催 | 九州大学 |
講演会名 | 生体医工学シンポジウム2013 |
会場 | 九州大学伊都キャンパス |
開催日程 | 2013/09/20 – 2013/09/21 |
1. 講演会の詳細
2013/09/20から2013/09/21にかけて,九州大学の伊都キャンパスにて開催されました生体医工学シンポジウム20131) に参加いたしました.この生体医工学シンポジウム2013は,九州大学によって主催された研究会で,学生と教員が参加して,研究室の活性化を図るための議論を行い,各種研究室行事を円滑に進めることを目的に開催されています.
私は20,21日参加いたしました.本研究室からは他に後藤,中村,西村,吉田が参加しました.また,廣安先生が私達のショートプレゼンやポスター発表を聴きに来られました.
本シンポジウムは,生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的としています.今回のシンポジウムの分野は生体工学全般で,例として光計測,脳波解析,生体システム,バイオメカニクス,医療ICTなどが挙げられます.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は21日の午前のセッション「脳波解析,脳波/脳磁図計測」に参加いたしました.発表の形式は2分のショートプレゼンと1時間のポスター発表でした.
今回の発表は,運動イメージを行ったときの脳波から左右識別を行い,提案手法と既存手法の比較を行った.以下に抄録を記載致します.
四肢麻痺患者における生活の質の向上を目的として,BMI (Brain Machine Interface)が注目されている.BMIの実現において識別に用いる特徴量が重要な要因の一つであると考えられる.今回は,EEGを用いて運動に関係する脳波を取得し,左右識別を行う際に使用される特徴量の抽出手法を検討した. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
九州大学の荒井さんからの質問です.こちらの質問は提案手法と既存手法の違いは何であるのかというものでした.この質問に対して私は,既存手法では脳波の解析区間は1秒であるが,提案手法では0.5秒と短縮した点であることを述べました.
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいましたが東京大学の理工学部の方だと思います.こちらの質問は,提案手法において解析開始時間の平均と分散は何であるのかというものでした.この質問に対して,現在その数値は算出していないので,後ほど算出してみますと回答しました.
2.3. 感想
初めての学会参加であったため,ポスターのレイアウトやショートプレゼンの構成を考えるのにとても苦労しました.また,私とは違う分野の研究をしている方に理解してもらうために,簡略的に説明することの重要性を学びました.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 運動想起時のアルファ波帯域脳波を用いたBCI におけるタスクの検討著者 :綱島 駿介セッション名 : 脳波解析・脳波/脳磁図計測Abstruct :アルファ波帯域脳波を用いたBCI(Brain computer interface)に適した運動想起タスクについて検討した.被験者に両手の掌握運動想起タスクを課すことで,2値の意思を検出するBCIシステムを構築した.運動想起に伴って振幅が抑制されるアルファ波帯域脳波から特徴量を算出し,意思情報を推定した.運動想起タスクとして,一定時間で1度だけ両手の掌握運動想起する場合と,複数回連続して運動想起する場合を比較した.その結果,全被験者に共通して,1回だけ想起するタスクに比べ,複数回連続で想起するタスクの方が確度が高くなり,平均で7.8%向上した. |
この発表は被験者に提示する運動想起タスクの検討を行っている.識別率の向上を目指すには課題の見直しもする必要があると考えられる.
発表タイトル :パタンスペクトルを用いた睡眠脳波の形状解析著者 : 溝上佳志朗セッション名 : 生体計測,生体信号処理-1Abstruct : 睡眠脳波の解析には,主に周波数解析や形状解析が用いられるが,周波数解析は全体的傾向を見るのに適しているものの,個々の要素派の解析は困難であり,形状解析法は個々の要素波の解析が可能であるものの,抽出するパラメータの選択に任意性が残るなどの問題を有している.そこで本稿では,非線形フィルタの一種であるモルフォロジカルフィルタを利用して得られる局所パタンスペクトルから汎用的に形状を解析する手法を検討した.その結果,局所パタンスペクトルから抽出した特徴より,形状の評価が可能なことを明らかにした.また,シータ波やアルファ波,高振幅徐波等の背景波と聴覚誘発K-complex 波の形状解析に本手法を適用した結果,睡眠脳波の汎用的形状解析が可能なことを確認した |
この発表では,睡眠時の脳波の形状を抽出することで睡眠の評価を行う.これは従来の周波数解析とは異なり,脳波の形状の特徴を抽出し評価している点において新規性があると考えられる.
発表タイトル :ERPを指標とした食品評価に関する実験的検討-好み評価のための課題について(その3)-著者 : 田中元志,菅一将,新山喜嗣セッション名 :脳波解析・脳波/脳磁図計測
Abstruct :好みの程度が不明な場合に対応できる評価課題の一検討として,3段階の評価語「とても好き,次に好き,その他」を用い,「とても好き,次に好き」の評価時にボタンを押す課題を与えたときの事象関連電位(ERP)を測定した。「とても好き」の評価時のP300面積が最も大きく検出できた。また,「その他」と評価された食品においてP300面積が大きく検出される場合が見られたが,ボタン押しの有無で識別できた。 |
この発表では,寿司の画像を提示し,好みを脳波から評価する試みをしている.この時ERPという現象を利用しているが,被験者によりα波の影響が大きくなり,うまく評価ができないという問題点があることを聞いた.
