2015年12月19日に京都大学にて開催されました第13回ワーキングメモリ学会大会に参加いたしました.この大会は,日本ワーキングメモリ学会によって主催された大会で,ワーキングメモリの今を議論し,研究の進捗を報告することを目的に開催されています.本研究室からは小淵(M2),萩原(B4)が参加しました.
小淵(M2)は前年の第12回大会で優秀発表賞を受賞したため,優秀発表賞受賞者報告を行いました.また,萩原(B4)が口頭発表を行いました.発表題目は以下の通りです.
ワーキングメモリ課題における異なる方略を用いた
訓練の脳活動と白質形態の統合性への影響
小淵将吾,岡村達也,田中美里,山本詩子,廣安知之
暗算課題におけるワーキングメモリの機能的ネットワークのグラフ理論による検討
萩原里奈,小淵将吾,田中美里,日和悟,廣安知之
初めての学会で口頭発表であったためとても緊張しましたが,多くの質問を頂け発表に興味を示して頂けて嬉しかったです.ネットワーク解析が注目されている研究であることがよくわかりました.学会では,脳機能の研究については少なく,研究室にはないワーキングメモリについての研究を聴くことができ,新鮮で大変勉強になりました.また,先輩の素晴らしい講演も聴くことができ良い経験となりました.
最後に本学会参加にあたり,先生方,コーチ,研究室の皆様には学会リハーサルをはじめ,大変お世話になりました.この場を借りてお礼申し上げます.今回の反省点を研究や発表に活かし,早く小淵さんのような素晴らしい研究発表をしたいと思います.
【文責:B4 萩原】
学会参加報告書
報告者氏名 | 小淵将吾 |
発表論文タイトル | ワーキングメモリ課題における異なる方略を用いた訓練の 脳活動と白質形態の統合性への影響 |
発表論文英タイトル | Working memory training strategies and their influence on changes in brain activity and structural connectivity |
著者 | 小淵将吾, 山本詩子, 田中美里,岡村達也,廣安知之 |
主催 | 日本ワーキングメモリ学会 |
講演会名 | 第13回日本ワーキングメモリ学会大会 |
会場 | 京都大学 文学部校舎 |
開催日程 | 2015/12/19 |
- 講演会の詳細
2015/12/19に,京都大学 文学部校舎にて開催されました第13回日本ワーキングメモリ学会に参加いたしました.この大会は,日本ワーキングメモリ学会によって主催された大会で,ワーキングメモリの今を議論し,研究の進捗を報告することを目的に開催されています.
本研究室からは他に萩原さん(B4)が参加しました.
- 研究発表
- 発表概要
私は19日の午後のセッション「第12回大会優秀発表賞受賞者報告」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,5分の講演時間となっておりました.
今回の発表は,「ワーキングメモリ課題における異なる方略を用いた訓練の脳活動と白質形態の統合性への影響」と題して発表いたしました.以下に抄録を記載します.
ワーキングメモリ (WM) の個人差を測定するリーディングスパンテスト (RST) において,単語を記憶する方略が容量に大きな影響を与えることは知られている.しかし異なる方略を訓練することによる,構造的・機能的な脳への影響は明らかでない.そこで本研究では,RSTにおける2つの方略(イメージとリハーサル)の訓練による脳への構造的影響を拡散テンソル画像法 (DTI) で,機能的影響を核磁気共鳴画像法 (fMRI) を用いて検討した.その結果,イメージ方略の被験者のみRSTの課題成績に向上がみられ,右下側頭回付近の神経髄鞘化の程度を示すFA値が上昇し,前部帯状回の脳活動が上昇した.また,FAが上昇した領域からの神経描画より右下縦束が描画され,脳活動上昇領域である右上後頭葉との関連が確認された.したがって異なる方略の訓練により,WM容量の向上,構造的・機能的な脳への影響は異なることが示唆された. |
- 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
質問者のお名前を控え損ねました.こちらの質問は方略の訓練はどのように行っているのかというものでした.これに対して訓練は1か月間週に5回30分ほどRSTを用いて行っていると回答しました.
