廣安が会長を務めます進化計算学会が主催する進化計算シンポジウム2013が鹿児島県霧島市 霧島ホテルにて行われました。
今年も100名以上の研究者・学生が集い、進化計算について議論しました。
研究室からは廣安以外に下記のものが発表しました
- 細胞画像に対する領域分割フィルタ構築の為の多目的遺伝的プログラミングの検討
布川将来人(m2) - 専門家が良好と判断する角膜内皮細胞画像生成システム ‑データベースの利用によるシステム構築の検討‑
松浦秀行(m1) - Comparism Study of MOEA Algorithms with High Dimensional Objective and Decision Spaces
Heiner Zille
学会参加報告書
報告者氏名 | 松浦秀行 |
発表論文タイトル | 専門家が良好と判断する角膜内皮細胞画像生成システムーデータベースを利用したシステム構築の検討ー |
発表論文英タイトル | System generating better cell images based on thejudgement of experts- Examination of building a system using databases- |
著者 | 松浦秀行,上堀聖史,山本詩子,廣安知之 |
主催 | 進化計算学会 |
講演会名 | 進化計算シンポジウム2013 |
会場 | 霧島ホテル |
開催日程 | 2013/12/14-15 |
1. 講演会の詳細
2013/12/14から2013/12/15にかけて,鹿児島県霧島市にある霧島ホテルにて開催されました進化計算シンポジウム2013に参加いたしました.本シンポジウムは,進化計算学会によって開催されたシンポジウムで,ポスターセッションを基本とし,ショートプレゼンを併用することで活発な情報交換を行うことを目的としています.
私は14日,15日の全ての日程に参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,布川さん,Heinerが参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の二つ目のセッションに参加いたしました.発表の形式はポスター発表で,2分半のショートプレゼンと40分のポスター発表となっておりました.以下に抄録を記載致します.
近年,角膜の病気に対する治療では専門家の目視によって角膜の評価が行われているが,目視による判断は専門家によって精度が異なる問題がある.よって,本研究では細胞診断における客観的評価基準の確立を目的とし,専門家が良好と判断する角膜内皮細胞画像を生成するシステムを対話型遺伝的アルゴリズムを用いて構築した.本稿では,構築したシステムの概要と一般ユーザに適用したシステム評価実験の結果について述べる. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
「今回の発表では,ボロノイ図を使って細胞のモデル画像をつくっていましたが,他にモデル画像をつくる手法はありますか?」
質問者の氏名はわかりませんでした.この質問には,「今回作ったモデル画像のようにゼロから作る手法ではなく,元の画像のテクスチャ特徴量を使って似た画像を作るという手法は私の研究室で行われています」と答えました.
・質問内容2
「この研究では,トーナメントを使ったアルゴリズムを採用しているが,トーナメントではすべての個体を評価するわけではないからノイズが混じってしまう.音を評価するなど同時に複数評価することが難しい場合などはトーナメントが有効であるが,今回の問題では複数の個体を同時に評価したり,差分進化のようなものを適用した方が良いのでは?」
九州大学の高木先生からコメント頂きました.この質問には,「本研究では,PC-iGAを適用した場合のみでしたが,今後は差分進化を適用した結果や複数の画像を評価してもらった場合の結果を比較検討していきたいと思います」
・質問内容3
「この研究では細胞のモデル画像から細胞数や面積SD値,六角形率などの特徴量を計算しているが,それ以外にも細胞の形を図形と捉え,等週比などを使うと面白いことができそう」
首都大学東京の鈴木先生からコメント頂きました.コメントだけではなく,後日メールにて論文が見れるURIも送って頂きました.