発表タイトル :第一運動野におけるrTMSが誘発する刺激効果と刺激条件の関係著者 :野嶋和久,片山喜規,伊良皆啓治セッション名 :生体計測,生体信号処理-1
Abstruct :脳内に誘導した渦電流により,繰り返し神経を刺激する反復経頭蓋磁気刺激(rTMS: repetitiveTranscranial Magnetic Stimulation)は,脳の興奮性の変化を誘発することができることから,様々な疾患の治療に用いられている.しかしながら,rTMS の臨床応用に関する報告では,疾患に対する効果や有効性は確認されているものの,客観的な刺激条件設定が行われていないという問題がある.そこで,rTMS により誘導される大脳皮質興奮特性の変化と刺激条件の関係を調べることで刺激条件設定に役立てることを試みた.第一次運動野に刺激条件の異なるrTMS を与え,運動誘発電位(MEP:motor evoked potential)を調べることで,興奮性の変化を評価した.結果,刺激の強度が強い程,刺激の回数が多い程,MEP の振幅が減少することが分かった. |
この発表では,運動野付近に頭皮上から磁気刺激を与えることで,運動麻痺の患者の運動機能を回復するという研究に基づいている.しかし,現状では医者が経験的に磁気刺激を与えるため,定量的な評価ができないという問題点があると聞いた.
参考文献
1) 生体医工学シンポジウム2013,http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html
学会参加報告書
報告者氏名 | 中村友香 |
発表論文タイトル | ICAと加速度センサを用いたfNIRSデータに対する体動除去手法の検討 |
発表論文英タイトル | Study of Method for Removing Motion Artifacts from fNIRS Data using ICA and an Acceleration Sensor |
著者 | 中村友香,山本詩子,廣安知之 |
主催 | 一般社団法人 日本生体医工学会 九州支部,関西支部,関東支部,北海道支部,甲信越支部 |
講演会名 | 生体医工学シンポジウム2013 |
会場 | 九州大学 伊都キャンパス |
開催日程 | 2013/09/20-2013/09/21 |
1. 講演会の詳細
2013/09/20から2013/09/21にかけて,九州大学伊都キャンパスにて開催されました生体医工学シンポジウム2013に参加致しました.この生体医工学シンポジウム2013は,一般社団法人 日本生体医工学会 九州支部,関西支部,関東支部,北海道支部,甲信越支部(http://jsmbe.org/)によって主催されたシンポジウムで,生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的に開催されています.
私は20,21日ともに参加致しました.本研究室からは他に廣安先生,後藤,西村,大久保,吉田が参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は21日の午後のセッション4-3 「生体計測,生体信号処理-2」に参加致しました.発表の形式はショートプレゼンテーション2分,1時間のポスター発表となっておりました.
今回の発表は,時間遅れを考慮したICAと加速度センサを用いた体動除去手法を用いることで,体動除去の精度が向上した,ICAに適用するfNIRSデータのwindow幅を考慮する必要があるというものです.以下に抄録を記載致します.
fNIRSデータの体動除去手法のひとつとして,ICAを用いた手法が考えられる.この手法では,fNIRSデータをICAによって複数の成分に分離し,加速度センサデータと相関係数を用いて比較することで,体動成分の特定・除去を行う.しかし,脳血流の影響によりfNIRSデータは,加速度センサデータと比べ,時間的に遅れるため,相関が減少し体動成分の特定が困難になる.本稿ではfNIRSデータの時間遅れを考慮したICAを用いた体動除去手法を提案し,その有効性を検討する.提案手法では,ICAに用いるfNIRSデータの始点時間をずらしながらICAを複数回実行し,その中で最も相関が高かった結果を採用し,加速度センサデータと比較する.時間遅れを考慮した場合と,考慮しなかった場合を比較することで,提案手法の有効性を検討した.その結果,時間遅れを考慮した提案手法の方が体動除去の精度が向上した. |
2.2. 質疑応答
今回のポスター発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
兵庫県立大学の方の質問です.質問は,①足や腕に加速度センサを設置して,動かした際のfNIRSデータはどのようになり,体動成分は除去できるのか,②加速度はすべての部位で同じとなるのか,というものでした.この質問に対して,①現在,足と腕を動かしたデータをとっていないため,詳細はわからないが,除去できるはずである,②加速度はすべての部位で同じであると仮定している,と回答しました.
・質問内容2
質問は,①遅れは積み重なっていかないのか,②体動がなくても成分は除去されるのか,③windowが重なる部分はどうするのか,というものでした.この質問に対して,①遅れは積み重ならないと考えている,②現在のプログラムでは必ず一つの成分を除去するが,加速度センサデータと比較しているので問題はないと考えている,今後,ある閾値以上の加速度が生じたときにのみ除去をするなど検討する必要がある,③現在は一部分しか除去していないため,今後,windowを少しずつずらし,加算平均していくような処理の検討が必要である,と回答しました.
