進化適応型自動車運転支援システム「ドライバインザループ」研究拠点形成平成27年度成果報告会

2016/03/24にMK101,MK102にて開催されました進化適応型自動車運転支援システム「ドライバインザループ」研究拠点形成平成27年度成果報告会に参加しました。

学会参加報告書

 
報告者氏名
 
石原知憲
発表論文タイトル EEGを用いた左右の手の運動想起識別におけるBCIシステムの構築
発表論文英タイトル  
著者 石原知憲, 廣安知之,日和悟
主催 医療情報システム研究室
講演会名 進化適応型自動車運転支援システム「ドライバインザループ」研究拠点形成 平成27年度成果報告会
会場 MK101,MK102
開催日程 2016/03/24

 
 

  1. 講演会の詳細

2016/03/24にMK101,MK102にて開催されました進化適応型自動車運転支援システム「ドライバインザループ」研究拠点形成平成27年度成果報告会に参加いたしました.この成果報告会は,同志社大学,同志社大学モビリティセンタによって主催された報告会で,ヒトとクルマの共存および周辺車両や環境との協調を行う進化適応型自動運転システム「ドライバインザループ」の4つの研究部門の研究成果を報告することを目的に開催されています.
私は24日のポスター発表と口頭発表,招待講演に参加いたしました.本研究室からは他に廣安先生,日和先生,玉城,和田が参加しました.
 

  1. 研究発表
    • 発表概要

私は24日の午後のポスターセッションに参加いたしました.発表の形式はポスター発表で,発表時間が50分となっておりました.
以下に抄録を記載致します.

自動車運転において、ヒトの脳機能情報を利用するためには、BCI(Brain Computer Interface)の技術が必須である。BCI の中でも運動想起時の脳波による制御を行うものは MI-BCI(Motor-Imagery based BCI)と呼ばれる。ヒトにおける手足の運動時の脳波では、μ波やβ波と呼ばれる周波数領域のパワースペクトラムが低下し、逆に運動後は上昇することが知られている。運動想起時の脳波を活用した MI-BCI は BCI の分野でも主要なアプローチである。しかし MI-BCI の安定的な制御には長時間の訓練が必要とされており、訓練時間の短縮が重要な研究課題となっている。本稿では多チャンネル時系列信号から空間領域において特徴抽出する手法である CSP(Common Spatial Pattern)を用い、訓練経験の少ない被験者でも訓練時間短縮可能な BCI システムの構築を検討した.

 

  • 質疑応答

今回の講演発表では,以下のような質疑を受けました.
・質問内容1
「何チャンネルの電極で測定し,どこを測定しているのか?
また脳波からどのようにBCI操作につなげているものが多いのか?」
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.この質問に対する回答ですが電極は3CHで感覚運動野にあたる場所で測定をしたとお答えしました.二つ目の質問の回答は左手の運動想起中には右脳の感覚運動野でμ波と呼ばれる周波数帯域の脳波のスペクトラムが左脳に比べ大きく減衰します.この特性を利用し左右を識別している先行研究が多いとお答えしました.
 
・質問内容2
「訓練には時間がかかりそうだが人によって脳波を出すのが得意であったり,不得意であったりBCI操作における個人差みたいなものは認められるのか?」
同志社大学理工学部インテリジェント情報工学科知的システムデザイン研究室所属の三木光範先生からの質問です.この質問に対する私の回答は今回の実験は被験者数がn=2で対照実験を含めてもn=4であったため,個人差があることを断定することは難しい.今後実験設計を考えていくうえで,そうした個人差も考慮していきたいとお答えしました.
 
・質問内容3
「脳波で動くような玩具も売り出されているが,そうした玩具はどれぐらいの精度で動いているのか?また訓練には一般的にどれぐらいの期間が必要なのか?」
質問者の氏名を控え損ねてしまいました.この質問に対する回答ですが,脳波で動く玩具の精度の検証については行っていないため,精度が高いのか低いのかはわかりませんが,一般的に脳波で思い通りに外部機器を操作するためには,約三か月程度の訓練が必要とされているため,高い精度で動くものではないと予想されるとお答えしました.
 