2.3. 感想
今回の発表は初めての発表ということもあり,発表前はとても緊張しましたが,発表自体は説明に詰まらず相手に伝えたいことを伝えることができたと思います.質問内容は主にシステムの概要やモデル画像が多く,結果についてはあまり議論ができませんでしたが,多くの人に聞いて頂くことができたので良かったです.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
発表タイトル : モジュールパターンの最適化と画重畳によるQRコードの装飾著者 : 下村 輝剛,田尻 昌之,谷山 大介,小野 智司,中山 茂セッション名 : セッション2 |
この発表では,多目的遺伝的アルゴリズムを用い,視覚的誘因性と機械可読性を考慮してQRコードを装飾する手法を提案しています.従来のQRコードでは見ただけでどのような情報が含まれているのかを判別することはできなく,視覚的誘因性が不足しています.そのような問題に対し,この発表では視覚的誘因性の評価と機械可読性の評価を目的関数として最適化を行った結果について述べていました.発想が面白く,実際にQRコードを作成することも出来ていたので,とても素晴らしい発表だったと思います.
発表タイトル :環境変化にロバストなリンケージ型学習分類子システム著者 : 山田太郎セッション名 :セッション2 |
この発表では,ロボット制御問題に着目し,強化学習と遺伝的アルゴリズムを利用した学習分類システムを使い,環境変化にロバストな行動規則獲得手法を提案しています.これは従来とは異なり,最適行動である行動制御側を時系列的に記憶しておくことで環境が変化した場合においても提案手法が有用であることが示されていました.
参考文献
1) 西田幸次.角膜の再生医療.東北医学雑誌,Vol.118,No.2,pp.117-122,2006.
2) 原口祐次,清水達也,大和雅之,菊池明彦,岡野光夫.細胞シート工学を用いた組織再構築および
再生医療への応用.日本再生歯科医学会誌,Vol.2,pp.83-92,2002.
3) 小泉範子,奥村直毅,木下茂.臨床応用を目指した角膜内皮再生医療の開発.同志社大学理工学研
究報告書,Vol.52,pp.31-36,2012.
4) Tomoyuki Hiroyasu,Kiyofumi Uehori,Utako Yamamoto,Misato Tanaka.Construction of an
Interactive System Aims to Extract Expert Knowledgeabout the Condition Cultured Corneal EndothelialCells.Proceeding of IEEE international conferenceon systems, man, and cybernetics,
pp.1805-1810,2013.
5) 高木英行,畝見達夫,寺野隆雄.対話型進化計算法の研究動向.人工知能学会誌,Vol.13,pp.
692-703,1989.
6) 中西弘樹,金城寛,中園邦彦,山本哲彦.可変確率分布を用いた実数値gaの交叉方法.電子情報
通信学会技術研究報告ニューロコンピューティング,Vol.105,No.131,pp. 51-54,2005.
7) 渡辺秀臣,今井敏行.点ボロノイ図を利用した線分ボロノイ図の位相構造決定法.情報処理学会研究
報告,Vol.5,pp.7-14,2005.8) 渡邊貴史,村島定行.2 次元離散ボロノイ図をO(1) の計算時間で描く方法.電子情報通信学会論文誌,Vol.79,No.3,pp.114-122,1996.
9) 清水晋平,梶川嘉延.一対比較評価を用いたヘッドホン受聴のための音質フィッティングシステムに関する検討.電子情報通信学会技術研究報告応用音響,Vol.108,pp.97-102,2009.
10) 渡辺芳信,吉川大弘,古橋武.一対比較評価による対話型遺伝的アルゴリズムに関する一提案.第16回インテリジェントシステムシンポジウム講演論文集,Vol.16,pp.307-310,2006.
学会参加報告書
報告者氏名 | 布川 将来人 |
発表論文タイトル | 細胞画像に対する領域分割フィルタ構築の為の 多目的遺伝的プログラミングの検討 |
発表論文英タイトル | Study of multi-purpose genetic programming for cell image segmentation filter construction |
著者 | 布川将来人,渡邉真也,山本詩子,廣安知之 |
主催 | 進化計算学会 |
講演会名 | 進化計算シンポジウム2013 |
会場 | 鹿児島県霧島市 霧島ホテル |
開催日程 | 2013/12/14-2013/12/15 |
1. 講演会の詳細
2013/12/14から2014/12/15にかけて,鹿児島県霧島市 霧島ホテルにて開催されました進化計算シンポジウム2013 (1) に参加いたしました.このシンポジウムは,進化計算学会によって主催された発表会で,本研究室でも用いられている,遺伝的アルゴリズムなどの進化計算に携わる多くの学生と教員が参加し,進化計算のアルゴリズムや実問題への応用などに関する発表を行い,議論を交わすことを目的としたシンポジウムとなっています.