・質問内容3
九州大学の方の質問です.質問は,①加速度センサの設置位置はどこか,②fNIRSと加速度センサの同期はどのようにとっているのか,③ゆらぎ成分を除去する方法はないのか,④分離信号と加速度データの比較の仕方はどのようにしているのか,というものでした.この質問に対して,①前頭部付近に設置している,本実験では前頭部の血流の体動成分を除去したかったため,前頭部に設置したと回答すると,他の部位にも同時に複数の加速度センサを設置したらどうなるのかと質問をいただきました.また,②同時に開始ボタンを押している,今回のデータでの遅れ時間は3.2秒であるので,ボタンを押す際の遅れではないと考えている,と回答すると,EEGで同様にICAと加速度センサを用いた体動除去を行われている方も同じようにボタンを同時に押されているので何か良い方法を探していると言われていました.また,③本提案手法ではゆらぎは除去できない,④比較は相関係数を用いて最も高い成分一つを除去していると回答すると,EEGで同様の研究をされている方は相関係数と,t検定を用いていると教えていただきました.
・質問内容4
質問は,何が独立と仮定しているのか,というものでした.この質問に対して,脳活動による脳血流変化と体動による脳血流変化が独立と仮定している,と回答しました.
・質問内容5
北海道大学の方の質問です.質問は,①体動は脳なのか,皮膚なのか,②体動除去すると何に使えるのか,というものでした.この質問に対して,①体動は物理的な動きによる血流変化である,②今まで使用できなかった体動の含まれたデータを使用することができる,体動の多い小さい子供などにfNIRSを用いることができる,日常の動作中にfNIRSを用いた計測を行うことができる,と回答しました.
・質問内容6
質問は,活性しているfNIRSデータでの体動除去結果はないのか,というものでした.この質問に対して,予備資料を用いながら立体視時の体動除去結果について説明しました.
2.3. 感想
ポスター発表は初めてでしたが,オーラルでの発表とは違い,聞きにきていただいた方と直接たくさんお話しすることができたのでとても勉強になりました.質問では基礎的な質問や想定質問も多くいただきました.また,準備していた予備資料のデータを用いて説明したりしたので,しっかりと準備していくことで聞いていただく方とより多くディスカッションすることができると感じました.一時間では短いと思うほどたくさんの方に興味を持って聞いていただいてとてもうれしかったです.他の様々な分野のポスター発表も聞くことができ,九州大学の似た研究をされている方と話せる機会もあり,とても有意義で充実した時間を過ごすことができました.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の3件の発表を聴講しました.
発表タイトル :健常児童における前腕の回内回外運動の性差 著者 : 金子美樹,奥井大志,東圭太,野口雄貴,片山喜規,伊良皆啓治 セッション名 :1-3 運動機能,無拘束計測-1 Abstruct :今回,我々は,注意欠陥多動性障害において,女児よりも男児に多くみられるという傾向に着目した.そこで,これまで測定を行ってきた回内回外運動と性差の関係を検討するため,健常児童200名(女児:107名,男児:93名)の運動を測定し,健常児童の回内回外運動における男女差を比較した.測定の結果,健常児童において,男児のスコアが女児のスコアを下回る傾向がみられた.今後,健常児童と注意欠陥障害児童の男女別の比較を行い,より正確な評価基準の確立を目指す. |
この研究では,小学生の前腕回内回外運動の性差について検討されていました.三軸加速度,角速度センサを用い,テンポの追従性や両手の協調性,姿勢の安定性をスコア化されていました.両腕に付けた4つのセンサから様々なことがわかるのだなと思いました.被験者の多さと,10秒間という短いタスク時間で有意な差が表れることに驚きました.男女間でのスコアに差があること,その差が年齢に伴って狭まってくることなどとても興味深かったです.脳血流や脳波などを見なくても簡単に評価しようという研究でした.
発表タイトル : スマートフォン利用による視覚障がい者のための衣類の色および模様認識システム 著者 : 三宅正夫,眞鍋佳嗣,浦西友樹,井村誠孝,黒田嘉宏,大城理 Abstruct :視覚障がい者の方々への聴き取り調査によると,外出時の移動の安全確保や道案内などのほか,自らの衣服の色や模様を知りたいという要望が大変強い.自ら衣服は見えなくとも他者からどのように見られているか大変気になるということである.視覚障がい者の自立生活と社会参加を促すには,精神的な支援として,自ら衣服を適切に選ぶことができるシステムが必要である.これまでに著者らが開発した視覚障がい者のための色および模様の認識システム(USB カメラ利用システム)は,評価実験の結果,良好な結果が得られた.また,全盲の方による評価実験により,さまざまな要望を知ることができた.そこで本研究では,さらにこのシステムを手軽で使いやすくするために,スマートフォンの活用を考える. 色の認識で重要な点は光源である.従来はリングライトを内部に設置した覆い付きカメラシステムを用いていたが,これに加えて、覆いを用いない環境光照明システムの2 通りの手法を検討する.色の補正の精度とシステムの形態,利用法を検討し,今後の実用化への方向付けを行う. |
この研究では,iPhoneを用いて,衣類の色と模様を音声出力するシステムを構築されていました.色は最大四色まで認識でき,「あざやかな」などの形容詞もあり,人種が異なっても大丈夫な彩度と明度を一つの言葉で表現できる色表現がされていました.覆い付きのカメラでなく,普段生活している環境でも基準色と同時に写すことによって補正し,正しい色を認識されており,日常的にも十分に使用できるものだと感じました.色よりも模様の認識率の方が高いのが少し意外でした.音声は,サーバに情報を送って人工音声とするそうです.アンドロイドでもプログラムさえできれば使えるそうなので,ぜひ作っていただきたいなと思いました.