・質問内容4
「識別率を出す際に識別線は線形を使っているのか?MRIなどでは線形で識別するとうまくいくことが多いので,EEGでもそういった特徴はあるのか?」
株式会社DENSO所属の三木光範先生からの質問です.この質問に対する私の回答は今回特徴量の識別に非線形のSVM(rbfカーネル)を用いました.しかし今後リアルタイムで脳波の特徴量識別を行う際には計算量の観点から線形識別を行うほうが有用であると考えているとお答えしました.

  • 感想

今回私にとって初めての研究発表であった.緊張した部分もあったがドライバインザループの研究がどのような体制で行われているのかを知ることが出来た.プロジェクトの全体像を知ることが出来たので,自分に足りない部分がより明確になったと感じている.今回の発表では脳波で外部機器を操作するといった内容で発表をしたが,ほかの研究グループの研究成果を見ていると脳波による直接的な運転補助だけではなく,ドライバーの状態把握やドライバーと社内環境の調和に寄せた研究を進めていく必要性も感じた.今回の発表内容では特に脳波を取得する際のEEGの精度や訓練の方法に関するご指摘をいくつかいただいた.今後研究を進めるうえで参考にしながらこの研究プロジェクトに貢献できるような研究をしていきたい.
 

  1. 聴講

今回の講演会では,下記の2件の発表を聴講しました.
 

発表タイトル       : 自動車の自動運転~慶応大の取り組みの紹介と実用化に向けた課題の考察~
著者                  : 大前学
セッション名       : 招待講演
Abstruct            : 2013年に政府の成長戦略に自動走行技術の開発が挙げられ,さらにオリンピックの開催も決まり「世界一安全な道路交通社会の実現」をすべく,自動運転の実用化に向けた取り組みが加速している.ここで実現を目指す自動運転の特徴と課題についてドライバー支援型の自動運転のHMI,自律自動運転車の大量普及,安全と社会受容性の観点から研究者の視点で私見を述べる.

この発表はドライバー支援型の自動運転のHMIを中心に「世界一安全な道路交通社会の実現」を目指すための慶応大学の取り組みに関する発表でした.従来,この分野で採られてきたアプローチは車の自動運転化であったが,現在日本では危険時にドライバーが介入を行い,安全を維持し,その責任を負う「ドライバー支援型の自動運転という形である.このアプローチについては,ドライバインザループの目指すものに近いものを感じ,大変興味深い内容でした.特に自動運転のHMIの部分は自身の研究への応用が可能であると感じられました.具体的には脳波情報からドライバーの状態把握等が可能になれば,危険時のドライバーに介入できるのではと思いました.
 

発表タイトル       :車車間通信パケット多重化による効率的ジオキャスト配信手法
著者                  : 多田正範 佐藤健哉
セッション名       : 口頭発表第4グループ
Abstruct            : 近年道路交通における事故や渋滞,環境問題など様々な課題解決を目的とした高度道路交通システム(ITS:Intelligenct Transport System)の研究が
活性化している.その中ドライバーのための安全支援システムを搭載した先進安全運転自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)の開発実用化が進められている.具体的には衝突被害軽減ブレーキやACC(Adaptive Cruise Control)などの技術が実用化されている.しかしこれらの技術はカメラやレーダーなどのセンサを用いて周辺環境状況を
把握するアプローチのため,車両から見えない範囲ではセンサで検知できない.この問題を解決するため,無線通信技術を利用して周辺環境状況把握を行うVANET(Vehicular Ad-hoc NETworks)の検討がなされている.またVANETでは多くの配信方法が検討されているが,データ配信の効率性からジオキャストと呼ばれる配信方法が注目されている.本研究ではジオキャストにおいて,同領域宛のデータを1つのパケットに統合して配信するピギーバック方式によりパケットを多重化することでネットワークトラフィックの削減と通信の安定性の向上を目指す.

この発表で着目したのは運転中にドライバーの死角となる部分の情報を車車間データ通信によって補おうとする点でした.これは従来のセンサやカメラを用いた情報収集に加えて利用することでよりドライバの安全性が確保されると感じました.詳しい技術的な部分に関して理解が及ばなかった部分もありましたが,車内からの安全性確保だけでなく車外からのかかわりもあることを知ることが出来ました.
 
参考文献

  • 同志社大学モビリティ研究センター, http://mrc.doshisha.ac.jp/files/news_160107.html