- 感想
今回の発表は5分であったため,いかに簡単に概要を伝えるということを中心に発表しました.質問もいただいたため,概要はわかっていただけたのだと思い安心しました.
- 聴講
今回の講演会では,下記の1件の発表を聴講しました.
発表タイトル : ワーキングメモリとマインドフルネスの関係性 著者 : 新井智大(大阪大学人間科学研究科)・苧阪満里子(大阪大学人間科学研究科) セッション名 : 一般発表(3) Abstract : 近年心理学においてマインドフルネスと,マインドフルネスを高める方法としてのメディテーション(瞑想)が大きな注目を集めている.メディテーションをおこなうことによってワーキングメモリ課題の成績が向上したとする研究もいくつか報告されているが,個人がもつマインドフルネス特性とワーキングメモリ容量の関係性については未だ明らかにされていない.そこで本研究では,マインドフルネス特性をFive Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ)で,ワーキングメモリ容量をListening Span Test(LST)とReading Span Test(RST)を用いて測定し,その相関を調べた.相関分析により,マインドフルネ ス特性の中でも描写(Describing)の因子がLSTおよびRSTの成績に相関があることがわかった.この結果から,(1)自らの内的な経験を言葉で理解するマインドフルネス特性が言 語性ワーキングメモリ課題をおこなうにあたって有利に働くこと,(2)メディテーションをおこなうことによってワーキングメモリ課題の成績が向上する可能性があることが示唆された. |
この講演はワーキングメモリとマインドフルネス関係性に関する講演でした.マインドフルネス特性を測定するテストやマインドフルネス特性の5つの因子があることなどが特に勉強になりました。またマインドフルネスを高めるメディテーションの方法についても興味を持って拝聴できた.
参考文献
- 第13回日本ワーキングメモリ学会大会, http://square.umin.ac.jp/jswm/ja/jswm13_program.pdf
学会参加報告書
報告者氏名 |
萩原里奈 |
発表論文タイトル | 暗算課題におけるワーキングメモリの機能的ネットワークのグラフ理論による検討 |
発表論文英タイトル | Functional network of working memory during mental arithmetic task based on graph theoretical analysis |
著者 | 萩原里奈,小淵将吾,田中美里, 日和悟,廣安知之 |
主催 | 日本ワーキングメモリ学会 |
講演会名 | 第13回日本ワーキングメモリ学会大会 |
会場 | 京都大学 文学部校舎 |
開催日程 | 2015/12/19 |
- 講演会の詳細
2015/12/19に,京都大学 文学部校舎にて開催されました第13回日本ワーキングメモリ学会に参加いたしました.この大会は,日本ワーキングメモリ学会によって主催された大会で,ワーキングメモリの今を議論し,研究の進捗を報告することを目的に開催されています.
本研究室からは他に小淵さんが参加しました.
- 研究発表
- 発表概要
私は19日の午前のセッション「一般発表(1)」に参加いたしました.発表の形式は口頭発表で,12分の講演時間と3分の質疑応答時間となっておりました.
今回の発表は,「暗算課題におけるワーキングメモリの機能的ネットワークのグラフ理論による検討」と題して発表いたしました.以下に抄録を記載します.
暗算課題において,脳の賦活領域は知られているが,その領域間の繋がりは明確ではない.そこで本研究では,ワーキングメモリ(WM)を使用した暗算課題時の脳の機能的結合の関係を解明する.被験者14名で,整数1桁の加算(簡単)とWMを使用する小数点を含む3桁の四則演算(難しい)の両課題における脳活動を核磁気共鳴画像法(fMRI)で計測し,グラフ理論によって脳領域間のネットワークの特徴を検討した.集団解析の結果,簡単な暗算と難しい暗算の脳活動に有意な差があった領域は楔部と楔前部であった.また,グラフ理論により脳領域間のネットワークを解析し,Degree(D),Betweenness Centrality (BC),Clustering Coefficient (CC)及びModularity (M)を求めた.Dでは楔部と楔前部,BCでは楔部,CCではすべての領域において,簡単な暗算より難しい暗算で有意に高い値が得られた.Mを用いてネットワークの群分けをしたところ,簡単な暗算では4つ,難しい暗算では3つに分類された.このことより,WMを使う暗算では,楔部と楔前部がより多くの領域と協調してはたらき,またそれらの近隣領域と高い密度で繋がることが示唆された. |
- 質疑応答
今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
大阪大学所属の苧阪満里子先生からの質問です.こちらの質問は116領域の決め方をどうしているのかというものでした.また,成績の違いによってパフォーマンスの検討をしていないのかというものでした.この質問に対する私の回答はAALというアトラスを使用しています.また,パフォーマンスについては今回検討しておいりませんが,今後検討したいと考えていますと回答致しました.