発表タイトル :平均基準導出法と双極導出法を組み合わせた脳波スパイク波形の波及範囲決定著者 :木下輝,杉剛直セッション名 : 3-1 脳波解析,脳波/脳磁図計測
Abstruct :本研究では,スパイク波形の波及部位判定を目的として,スパイク自動検出法の構築を行った.脳波判読を行うにあたって,スパイク焦点の特定だけではなく,臨床においててんかん等の病状の進行具合を知る必要がある.この点を重視して,各計算に使うスパイク自動検出法の判定パラメータの計算,判定アルゴリズムを構築した.本研究によって,脳波自動判読システムは,スパイク焦点の検出に加えて,スパイクの出現範囲に関する情報を提供できるようになり,臨床での有用性が大きく向上した. |
この研究では,平均基準導出法でてんかんの焦点部位を抽出し,双極導出法で波及部位を決定されていました.てんかん患者は,スパイク波形が常に出ていますが,波及部位で症状が変わるそうです.20分という長い時間のデータですが,分割して処理されているのではやいそうです.スパイク波形のピークや前後のピーク,幅などのパラメータを考慮されていました.また,他にも現在行われている発達障害時の集中度合いを評価するためのNIRS,EEG,カメラ,加速度,心電図の無線同時計測についても教えていただきました.日常的な動作をNIRSで計測すると,やはり体動が問題となってくるのだなと感じました.
参考文献
1) 生体医工学シンポジウム2013, http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html
学会参加報告書
報告者氏名 | 西村祐二 |
発表論文タイトル | MapReduceによる特徴量高速抽出システム |
発表論文英タイトル | Feature values fast extraction system by MapReduce |
著者 | 西村祐二, 山本詩子, 廣安知之 |
主催 | 伊良皆啓治 |
講演会名 | 生体医工学シンポジウム2013 |
会場 | 九州大学 伊都キャンパス |
開催日程 | 2013/09/20-2013/09/21 |
1. 講演会の詳細
2013年9月20日から2013年9月21日にかけて,九州大学伊都キャンパスにて開催されました生体医工学シンポジウム2013(http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html)に参加いたしました.
このシンポジウムは生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的としています.
私は20日に発表し,21日は公聴いたしました.本研究室からは他に廣安先生,中村,後藤,大久保,吉田が参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は20日午後のセッション「医療システム、医療 ICT、視聴覚障害者支援」に参加いたしました.発表の形式は2分30秒のショートプレゼンテーションと1時間のポスター発表となっておりました.
今回の発表はポスター発表です.以下に抄録を記載致します.
本稿では,MapReduceを利用して高速に特徴量を抽出するシステムの提案を行う.本提案システムではバックグラウンドにてDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)画像の特徴量を抽出し,着目している病気や診断以外の情報を取得する.また,MapReduceを利用することにより高速処理を行う.評価実験では,提案システムの有用性を確認するために,単一マシンとの画像処理に要する時間の比較を行った.実験の結果,単一マシンに比べ処理時間が短縮されたことが確認された.さらに,提案システムを自作DICOMビューアと連動するように実装し,実環境で利用可能か検証を行った. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
東京大学大学院工学系研究科バイオエンジニアリング専攻中島研究室所属の道家健仁さんからの質問です.こちらの質問は私が作成したDICOMビューアはどうやって作成したのか,どういう知識をつければ作成できるようになるのか?というものでした.この質問に対する私の回答はwebサイトを作成する知識とサーバを構築する知識が必要と返答しました.
・質問内容2
パナソニックヘルスケア,技術推進センター所属の平中弘一さんからの質問です.提案システムを説明してほしい,このシステムを構築しているマシンのスペックは?というものでした.この質問に対する私の回答は,提案システムの流れをムービーを用いて難しい用語は使わずに説明した.また,スペックはCPU2.8GHzのものを使用していると返答しました.