私は2日間参加し,15日の ポスターセッション③ において発表を行いました.本研究室からは他に廣安先生,Heiner,松浦が参加しました.
2. 研究発表
2.1. 発表概要
私は15日の ポスターセッション③ にて発表を行いました.発表の形式は1分半のショートプレゼンの後,40分程度のポスター発表を行う形式でした.
今回の発表の抄録を以下に記載致します.
本研究グループでは,角膜内皮再生医療における培養角膜内皮細胞画像から,細胞密度などの特徴量を抽出できるシステムの提案を行っている. 本発表では,システムで用いる最適化手法である遺伝的プログラミングの検討として, いくつかの多目的最適化アルゴリズムと(単目的)遺伝的プログラミングの比較検討を行った結果について述べた. |
2.2. 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.質問内容は,提案システムでGPを用いている理由は何かというもので,質問に対する回答としては,ユーザの画像処理の知識を必要とせずに,木構造の組み合わせ最適化を行うことを目的としているため,遺伝的プログラミングを用いていること,また遺伝的アルゴリズムを用いた場合に比べて遺伝的プログラミングの精度が高い結果を示したことの2点について説明しました.
・質問内容2
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.質問内容は,どういったモチベーションで多目的問題としたのかについてです.回答内容は,遺伝的プログラミングを用いる際の深さ制限やノードに対するペナルティといったパラメータ設定を省いてやることによって探索性能向上を期待して行ったことを説明しました.
2.3. 感想
研究生活での私の最後の学会発表でしたが,相変わらずショートプレゼンは緊張しました.
ポスター発表においては自分の伝えたいことは伝えられたつもりでしたが,ショートプレゼンが悪かったのかあまり多目的に関する結果の議論をすることはできず少し残念でした.
3. 聴講
今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
発表タイトル : 携帯電話のディスプレイに表示された2 次元コード用電子透かしの進化的設計 著者 :前原武, 谷山大介, 池田亮, 谷口康太郎, 中居謙太郎,小野智司, 中山茂 セッション名 : ポスターセッション1 Abstruct : なし |
この発表は現在様々な場面で用いられているQRコードの不正な複製の防止を目的として,
半脆弱(2回目以降のコピーに耐えられないような強度)の透かしを加えたQRコードの提案を行っていました.この半脆弱な透かしの設計に適応型差分進化(Self Adaptive Differential Evolution)を用いることで最適化を行っていました.
この研究は,実社会のトレンドに沿った研究だと感じました.本研究グループでも,スマートフォンやタブレットといった情報社会における技術と医療に関する研究を進めていければ何か面白い発想や提案に繋がるのではないかと感じました.
発表タイトル :災害時における道路寸断に対するバス路線網修正と最適化 著者 :北川広登,佐藤圭二,佐藤寛之,服部聖彦,高玉圭樹 セッション名 : ポスターセッション2 Abstruct : なし |
この発表は,大規模な災害が発生し,通常時のバス経路が使えなくなった際の最適なバス経路を決定することを目的とした発表でした.既存の手法では,エージェント(仮想乗客)の所要時間,路線の需要などを重み関数によってひとつの目的関数とし,最適化を行っていたが,通常に比べて路線の変更が大きく,現実的で無い結果となる事などから,路線の変更度合いを目的関数に追加した,多目的最適化問題とし,NSGA-IIに改良を行った手法を用いた結果についての発表を行っていた.
この路線問題は対象問題がネットワーク構造を持っているため,私が用いている遺伝的プログラミングを用いることも可能では無いのかといった点で興味を持ちました.
また,本研究室で行っている広域ネットワーク環境におけるレプリカ配置などの問題においても,
遺伝的プログラミングを用いることで,トポロジーの最適化も行うことができるのではないかと少し考えました.
参考文献
(1) 進化計算シンポジウム2013, http://www.jpnsec.org/symposium201303.html