・質問内容2
京都大学所属の苧阪直行先生からの質問です.こちらの質問はdifficultではどのような点が難しいかというものでした.また,楔部と楔前部が現れるのは課題の程度による差かあるいは質による差であるのかというものでした.この質問に対する回答ですが,difficultはeasyと比較して,計算した結果を保持しながらもう一度計算をして,ワーキングメモリを使用するという点で難しいです.また,楔部と楔前部の賦活はdifficultではeasyと比較してワーキングメモリを使用するためだと回答致しました.
・質問内容3
京都大学所属の船橋新太郎先生からの質問です.こちらの質問は,このネットワークはワーキングメモリによるものであるのか,計算によるものであるのかというものでした.この質問に対して,easyとdifficultの違いはワーキングメモリを使用するかしないかであるため,ワーキングメモリによるネットワークだと考えていますと回答致しました.また,後ほどお話しする機会があり,改めて確認したところ,暗算の難易度によるものであることも考えられるとご意見を頂きました.
- 感想
初めての学会参加で,口頭発表ということでとても緊張しました.多くの質問を頂け,発表に興味を示して頂けて嬉しかったです.苧阪夫妻と船橋先生が研究についての貴重なご意見をくださり,今後より考えて研究を行っていきたいと考えました.研究室では聴けない,ワーキングメモリに関する様々な研究を聴くことができ,大変勉強になりました.今回の反省点も多くあるので,今後の研究や発表に活かしていきたいと思います.
- 聴講
今回の講演会では,下記の発表を聴講しました.
発表タイトル : ワーキングメモリとマインドフルネスの関係性 著者 :新井智大(大阪大学人間科学研究科)・苧阪満里子(大阪大学人間科学研究科) セッション名 : 一般発表(3) Abstruct :近年心理学においてマインドフルネスと、マインドフルネスを高める方法としてのメディテーション(瞑想)が大きな注目を集めている。メディテーションをおこなうことによってワーキングメモリ課題の成績が向上したとする研究もいくつか報告されているが、個人がもつマインドフルネス特性とワーキングメモリ容量の関係性については未だ明らかにされていない。そこで本研究では、マインドフルネス特性をFive Facet Mindfulness Questionnaire(FFMQ)で、ワーキングメモリ容量をListening Span Test(LST)とReading Span Test(RST)を用いて測定し、その相関を調べた。 相関分析により、マインドフルネス特性の中でも描写(Describing)の因子がLST およびRST の成績に相関があることがわかった。この結果から、(1)自らの内的な経験を言葉で理解するマインドフルネス特性が言語性ワーキングメモリ課題をおこなうにあたって有利に働くこと、(2)メディテーションをおこなうことによってワーキングメモリ課題の成績が向上する可能性があることが示唆された。 |
この発表は最近注目が集まっているマインドフルネスとワーキングメモリ容量の関係に関する発表でした.今回は,マインドフルネスとワーキングメモリ容量の因果関係の解明が今後の課題であることが示されましたが,どちらにしてもワーキングメモリ訓練に関係があることを知り,新たな知識を得られ勉強になりました.
参考文献
- 第13回日本ワーキングメモリ学会大会,
http://square.umin.ac.jp/jswm/ja/jswm13_program.pdf