2.3. 感想
ほとんどの人が他分野の研究をなされている人ばかり,とても勉強になる学会であった.また,通常知り合うことのできない他大学や企業の人達と知り合うことができた.発表に関してはMapReduceとはなんですか?など簡単な質問が大半でアドバイスなどはあまりもらえなかった.今回,提案システムのムービーを用意していたので,そのムービーを見せながら説明を行った.やはり言葉で説明するよりも映像をみてもらうほうがよく理解してらえるなと感じた.ipadなどのタブレット端末は学会には必須だなと思った.多くの他分野の研究を聞くことができたのでほんと勉強になる学会だった.来年も是非参加したい.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 画像処理における学習・解析ソフトウェアの開発著者 : 高橋 潤子,竹村 裕,桑田 健セッション名 : 画像処理 Abstruct :現在,画像処理による特徴量の学習・解析は様々な分野で用いられている.これらは利用場面により抽出する特徴量や画像サイズが異なるため,それぞれに対応した学習・解析のソフトウェアを用いなければならない.そこで本研究では,画像処理による学習データの作成,識別器の最適化,学習データを用いた未知画像の判別評価を可能とするソフトウェアを開発した.学習する特徴量や画像サイズは各種対応したプラグインを追加することで幅広く対応が可能である.今回はデジタル化した病理スライド画像(.ndpi形式)に対応したプラグインを作成・追加し,実際に学習データを作成,識別器の設計,未知データの評価および結果の画像表示を検証した.病理スライド画像は解像度が非常に高く15M pixelから15G pixel 程度あるため,このプラグインでは判別箇所を適宜指定した画像サイズに切り出した上で学習・判別を行った. |
この発表は画像処理に必要な学習データを自動で生成を行うシステムでした.また,このシステムはプラグインの追加に対応していて,ユーザの求める画像を取得できるというところがとても素晴らしいシステムだと思います.特に布川さんなどの学習画像を利用する研究への応用が可能であると感じられました.
発表タイトル :骨折治療メカニズムを促進させるRectangle Double Lag-screw Systemの有用性評価著者 : 松本 保朗,村山 伸樹,水田 博志,日垣 秀彦,中西 義孝セッション名 : バイオメカニクス Abstruct :従来の髄内釘はチタン合金により製作されているが,これが要因でストレスシールディング状態の誘発や術中および術後における大腿骨遠位端骨折の発生等の合併症を引き起こすことが危惧される.また骨頭に対する回旋抑制性についての議論が不十分であることも危険視される.我々の研究グループでは新たなデザインの髄内釘であるRectangle Double Lag-screw Systemを提案している.この新たなデザインの髄内釘の形状の有用性を調査するために髄内釘を挿入した骨モデルを単軸方向への圧縮を行い非接触式3Dスキャナ等を用いて評価を行った.また同時並行で圧縮試験と同様の拘束条件のもとでFEM解析モデルを構築し,FEM解析も実施し,Rectangle Double Lag-screw Systemの有用性について多角的に検討した. |
この発表では髄内針素材に着目した発表でした.これは従来とは異なり,部分ごとにより針の強度を変更することができるシステムを提案しています.これのすごいところは関節部分など強度が必要な部分は固く,骨と針との摩擦が発生して合併症が発生する部分は強度を調節して合併症を引き起こさないようにすることが可能というところです.私の親の足が悪く人工関節にしようかという話があったのでとても興味深い話でした.
参考文献
1) 生体医工学シンポジウム2013,http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html
学会参加報告書
報告者氏名 | 吉田倫也 |
発表論文タイトル | 学習データの選択と識別による医用データの3クラス分類手法の検討 |
発表論文英タイトル | Study of three-classification methods of medical data with the identification and selection of learning data |
著者 | 吉田 倫也,大堀 裕一,山本 詩子,廣安 知之 |
主催 | 一般社団法人 生体医工学会 |
講演会名 | 生体医工学シンポジウム2013 |
会場 | 九州大学 伊都キャンパス |
開催日程 | 2013/09/20~2013/09/21 |
1. 講演会の詳細
2013/09/20から2013/09/21にかけて,福岡県九州大学伊都キャンパスにて開催されました生体医工学シンポジウム20131)に参加いたしました.この生体医工学シンポジウム2013は,一般社団法人生体医工学会によって主催された学会で, 生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的に開催されています.
私は20,21日の両日に参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,後藤,中村,大久保,西村が参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は21日の午前のセッション「病理画像」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,約2分の講演とポスター発表の1時間となっておりました.
今回の発表は,「学習データの選択と識別による医用データの3クラス分類手法の検討」という題目で発表を行いました.以下に抄録を記載いたします.
本報告ではSupport Vector Machine(SVM)を用いて,病理データから得る特徴量を利用し3クラス(良性・悪性・判断不可の領域)に分類を行っている.これまでの手法では特徴量の選択に留意しなければ判断不可の領域が増大し,新たな患者の腫瘍の診断が不可能になるという問題があった.つまり,判断不可の領域が最も小さくするような特徴量の選択が必要となる.そこで,本報告では判断不可の領域を減少させるために,特徴量を設計変数としたGenetic Algorithm(GA)を利用することで,複数の特徴量から適した特徴量の選択を行った.この手法を用いた結果,識別率が一番低いものに比べ大幅に向上し判断不可領域に分類されるデータ数が減少する結果となった.この結果により, SVMを用いた3クラス分類のためのGAを利用した特徴量選択の有効性が示された. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
東京理科大学所属の方からの質問です.こちらの質問は,「病理画像のスキャン時の大きさ(ピクセル数等)を考慮しなければ数値が大きく変化してくるのでは」というものでした.この質問に対する回答ですが、私自身この研究で用いていた特徴量はレポジトリにある病理データの特徴量を用いていたため,画像については検討していませんでした.
・質問内容2
埼玉医科大学保健医療学部の小林直樹先生にいただいた質問です.こちらの質問は,「特徴量をどのように取り出してきているのか」という質問でした.上記の質問内容1と同様,この点に関ましては私の研究では考慮されてない点でありましたので答えることができませんでした.また,この質問をいただいた先生の研究では,実際に病理画像から特徴量を取り出してくる研究をされており,その先生がおっしゃっていたのは,「病理診断されている病理医が見ている点を特徴量として抽出してきたいのだが,なかなかそれがうまくいっていない」とのことでした.
特徴量に関する質問は大変多くいただきました.このことから,特徴量についても検討していかなければならないと思いました.
2.3. 感想
初の学会参加をさせていただいた中で,私の研究に近い内容をされている研究の発表を聴くことができたことや質問をいただくことができたことが大変貴重な機会となりました.反省点としましては,ポスター発表の際,聞いてくださっている方全員に対して説明できるように次回の発表の際には気を付けたいと考ええています.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 磁性ナノ粒子イメージングにおける反復処理を用いた画像再構成法著者 : 本間 拓実,清水翔太,土屋 寛貴,石原康利 セッション名 : イメージング,超音波計測,CT,MRI,PET Abstruct :近年,磁性ナノ粒子を利用し生体内の腫瘍等を画像化する磁性ナノ粒子イメージングmagnetic particle imaging(MPI)が注目されている.生体内に投与された磁性ナノ粒子は enhanced permeability and retention (EPR) 効果によって,腫瘍に蓄積する.この粒子に外部から磁場を与えることにより,磁性ナノ粒子の磁化状態を変化させ信号を検出し画像化を行う.しかし,印加する磁場が十分でない場合には目的領域外の磁性ナノ粒子からの信号で画像が劣化する問題があった.そこで,我々は目的領域内外から発生する信号の違いに着目した画像再構成法を提案し,数値実験と一次元実機実験によってその有効性を示した.しかし,この手法では原理的に画像ボケが現れるため画像再構成法の改良が必要であった.本研究では,検出した信号を基に反復的に補正を行い偽像や画像ボケを抑制する方法を提案し,その有効性を主に二次元実機実験にて検証した. |
この発表は磁性ナノ粒子イメージングMPI(Magnetic Particle Imaging)を利用した磁性ナノ粒子を利用し生体内の腫瘍等を画像化するというものでした.従来はPET(Positron Emission Tomography)やCT(Computed Tomography)などの放射性物質やX線など侵襲で検査を行っていたのに対して,MPIでは磁気を用いて検査するため非侵襲的であることに加え,磁気を共鳴させ振動させることで熱を発生させ癌を小さくさせるという画期的なものでした.まだ,日本ではあまり行われていないMPIの研究であるそうなのでとても興味深い内容でした.
発表タイトル : 新しいがん診断法の研究-規格化ヒストグラムとFFT 法の組み合わせによるDNA ploidy 解析-著者 : 日向 奈惠,神田 浩明 セッション名 : 運動機能、無拘束計測-1 Abstruct :フローサイトメータを用いたDNA ploidy 解析とは細胞の核を蛍光染色し、蛍光強度の分布をヒストグラムあるいはスキャッタグラムとして表す。従来から、それらのパターンで造血器腫瘍を診断する研究は盛んに行われてきた。我々は固形腫瘍の診断支援に用いる装置の開発を目標とし、DNA ploidy 解析方法に関する研究を行ってきた。結果、自動細胞単離・染色装置と専用の凍結乾燥試薬を開発し、FFT を応用したDNA ploidy解析が固形腫瘍の診断にも有効であることを、昨年本シンポジウムで報告した。今回はさらに症例を増やし、スクリーニングとして、得られたヒストグラム(原ヒストグラム)のうち典型的なaneuploidy を示す組織(原ヒストグラムのピークアドレスが200 から大きくずれている)をがんと判定した。それ以外の組織の原ヒストグラムを規格化(最大ピークのアドレスを200 に、ピークの最大値を1に)し、FFT 法を用いた解析を行った。さらに規格化したヒストグラムを細胞周期別の領域に分け、そのヒストグラムの積分値用いて、正常とがんの鑑別を試みた。対象はがん研究会有明病院において大腸がん切除46 例から採取した組織を解析した。摘出組織は2 分割し、1 個はHE 染色による病理診断を行い、残りの1 個を前回同様に自動細胞単離・染色装置と凍結乾燥試薬を用いて懸濁液化と核染色を行い、DNA ploidy 解析を行った。スクリーニングによりがんと判定した17 例の病理診断の結果はすべて癌であった。スクリーニングと総合して鑑別結果を評価した。FFT法のなかでは、Slope(先行研究におけるMaxdif を改称)を用いた解析は最も高い90%以上の、OSC は80%以上の、AUC は80%弱の感度・特異度をそれぞれ示した。領域別のヒストグラムの積分値を用いた場合はS 期およびG2/M 期で85%程度を示した。さらに、ヒストグラムの領域別の積分値とFFT 法を組み合わせることによって、感度・特異度とも90%以上が得られた。 |
この発表をされていた先生は,実際に病理診断を行っている病理医の方でした.一昨年前のシンポジウムでの発表では,自動で細胞単離し染色する装置と専用の凍結乾燥試薬を開発し、FFT を応用したDNA ploidy解析を行っているとのことでした.また,組織の原ヒストグラムを規格化し、FFTを用いた解析も行っていました.新たな癌の識別方法という点でとても興味深い内容となっていました.
参考文献
1) 生体医工学シンポジウム2013,http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html
学会参加報告書
報告者氏名 |
後藤真櫻 |
発表論文タイトル | 協調作業による相互作用が脳活動に及ぼす影響のfNIRSを用いた基礎的な検討 |
発表論文英タイトル | A Preliminary Study of Interaction Effects on Brain Activity during Cooperative Work using fNIRS |
著者 | 後藤真櫻, 山本詩子, 横内久猛, 廣安知之 |
主催 | 一般社団法人 日本生体医工学会 九州支部, 関西支部, 関東支部, 北海道支部, 甲信越支部 |
講演会名 | 生体医工学シンポジウム2013 |
会場 | 九州大学 伊都キャンパス |
開催日程 | 2013/09/20-2013/09/21 |
1. 講演会の詳細
2013/09/20から2013/09/21にかけて,九州大学伊都キャンパスにて開催されました生体医工学シンポジウム(http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html)に参加いたしました.この生体医工学シンポジウムは,日本生体医工学会によって主催されたシンポジウムで,生体医工学分野の発展の一助とするため研究者間のコミュニケーションの場の提供,理工系・医学系研究者の研究活動促進,若手研究者の本分野への勧誘,迅速な研究成果報告の機会の提供を目的に開催されています.
私は20,21日に参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,西村,大久保,吉田,中村が参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
本シンポジウムのプログラムは(1)20日午前,(2)20日午後,(3)21日午前,(4)21日午後,の4セッションに大きく分かれており,私は21日午後のセッションの中の「4-2:光計測」に参加いたしました.発表の形式はショートプレゼンテーションとポスター発表のセットで,セッション毎にショートプレゼンテーション(約2時間)があり,その後ポスター発表(1時間)がありました.ショートプレゼンテーションの発表時間は2分,交替を入れて2分30秒となっておりました.ショートプレゼンテーションでの質疑応答はありませんでした.
今回の発表の抄録を以下に記載致します.
本研究では,人間同士の協調作業時の脳活動について調査することを目的としている.本稿では,協調作業に関する基礎実験を行い,その要点を以下に示す.1)協調作業を調べるため,人‐機械システムを考案する.2)fNIRS(function Near-infrared Spectroscopy)を用いて協調作業時の脳血流変化を計測し,関心領域が決定する.3)協調の難しさと脳活動の関係について考察する.協調作業を調査するために,機械と人の間でタッピングを行うシステムをタスクに用いる.提案システムでは,機械から音刺激が提示され,人はその音刺激と同期するようにタッピングを行う.ここで音刺激の提示周期を固定するが,その音刺激は外乱を含んでいる. この外乱の程度が協調の難しさに相当すると考えられる.結果として,外乱の程度の増加に伴い,下前頭回付近で脳活動の増加が見られた.従って,下前頭回が協調に関する部位であると決定された.さらに,脳血流変化と協調の難しさの程度の間の関係には個人差が見られた. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
質問者の名前を控え損ねてしまいました.こちらの質問は,「人-機械システムと人-人システムでは調査対象が異なるのではないか」というものでした.この質問に対する私の回答は,以下の通りです.もし最初に人-人システムで人間同士を調査し脳の活性が見られるならば,その反応が人間同士という状況下によるものなのか,それとも,相手に合わせるという行為によるものなのか分からないので,まずは基礎の段階として,協調の難易度をこちらが調整できる機械との協調について調査しています.この質問は想定質問であり,回答を準備していたため,スムーズに回答できました.
・質問内容2
北海道大学大学院保健科学研究院所属の横澤さんからの質問です.こちらの質問は「ミラーニューロンと何か関係はあるのか」というものでした.この質問に対して,ミラーニューロンとの関係があるかもしれないので,今後十分に調査していく必要があると思う,と回答いたしました.
・質問内容3
九州大学大学院システム生命科学府所属の加留部さんからの質問です.こちらの質問は「課題に同期タッピング課題を用いたのはなぜか.何かを参考にしているのか」というものでした.この質問に対する回答ですが,協調作業を行うには相手とのタイミング合わせが必要であると考えており,そのため本実験は,”間”について研究されている方の論文を参考に実験をしています,と回答しました.
・質問内容4
秋田大学所属の田中さんからの質問です.こちらの質問は「同期タッピング課題と音提示課題は,コントロール群が異なるから比較してはいけないのでは」というものでした.この質問に対して,以下の通りに回答いたしました.確かに2つの課題のレスト内容が異なるので,レストに対するタスクの相対的変化が異なるかもしれないと感じ,課題点として今後の研究に生かしていきたいとしました.
2.3. 感想
私にとって初めての学会参加であり,不安と緊張で押しつぶされそうでした.しかし,いざ自分の発表となると,たくさんの方に興味を持っていただき,大変有意義な時間を過ごすことができました.ポスター発表では,ショートプレゼンテーションで説明しなかった検討項目の詳細について質問されることが多かったです.想定していた質問や,自分で気づかなかった点を指摘して頂き,今後の研究に生かしていきたいと思いました.しかしながら,私の説明を聞いてくださっている方の後方で私の研究を聞きにきている方も多くおり,その方たちにどのように説明するべきか分からなくて,残念な思いをしてしまいました.生体計測の研究の中でも,私のような研究をされている方は少なく,自分の研究に自信を持てずにいましたが,面白い研究だね,と言ってもらうこともできてとてもよかったです.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 顔の動作を用いた生体信号インタフェースの開発 著者 : 稲越隆久,堀潤一 セッション名 : 理学・作業療法,運動機能支援,看護・介護,インターフェイス Abstruct :本研究では,重度肢体不自由者への支援機器として,比較的精度が高く,運動機能が残存しやすい顔の動きを用いた生体信号インタフェースについて検討した.大頬骨筋,口角下制筋,咬筋,顎二腹筋の4 箇所に双極表面電極を貼付し,筋電図信号から7 種類の特定の顔の動作を識別した.この7 動作を「上・下・左・右」へのカーソル移動と,「左クリック・右クリック・ドラッグ&ドロップ」のクリック操作に割り当てた.さらに,動作を継続すると持続的に筋電信号が検出されることから,カーソルの連続移動を可能とした.実験により,各入力における確度と操作時間についての検証した結果,7 つの動作を86%の確度で識別可能であった.さらに,実際にパソコン上でのマウス操作を行い,リアルタイムでスクリーンキーボードやペイントソフトが使用できることを確認した. |
この発表は,顔に電極を付けて動作により発生する筋電信号を検出し,マウスカーソルを連続移動できるインタフェースの開発に関する研究でした.手や足の動作情報を得るために筋電信号を得ている研究ならばよく目にするが,顔に電極をつけるという発想に驚かされました.閾値を超えたものを動作判別の対象としており,客観的に閾値を決めるかと思っていたが,波形を見て自分で閾値を決めるようでした.小さなボタンの動作判別はまだできないようであるが,興味深い研究でした.
発表タイトル : 非線形最適化法を用いた生体内留置RFIDタグ一の高精度推定 著者 : 高畑裕美,松田勝志,杉浦忠男,岡田実,小島忠嗣,佐藤寿彦,大城理 セッション名 : 運動機能,無拘束計測-2,スポーツME Abstruct :体内に留置したRFID (Radio Frequency IDentification)タグ位置情報を 精度に推定する手法を提案する.従来手法ではRFID タグからの信号強度から受信アンテナとタグの間の距離を推定し,取得値により位置検出を行う.しかし距離推定に必要なタグ送信電力情報がタグの配置や個体差により変動して推定精度を劣化させる.非線形最適化法を用いたタグ位置とタグ送信電力を同時に推定する手法を提案し,距離推定の精度向上を実験により明らかにする. |
この発表は,ICカードで電車運賃を精算する仕組みを利用して,体内にRFIDという小さなチップを留置し,そのチップがどこにあるか体外から検査する手法の提案でした.腫瘍などの再手術の必要な患者の場合,腫瘍を探すのに手間がかかったり患者に負担がかかってしまうため,このチップを入れてピンポイントで腫瘍を探すことができるそうです.しかし,チップの大きさにより,検出可能な距離が変化しその精度を高めるのが課題であるとおっしゃっていました.実際に犬の臓器で実験をしており,動画も見せていただけました.
発表タイトル : 脳内部組織の対応関係に基づいた脳図譜による脳内部構造 著者 : 小林薫樹,諸岡健一,宮城靖,福田孝一,辻徳生,倉爪亮 セッション名 : 画像処理 Abstruct :脳深部刺激療法において,脳深部にある微細な目標神経核の位置同定が必要であるが,その目標神経核は,MR 画像で判別し難い.そこで,献体脳の解剖データを基に作られた脳図譜を,患者の脳と合致するように変形させ,患者脳の内部神経構造を推定する.従来の推定法では,脳表形状が一致するよう脳図譜を変形させているが,脳表形状と神経構造の関連性は明らかでないため,推定した内部構造の信頼性は低い.加えて従来法は,区分的領域ごとにしか変形できないため,複雑な変形には対応できない.本研究では,MR 画像で認識可能な神経核の対応関係から脳図譜を変形させ,脳深部領域における内部神経構造を推定する手法を構築した.脳図譜をメッシュモデルで表現し,各節点の移動によって自由度の高い変形を実現した.熟練脳外科医の知見と,本手法による推定結果を比較し,提案手法が有効であることを確認した. |
この発表は,個人によって脳内の構造が異なることに対してサンプルと照らし合わせて脳の部位を画像から推定する研究でした.画像から脳の構造を推定する,というコンセプトが面白いと感じました.実際には手作業で,サンプル画像と実際の患者の画像の脳の構造を結びつけているそうです.得られている複数群のデータに対してt検定を用いており,分散分析や多重比較を使わないのはなぜなのか,と質問させていただきました.雑談ではありましたが,脳図譜を作成するにはたくさんの手間と長い年月がかかり,また,人種によって脳の構造が微妙に異なるのだと教えていただきました.
参考文献
1) 生体医工学シンポジウム2013, http://bie.inf.kyushu-u.ac.jp/jbmes2013/index.html